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HRカンファレンストップ >  日本の人事部「HRカンファレンス2020-春-」講演レポート・動画 >  特別講演 [G-4] もう他人事ではない 外国人人材をマネジメントする前に知っておきた…

もう他人事ではない 外国人材をマネジメントする前に知っておきたいこと

  • 田中 美和氏(株式会社エー・トゥー・ゼット 法人研修事業部 人材紹介・グローバル人材育成担当)
  • James Curtis氏(株式会社エー・トゥー・ゼット 法人研修事業部 研修講師/プログラム開発担当)
東京特別講演 [G-4]2020.07.03 掲載
株式会社エー・トゥー・ゼット講演写真

生産年齢人口が減少するとともに、多様な働き方を選択する人々が増加しつつある現在の日本社会。競争力・生産性を維持するために、単純労働力ではない外国人材の雇用が避けられない状況となっている。しかし、外国人マネジメントに必要なスキルセットを学ぶ機会をリーダー層に対して提供している企業は多くはない。本セッションでは、外国人マネジメントによるストレスで貴重な戦力を失わないため、企業と人事としてできる対策や取り組むべき施策が紹介された。

プロフィール
田中 美和氏( 株式会社エー・トゥー・ゼット 法人研修事業部 人材紹介・グローバル人材育成担当)
田中 美和 プロフィール写真

(たなか みわ)2011年入社。外国人採用を担当。2017年、外国人材/バイリンガル人材向け人材紹介サービスを立ち上げ。以来、外国人材の就職支援、企業における外国人材定着支援に従事。


James Curtis氏( 株式会社エー・トゥー・ゼット 法人研修事業部 研修講師/プログラム開発担当)
James Curtis プロフィール写真

(ジェイムズ カーティス)2011年入社。7年間外国人指導助手として英語指導を行う。2018年よりトレーナーとして日本人教師および外国人講師の研修および外国人講師採用を担当。企業におけるエグゼクティブ向け語学研修、グローバルビジネスコミュニケーションセミナー等各種研修講師およびプログラム開発に従事。


外国人雇用が不可欠の時代。その現状とは

エー・トゥー・ゼットは、主に外国語学校の運営やALT(外国語指導助手)派遣、法人向け研修、グローバル人材紹介などを手掛けている。従業員数は130名で、このうち80名が外国人というグローバルな職場環境だ。そんな同社が力を入れているのが、外国人材を雇用する日本企業のリーダー層を支援する取り組みだ。

田中氏は冒頭、本セッションにおける二つのポイントを紹介した。一つは、これからの日本は外国人雇用が避けられないこと。もう一つは、外国人マネジメントにおいて、リーダー層を守るための支援が大切であることだ。「当社ではソフト・ハード両面で支援策を講じ、外国人材、日本人材双方の定着を図っていきたい」と付け加えた。

実際、外国人材の雇用環境は今どうなっていて、どのような影響を企業にもたらしているのであろうか。

講演写真

「日本の生産年齢人口は年々低下しており、さまざまな業種で外国人労働者数が増加しています。これによって、異文化・多様性への理解の向上が進んでいるほか、日本人社員のモチベーションも高まってきているなど良い影響が見られます。では、外国人を部下に持つことになった上司は、どのように感じているのでしょうか」

ここで田中氏は、聴講者に対して、「外国人材を受け入れるにあたって、特別な取り組みを行っているか」というアンケートを行った。結果を見ると、外国人材に対する日本語研修が多く、日本文化に関する研修や社内書類の多言語化なども目立ったが、取り組みを行っていない企業も41%あった。

講演写真

田中氏はパーソル総合研究所による「外国人部下を持つ日本人上司の意識・実態調査」の結果も紹介した。それによると、外国人部下に対するマネジメントについて、日本人上司の三人に一人が「ノウハウがなく、手探り状態である」と回答。さらに17.2%ができればすぐにでも辞めたいと回答しているという。

「こうした回答の背景には、『自己主張が強い』『常識が通じない』などといった、外国人部下に対する想定外のギャップがあります。そのギャップは、個人と組織、役割・責任、コミュニケーションに大別できます」

国・地域で異なるマネジメントスタイルを理解することの大切さ

なぜギャップが生じてしまうのか。その原因を田中氏は、海外の著名なビジネススクール「INSEAD」のErin Meyer教授のカルチャー・マップに基づいて説明した。示されたのは、コミュニケーションや評価、リード(権力者への対応)、決断、信頼、見解の相違、スケジューリング、説得などの観点から見て、日本をはじめとする世界の主要国がどのような特性を持っているのかがわかるマップだ。

講演写真

「日本の傾向を見てみると、ハイコンテクストで間接的なネガティブ・フィードバック、階層主義、合意志向、関係重視、対立回避、一度決めた予定を変更することを嫌う直線型の時間、全体を意識した包括的な思考を好む傾向にあります。当然ながら、これらは国によって変わってくるので、それに合わせたマネジメントスタイルを採っていく必要があります」

このマップを前提に、職場における日本人上司と外国人部下とのさまざまな行き違いが描かれた動画を上映。その後、田中氏とCurtis氏は以下の四つの指標から解説を進めた。

(1)コミュニケーション

指示は具体的に出すこと。その際に目的や期限を明確に伝える。進捗確認でも何を改善すべきかを具体的に伝える。

Curtis:何をしてほしいのかを明確に言ってもらわないと、どう行動したら良いのかわかりません。米国では個人主義が発達しており、はっきりとシンプルに言わなければならない文化です。

田中:ハイコンテクストとローコンテクストとの国よりも、ハイコンテクストの国同士が誤解を生みやすい。その原因は、お互いの背景にある文化が異なっていて、異なる前提の上で曖昧な伝え方をするからです。察してくれると考えず、お互いの理解を得るコミュニケーションを心がける必要があります。

(2)評価

部下が育った文化により、ネガティブ・フィードバックの方法が異なる。もし、ネガティブ・フィードバックがあっても、それは個人攻撃ではないので、相手への尊敬を怠るべきではない。

Curtis:上司はもっと早く指示をすべきです。私も当初は、ネガティブ・フィードバックをもらうことがなかったので、自分のやり方で良いのか不安でした。定期的に褒め言葉も交えて言ってくれれば、成長につながります。できていない点があれば、「もう少しこうやれば良い」とか、「これからどうあるべきか」といったアドバイスもあると助かります。

田中:日本人だけの組織だと部下に直接指摘されることは少ないだけに、この部分で外国人材は主張が強いと思われがちです。ただ、前向きな指摘であれば個人を決して責め立てているわけではありません。リスペクトを常に心がけることが重要です。

(3)信頼

部下であるからと言って、上司に絶対従うものではないことを理解する。外国人はタスク重視型なので、上司として信頼されるかどうかは、あくまでも仕事で決まる。

Curtis:タスク重視の国では、関係を良くするのは仕事そのもの。部下に依頼したかったことを代わりに自分でやったとしても、問題の本質は何も解決されないので関係が悪くなってしまいます。

田中:仕事上の関係の作り方でも、日本と差があることを認識する必要があります。

(4)見解の相違

察する文化は世界共通ではない。だからこそ、建設的な話し合いをすることは健全である。

Curtis:日本人は対立を避けがちなので、反論したいことがあっても発言しなかったりします。対立をしたからといって、相手を決して嫌いだと言うわけではないことを知ってもらいたいです。

田中:議論をし合うトレーニングが必要になってきます。

ここで、田中氏は外国人材に対する日本人上司には二つのタイプがあると解説した。一つが、あれもこれもと指示してしまうマイクロマネジメント・タイプだ。これには、Curtis氏は「ゴールがわかれば動けます。細かいところまでマネジメントされたくありません」と語る。田中氏も「ゴールがわからないまま、指示ばかりということもあるのでは」とマイクロマネジメント・タイプに否定的な見解を示した。
もう一つが、いい人ではあるものの、部下に迎合してばかりで上司として信頼されないタイプ。現状はこのいずれかに、両極化しているという。

それではどのような上司が外国人材にとって良いリーダーとなるのであろうか。この点について、両氏は以下のような意見を述べた。

Curtis:プロジェクトのゴールと役割を明確に伝えてくれた上で、成長できる機会と環境を与えてくれるリーダーです。機会とは意味のある仕事を与え、刺激をもたらしてくれること。環境とはワークライフバランスへの配慮を指します。また、常にポジティブであるとともに透明性があることも大事です。透明性というのは、英語だとオネスティとオープンという表現になります。

田中:細かくマネジメントするのではなく、聞く姿勢を持ってリードしていく姿勢が重要です。

外国人材のマネジメントに向けて人事は何ができるか

それでは、日本人とはタイプの異なる外国人材と協働していくために、人事として何ができるだろうか。それを解き明かして行くにあたり、田中氏は聴講者に対して、「外国人材をマネジメントする日本人に対し、何らかの支援を行っていますか。それは、どのような支援ですか」と質問を投げかけた。結果が出たところで、田中氏はこう分析した。

「やはり、語学研修が多いようです。他にも、異文化ということでさまざまな取り組みを行われています。マネジャーに対してだけでなく、全体に向けてダイバーシティの研修を行っている企業もあるのは素晴らしいことです。その一方、『検討中である』『これから行う予定だ』という企業も少なくないことがわかります」

その上で田中氏は、「これまでの考え方では、外国人材に対する研修が叫ばれてきましたが、本当に必要なのは日本人のマインドを変えていくことです」と発言。日本人のマインドを変えるとは一体何を意味するのであろうか。田中氏は具体的に以下の三点を挙げた。

  1. 日本人の常識は常識ではない
  2. コミュニケーションや考え方の違いを知る
  3. 違いを受け入れ共存していく

これらを進める上で、不可欠となってくるのがソフトとハード両面での支援となる。ソフト面としては、リーダーに対してコミュニケーションの違いを理解させる研修が大切であり、ハード面としてはメンバーのトレーニングも含め、受け入れ部門の準備と定着や企業の成長につなげるための組織の準備が欠かせないと説明した。

講演写真

例えば、異文化理解のコミュニケーション研修であれば、外国人材の部下と日本人の上司が立場を代えてロールプレイングを行う。意識のギャップを埋める研修であれば、お互いに日常から感じていることを伝え合う試みも有効になってくる。田中氏は、こうした課題に対して同社が支援できる事柄を説明した。

最後に両氏は次のように語り、講演を締めくくった。

田中:日本人上司が外国人材をマネジメントするにあたり、人事は国や地域でマネジメントスタイルが異なることを学び、その違いを受け入れ、違いと共存していくマインドを身に付ける場を提供していくことが重要だと考えています。日本を選んで働いてくれる外国人に、「私たちの会社に入れば成長できるし、自国の文化も尊重される」というメッセージを人事から発することができるようになればと思っています。

さらに入社後もグローバルマインドセットを持ってともに働き、ともに成長できる環境を作っていくことが非常に重要なのではないでしょうか。貴重な人材を違いがあるということを知らないだけで失ってしまうのは損失です。お互いに尊重しながら成長していく場があることを、ロールモデルとして態度で人事が示していくのは、とても大切です。すべての根本は、コミュニケーション。開かれた職場であることを発信していってください。

Curtis:現在は外国人材が一人もいなくても、将来に備えてカルチャー・マップの意識を高めておくことはとても重要です。外国語ができなくても、外国人とうまくコミュニケーションすることはできます。一緒に意識を高め合っていきましょう。

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