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【不人気業界で母集団を10倍!】インターンシップの設計とSNSを使った新採用戦略

  • 安東 由歩氏(株式会社アローリンク 代表取締役副社長)
大阪特別講演 [OSA-3]2018.12.25 掲載
株式会社アローリンク講演写真

売り手市場が続く中で、人気業界であっても採用に苦戦を強いられている。ましてや不人気業界の企業ともなれば、採用成功への道は険しい。アローリンクは、そんな不人気業界に位置付けられている親会社の新卒採用部隊の中から誕生した会社だ。試行錯誤しながら編み出した独自の戦略を生かし、今では採用コンサルティングやセミナー開催、LINE採用システム「next≫」などのサービスを展開しているという。今の時代の学生に即した新卒採用のノウハウを、代表取締役副社長の安東由歩氏が紹介した。

プロフィール
安東 由歩氏( 株式会社アローリンク 代表取締役副社長)
安東 由歩 プロフィール写真

(あんどう みちほ)不人気業界の新卒採用活動に携わりゼロから人事部を立ち上げ、5年目にして70名の新卒社員採用を成し遂げた。また独自の選考スタイルはメディアにも取り上げられ話題となった。現在「LINE×採用」を考案し自社採用にて10ヶ月間で5000名の母集団を形成しており、人事部1000人を集めるセミナーで講師を務める。


採用を「マーケティングの視点」で考える

安東氏が入社したのは、アローリンクのグループ会社であるアロージャパン。携帯電話の販売、店舗運営を行っており、そこで同氏は、営業やマネジメントを経験した。その後、2013年に会社として初めて新卒を採用することになり、ゼロから取り組み始める。試行錯誤を重ねた結果、2018年の夏には口コミが広がり、関西で約5000人の学生がアロージャパンのインターンにエントリーし、母集団形成ができるようになったという。

「経験が全くない中で、新卒採用がスタート。不人気業界ということもあり、当初は失敗の連続でした。しかし、採用もマーケティングや営業の観点で捉えてみたらどうだろうと考え直してみたところ、成果が出始めたのです」

そこで始めたのが、マーケティングと同じように、まず『自社を知る』ということだった。さらに、その分析から自分たちの採用戦略コンセプトを決定。コンセプトにもとづいた採用活動を開始した。母集団形成を行う上で、安東氏は六つのプロセスを意識していたという。

「まずは、(1)学生に商品や会社を認知してもらい、(2)興味を持ってもらう。そして(3)教育し、よく知ってもらうことで、(4)『いい会社だな』『いい商品だね』と理解してもらいます。それによって、(5)ファンになってもらう。こうしたステップを踏んだところで初めて、(6)訴求する、という段階に入ります。訴求できれば、営業で言うところの契約が決まるわけで、採用も同じことが当てはまります」

大手のエントリーサイトを利用した場合、(1)~(5)の段階を経ずに、いきなり訴求の段階に進むことができる。すると、学生は説明会には参加して話を聞いてくれ、面接までトントン拍子で進むケースもある。ところが、ここに落とし穴があると安東氏は指摘する。「学生は自社に興味がありファンになっているから、説明会や面接に来てくれているのだろう」と考えるのは大きな勘違いなのだ。

「アロージャパンでは、勘違いに気づかず、内定辞退が大量発生する事態も経験しました。内定辞退率30%、40%という年もあったほどです。そこで改めて、(1)~(5)までの段階を着実に踏んでいく大切さに気が付きました。改善を行った結果、直近では、内定者71人に対して辞退者を2人まで減らすことができたのです」

講演写真

しかし、採用成功のポイントは、これだけではない。次に安東氏は、市場の激しい変化に対応する際のポイントを語った。

学生の就職活動と採用時期という二大変化

採用の常識は、ここ1、2年の間に激しく変化している。中でも大きく変わっているのが、学生の就職活動への臨み方だ。1年半ほど前から、会社説明会などの動員率には変化が見られるという。

「学生にインタビューすると、今はもうWebだけで企業を探すことはほとんどないのだと言います。特に優秀層はWebに加え、リアルな場に赴いて得た情報を活用しているようです。この『Web+リアル』での接点づくりが、採用のポイントになります。もう一つの変化は、採用時期。これも、近年大きく変化しています。数年前まではインターンシップを実施していない企業が多かったのですが、『開始したい』という相談を受けることが増えているのです。また、インターンシップの開催時期も早期化しています。以前は冬や晩秋に行う企業が多かったのですが、今年は夏から、かなりの学生が動いています」

ここで、安東氏はあるデータを取り上げた。インターンシップを実施した企業の割合は、一昨年の50%から、去年には70%と大幅に増加。一方、学生がエントリーした企業数は、一昨年が46社であったのに対して、昨年は30社。学生が3月以降に新たに知った企業も、一昨年の13社から昨年は7社まで減少した。つまり、企業が実施するインターンシップが増える中、早期に就活を開始した学生は、エントリーする企業を早い段階で絞り始める傾向があるのだ。

講演写真

「企業にとっては、早めにインターンをシップ実施し、そこから学生にいかに接触し続けられるかが大きなポイントになります。そこで、私たちは採用スタイルを時期によって変えました。夏、秋口という早いインターンシップの時期には、農耕型の採用スタイルを取ります。この時期は、学生の心理として就職先を決める感覚はほとんど持っていません。『一緒に働きましょう』とクロージングをかけることなく、人間関係づくりや会社のファンづくりのための時期と位置づけます。直接的な仕事内容を語って積極的にアプローチをすることは、学生には逆効果。入社後に一緒に働く人や環境について伝えるような接し方が大切です」

反対に、2、3月という内定を出すタイミングには、狩猟型の採用スタイルを取るようにする。この時期は、いかに採用担当者がクロージングできるかがポイントになる。ここでも、農耕型の時期に作り上げた人間関係が大きな力になるという。

マンパワーを補い、長期的フォローを継続させる

安東氏は、これから採用においては、マンパワーの確保が鍵だと言う。

「インターンシップを早期に実施すると、学生とは2年近くつながりを保つことになります。企業によっては2019卒と2020卒の採用活動を並行して取り組むことになりますから、マンパワーの確保にはかなりの工夫が必要です。学生をフォローする仕組みがなければ、せっかく早期につながった学生も離れてしまいます」

長期的フォローのためには、SNSやLINEの活用が効果的だ、と安東氏は断言する。なぜなら、これまで企業が学生とのコミュニケーションに使ってきたEメールは、今の学生にとってなじみが薄い存在だからだ。

「学生にインタビューをすると、企業にEメールで返事をする際、テンプレートを調べてから30分以上かけて文面を作るという人もいます。『お世話になります』から始まるかしこまった文章を書くことは、学生にとって大きな労力が必要なのです。学生と長期的なつながりをつくるには、Eメールは不適切です。電話も同じ。『電話には出られる時でも出ない』という学生もいます。スマートフォンで電話の着信を受けてもそのままにしておいて、ネットでどの企業からの電話なのかを調べてから折り返すそうです」

学生と長期的につながるには、学生が普段使っているコミュニケーションツールを使うべきだ。LINEは学生の間でコミュニケーションツールとして認識されているため、反応も得やすい。短い文章で気軽に返事ができるため、コミュニケーションのラリーも発生する。

「ラリーがあると、心理学でいうザイオンス効果が期待できます。これは、1回だけ会ってとても熱いメッセージをもらった企業と、10回の小さなコミュニケーションがあった企業を比較したとき、後者のほうに親近感が湧くという効果です。つまり、小さなコミュニケーションが気軽に何度も取れるツールを使ったほうが望ましいということになります。実は弊社でも、以前は学生への対応をアウトソーシングして電話で行なっていましたが、LINEを導入したところ成果が格段に上がり、コストは下がりました」

LINEでは、一度相手とつながればマンツーマンでの囲い込みができる。圧倒的につながりやすく、密なコミュニケーション取れ、親近感を創り出せるメリットがあるLINE。しかし、LINE採用のアカウントはどんどん増えているのに稼働している企業は10%未満と少ない。

その理由は「一斉送信しかできないため登録者を採用シーン別などに分類して送信できないこと」「一人ひとりに個別で送る場合には、手間がかかること」「学生管理が難しいこと」が挙げられる。この三つの課題を解決したのがLINE採用システム「next≫」だ。

「next≫」の導入によって、リマインド効率が60%、合同説明会から自社説明会までの動員率が20%上がり、人事のバック業務が40%減りました。このシステムには「エントリーしてからリマインドまでの採用管理が自動化される」「自由に設定した項目で応募者管理ができる」「学校群や選考フロー別などによりグループ管理ができる」「あらかじめ登録した複数のメッセージを自動配信できる」といった特徴があります。他にもCSVエクスポート機能、PDF管理機能、セミナーの参加率を高めるリマインドや地図機能、内定者辞退対策の仕組みや内定者フォローのムービーも充実させています。これらがスマートフォン上だけで実現され、学生も簡単な操作で企業とコンタクトを取ることができるのです」

「next≫」を使えば、LINEという学生にとって親和性の高いコミュニケーションツールのメリットをさらに生かすことができる。日立製作所やニトリなど、大手企業の導入実績も多い。こうしたツールを使い、学生とのコミュニケーションの質が向上させることができれば、採用のエンゲージメントが高まり、学生と企業にとって有意義な活動を効率的に進められることが期待できる。変化の激しい就職・採用環境において心強い存在になるのではないか、と安東氏は考えている。

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