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戦略を描ける次世代経営リーダーの創り方
『絶対に押さえるべき4つのステップ』

  • 山田 博之氏(株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース 執行役員)
東京特別講演 [D-5]2019.01.09 掲載
株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース講演写真

変化が激しく、先行きの見えないVUCAの時代、ビジネス環境は一段と厳しさを増している。次世代経営リーダーの育成に関しても、従来と同じような方法ではうまくいかなくなり、課題を抱えている企業は少なくない。こうした課題の解決に向けて、戦略を実行できる組織づくりや人材開発を、教育研修・コンサルティングを通じて支援するのが、株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソースだ。本セッションでは、同社執行役員・山田博之氏が数々の経験をベースにしながら、次世代経営リーダー育成の現状、育成における問題点、育成法のポイントを、他社事例を交えて紹介された。

プロフィール
山田 博之氏( 株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース 執行役員)
山田 博之 プロフィール写真

(やまだ ひろゆき)国内の戦略系コンサルティングファームにて、HR領域を主とした経営支援コンサルティングに従事。主担当として、25社の経営・人事改革や次世代幹部育成などの大型プロジェクトを実行。その後、事業会社の人事企画担当などを経て現職。戦略策定などをテーマにした次世代幹部の育成に強みを持つ。


次世代経営リーダーが今こそ求められる理由

フィールドマネジメントグループは、最年少でマッキンゼー・アンド・カンパニーの役員に就任した並木裕太氏が代表を務める、コンサルティングファーム。そのグループで組織人事領域のコンサルティングを担うのが、フィールドマネージメント・ヒューマンリソースだ。

同社では、自己資本投資を行いながらのクライアントの経営サポートや、スタートアップでの事業づくりなどを行っており、実務によって得られたノウハウも含めた効果的なコンサルティングを提供している。そんな中、「昔から次世代経営リーダー人材は必要でしたが、現在は特に求められるようになっています」と山田氏は言う。

続けて山田氏は、「労政時報」の2017年度のアンケートを取り上げた。「人事が抱える教育研修課題は何か(複数回答)」という質問に対する回答の1位は「管理職層のマネジメント力、リーダーシップ能力の向上」で、約7割弱を占める。2位以下には、「管理職層の人材育成能力の向上」「次世代リーダー、管理職クラスの早期選抜や育成」「次世代経営リーダー、次世代経営幹部の育成」が続く。この結果から、会社をけん引するような人材の育成に課題があると推察される。

「その理由の一つが、VUCA時代と言われる環境にあります。VUCAとは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性を意味する四つの英語の頭文字をとった言葉。つまり現代は、過去と同じようなやり方やフォーマットでは、成果が出せない時代なのです」

講演写真

さらに山田氏はもう一つの理由として、企業の成長の問題をあげた。次々と事業を拡大し、大きく伸びる時期を経て成熟期に入った企業では、ムダやムラなくしてどう利益を出すかのコントロールに力が注がれる。しかし、やがてそのノウハウも限界に達し、企業は次なる再構築期に入る。

「再構築期には、もう一度ビジネスモデルを再設計し、再成長へと押し上げていくことが求められます。そのためには新しいビジネスモデルの設計や、過去の延長線上にはない大きなイノベーションが不可欠です。そこで、企業が求める人材も変化するのです」

成長期には、自ら次々と「動く」人材、成熟期にはリソースを上手に「コントロールする」人材が重用されたが、再構築期になると、新しいビジネスモデルを「描ける」人材が求められるようになる、と山田氏は語る。これまでの次世代経営リーダー人材は通用し難くなり、新しい次世代経営リーダーが求められるのだ。

次世代経営リーダーが育ちにくい理由と改善法

次世代経営リーダー育成がうまくいかない理由を明らかにするための四つの質問を、山田氏は会場に問いかけた。

「リーダー人材は明確に定義されていますか?」
「リーダー人材育成に向けた選抜者たちは御社にとって真のハイパフォーマーですか?」
「リーダー人材育成に向けたカリキュラムは御社の実務につながっていますか?」
「リーダー人材育成に向けたカリキュラムを受けた人材のその後の活用や配置をどのようにしていますか?」

講演写真

これらの質問に答えると、自社の育成のどこに問題があるのかが浮かび上がるという。

「一つ目の質問から浮かぶのは、育成目標設定のミスです。全員の共通言語としてリーダーが定義されていない。二つ目の質問は、候補者選定のミス。選抜して育成していくときに、本当にその候補者でよかったのかという、選抜方法の不適切さです。三つ目の質問は、カリキュラムのミス。本当にそのカリキュラムの内容でいいのかという疑問です。四つ目の質問は、アフターフォローのミス。カリキュラムのあとのフォローができていない、ということです」

一つ目の育成目標設定については、例えば一口に次世代経営リーダーと言っても、プロ経営者型とアントレプレナー型にイメージが分かれる。前者には、ポートフォリオやリソースのどこに重点を置くかを見極める力の育成が必要で、後者には今何が求められているのかというマーケットを見極める力の育成が必要になる。定義次第で、最終的に強化すべきポイントが異なってしまうため、リーダー像を明確にし、育成する側が共通認識しておくことが欠かせない。

二つ目の候補者選定については、例えば人事からの指名、上長推薦、自薦などの方法があるが、初めてのカリキュラムを実施する場合は、上長推薦と自薦は好ましくない。カリキュラムにはそれなりの時間が割かれるため、本業に影響する懸念を考慮して上長は真のエース人材を選ばない傾向があり、自薦ではモチベーションが高く勉強好きな人材が集まるが、実行力に欠くこともあるためだ。次世代経営リーダーを育てるためには、トップオブトップを人事主導で選ぶべきだと山田氏は断言する。

「どんな観点で選べばいいかという話では、リーダーとしての志や思いを持っているというWill、会社として求められる実績をあげているというMust、スキルの高さやポテンシャルの可能性があるというCan、この三点がよく挙げられますが、これだけでは不十分。さらにTrustという観点を加えるべきです。なぜなら、スーパープレイヤーが真のリーダーとしてふさわしいとは限らないからです。新しい組織文化をつくり組織全体を束ねていくには、メンバーからの信頼が欠かせません」

また、人事が候補を選ぶ際のポイントとして、山田氏は公正公平を気にしすぎないことをあげる。選抜の際には集中投資が重要なため、いい意味でのメリハリを持って検討する必要がある。

三つ目のカリキュラムについては、ケーススタディだけに終わらない、自分の会社に思考を展開させるような仕組みが必要になる。ケースワークを通じたさまざまな学びによる「知識」を、自分たちの業務や自分たちの組織や会社に置き換えて検討させる「知恵」に変換させる手法がポイントになる。

四つ目のアフターフォローについては、カリキュラムの最後に中期経営計画や事業計画を発表して満足してしまうようなパターンが多いが、カリキュラム後に以前通りの日常生活に戻るだけでは変化は期待できない。その後に学びが活用できるようなサポートを行うことが、育成を確実にする要素となる。

「三つ目、四つ目をうまくサポートするには、カリキュラムの後に自組織や自社の問題として捉えられる、リアルなマイケースの中で活用、活動、活躍できる場を設計するように心がけてください。学んだことを自分ごとと意識して現場で当てはめると、本人の見る世界はガラリと変わり、行動も変わります。学びをアクションラーニングとして現場で行動に反映してもらい、行動を継続化・定着化させることの大切さを忘れないでほしいと思います」

山田氏は、この「育成目標設定」「選抜」「カリキュラム設定」「アフターフォロー設定」の四つがセミナータイトルにもある、絶対に押さえるべき四つのステップと言う。

次世代経営リーダー育成の成功実例に学ぶ

最後に山田氏は2社の成功事例を紹介した。一つ目は、ある食品メーカーが行った、プロ経営者育成の取り組みだ。まずは、会社として求める育成のゴールを明確にすることから始め、どんなリーダーを育てていきたいのかを考え、どんなスキルが必要かを整理した。そのスキルを習得させるために約半年間をかけて指導を行い、ケーススタディで学んだ後、自分の組織で、自分自身で考えることを繰り返すというマイケーススタディを実施した。

「具体的には、360度評価で次世代経営リーダーの能力の開発状況を、客観的に確認。その後、戦略立案のスキルを磨くために、環境分析、事業戦略分析、アカウンティング、組織分析などをトレーニング。中期経営計画を作成したり、個人の具体的なアクションプランも発表したりしてもらいました。このメンバーの中からは、アメリカの現地法人の社長が誕生しましたし、部長に登用された方や新規事業に取り組むようになった方もいます。カリキュラムを通じて学び提案したことを、皆さんそれぞれの現場で実践中です」

もう一つは、化粧品メーカーがマーケッターを育成した取り組み事例だ。アントレプレナー型で、まずは市場や環境分析の仕方を指導、実際に市場性についてフィールドワークでリサーチを行った。その後、事業性が高いセグメンテーション軸を仮設設定し、ターゲットを描き、具体的な事業計画に落とし込むという半年ほどのカリキュラムを実施。コンサルティングとして助言やアドバイスするだけではなく、メンバーと一緒に市場分析をして市場性を確かめていくというスタイルで進めた。成果として、新分野の強化を担う人材が生まれたり、中期経営目標が上方修正されたりするなどのうれしい影響も見られた。

「次世代経営リーダー育成には、四つの落とし穴となるポイントがあります。しかし、それに応じた四つのステップを踏めば、成功させることは難しくありません。お客さまに寄り添うパートナーとして、企業の再構築や事業創造につながるリーダーづくりのお手伝いを、今後も続けて行きたいと思っています」

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