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先進企業から学ぶ、社内でイノベーションを生み出すための「人材育成」のあり方とは?

<協賛:株式会社 博報堂コンサルティング>
  • 源田 泰之氏(ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長)
  • 巻口 隆憲氏(株式会社リクルート リクルート経営コンピタンス研究所 所長)
  • 楠本 和矢氏(株式会社 博報堂コンサルティング 執行役員 兼 HR Design Lab.代表)
東京パネルセッション [J]2018.12.25 掲載
株式会社 博報堂コンサルティング講演写真

近年、「イノベーション創出」を合言葉に、社内で新規事業や新サービス開発に取り組む企業が増えている。しかし一方で、期待したほどの成果を得られていないケースも多いようだ。本セッションでは、イノベーション先進企業であるソフトバンクの源田氏、リクルートの巻口氏が成功するためのポイントや人材育成、支援のあり方などを紹介。博報堂コンサルティング・楠本氏のファシリテーションの下、イノベーションを創発するためにどのような取り組みが効果的なのかをテーマに、ディスカッションを行った。

プロフィール
源田 泰之氏( ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長)
源田 泰之 プロフィール写真

(げんだ やすゆき)1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。新卒および中途採用全体の責任者。グループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティおよび後継者育成機関のソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(SBイノベンチャー)の責任者。ソフトバンクグループ株式会社・人事部アカデミア推進グループ、SBイノベンチャー・取締役を務める。孫正義が私財を投じ設立した、公益財団法人孫正義育英財団の事務局長。育英財団では、高い志と異能を持つ若者が才能を開花できる環境を提供、未来を創る人材を支援。教育機関でのキャリア講義や人材育成の講演実績など多数。


巻口 隆憲氏( 株式会社リクルート リクルート経営コンピタンス研究所 所長)
巻口 隆憲 プロフィール写真

(まきぐち たかのり)1988年(株)リクルート入社、営業、商品企画、経営企画を経て、カーセンサー事業、ハウジング事業の事業部長として、新規事業を推進。2008年より現職の「コンピタンスマネジメント」を担当。社内のナレッジマネジメント推進、人材開発、海外ビジネススクールとの共同研究に従事。


楠本 和矢氏( 株式会社 博報堂コンサルティング 執行役員 兼 HR Design Lab.代表)
楠本 和矢 プロフィール写真

(くすもと かずや)神戸大学経営学部卒。丸紅株式会社で、新規事業開発業務を担当。外資系コンサルティング会社を経て現職。これまでコンサルティングプロジェクトの統括役として、多岐にわたるプロジェクトを担当。現在は執行役員 兼 HR Design Lab.代表として、人材育成事業の統括、重点企業のプロジェクト統括などに携わる。


ソフトバンク・源田氏によるプレゼンテーション:
イノベーション創出に向けての取り組み「ソフトバンクイノベンチャー」

最初はソフトバンクの源田氏によるプレゼンテーション。同社では今後、新規事業と通信事業の両輪による成長戦略を描いている。その中で一つのカギを握るのが「ソフトバンクイノベンチャー」(新規事業提案制度)だ。

「ソフトバンクイノベンチャーは、イノベーションとベンチャーを組み合わせた造語で、社員の提案から新事業を立ち上げる取り組みです。提案するテーマは自由で、誰でも何度でも提案が可能。事業化した場合は原則、提案者自らが事業推進に参画します」

この取り組みが成功したポイントは三つ。新規事業の立ち上げを支援するために子会社「SBイノベンチャー」を設立したこと。インキュベーションの仕組みを確立したこと。事業共創のための「イノベンチャー・ラボ」を設立したことだ。

「SBイノベンチャーは、将来的にソフトバンクと事業シナジーを創出する可能性のある事業アイデアを、自由テーマと強化テーマ(待機児童問題の解消、新たな消費活動など)で募集します。これまでの応募総件数は6,000件以上、事業化検討案件数は約60件。既に13件が事業化され、その内現在は3件が法人化されており、提案者が社長となって事業を行っています」

講演写真

事業の審査プロセスは、書類審査からプレゼンによる中間審査、最終審査という3回の審査を経て、プロダクトのβ版開発へと進んでいく。β版の開発では事業準備金が提供され、本当に事業化できるかどうかを検証。最終的な承認プロセスを経て、事業化できると判断されれば、新規事業会社を設立するか、ソフトバンクグループ内の既存の会社で新サービスを提供するかを決定する。特徴的なのは、初期の失敗を歓迎すること。まずは小さく市場に投入し、たくさんの失敗を経て、生き残るものを大きく伸ばしていく、という考え方だ。そのため、再挑戦も可としている。

「イノベンチャー・ラボは、社内起業を目指すメンバー同士が、勉強会への参加やメンバー間の情報共有などによりノウハウを蓄積し、新規事業の実現を目指す事業共創プログラムです。メンバー登録数は約3000名で、最終審査合格チームの実に80%以上がイノベンチャー・ラボの所属者です。ここではアイデアが生まれる前から会社化されるまで、一気通貫でサポートします」

同社では「社外で独創的なベンチャー企業がどんどん生まれる中、社内でそれができないはずがない」という信念の下、それに近い環境を社内で創ろうと考えたという。イノベンチャー・ラボをはじめとした独自の取り組みが、新規事業創出に向けて好循環を生んでいるのは間違いない。

リクルート・巻口氏によるプレゼンテーション:
ナレッジ共有と外部知見者を交えた討論の場「四つのFORUM」

次に、リクルートの巻口氏から、新しい価値創造のためのグループ横断イベント「四つのFORUM」の説明が行われた。

「FORUMは賞賛の場であると同時に、ナレッジ共有会でもあります。また、外部の知見者を交えた討論の場です。年1回、「商品開発と改善(GROWTH)」「テクノロジー(ENGINE) 」「経営基盤(GUARDIAN)」「顧客接点=営業(TOPGUN)」の4部門で開催します。各部門で一番イノベーティブな仕事と、それを実現した社員を10人ずつ選出し合計40人をピックアップ。約1000人の観客を前に、プレゼンテーション(大自慢大会)を行う、というものです」

FORUMのルーツは、11年前から開催している「TOPGUN」。リクルートの全営業マンの中のトップ10を決めるイベントだが、トップ10を決めるのは売上高ではない。「いかにイノベーティブな仕事をしたか」を、何千人もいる営業マンの中から選ぶというものだ。観客のアンケートには「そこまでやるか!」「なぜ、そんなに高い目標を掲げたのか?」という言葉が連なる。実は、これが社内でイノベーションを生むためのキーとなる言葉だと巻口氏は言う。FORUMの「成果」としては、以下の四つがある。

「一つ目は、コアコンピタンスの共有とアップデート。トップ営業マンの成果ではなく、成果を出すために重要となるストーリー、ノウハウ、スタンスの共有です。二つ目は、ビジョン実現への戦略の見本市。グループミッションの実現を事例で示すことで、理解を深めることができます。三つ目は、オープンイノベーションへの人的交流。グループ各社の社長からの斜め上からの生のメッセージが飛び交います。社外取締役ならぬ社外目利き役を、グループ内の全員が行います。そして四つ目が、社内のトップイノベーターが誰か分かること。経営層にとってはこれが最もうれしい成果と言えます」

講演写真

リクルートの「企業文化」を継承する言葉は、「おまえはどうしたい?」と「ちょっといいですか?」というものだ。

「『おまえはどうしたい?』とお互いにWILLを問い掛け、 目的を高めながらチームを組みます。上司はどんなに忙しくても 『ちょっといいですか?』というメンバーからの相談に時間を割き、個と組織の成果と成長へコミットします。この二つが、日々の仕事の中にイノベーションを生み出すキーワードとなっています」

ディスカッション:
イノベーション創発のために効果的な取り組みとは

後半は、博報堂コンサルティング楠本氏のファシリテーションにより、社内でイノベーションを創発し、イノベーターを育成するためにどのようなアプローチを行っていけばいいのか、ディスカッションが行われた。

楠本:まず、最も重要こととして、どのようにして社員を「その気」にさせていくのか、というテーマです。もはや「イノベーション」という言葉の響きだけで、社員をひき付けられる時代は終わったと感じています。両社のアプローチをぜひ、お聞かせいただけますでしょうか。

源田:第一に、時間をかけて風土を醸成していくこと。第二に、「イノベンチャー・ラボ」というコミュニティーを作ったことです。「いきなり応募」だとハードルが高いのですが、それをコミュニティーが支えることで社員を後押ししています。そして第三に、成功事例をいかに生み出すか。数十億もの時価総額が付いた会社をつくることのできるリアルな状況が伝わると、社員の本気度が変わります。

巻口:FORUMでのプレゼンターの話が非常にうまい、ということが挙げられます。プレゼンテーションがカッコいいと、聴衆はその気になります。そのために我々は、いかに良いプレゼンテーションが行えるか、そのための準備をサポートしています。プレゼンテーションがカッコいいと「自分もそうなりたい」と純粋に感情面でそう思えるからです。

講演写真

楠本:そして次に必要となるのは、どうすれば社員が質の高いアイデアを生み出せるようになるか、ということです。企業によっては、そのスキルを具備させないまま現場に委ねきり、失敗しているケースも散見されます。

巻口:アイデアの前段階として、「不を解決する」をよく議論します。不自由、不便、不平等など、世の中で解決しなければならないことに何があるのか。この問いは、日々の既存事業の中でもよく語られます。そして、これをトレーニングするための問い掛けが、先ほど言った「お前はどうしたい?」です。さらに、「それはなぜ?」「なぜを本気で考えた?」「考えたなら、その背景を言って」と問い掛けを続け、「不」を本気で解決したいという確固たる信念があると判断されたら、「あなたの言う通りでいい」となります。アイデアを出す前に、どの「不」に立ち向かうのかを本気で決めているかどうかが、ポイントです。

源田:仕組みとしては、「イノベンチャー・ラボ」の中で、各分野の専門家を招いて講義をしてもらっています。これをベースにアイデアが生みだされるといいと思っています。ただ、アイデアより重要なのは、アイデアをチームとして推進できる体制を作ること。さらに、その分野に本当に詳しい人が課題を持ち、いいチームを作って取り組むこと。これが事業化という面から見ると、一番うまくいくケースだと思います。

楠本:一つうかがいます。そのような仕組みが功を奏し、いざ本人を新しいテーマに取り組ませようとしても、所属部門の長がその部下を引き抜かれることに抵抗する、という状況をよく聞きます。両社では、それをいかに解決していますか。

源田:前述したように、別会社を作ってアイデアの時点から一貫して事業化をサポートしていく体制を敷いています。苦労するのは、現場のエース社員がアイデアの事業化のために異動する場合、「部門にとって損失だ」とその組織からクレームが入る場合があること。そのようなときは粘り強く交渉し、説得するしかありません。一方で、採用難の中、この制度があることで、人材を採りやすくなっている面もあります。会社全体としては大きなメリットがあることを、事業の責任者や経営層に対してアピールしています。

巻口:「キャリアウェブ」という本人の自由意志の下、異動の自己申請ができる制度があります。社員が新しい仕事をしたいと思って自己申告し、「異動先」からの了解が得られれば、元の上司には拒否権はありません。このような異動が可能になると、どの部署も優秀な人材を採られないようにもっと面白い機会、チャレンジャブルな機会を提供しようと創意工夫します。その結果、あらゆる組織でイノベーティブな好循環が生まれることになります。

楠本:リクルートさんの言葉をお借りすると、一般的に、0から1を生み出すことはできても、1を10にする、というのはなかなか難しいように思います。そのために、どのようなサポートが必要でしょうか。

巻口:まず、 KPIマネジメントを徹底すること。そして、自分が何を担当していて最終的な結果にどれだけ貢献したのか、ビジネスモデルと自分の役割がどうつながっているかを徹底して考えさせることです。0から1を生み出す時は少数のイノベーターかもしれませんが、1から10、そして100へと事業を伸ばすときには、フォロワー(一緒に事業を作っていく人)のモチベーションを高くする必要があります。

源田:事業をスケールさせる段階では、SBイノベンチャーでのサポートを止め、他の事業会社と協働させるようにしています。その際、外部とのアライアンスを含めて対応しています。広く世の中に普及させていくためには、大手企業と組むことで、スケールしやすい状況が生まれてくるからです。

講演写真

楠本:最後に、イノベーション創発に成功した「個人の経験」を、いかに組織知に還流させていくのか、そのポイントをお聞かせください。それがないと、いつまで経っても組織としてのイノベーション創発力が底上げされないことになりますよね。

巻口:「自分がなぜ成功できたのかというナレッジを吐き出した人間が一番カッコいい」という状態をどう作るかだと思います。リクルートでは売上の高い営業マンよりも、「皆がまねのできる素晴らしい売り方を開発した人間の方が偉い」ということを表彰するイベントを以前から行っています。なぜなら、そのやり方を他の人がまねることによって、価値が何倍にもふくれ上がるからです。自分の「得意技」を隠さないで皆の前にさらけ出すと、また次の「得意技」を生み出そうとさらに努力します。このようなサイクルを回していくことで、「組織知」を生み出すことがカッコいい(一番偉い)という風土が醸成されていきます。

源田:仕組みとしては、「イノベンチャー・ラボ」がその役割を担っています。勉強会など、いろいろな機会を設けて個人の経験やナレッジを共有する場を作っていくことが大事ではないでしょうか。その結果、個人のナレッジを皆で共有することが当たり前という文化が形成されていくことになります。

楠本:本日は素晴らしいお話をありがとうございました。

本講演企業

マーケティングとHR領域に特化した、博報堂グループ内の中核的コンサルティング企業。HR領域においては、長年現場で培ってきた「マーケティングノウハウ」を、人材育成領域に融合した、独自のプログラムを開発。現場での「実践知」に満ちたプログラムが好評を博し、企業内研修の導入企業を前年比150%の水準で拡大中。

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