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スポーツビジネスの事例に学ぶ働き方改革

<協賛:株式会社あしたのチーム>
  • 島田 慎二氏(株式会社千葉ジェッツふなばし 代表取締役社長 )
  • 髙橋 恭介氏(株式会社あしたのチーム 代表取締役会長)
大阪パネルセッション [OC]2018.12.25 掲載
株式会社あしたのチーム講演写真

スポーツビジネスの世界で、人の働き方に効率を求めて大きく成長した会社がある。プロバスケットチームを擁する、千葉ジェッツふなばしだ。同社はかつて倒産の危機にあったが、観客動員リーグ3年連続No.1、売上は7年で7倍と大きく躍進。その裏側では、どのような改革を行っていたのか。同社の島田慎二社長と、中小企業に対し人事評価制度サービスを提供する、あしたのチームの髙橋氏が、人を育てていく評価制度についてディスカッションを行った。

プロフィール
島田 慎二氏( 株式会社千葉ジェッツふなばし 代表取締役社長 )
島田 慎二 プロフィール写真

(しまだ しんじ)株式会社マップ・インターナショナル(現・株式会社エイチ・アイ・エス)を経て、実業家として活動した後株式会社ジェッツインターナショナル代表取締役に就任。その後Bリーグ理事に就任し、2017年「株式会社千葉ジェッツふなばし」へ社名を変更。一般社団法人日本トップリーグ連携機構の理事も勤める。


髙橋 恭介氏( 株式会社あしたのチーム 代表取締役会長)
髙橋 恭介 プロフィール写真

(たかはし きょうすけ)1974年、千葉県松戸市生まれ。新卒で興銀リース株式会社に入社。2002年にベンチャー企業であったプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、同社を業界シェア1位に成長させた。2008年のリーマンショックの直後に株式会社あしたのチームを設立。2018年6月より代表取締役会長に就任。


千葉ジェッツふなばし 島田氏:「成功する人事マネジメント力」

男子プロバスケットボールチームである千葉ジェッツを抱える千葉ジェッツふなばし。創設時には倒産の危機もあったが、創設から7年で売上は7倍、観客動員数は5倍、スポンサー数は3倍にまで成長。観客動員数もBリーグで3年連続No.1を記録している。ここまで変われた理由を島田氏は、振り切った高い目標設定にあったと語る。

「最初に『日本一給与が高くて、チームも強くて、労働時間は日本一短いスポーツチームをつくろう』と考えました。振り切った高い目標を設定して、それを実現するためにどうしたらいいかと考えたのです。また、働き方改革が注目されるずっと前から、短時間で生産性を上げることを徹底して考えてきました」

スポーツ業界は人気があり、そこで働きたい人は多いが、社員の働き方といった仕事環境を重視する企業は少なかった。しかし島田氏は、だからこそ働き方を変える意義があったと語る。その改革の中で柱となったのは、経営理念だ。

「どうすれば従業員が幸せになれるかと考える前に、会社がどういう方向に向かうのかを考えなければいけない。しっかり経営としての方針を明確に示さないと、人事制度もつくれません。経営理念は会社の存在意義。なんのためにこの会社が存在しているのかを示すことが経営者の役割です。ここがぼやけていると、すべてがぼけてしまう。理念という共通認識を持つことで、皆でどこに向かうのかがはっきりします」

そのようにして決まった経営理念は、「千葉ジェッツふなばしを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」だった。同社は選手と契約するときも、経営理念に共感できていることを確認してサインをもらう。すべての社員を評価するときも、理念を実践できているかを問うている。

「個人目標もすべては経営理念にひもづいて設定され、周囲をハッピーにするために個人をいかに強くするかに注力しています。これが人事マネジメントのポイントです」

講演写真

経営をよくするためのコツはプロセスを管理することだ。過程を見える化して上長がバックアップしていく仕組みをつくるしかない。そこで、島田氏が行ったのは個人面談の徹底だった。パートやアルバイトを含めた全社員に対し、毎週火曜日に朝から晩まで一人20分ずつ面談を行った。

「私個人ができることは、たかが知れています。だからこそ、やってもらうスタッフの支援が需要。火曜日はどこにも外出せずに、徹底して社員に付き合いました」

ただ面談をしても、状況はよくならない。面談する価値のある中身がなければいけない。そのために必要なことは目標管理だと島田氏は語る。

「1週間ごとに決めた目標の進捗をチェックし、フォローするようにしました。目標はすべて行動に落としているので、面談でもよけいな話はしません。数字をみてプッシュする。目標が達成されると、給与やボーナスが上がるよう設定しています。このような流れになると、社員は『面談で社長は自分の評価を上げるために支援してくれている』と思ってくれます」

島田氏は当初、自身で考えた評価制度で運営していたが、途中から、あしたのチームのシステムに切り替えた。その結果、業績も急激な伸びを示す。

「内容は成果主義一辺倒のものではなく、理念に照らし合わせた行動規範に対する評価を行っています。業績と、会社が示したものと社員が同じ方向を向いているかという2軸で評価し、相対評価ではなく、目標に対する絶対評価を採用して頑張りに応えています」

勤務時間内で生産性をあげるために細かな工夫も行っている。毎朝15分は整理整頓を行い、机の周りやメールフォルダをチェックして、ムダなものを排除している。比較的多くの時間を取るモノを探す時間をなくす工夫だ。また、個人の携帯は机に出さないというルールもある。つい個人の要件で使いたくなるので勤務中は触らない。そして喫煙も禁止。こういったルールを決めるときは多少ギクシャクすることもあるが、効果がわかれば納得してくれるという。

「残業についても、当社では残業が少なくて業績を上げている人ほどボーナスが高くなるように設定しています。早く仕事を終えようとすれば、メールの返信も早くなり、顧客対応も早くなる。結果として顧客満足も上がり、業績も上がっています」

ディスカッション:
「高速PDCAで人を育てる人事評価制度について」

テーマ1:「相対評価ではなく絶対評価」

島田:スポーツ関連会社にはそのスポーツが好きな人が集まっているので、「好きで来てくれているから、給与が安くても頑張ってくれるだろう」という思いがずっとあり、これまで人事評価について考えることは少なかった。しかし私は、社員が頑張るためには絶対評価が必要だと思っています。大いに業績をあげているのであれば、給与もその頑張りに比例する必要がある。目標設定をしておいて、純粋にそれに対する達成度で判断すべきです。頑張った人が報われるような仕組みを持たなければ、良い人材が育ちません。

講演写真

髙橋:2018年1月にはメルカリさんが人事評価制度を刷新し、絶対評価を採用したことがニュースになっていました。全社員の給与が上がるといった仕組みは、日本企業では受け入れ難いものとなっていますが、人件費をコストではなく投資と考えれば絶対評価が必要という理由も納得できると思います。ただ、大企業では予算統制もあり、相対評価をなくすことに踏み込めない面はあるかもしれません。この点について、島田さんはどうお考えですか。

島田:人的資源が生み出す利益が、もともと持っている予算よりも低ければ仕方ないのですが、それを超えてしまったという事実があれば、評価して給与や賞与に反映させることがあっていいと思います。そのほうが人は頑張れるし、大きく育つと思います。


テーマ2:「面談に効率性は求めない」

島田:どんな会社でも、社員が結果を出さないと業績は上がりません。だから私は、皆に結果を出してもらうために面談しているのです。「面談の時間が取れない」という人も多いと思いますが、多くの仕事にはムダな部分が必ずあるのではないでしょうか。時間をつくろうと思えば、意外と簡単につくれると思います。

確かに、毎週面談を行っていたときは手間がかかりました。朝10時から夕方までずっと話しますから、声も枯れてくるんですね。でもその努力を社員も見ていて、「社長がここまで付き合ってくれるんだから、自分も頑張らないと」と思ってくれる。その気持ちは自分にも伝わりましたし、結果、社員のモチベーションアップにつながったと思います。また、社員からみても短いスパンで相談して軌道修正してもらったほうが、効率がよくなった面もあったように思います。社員にしっかり向き合うことには、いろいろなメリットがあります。

髙橋:「忙しいから面談ができない」という声は確かにありますが、面談を行うことが効率性を高めることにつながれば、その忙しさを解消できることになります。忙しい中でも面談をして話をすることが、実践面でも精神面でも一つのレバレッジとなって生産性が高まっていく。最近は企業でよく1on1が行われていますが、うまくいかない場合の理由は、面談の目標が定まっていないことだと思います。「最近どうなの」といった抽象度の高い内容しか話さないのであれば、意味はありません。島田さんのように、目標に対する握りがあるからこそ、中身のある面談になっていると思います。

これは千葉ジェッツふなばしの地域プロモーション担当の社員の評価シートの例ですが、面談によって目標の内容が修正されていますね。最初は「夏祭りで回るところはイベントをしっかりこなし、回れない場所である主な商店街や自治体等は挨拶をして回る」でした。しかし、島田社長が面談し、修正させた文章は「回れない場所である主な商店街や自治体等はリスト化し、承認を得て、挨拶して回る」となっており、「リスト化し、承認を得る」ことが追加されています。このように話し合いで行動内容を具体化されるのですね。

島田:最初の文は本人が書いたものですが、これだと評価のときに何を見るべきかわからないので、見える化できる内容を加えました。このようにお互いにチェックできるように細かく修正しています。

髙橋:どの目標管理シートを見ても、行動レベルまで詳細に設定されています。だからこそ面談に意義があって、「何ができて、何ができていないか」という確認が行われる。これまで企業における報酬の決定はブラックボックス化されることが多かったのですが、今後それを払拭するためにも行動目標にこだわっていくことはかなり重要ではないかと思います。

島田:経営理念から一気通貫で個人にまで行動目標を落とし込むことが、会社としての力を発揮するうえで必要だと思います。いかに社員がベクトルを揃えて、同じ方向を向けるのか。そうなるためのツールとしてもよいのではないかと思います。

講演写真

テーマ3:「行動目標の重要性」

島田:我々にはステークホルダーがたくさんいますので、日々、皆さんに対してしっかりと謙虚に誠実に向き合うべきだと思っています。あしたのチームさんにお世話になり、システムをつくったときには、ある程度企業も成長していましたので「もう一度社員に謙虚さを自覚してほしい」という思いから行動目標を設定していました。ただし、謙虚が大事だからといって、行動がおろそかになっては意味がありません。私たちはスピード感を持って行動し、実践しながら修正していく姿勢を自社のカルチャーにしています。

髙橋:島田さんは「会社を変える魔法はないが、人事評価制度の有効活用はできる」と言われます。確かに評価は査定目的だけではダメで、行動まで踏み込んでモチベーションを上げていくことが大事だと思います。人事評価という言葉はこの10年でスタンダードになりました。この「評価」という言葉には人材育成という要素を多分に含んでいます。昨今の組織開発、生産性向上という観点からいえば、人事考課という言葉では戦えなくなってきました。大手企業も最近は人事考課という言葉を評価制度という言葉に変えています。言葉のトレンドまで変わった点は非常に象徴的なことだと思いますね。

最後に、髙橋氏より評価制度のこれからについてコメントがあり、セッションは終了となった。

「目標管理シートが査定ツールのままではもったいないと思います。今の目標管理シートが、スピード経営に耐えられる社員の育成や、上司と部下の関係性の構築、ひいては業績の向上、そして一人ひとりの社員の給与アップを実現するツールとして活用されているかどうか。これをきっかけに、経営サイドからの働き方改革の実現、受け手である社員の皆さんの生産性向上のツールという部分も含めて、これから人事評価制度のあり方について新たな議論が生まれることを願っています。本日はありがとうございました」

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本講演企業

2008年、リーマンショックの直後に設立。国内47全都道府県の営業拠点に加え、台湾・シンガポール・上海・香港に現地法人を構える。1300社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・クラウド型運用支援サービスを提供している。

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本講演企業

2008年、リーマンショックの直後に設立。国内47全都道府県の営業拠点に加え、台湾・シンガポール・上海・香港に現地法人を構える。1300社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・クラウド型運用支援サービスを提供している。

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