360度評価結果から見るパワーハラスメントの傾向と改善に向けた措置
- 深井 幹雄氏(株式会社シーベース 代表取締役社長)
職場におけるパワーハラスメントが増えるなか、改正労働施策総合推進法(通称 パワハラ防止法)が2020年6月から施行された。これにより、パワハラ防止に向けて雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務と位置づけられたが、社員の行動改善が最も本質的な改善策であるのは自明だ。本講演では、年間5万人を超える管理職に360度フィードバックを提供する株式会社シーベースの深井幹雄氏が、これまでに培ってきた実績や知見を基に、パワハラが起きるメカニズムや有効な予防施策について論じた。
(ふかい よしお)1995年エン・ジャパン株式会社入社。新卒サイト、派遣サイト、エージェントサイトの事業部長を経て、2017年株式会社シーベースの代表取締役社長に就任。
2020年6月、パワハラ防止法案が施行。対策は十分にできているか
株式会社シーベースは「すべての人と組織に、気づき、学び、成長を」をスローガンとして、各種HRサーベイクラウドサービスを提供している。ソリューションのテーマは、エンゲージメントやハラスメント対策、人材育成など。提供実績は実に1000社以上で、メーカー、商社、流通・小売など業界も幅広い。
代表取締役社長を務める深井氏は、最初に講演のゴールを提示した。
「パワハラがなぜなくならないのか、そのメカニズムを理解すること。そして、360度フィードバックを活用した予防施策を理解することが今日のゴールです。そのために、八つのポイントを抑えていきます」
ポイント1は、「2020年6月1日施行! パワハラ防止法案とは」。深井氏は、2020年6月1日に施行されたパワハラ防止法案とはどのような法律なのか、なぜ必要となったのかを解説した。取り上げたのは、ハラスメントの労働紛争の件数推移だ。これを見ると、いじめ・嫌がらせなどハラスメント関連の件数が右肩上がりで伸びているのが分かる。
- 事業主の方針などの明確化およびその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- (1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置
ここで深井氏は「自社のパワハラ対策は十分にできているか」というアンケートを聴講者に行った。結果を見ると、最も多かったのは「制度やルール、体制が整っており、運用まで回っている」で、4割近くを占めた。その後を「制度やルールはできているが、運用はできていない」「制度やルールも不十分」が続き、深井氏は「今回は運用を含めて考えていきたい」と語った。
そもそもパワハラとは、何を意味するのであろうか。深井氏は下記のようにと定義した。
- 優越的な関係を背景とした言動であって、
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
- 労働者の就業環境が害されるものであり、
- 1から3までの要素を全て満たすもの
「パワハラには6類型があります。(1)身体的な攻撃、(2)精神的な攻撃、(3)人間関係からの切り離し、(4)過大な要求、(5)過小な要求、(6)個の侵害。ただし、6類型がすべてではなく、さまざまな形があります」と深井氏は補足した。
ポイント2は、「あなたは大丈夫?! パワハラチェックをやってみよう!」。ここではパワハラが生まれるメカニズム、潜在的なリスクに着目。ここで深井氏は再度、聴講者にアンケートを実施した。診断テストにより、あてはまる ○ の個数を報告してもらったところ、「1~3個」が最も多く60%、「4~6個」が25%、「0個」が数名、「7個以上」が1名という結果になった。3個以上の方はパワハラを引き起こす可能性があると説明された。
[A-5]コーセーに学ぶ、人事制度の再構築のポイント~戦略人事の実現に向けて~
[A]部下の多様性をいかし、組織を牽引する、次世代管理職に必要なコミュニケーションとは
[B-5]データや事例から読み取る、大手企業における「強みをいかす人事業務変革」の潮流
[B]いま企業が実践すべき「組織開発」の最前線
[C-6]進化し続ける「戦略人事」〜人事が企業の成長エンジンになるためのWhatとHow
[SS-1]従業員の副業・兼業をいかに推進し、その効果を引き出すのか ――多様な働き方が人と企業を活性化する
[C]多様性の時代にこそ必要な「ビジョン」「経営理念」の共有 従業員が一丸となれば、組織は活性化し目標を具現化できる
[D-4]360度評価結果から見るパワーハラスメントの傾向と改善に向けた措置
[D-5]「育てる」をやめると若手社員が「育つ」 現場と若手をつなぐ働き方の哲学
[D]日本電気(NEC)のカルチャー変革の実際~2年にわたる取り組みの詳細とこれから~
[E]従業員の「エンゲージメント」向上は経営に何をもたらすのか
[F-1]企業は自律型人財を「育成」できるのか ~自律型人財に必要な力とは~
[F-5]若手のリーダーシップをどう開発するか
[SS-2]キャリアコンサルティングにより変化する人事の役割 新たな指針による、人事とキャリアコンサルタントとの協業促進の必要性
[F]逆境を乗り越えた経営者に聞く 事業を再成長させるための人と組織へのアプローチ
[G-4]もう他人事ではない 外国人材をマネジメントする前に知っておきたいこと
[G]人生100年時代の学び方
[SS-3]上司は部下と質の高い面談を行えているのか? 「互聴」によるコミュニケーションが面談の質を向上させる
[H]三井住友海上火災保険株式会社に学ぶ、上司による部下のキャリア支援の方策
[I-5]心理的安全性とハピネス:働き方改革を成功させる最も有効な方法
[I]ソフトバンク、ニトリホールディングスの事例から考える 激化する新卒採用競争を勝ち抜くための「採用力」
[J-5]6月施行のパワハラ防止法に向けて~見逃しがちなポイントの再整理と最新対応事例~
[J]「若手社員の戦力化」「経営人材の育成」が企業の未来を創る ビームスとウシオ電機の事例に学ぶ人材開発
[K-5]企業と働き手を守る休職者対応の実務と実際&テレワークでのメンタルヘルス予防対策
[K]これからの「働き方」と人事労務改革
[L-5]エンゲージメントを飛躍的に向上させ「人財で勝つ会社」へと突き進むAGCの取り組み
[SS-4]ベテラン・シニア人材を“戦略的”に活用する
[L]タレント・マネジメントの拡大と進化~ビジネスを支える人材マネジメントの将来像~
[OA]組織変革のリアル ~次世代リーダー育成を中心とした変革へのチャレンジ~
[OB]多様性の時代、異なる背景を持つ人たちで構成された組織が成果を出す方法とは? ――ビジョンの共有が強い組織をつくる
[OC]先が見通せない時代だからこそ求められる“未来への指針” 「ビジョン」を語れるリーダーを育成する方法とは
[OD]人事パーソンに必要な視点・心構えとは 何を学び、どんなキャリアを描いていけばいいのか
[TB]HRテクノロジーの活用で従業員の「幸福度」「働き方」はどう変化するのか
[TD]“組織変革を阻む3つの溝"を解消し、事業成長を加速させる心理的安全性の高め方
[TF]ニトリが実践! 人材開発の視点を取り入れ、HRテクノロジーを活用した組織開発とは