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ビジネスで勝つための戦略人事
いま人事パーソンに求められるリーダーシップとは

  • 八木 洋介氏(株式会社people first 代表取締役/株式会社ICMG 取締役)
  • 藤間 美樹氏(参天製薬株式会社 人材組織開発本部 副本部長)
  • 石山 恒貴氏(法政大学大学院 政策創造研究科 教授)
東京パネルセッション [G]2019.01.09 掲載
株式会社アイ・キュー講演写真

近年その重要性が叫ばれている、「戦略人事」。しかし現状を見る限り、戦略人事が十分に機能できているといえる企業はほんのわずかだ。いま人事のリーダーシップが、改めて問われようとしている。人事はどのような視点、心構えでビジネスに取り組んでいけばいいのだろうか。長年にわたって戦略人事を実践してきたpeople first・八木氏と参天製薬・藤間氏を迎えて、法政大学大学院・石山氏の司会で戦略人事実現に向けた課題と人事に求められる要件を議論した。

プロフィール
八木 洋介氏( 株式会社people first 代表取締役/株式会社ICMG 取締役)
八木 洋介 プロフィール写真

(やぎ ようすけ)1955年京都府生まれ。1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。主に人事などを担当した後、National Steelに出向し、CEOを補佐。1999年にGEに入社し、Healthcare など複数の事業でアジア部門の人事責任者などを歴任。2012年に株式会社LIXILグループ 執行役副社長に就任。CHRO(最高人事責任者)を務め、同社の変革を実践。グローバル化、リーダーの育成、ダイバーシティの促進など、戦略人事を推進した。2017年に独立し、複数の企業のアドバイザーなどを務める。著書に『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社新書、共著)がある。


藤間 美樹氏( 参天製薬株式会社 人材組織開発本部 副本部長)
藤間 美樹 プロフィール写真

(ふじま みき)1985年神戸大学卒業。同年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に入社、営業、労働組合、人事、事業企画を経験。人事部では米国駐在を含め主に海外人事を担当。2005年にバイエルメディカルに人事総務部長として入社。2007年に武田薬品工業に入社し、本社部門の戦略的人事ビジネスパートナーをグローバルに統括するグローバルHRBPコーポレートヘッドなどを歴任。2018年7月より参天製薬に人材組織開発本部副本部長として入社し、グローバル化を推進。M&Aは米国と欧州の海外案件を中心に10件以上経験し、米国駐在は3回、計6年となる。グローバル化の流れを日米欧の3大拠点で経験し、グローバルに通用する経営に資する戦略人事を探究。人と組織の活性化研究会「APO研」メンバー。


石山 恒貴氏( 法政大学大学院 政策創造研究科 教授)
石山 恒貴 プロフィール写真

(いしやま のぶたか)一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科経営情報学専攻修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科政策創造専攻博士後期課程修了、博士(政策学)。一橋大学卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。越境学習、キャリア、人的資源管理等が研究領域。人材育成学会理事、NPOキャリア権推進ネットワーク授業開発委員長、フリーランス協会アドバイザリーボード。主な論文:Role of knowledge brokers in communities of practice in Japan, Journal of Knowledge Management, Vol.20 Iss 6,2016. 主な著書:『パラレルキャリアを始めよう!』(ダイヤモンド社、2015年)、 『越境的学習のメカニズム』(福村出版、2018年)他。


石山氏によるイントロダクション:人事部門は戦略人事として機能できていないのか

セッションは、石山氏のイントロダクションが始まった。

「『日本の人事部』が発行している『人事白書2018』によると、『戦略人事が機能している』という企業は3割。『人事部門が経営戦略の意思決定に関与している』企業は5割超。いずれも、市況が良い企業ほどその割合が高くなっています。一方、『人事部門が管理業務に追われている』と回答した企業は、75%以上にも及びます。この数字は市況に関係しません。では、なぜ戦略人事が機能していないのでしょうか。その理由を聞いたところ、『人事部門のリソース不足』という回答が最も多いのですが、興味深いのは、その次に『経営陣の問題』という回答が来ていることです。経営陣から『人事部門は経営には関係がない』と判断されているのではないでしょうか」

ここで石山氏は、人事部門への評価コメントを二つ提示した。「人事担当者は会社の中の警察官だ」「人事プロフェッショナルと利害関係者は別々の世界に住んでいる」などだ。もちろん、そうした現実もなくはないが、「人事は管理業務に終始していればいい」と言っていたある会社の役員が海外の現地法人に赴任した際に、人事が経営に関与するメリットを肌で感じ、以後考え方が変わったという事例もあるという。

講演写真

「そこで本日は、以下の三点を議論したいと思います。第一に、戦略人事の定義とはなにか。第二に、なぜその定義を人事部門は実現できないのか。第三に、人事部門が経営のために組織を引っ張っていくリーダーシップとはどんなものか。それらについてディスカッションするために、まずは八木さん、藤間さんの『戦略人事』に関するお考えをうかがいたいと思います」

八木氏によるプレゼンテーション:今人事に求められるリーダーシップ

八木氏が最初に提示したのは、日本の現実だ。

「OECDのデータによると、米国やドイツの時間あたりの労働生産性は、日本よりも約1.5倍高い。また、ギャラップ社が年1回行っているエンゲージメント調査では、日本は139ヵ国中132位。もはや、日本は最もやる気のない国の一つだといえます。さらに、OECDのプロダクト・イノベーションの国別データでも日本は最低レベル。人事が絡んでいる問題も多くあります」

なぜ、このような状況に陥っているのか。正すべきポイントを八木氏は列挙する。具体的には職能資格制度や年功序列、定年制、新卒一括採用、初任給、ダイバーシティ、グローバル、働き方・生産性、客観性、平等・公平など。「根本的にこれらを考え直そう」と八木氏は主張する。

次に八木氏は、未来を取り入れる重要性について語った。

「科学を人事に活かせないだろうか。これからの時代、脳科学や行動科学、組織心理学、HRテクノロジー、ピープル・アナリティクスなどの最先端の知恵を使って試したり、デザインシンキングの考え方を導入したりしていかないと我々は勝てません。そのなかで本質をつかむことが大事なのです。今はいろいろな変化が起きていますが、何が本質なのかを見て行かないと、答えは出てきません。では、どうすれば本質をつかめるかと言うと、目的に照らす、違和感を追求する、空気を疑う、『それで勝てるか』『それで活力が出るか』と自問自答することです」

講演写真

八木氏は、働き方改革についても言及した。生産性を上げるには、価格アップ、一人当たりの生産量向上、事業構造の転換が欠かせない。働き方改革を進めるには、リーダーシップやイノベーション、仕組みのマネジメントがポイントとなってくる。

「職能制度や年功序列などの本丸に切り込んでいかなければいけません。また、明確にゴールは見えていなくても仮説を立てて機敏に行動し、誰よりも早く望ましい姿に近づくアジリティ(俊敏さ)も必要です。いま必要なのは行動なのです。軸や信条をもって、何をしなければいけないかを考える、本質をつかむ。方向を決めたら戦略を立て、伝えて実践する。そして、常に学んでいく。そうしたことが今、求められています」

藤間氏によるプレゼンテーション:経営に資する戦略人事 人事戦略で事業に貢献する

藤間氏は、自身が考える「戦略人事」の定義から語り始めた。

「戦略人事とは何か。私は勝つ組織をつくることだと考えています。事業に貢献するには勝つ組織をつくらなければいけないからです。では、皆さんは人事として勝つために何をしていますか。ルーチンや管理業務、問題対応に追われていませんか。誰に対して勝つことを考えていますか。社内の他部門から人事を守ろうとしているだけではないですか。それでは、経営の視点と人事の視点がずれたままになってしまいます」

ここで、藤間氏は経営が人事に求めているものを列挙した。公平な処遇、組織の和、安定、堅実、変革、挑戦、イノベーション、スピード、競合に勝つなどのキーワードだ。これらについて経営と人事でずれがあるなら、そこから正していく必要があるという。

「以前、私が人事のあるポジションに就いたときの経験です。外国人CFOは着任1ヵ月前に『来るまでに私の部門のことを完璧に理解して、100%サポートしてほしい』と要求してきました。逆に、日本人役員に着任の挨拶をすると、『人事が何の用なのか。問題があると思われたら困るので来なくていい』と言われてしまいました。この違いは何なのでしょう。海外で人事は立派にリーダーシップを果たしているのに、日本はまだまだだと痛感せざるを得ませんでした。リーダーシップを示す、示さないの前に、信頼を勝ち取っていかなければいけません」

講演写真

リーダーシップのあり方は組織によって違うが、どういうものであっても、人事はリーダーが何を考え、何に悩んでいるのかは知らなければならないと藤間氏はいう。その上で人事は、リーダーが気付いていない潜在的な課題も把握し、独創的なソリューションを提案していくのだ。人事だからではなく、勝つ組織をつくるには人事の枠を越えて経営陣としてのリーダーシップの視点が求められる、というのが藤間氏の考えだ。

最後に、藤間氏は経営に資する戦略人事に求められることを挙げた。

「経営の方向性、ビジネスのトレンド、組織のポジショニング、経営からの信頼、そしてアジリティ(俊敏性)です」

ディスカッション:人事としての思想・信条を培い、勝てる組織作りに挑む

石山:人事のプロとして、私は「こう思う」といえる力を培うにはどうすればいいのでしょうか。

八木:人事のプロである前に、経営のプロであることです。そのファンクションのなかだけで目標を持っても、経営に資することはありません。また、経営者からすると人事は人を大切にしているとは見ていません。だから、「人事は戦略的でない」と言われてしまうのです。

石山:では、人事がリーダーシップを発揮し、人の活力を引き出すために具体的には何をすればいいのでしょうか。

藤間:まずは、経営に対して人事が明確な基軸を持って議論すること。それに、人と組織をイキイキと育てられるリーダーを育成し、組織を強くすることも大事です。

講演写真

石山:人を育てるリーダーづくり自体が、難しいのではないでしょうか。どちらかというと、業績を達成するためのリーダーが多いように思います。

八木:「短期の業績を求められるので、人を育てている時間がありません」というリーダーがいたら、私なら「長期的に業績を上げ続けるための最大の資産は人ではないか。経営とは何かを考えているのか」と強く指摘します。それぐらいの思いと勢いを人事は持つべきです。

石山:「人事として経営に貢献したいが、どのようにリーダーシップを発揮したらいいのか」という質問が寄せられています。どうしたら、経営の気持ちになり切れるのでしょうか。

八木:戦略人事を進める上での私の信条は、「人と組織で最高のパフォーマンスを出すこと」です。人に関して自分の考えを持っていると、「自分の組織や短期の業績だけにこだわっていてはいけない」と考えるようになります。やはり、人事として何を大切にしているかという思想、信条を持つべきです。私は、経営として人の重要性に思い至り、人で勝つことために人事をやっています。

石山:経営視点が発揮できない中堅の人事部員を、どう伸ばしていけばいいのでしょうか。

八木:「それで勝てると思っているのか」と問いかけます。人事の組織・風土に紛れてしまったら、ますます経営を考えなくなってしまいます。

藤間:一口に戦略人事といっても、簡単に考えると小さなこともあります。例えば、評価制度。これをシンプルにして、ビジネスサイドが評価に取られる時間を減らすだけでも貢献です。担当者レベルでも、ビジネスをサポートする視点があればやるべきことはあると思います。

石山:制度を導入すると、現場から「こんな問題が起きたらどうするのか」などと言われることがあります。それを避けるには、どうしたらいいのでしょうか。

藤間:新しい制度がビジネスをサポートすることを経営や現場にしっかりと説明して、正しいと思う道を進むことです。

八木:人事は、信頼できる人や組織を育て、現場に任せていく姿勢が大切です。細かいルールをたくさん作るよりも、自立した人や組織で勝つことに注力することが大切です。

最後に一言。日本の人事にはいい人が多いけれど、「みんなを大切にしよう」という考えは必要ありません。人事が人のことを徹底して考えて、「これだ」と言える良いものをつくって、みんなを説得して、前に進んでいけばいいのです。

今日もこんなにたくさんの人が会場にいらっしゃいますが、日本の人事ほど真面目にものを考え、インテリジェンスレベルの高い人たちは世界にもいません。この人たちが本気で「人で勝つ」と考えて行動すれば、本当に大きなことができ、イノベーションも生まれると思います。

石山:本日はありがとうございました。

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