これからの企業成長に欠かせない『EVP』発想による取り組みとは?
- 上山 毅氏(株式会社JTB ビジネスソリューション事業本部 事業推進チーム 事業推進担当部長)
EVP(Employee Value Proposition)とは、企業が従業員に対して提供する価値であり、従業員が実感できる、その企業で働く価値のことだ。「EVPが充実する企業の従業員はイキイキとしている」と言われ、いま企業には、EVPをいかにバランスよく、的確に提供できるかが問われている。「感動」をキーワードに、新たにEVPソリューション事業に進出したJTBが、EVP発想による企業支援について語った。
(うえやま たけし)(株)日本交通公社(現JTB)に入社。海外旅行を中心に、法人の様々な課題を解決するツアー・イベント等を企画。その後、グループの福利厚生会社、JTBベネフィットで17年勤務、営業企画~取締役企画開発本部長等を経て、現職。JTBグループのHRソリューション全体のマーケティング・販売促進等を担当。
企業と従業員の間に新たな絆をつくり出すEVP
JTBでは2020年、新たに人事・総務向けのEVPソリューションの提供を開始した。近年、労働力の流動性が高まり、労働人口が減少する中で、優秀な人材を採用・定着させるには「EVP」発想による、従業員への価値提案によるエンゲージメントの醸成が必須と言われる。EVP(Employee Value Proposition)とは、企業が従業員に対して提供する価値であり、従業員が実感できる、その企業で働く価値のことだ。
JTBが提供するEVPソリューションは、従業員や組織の真の課題を見つけ出し、持続的な企業成長に導くためにEVPを高め、企業の持続的な成長に貢献することを目的としている。EVPソリューションでは、課題を可視化する「サーベイ分析機能」、課題抽出・施策提案・効果検証を行う「コンサルティング機能」、課題解決策としてJTBが培ってきた法人顧客とその従業員の関係性強化に資するサービス群を提供する「施策提供機能」を一連のサイクルとして提供する。上山氏はまず、今EVPが求められる背景について語った。
「日本ではまだ聞きなれないEVP(Employee Value Proposition)ですが、欧米ではすでにポピュラーな言葉として定着しています。企業が従業員に対して提供する価値のことであり、会社ビジョン、キャリア、報酬、風土・文化、職場環境、手当・制度など、企業が従業員に提供するほぼすべてのものを含みます。EVPが充実している企業の従業員はイキイキとしていると言われており、これらをいかにバランスよく、的確に提供できるかが企業に問われています」
EVPがなぜ今求められているのか。企業を取り巻く環境が大きく変わる中で、優秀な人材を獲得するために、企業ではエンゲージメントの醸成が求められている。そこで注目されるキーワードがEVPだ。
「企業で働く人材の中には、現状に満足して“まったり”している社員や、やらされ感でワーカホリズムになっている社員もいます。そうした状況を変えるには、企業が従業員の間に新たな絆、ワークエンゲージメントをつくり出す必要がある。その施策としてEVPが重視されているのです」
上山氏は「旅行会社のJTBがなぜEVPなのかとよく聞かれる」と語る。なぜJTBがEVPを推奨するのか。同社のブランドスローガンは「感動のそばに、いつも。」であり、この感動を重視する視点がEVPにつながると語る。
「このスローガンは従業員に深く浸透しています。まさに感動というキーワードが従業員の皆様のエンゲージメントを高め、EVPを高めることにつながる。そこで、感動をキーワードに皆さまのお手伝いをしていきたいと、この事業を立ち上げました」
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