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コーセーに学ぶ、人事制度の再構築のポイント~戦略人事の実現に向けて~

  • 山田 博之氏(株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース 執行役員)
  • 野本 真智子氏(株式会社コーセー 人事部人材開発室)
東京特別講演 [A-5]2020.07.03 掲載
株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース講演写真

戦略人事が求められる時代に、人事はどのように人の能力を引き出し、会社全体の組織力を高めればいいのか。教育研修やコンサルティングを通じ、戦略が実行できる組織づくり・人材開発を支援するフィールドマネージメント・ヒューマンリソースの執行役員・山田博之氏が、化粧品の製造販売で知られるコーセーの人事部人材開発室・野本真智子氏を迎え、人事制度改定への取り組みのポイントを探った。

プロフィール
山田 博之氏( 株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース 執行役員)
山田 博之 プロフィール写真

(やまだ ひろゆき)国内系経営コンサルティング会社にて、人事領域を主とした経営支援に従事。経営・人事改革や次世代幹部育成などの大型プロジェクトを多数実行。その後、事業会社の人事企画担当などを経て現職。理想論だけではなく運用面にも重きをおいたシンプルでわかりやすい人事制度構築を強みとし、50社以上の実績を有す。


野本 真智子氏( 株式会社コーセー 人事部人材開発室)
野本 真智子 プロフィール写真

(のもと まちこ)02年(株)コーセー入社後、営業経験を経てコーセー化粧品販売(株)営業推進部で7年従事した後、(株)コーセーにて営業やビューティコンサルタント(BC)のモチベーションUP施策、人材育成、採用等幅広く活動し、現在人事7年目。厚生労働省認定のBC社内検定制度を確立。昨年は同社のBCの人事制度改定を主導。


人事部機能における進化の3ステップとは何か

フィールドマネージメント・ヒューマンリソースは、事業系・戦略系・組織人事系のコンサルティングを幅広く手がけるグループ会社の中でも、人事組織領域をメインに研修、各種サービスを提供している。運用面を重視したシンプルでわかりやすい人事制度構築を強みに、50社以上の実績を持つ山田氏は、始めに、機能面から捉えた人事部の三つのステップを語った。

「人事部を進化の順にたどると、最初のステップは“労務管理型人事”です。事業のサポート役であり、主な仕事は就業規則、規定整備、入退社や勤怠といった就労状況の管理、賃金の支払い。人事として最低限やるべき項目です。

会社がある程度の規模になると次のステップである“社員支援型人事”になります。労務管理型人事の仕事だけでなく、マネジメント支援、階層教育、採用施策といった人材力を強化する仕事が加わります。働きやすい職場環境づくりの主導役ともいえます。

最後のステップが“経営参謀型人事”。まさに今求められている人事の姿です。人材力強化だけではなく、場合によっては戦略をけん引する役割も担います。戦略づくりのできる人材の配置に取り組み、経営や事業に対しても支援や助言を行います。幹部人材の戦略的・能動的な育成も行います」

そして最後のステップ “経営参謀型人事”に関する具体的な事例へと話は進められた。

コーセーが取り組んだ「人というリソースと接客品質の向上」

昨年から、フィールドマネージメント・ヒューマンリソースのサポートを受けつつ、人事制度の改定プロジェクトに挑んだのがコーセーである。コーセーは、創業以来約70年以上にわたり、化粧品を中心とする美の創造企業として、多様なブランドと商品価値を提供している。中長期事業計画達成に向けグローバル化を加速させている中、同社の野本氏は、社員のモチベーションアップ施策、人材育成、採用などを担当しており、プロジェクトの中心人物にあたる。

「このプロジェクトは、中長期事業計画の基盤を作るフェーズ1の中で、大きく二つの人事課題に直面しました。まずは、人というリソースをどう活用していくかという課題。多様な視点を持ってグローバル領域で成果を出し、活躍できるような人をどう活用するか。中でも、常に店頭でお客さまとの接する機会を持つ美容スタッフの活躍領域を広げていくことが、よりグローバルシフトを促すと考えました」

もう一つの課題は、美容スタッフの接客品質の向上だ。これまでの接客に満足せず、「新しい価値をどうお客さまに提供していくか」「どんな感動体験をしていただけるか」と追求することが接客品質の向上につながり、お客さまへのさらなる信頼に結びつくと考えている。ネット販売が拡大している状況ながらも、化粧品を買うという「行為」だけでなく、店頭で自分の肌に合ったスキンケアやメイクのアドバイスを美容スタッフから受けるという「コミュニケーション」の機会の価値は大きいと位置付けている。「店頭での接点は今後さらに重要度を増すのではないか」と野本氏は予想する。

講演写真

課題の解決策は「美容スタッフの新名称づくりと活動領域の明確化」

コーセーではこれら二つの課題の解決策として、美容スタッフの活躍領域を広げることと、接客品質向上のための能力開発に着手した。

「プロジェクト前までは、美容スタッフの活躍領域は限られていたといえます。基本的には美容スタッフは販売職とされており、入社時に採用された領域でその仕事を継続するというキャリアプランしかなかったのです」

「美容スタッフ」の名称を「ビューティコンサルタント」に改めたのは、今回のプロジェクトの一つの象徴になっていると、野本氏はいう。これまでの美容スタッフには、「販売をする仕事」という色がどうしても強く出てしまっていたため、その意識をほぐして仕事内容を考え直す良いきっかけにもなったと振り返る。

「“美容スタッフとは何か”ときちんと定義づけるところから始めましたが、“ビューティコンサルタント”という新しい名称にはこだわりました。海外のお客さまにとって“美容スタッフ”という名称はわかりにくく、認知してもらえない。そこでグローバルでも通じる職業価値を表した名称にしたいと、議論を重ねました。そのかいもあって、新名称は社内ですっかり定着しています。

ビューティコンサルタントの定義は、“お客さまを彩り輝かせる、輝いている人”。単に化粧品を売るだけではなく、それをきっかけにお客さまの人生を彩っていく仕事ですから、化粧品の素晴らしさを感じていただくには、提供する側もキラキラ輝いていたいという思いが込められています。今の世代の人材採用の場でも響く言葉になっていると思います」

役割や職責が経年によって曖昧になっていた面もあり、それらを明確にする等級制度も設けた。販売職から営業職や美容商品の開発などへと、経験がさまざまに生かされる広い活躍領域が用意されていることを明示。「販売職だから」と異動を諦めてしまっていた人のチャレンジ精神を後押しする仕組みが整えられた。既に数十名の手が挙がり、営業職も何名か誕生している。

ここで山田氏がコーセーのプロジェクトについて解説した。

「コーセーさんは今回、報酬制度も、個々のスキルが反映される形に変えられましたが、さらに、接客やメイクの技術を競う恒例のコンテストを、表彰だけに終わらせず、報酬の評価にも加えようとされています。これは確実にモチベーションアップにつながっていくと思います。その一方で、等級定義の中で“どんなことをしてほしい”という行動評価を明確にされたことも重要な点です」

講演写真

自分の職責を意識して行動することは個々のステップアップを促す、と山田氏はいう。また、行動の評価者には、店頭で活動する姿を間近に見ている先輩や教育担当者が加わることとし、より納得性の高い評価制度が設計された。事前に、フィールドマネージメント・ヒューマンリソースが作成した動画を用いた評価者研修も実施し、評価者たちが同じ指標で評価できるような準備の場とした。今後は、評価者を対象とする360度フィードバックを取り入れ、評価のブレや偏りが解消されるよう評価者自身を成長させることを目指している。

ここで野本氏は、制度改定において苦労した点として三つのキーワードを挙げた。一つ目は、「戦略的人事制度策定のかじ取り」だ。実行にあたっては多くの壁があったが、重要なキーパーソン、各拠点の支店長とじっくり話をして賛同を得ながら一歩一歩進めていくという心がけが、壁を乗り越えるポイントになったという。二つ目は“ビューティコンサルタント・マネジメント側の意識改革”だ。

「ビューティコンサルタントたち本人が、成長への意欲を持つよう促すことは言うまでもありませんが、売上面で主に評価してきたマネジメント側の視点を変えることも重要です。中長期事業計画に沿ったビューティコンサルタントの役割や育成プランをしっかり提示することで、役員たちからも協力的なアドバイスやコメントが得られるようになりました。支店長たちには直接会いに行って現場の声をうかがい、意見交換を何度も行いました」

三つ目のキーワードは「決め!」だ。これは打ち合わせ時に何度となく山田氏の口から発せられていた「最後は決めですよ」という言葉が印象的だったという。会議の場ではさまざまな意見が行き交い、迷い悩むケースは少なくないが、思い切って決断する大切さを痛感した、と野本氏は明かす。これについて山田氏が解説を加えた。

「野本さんたちプロジェクトメンバーは、単に決断したのではなく、常に現場に足を運んだり経営層に伝えたりといった、きめ細やかな動きをされていました。だからこそ、自信を持った決断が下せたのだと思います」

ここで野本氏は、コーセーの今後の人事課題を三つ挙げた。

「一つ目は、“制度浸透・風土醸成”です。制度をビューティコンサルタントにきちんと理解してもらい、浸透させ、制度の元で自らを磨いていくような風土を醸成する。それを成果創出にもつなげていきたいと考えています。

二つ目は“ビューティコンサルタントの職業価値向上の可能性”。これからはお客さまへの対面レッスンというコーセーの強みを伸ばして、あまり意識されてこなかった接客の価値をお客さまに気づいていただくことが大事になります。伸び代は、まだまだあると感じています。

三つ目は“臨場感とスピード感”です。人件費を制度改定の中でうまくコントロールし、さまざまなデジタルツールを駆使してスピーディに次の施策に取り組み、ブラッシュアップしていく。今の時代はスピード感がないとすぐに陳腐化してしまいます」

プロジェクトを成功に導く「マネジメント側の意識改革とスピード感」

講演写真

最後に野本氏、山田氏がまとめの言葉を述べて、講演は終了した。

「企業は常に環境変化に直面しますから、制度改定に百点満点ということはありえません。常に大切にすべきなのは、人材像や理想像を忘れずに意識し続けること。するとぶれずに物事を進めていける、と今回のプロジェクトで実感しました」(野本氏)

「コーセーさんの事例が示すように、戦略人事として取り組みたいポイントは大きくは2点あります。一つ目は、新たな人材確保が困難な中、既存の人材をどう最大化して活用するか。活用しきれていない人材の活用の新たな仕組み化が必要です。二つ目は、人材像の明確化です。昔、設定したものでそのままよしとせず、戦略に基づいた人材像を見直していく。かつ、それを実現するための評価や報酬を有機的につなげていくという一貫した戦略が求められています」(山田氏)

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