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人事もPDCAを回す時代へ
データ活用の問題点と解決策を明らかにし、戦略的人事を実現する

<協賛:株式会社アイ・シー・ティー>
  • 向坂 真弓氏(株式会社サイバーエージェント 人材科学センター)
  • 山崎 涼子氏(パーソルホールディングス株式会社 グループ人事本部 タレントマネジメント部 タレントマネジメント企画室 室長)
  • 大湾 秀雄氏(早稲田大学 政治経済学術院 教授)
東京パネルセッション [E]2018.12.25 掲載
株式会社アイ・シー・ティー講演写真

近年、企業におけるHRテクノロジーの活用が進んでいる。人事データを活用する動きも今後ますます広がっていくと思われるが、人事部門はこうした変化にどう向き合い、いかに対応していけばいいのだろうか。早稲田大学・大湾氏、サイバーエージェント・向坂氏、パーソルホールディングス・山崎氏が、人事データの活用のあり方についてディスカッションを行った。

プロフィール
向坂 真弓氏( 株式会社サイバーエージェント 人材科学センター)
向坂 真弓 プロフィール写真

(こうざか まゆみ)一橋大学社会学部卒業後、2003年にサイバーエージェントに新卒で入社。インターネット広告代理事業の営業、マーケティング、SEMコンサルを経験。人事データ分析を目的として設立された人材科学センターに2016年に参画。採用、適材適所、退職予防などを目的としたデータ分析をし、経営への提言を行っている。


山崎 涼子氏( パーソルホールディングス株式会社 グループ人事本部 タレントマネジメント部 タレントマネジメント企画室 室長)
山崎 涼子 プロフィール写真

(やまさき りょうこ)2008年にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒で入社。入社から現在まで、採用・教育・人事運用設計など、一貫して人事領域を担当。2015年4月に人事情報室を立ち上げ、人事におけるIT・データ活用に従事。より人事データを活用した人事戦略を推進するため2018年4月にタレントマネジメント企画室を新設し、パーソルグループ全体の人事戦略に従事、現在に至る。


大湾 秀雄氏( 早稲田大学 政治経済学術院 教授)
大湾 秀雄 プロフィール写真

(おおわん ひでお)コロンビア大学経済学修士。スタンフォード大学経営大学院博士。ワシントン大学オーリン経営大学院助教授、青山学院大学国際マネジメント研究科教授、東京大学社会科学研究所教授などを経て2018年から現職。(独)経済産業研究所ファカルティフェロー兼任。専門は人事経済学、組織経済学、および労働経済学。企業の人事制度や職場組織の設計と生産性やイノベーションへの影響などに関する理論および実証研究を行う。経営者や実務家に対し、経営課題の解決のための人事データの活用を指南する実践的な研究会「人事情報活用研究会」を主宰する。著書に『日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用』(2017年日本経済新聞出版社)。


大湾氏によるイントロダクション:いま、なぜ人事データの活用が求められているのか

最初に大湾氏が、いまなぜ人事データの活用が求められているのか、その要因を語った。

「需要サイドの要因は、『データ活用の意義』の増大。供給サイドとしては、『データのアベイラビリティー』と『データの取得コスト』の低下が挙げられます」

大湾氏は「データ活用の意義」が増大している理由を、四つ挙げた。第一に、勘や経験、度胸に頼る人事への疑問の高まり。第二は、女性の活躍推進、労働時間の削減などの法制面での要求。第三は、社員の多様化やグローバル化を背景とする人事機能の分権化の進行。そして第四が、エンプロイアビリティーを向上させる施策の高まりだ。

一方、ICT技術の進展に伴ってさまざまなツールが登場したことにより、『データの取得・保存コスト』が低下している。拍車をかけているのが、AIをはじめとする新技術の登場だ。これによって、データ活用の可能性は大きく開かれた。

「本日の二社はデータ活用にかなり早くから取り組まれています。これまでの知見を共有することで、データ活用を進める上での重要なヒントを理解できると思います」

山崎氏によるプレゼンテーション:HRアナリティクス実行のポイントとは?

続いて山崎氏が、パーソルホールディングスにおける人事データ活用の取り組みを紹介した。

「タレントマネジメント企画室のミッションは、グループ全体を俯瞰したタレントマネジメントの仕組みの構築と実行です。HRアナリティクスは、タレントの可視化を促進し、仕組みを高度化させ、取り組みを支えていくものと位置づけています」

タレントマネジメント企画室のなかには、人事課題の解決と人事の進化・経営貢献に活用できるデータ分析を目的とするHRアナリティクスチームが編成されている。さまざまな活動を行っているが、山崎氏が最も重視しているのがグループ会社とのプロジェクトワークだ。情報は現場にあるもので、フィールドワークに注力しているという。

「分析している内容は、可視化・深掘りするものと発掘・予測するものに大別されます。具体的にいうと、可視化・深掘りするものは『HRダッシュボード構築』『ES調査テキストマイニング』『管理職クラスタリング』『退職リスク分析』など。今後は、『中途採用者定着分析』も実施する予定です。一方、発掘・予測するものとしては『退職予測』を実施中で、今後は『内定辞退者予測』『異動ポジションレコメンド』『新卒面接官マッチング』などに取り組みたいと考えています」

可視化基盤構築の目的は、データ活用の高速化だ。データ更新を加速するBIツールを活用して、HRダッシュボードを構築。すべてのHR情報をチームとして閲覧できる権限を設定し、各種データの可視化を進めている。また、同社ではグループ内でのキャリアチェンジを可能とする公募制度も導入しているが、ポジションがあまりにも多すぎるため、利用がなかなか広がらないという課題があった。それを解決するために、職種・職務分析からレコメンド情報を社員に提示することで、ユーザビリティーやマッチング精度の向上につなげていくことを計画している。

山崎氏は最後に、HRアナリティクス実行のポイントについて語った。

「目的のない分析は、何も生み出しません。何を明らかにしたいのか、それは人事施策の検討や意思決定の支援につながるのかをじっくりと考えた上で、分析に取り組む必要があります。私は、分析することの背景や明らかにしたいこと、用いるデータ、活用イメージを整理した要件定義シートを作成し、すべての合意を得てからスタートするようにしています。これを始めてから、より現場で使える結果を出せるようになりました」

講演写真

向坂氏によるプレゼンテーション:データ活用において重要なのは、運用と風土・カルチャー作り

続いて、向坂氏がサイバーエージェントにおける人事のデータ活用について語った。

「人材科学センターで目指しているのは、経験や勘ではなく、ファクトで語れる人事を作ることです。人事から情報を提示することで、さまざまな意思決定のスピードと命中率を上げる取り組みを推進しています。体制としては、人材科学センターと人事システム室が連携しながら、採用、企業文化、適材適所、育成などに関するデータの整理や可視化を行っています」

人材科学センターの活動内容は以下の三点に集約される。一つ目は、主観データの継続的な回収。同社にはもともと、社員のやる気を大切にする企業風土がある。社員5000人の声としてGEPPO(月報)と題するアンケートを毎月一回行い、集まってきた情報を社内のヘッドハンターが目視して、何かコメントをつけている社員には返信するようにしている。二つ目は、データの見える化。GEPPOを通じて集まってきた社員の情報と人事が持つさまざまな情報を集約し、BIツールを活用してダッシュボードを作って、最新の情報を反映させるとともに加工の手間を最小化させている。

「まず必要なデータを集めて、それを可視化するのが理想的ですが、実際にはそれほど人事のデータが整っているわけではありません。そのため、当社ではデータ回収と見える化を並行で行っています」

そして三つ目が、最終的に経営の意思決定に生かすための分析だ。GEPPOから得た本人やチームのコンディションの変化値、主観データと客観データの掛け合わせ、回答傾向ごとのクラスタ分析を行っている。
最後に、向坂氏は自らが大事にしている視点を示した。

「データとテクノロジーは、あくまでも手段でしかありません。実はその裏の運用や風土作り、カルチャー作りがとても重要です。人事が社員からデータを回収し、それを一方的に見て裏で解析している状態を作っても、長続きはしません。社員がGEPPOに書いてくれるのも、会社がリアクションしてくれるという安心感が醸成されているからです」

講演写真

大湾氏によるプレゼンテーション:人財確保と育成のためのデータ活用

大湾氏は、研究者としての視点から見たデータ活用のポイントと問題点について語った。

「現在模索されている人事データの活用領域は、主に三つに分類されます。第一に、個人にひもづけした予測でどのような人が将来活躍するのか、辞める可能性が高いのかを分析すること。第二に、職場改善や人材育成、健康経営などにおけるデータを活用し、さまざまな改善領域を特定すること。第三に、今後実施する、あるいは過去に行った重要な人事制度・施策の効果を測定することです」

それらを前提として、大湾氏の研究会が進めているハイパフォーマー人材の分析事例が示された。どのような人がハイパフォーマーなのか、その傾向を理解することが大切だが、例えば職種や事業によって、有効なスキルは異なるので注意が必要だという。 
 
「一般的な傾向と職種ごとの特徴を理解し、採用や異動・配置を議論する際の基礎情報と位置づけると役に立ちます。ただし、ハイパフォーマー分析の結果を使って評価をしがちなので、むしろハイパフォーマーの属性と採用基準に関連性があるかどうかを考えるべきです。変えられるものであれば、入社後に研修などを通じて社員の行動を変えて行けばいいのです」

一例として、ビジネスサービス会社のプロジェクトリーダーの生産性計測を取り上げた後、良いプロジェクトリーダーの行動特性を分析した結果を紹介した。

「良いリーダーの行動特性は、計画性とフロントローディング、コミュニケーション、顧客に対する理解の四点です。これらはほとんどが改善していけるものなので、同じ行動を取れば会社の業績は格段に向上していくはずです。行動特性の分析結果を、全体の生産性向上にうまく使っていくことが重要です」

大湾氏は、人事分野におけるAI利用の問題点にも触れた。大湾氏の見解では、「AIが活躍できる部分はそれほどない」とのこと。AIを活用した予測の精度の向上があまり大きくないことに加えて、そもそもAIには因果関係を特定できない問題点もあり、無条件に受け入れて意思決定に使うのは危険だという。当面は、採用の書類選考に限定される、との見解だ。

「最後に、ガイドライン作成のための留意点を二つ挙げます。一つは、社員のためにという原則を守り、社員の協力を得ることを大事に考えて、データを活用すること。もう一つは、説明責任を果たすためにも、データの分析結果を鵜呑みにせず、人間が判断して意思決定していくことです」

講演写真

ディスカッション:データ活用によって人事の役割はどう変わるのか

大湾:データの可視化で、苦労されていることは何ですか。

向坂:社員は情報を入力するメリットを感じないと、GEPPOを更新してくれません。そこで、人事からアンケートを仕掛け、回答してもらった内容を今後の人員配置に活かす可能性があると伝えました。

山崎:必ずデータが入力されている状態を担保するために、情報は何かとセットで取得しています。ただ、現状では集計分析がしにくい、という課題があります。

大湾:個人レベルで使える情報を正直に書いてもらうための工夫をお聞かせください。

向坂:誰がその情報を見るかを明らかにしています。加えて、何のためにその情報を聞くのかも社員に説明しています。

山崎:調査対象者を明らかにすることです。また、自己申告調査などでは、設問の内容を上司に共有しても良いかも確認するようにしています。

大湾:人と組織のマッチング効率を改善するためには、何が大切なのでしょうか。

山崎:社員の経験や適性など、リアルタイムの状況を人事がしっかりと把握していることです。当社の社内転職制度では誰からも止められることなく異動できるなど、絶対的な信頼性を担保しています。

向坂:社員に対しては、どの事業部でどんな人材を必要としているのかをオープンにしています。経営に対しては、これから伸びる市場に伸ばせる人材を配置できるよう、経営会議に必要なレポートを随時提出しています。

大湾:タレントマネジメントの目的は二つあります。社員の生産性向上と次世代リーダーの早期発掘・育成です。どちらに重みを置いていますか。

山崎:後者です。採用・育成・選抜・リテンションを総合的、全体的に行うことがタレントマネジメントだと考えています。

向坂:現状、前者はある程度できていますが、後者は今後取り組みたいテーマです。育成プログラム自体のブラッシュアップが欠かせません。

講演写真

大湾:データを活用することで、人事の役割は変わるのでしょうか。

向坂:データという武器を手にすることで、人事の力はもっと広がっていくと思います。データを根拠として、ますます経営と人事の距離は縮まっていくのではないでしょうか。

山崎:人事は本来個別最適であるべきです。テクノロジーやデータの活用により、人材投資の観点でそれが可能になります。また、人事戦略によって経営目標を達成することもできるようになると思っています。

大湾:最後に、これからデータ活用に取り組んでいこうとする方々に向けて、アドバイスをお願いします。

向坂:データ化とは、人事の経験や勘を後々使えるように溜め込んでおくことです。取っつきにくいものと考えがちですが、決して難しいことではないので、まずはやってみることが大切です。取り掛かり始めると悩みが出てくる一方で、コツがつかめます。

山崎:データが全て揃っていなくてもできる、というのが実感です。まずは、今あるデータから活用していくこと。その上で、今後に向けてどのようなデータを取得すればいいのかをしっかりと考えていく必要があります。

大湾:本日はありがとうございました。

本講演企業

アイ・シー・ティーの強みは、労務・人事を熟知したスタッフがシステム開発から運用サポートまで手がけられることです。 当社が提供するHRソリューション【タレントマネージメント、勤怠システム】は 企業におけるさまざまな業務課題を解決するシステム・サービスです。 それぞれの企業独自の組織・体制に合わせたカスタマイズや、システムに 精通した開発部隊による手厚いサポートが好評をいただいています。

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