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丸井グループの事例から考える、
「企業成長に繋がる“手挙げ文化”の醸成」

  • 原田 信也氏(株式会社丸井グループ 人事部 人材開発課 課長)
  • 伊藤 真氏(株式会社丸井グループ 人事部 人材開発課 チーフリーダー)
  • 大竹 圭氏(株式会社コンサルティングアソシエイツ 異業種交流研修プロジェクトリーダー)
特別講演 [M-1]2021.07.02 掲載
株式会社コンサルティングアソシエイツ講演写真

丸井グループはリーマンショックでの業績低下を契機に、人材戦略で無形投資への長期的なシフトを決断。その過程で手挙げ文化、対話文化を生み、組織の活性化に成功している。中計推進会議においても手挙げで参加者の多様性が増し、参加後に職場に戻った人がクチコミで参加を募る好循環も生まれている。では、具体的にどのようにして成功することができたのだろうか。

プロフィール
原田 信也氏( 株式会社丸井グループ 人事部 人材開発課 課長)
原田 信也 プロフィール写真

(はらだ しんや)1999年に(株)丸井入社。店舗での販売、売場責任者に従事した後、本社でバイヤー業務、新ブランド開発、PB商品のお客さま共同商品開発、自主売場の事業責任者等を経験。21年4月より現職において知識創造型企業実現に向けた人材育成・研修の企画立案を担当。


伊藤 真氏( 株式会社丸井グループ 人事部 人材開発課 チーフリーダー)
伊藤 真 プロフィール写真

(いとう まこと)2014年に(株)丸井グループに新卒入社し、店舗での販売、本社でのバイヤー業務といった小売事業に従事した後、コーポレートブランディングを推進させるデザインオフィス立ち上げを経験。2020年より現職において知識創造型企業実現に向けた人材育成・研修の企画立案を担当。


大竹 圭氏( 株式会社コンサルティングアソシエイツ 異業種交流研修プロジェクトリーダー)
大竹 圭 プロフィール写真

(おおたけ けい)(株)ファーストリテイリング入社後、飲食業のコンサルタントを経て2008年(株)コンサルティングアソシエイツに参画。企業マッチング型異業種交流研修事業「Breaktrhoughシリーズ」としてイノベーション、現場力、リーダーシップ等、多くのコースを立ちあげる。現在はオンラインでの異業種交流研修も企画運営中。


積極性のある組織への転換へと導いた、丸井グループの「手挙げ文化」

本講演を開催したコンサルティングアソシエイツは、主に三つの事業を展開している。人材育成事業(社員研修、アクションラーニング)、異業種交流研修事業、SDGs経営支援事業だ。丸井グループも参加する、同社の異業種交流研修事業の特徴には、「優良企業や多様な業界とのマッチング」「企画費用・マッチング費用をすべて無料での実施」「オリジナルコンテンツとノウハウによる異業種交流の実施」「高い受講後の満足度・学習度」「人事担当・人材育成担当の情報交換会、勉強会の開催」などがある。

2014年からスタートした異業種交流研修事業は、順調に参画企業を増やし、2021年には「リーダーシップ探索ワークショップ」「人間力探索みらい塾」「Team Gemba(現場) Workshop(現場の中堅リーダー限定コース)」「R&Dイノベーションワークショップ」「地域課題解決 I-CAMP(アイキャンプ)」「みらいデザインワークショップ」といった6コースを開催する予定。丸井グループも参画する「人間力探索みらい塾」では、ありたいリーダー像の探索を目的に、三つのステップごとに外部の識者を招いて講演を開いて対話し、その合間で個別のプロジェクト活動を行っている。

講演ではまず、丸井グループ人事部の伊藤氏が登壇。丸井グループの手挙げ文化醸成について語った。

「丸井グループの中核となる考え方は、共創経営です。その基本にあるのが『信用は私たちがお客さまに与えるものではなく、お客さまと共に創るもの』という創業者・青井忠治の言葉。近年はその考えを、お客さま・お取引先さま・社員・将来世代・地域と社会・株主と投資家といった、6つのステークホルダーに広げています」

次に語ったのは、丸井グループの人材戦略だ。米国では1990年代半ばに無形投資が有形投資を上回り、英国やスウェーデン、フィンランドなどでも逆転が起きた。同社も有形投資から無形投資への長期的シフトを図っており、2019年3月期に無形投資が有形投資を上回っている。

「無形投資の内訳は、新規事業開発や人材・研究開発、ソフトウェアへの投資であり、2020年3月期には5年前の7.6倍に拡大。額は有形投資の約2倍となっています。人材・研究開発費は5年間で継続的に拡大し、2020年3月期で32億円。売上収益に占める割合も1.3%と1%を超えました。同時に、IT人材の育成や投資先ベンチャー企業への出向、次世代経営者育成プログラムなどの人材投資を強化。投資効果では、社員一人当たりの営業収益は2020年3月期で802万円と、5年前の1.7倍となっています」

丸井グループが企業文化の変革に踏み切ることになった背景は何だったのか。同社は貸金業法改正やリーマンショックにより赤字決算を余儀なくされ、事業戦略の見直しを迫られた。このタイミングが人材に対して積極的な投資を行い、企業文化の変革に着手する転換点となった。

「現在の代表取締役である青井が、事業戦略を変革するには、まず企業文化の変革が先決と考え、10年という長い時間をかけて企業文化の変革を行ってきました。その企業文化の醸成において、注力したのが手挙げの文化と対話の文化です」

手挙げの目的は、社員一人ひとりの自主性を促すことで自律的な組織をつくることにある。結果としてイノベーションを創出できる企業になることを目指した。では、手挙げ推進のきっかけとなったことは何だったのか。

「15年前の中計推進会議です。この会議は全社から管理職が一堂に会するものだったのですが、残念ながら居眠りをする人がいました。なぜそうなるのか。強制的に参加させられているからではないか。そこで中計推進会議を管理職だけに限るのではなく、社内で参加したい人を募る手挙げ方式に変えました。すると、意欲高い人が自ずと集まることで当然居眠りもなくなり、会議の雰囲気も変わっていったのです」

講演写真

手挙げ方式にしたことで、参加者もジェンダーや年代の幅が広がり、多様性に富んだ会議となった。質疑応答も年代や役職関係なく活発に行われ、参加態度も皆が真剣に臨む場となった。現在では丸井グループにおける学び、昇進試験などすべての取り組みを手挙げ制で行っている。

「グループ公認プロジェクト・委員会、外部ビジネススクールへの派遣、次世代経営者育成プログラムなどもすべて手挙げ方式です。当社では新入社員と2、3年目研修以外には階層研修はありません。手を挙げて自ら学びたい、成長したいと言った社員への投資は惜しまず行っており、現在までに全体の約8割の社員が何かしら手挙げを経験しています。コンサルティングアソシエイツ様の異業種研修も2019年から参加し、すべて手挙げで行っています」

手挙げに加え、対話の文化も大きく変革してきた。これまでの上意下達といった一方通行ではなく、双方向での2WAYコミュニケーションの対話を徹底している。

「対話のルールを共通認識として持つことで、日常においてもコミュニケーションが活発になりました。ルールの内容は、『安全な場宣言から始める』『特に目的を定めない』『結論を求めない』『傾聴する』『人の発言を受けて発言する』『人の意見を否定しない』『間隔を置いて熟成させる』といったものです」

こうした企業文化の変革は途上にあり、人材の投資および育成の道はまだまだ続く。

「強制ではなく、自主的。やらされ感ではなく、楽しく。上意下達のマネジメントではなく、支援するマネジメント。業績の向上ではなく、価値の創造。こうした企業文化の変革はまだ実現の途上にあります。人材への投資を行い、人材育成を行うと同時にこうした企業文化を育むことが重要だと考えています」

個人が好奇心を持ち、自主的に動くことが、すべての起点になる

ここからは、丸井グループの原田氏が加わり、参加者からの質問に答える形式でディスカッションが行われた。

大竹:まずは「中計推進会議は、対象の役職制限もないとのことですが、すべて手挙げで本当に運営ができるのですか」という質問が来ています。

伊藤:中計推進会議は年に10回ほど開催されますが、運営は全く問題ありません。むしろ若手や新入社員の手挙げの熱量が高いくらいで、年齢も部署も関係なく、多くの人が参加しています。人数が多いときは、参加したいという思いをレポートにして提出してもらっています。名前を伏せた形で読み込み、事務局が選考。現在はオンライン開催なので、多くの人が参加できています。

講演写真

原田:添削する側も若手から管理職までいろいろな立場の人がいて、多面的に選考しています。合格者は全体での役職の人数比率に合わせているので、そこでの競争率は平等です。レポートは自分で一生懸命書いて選ばれるとうれしいので、どう書けば熱量が伝わるかと皆が工夫しながら書いています。レポート選考が始まった当初は、店長クラスの人がレポートをさらりと短く書いて落選し、若手がしっかり書いて選ばれるということもあり、「どう書いたらいいか」と若手に聞いていた例もありました。

大竹:なるほど。一方で、中計推進会議が手挙げ参加になると、情報が入る人と入らない人に分かれることも懸念されそうですが、どのようにフォローされたのでしょうか。

原田:会議が終わったあとに、参加者でランダムに班をつくり、必ず振り返りの時間を設けています。そこでは「持ち帰って伝えたほうがいいこと」を確認したり、部署に帰ってどのようにメンバーに伝えるかを話したりしています。また、会議の動画は開催後に社内のイントラネットで公開しており、全社員がみることができます。

大竹:多くの企業では今、ミドル層におけるマネジメントで苦しむ状況があります。こうして会議に参加した方が、その内容を自分の言葉でかみ砕いて職場のメンバーにも伝えていくと、トップや個々の社員の思いを皆で共有できますから、そこに一体感が生まれる感じがありますね。

原田:以前の丸井は上意下達の会社でしたが、今はいろいろな角度から情報が入ってくるので、情報理解のスピードや深さが違ってきたと感じます。

大竹:次に「手挙げ文化の最終的な目的について教えてください」という質問がきています。

伊藤:イノベーションを起こす企業になることです。イノベーションの手法はどの企業でも研究されていますが、まずは自分が好奇心を持って、自主的に動くことがすべての起点になるのではないかと思います。社員の自主性を促すことで自律的な組織が生まれ、そこからイノベーションが頻繁に起こる企業になっていきたいと思います。

大竹:確かに、丸井グループはイノベーションに積極的な印象があり、SDGsへの取り組みにも力を入れていて、事業面でも大変先進的な企業だと感じます。こうしたところでも、トップの決定だけではなく、現場発で物事が動いていくことがあるのでしょうか。

伊藤:イノベーションを創出するうえで、当社にも新規事業プロジェクトがありますが、そこでも立ち上げメンバーを手挙げで募り、レポートも書いてもらって選考しています。新規事業への思いがあれば、誰でもが参加できます。例を挙げると、地球温暖化の解決に向けたプロジェクトがあります。酪農で牛を育てると、牛のげっぷで多くのメタンガスが排出され地球温暖化に影響を与えています。今まで通り、肉を消費する生活を続けるのではなく、食肉に頼らない食生活を世の中に広げ、地球温暖化といった社会課題解決に挑むといったプロジェクトに取り組んでいます。

手挙げを制度化する以上、手挙げをしない人は否定しない

大竹:一方で、そうはいってもなかなか手を挙げない人も、実際にはいるのではないでしょうか。人事として、現場の上司として、どのように対応しているのでしょうか。

伊藤:そもそも、「手を挙げることが目的」ではなく、「自分自身の成長の為にチャレンジする」といった前提に立っていますが、手挙げをしていない人がいるのも事実です。しかし、そこには社員それぞれ何らかの理由があるという前提で考えています。手挙げの文化があるからといって、手挙げをしない人を否定しないことが重要です。育成担当として、社員一人ひとりの理由に向き合い、一歩を踏み出しやすくするためのサポートや場づくりを行っています。

大竹:視聴者から「中計推進会議などのイベントも魅力を感じてもらえないと手挙げしてもらえないと思いますが、魅力の発信のための活動は行われていますか」という質問が来ています。

講演写真

原田:社内では二つの活動があります。一つ目は、中計推進会議などに出席したメンバーが部署に戻って、自発的に参加を周囲に勧めていることです。参加者が増えた大きな要因はこれではないかと思います。人事から参加を勧めるとどうしてもオフィシャルな感じになってしまう。しかし、参加者は自ら楽しもう、成果につなげよう、何かを持って帰ろうという意識で参加していますので、その後、自然とクチコミをしてくれるのです。手挙げの風土の定着につながったのも、クチコミの影響が大きいのではないかと思います。もう一つの活動は情報発信です。グループ内のネット環境で、参加の楽しさを伝える活動を行っています。

大竹:丸井グループは当社が開催する異業種研修にも参加いただいていますが、こちらでも参加した人のクチコミが聞かれているのでしょうか。

伊藤:昨年度参加させていただいた「みらい塾」というワークショップは、会社として初参加でしたが、この1期生が会社に戻り、自ら情報発信をしてくれています。2期生を募集する際には、1期生が自らオンラインイベントを開き、みらい塾での学びがどう自分の成長につながり、どう仕事に役立ったかなどを語ってくれました。1期生が非常に熱量高く内容を伝えてくれたことで、2期生も熱量の高い人が集まっています。

大竹:最後に「手挙げは評価に関わるのか」という質問がきています。いかがでしょうか。

伊藤:当社は個人の昇降格に関してバリュー評価を行い、個人の成長度合いを確認しています。その項目に「組織を超えて学ぶ」「社外で学んだこと積極的に活かしている」といった項目があります。「手挙げした回数」ではなく、チャレンジした結果、「どんな成長をしたか」を大切にしています。

大竹:原田さま、伊藤さま、本日はどうもありがとうございました。

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