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HRカンファレンストップ > イベントレポート一覧 > 日本の人事部「HRカンファレンス2018-秋-」  > ランチミーティング [LM-1] 成長企業に聞く! 若手社員にチャンスを与え、成長を促す方法とは

成長企業に聞く! 若手社員にチャンスを与え、成長を促す方法とは

  • 神谷 俊氏(面白法人カヤック 社外人事部)
  • 浅岡 奈穂子氏(エイベックス株式会社 CEO直轄本部 グループ広報ユニット)
  • 湯澤 範晃氏(株式会社LIFULL 人事本部)
  • 舘野 泰一氏(立教大学 経営学部 助教)
東京ランチミーティング [LM-1]2019.02.15 掲載
株式会社アイ・キュー講演写真

若手社員の育成は、企業の重要な課題の一つ。しかし、どうすれば成長を促すことができるのか、頭を悩ませている人事担当者は少なくない。本セッションでは、カヤックの神谷氏、エイベックスの浅岡氏、LIFULLの湯澤氏が登壇し、それぞれの企業で取り組む、若手社員にチャンスを与える仕組みづくりを紹介。後半は、立教大学・舘野氏の司会の下、質疑応答やディスカッションを交えながら「若手社員の成長を促す方法」について考察を深めた。

プロフィール
神谷 俊氏( 面白法人カヤック 社外人事部)
神谷 俊 プロフィール写真

(かみや しゅん)経営学修士。面白法人カヤックの組織文化を観察するため、「社外」から同社の人事業務に関わる特命人事。面白法人のタレントたちのキャラや、面白さが生み出されるプロセスへ注目しながら、同社の生態系の維持発展に貢献している。また、並行して多様な組織に在籍し、独自のキャリアを展開。株式会社エスノグラファー代表取締役、株式会社ビジネスリサーチラボ(採用学研究所)研究員など複数を兼務。「脱専門家」をコンセプトに、幅広いジャンルを無節操に越境する。


浅岡 奈穂子氏( エイベックス株式会社 CEO直轄本部 グループ広報ユニット)
浅岡 奈穂子 プロフィール写真

(あさおか なほこ)大学卒業後、エイベックスに入社。人事に配属され派遣管理、労務管理、新卒採用等に関わる。その後ファンクラブ、MD(グッズ)の部署で顧客ロイヤリティ等を学び、再び人事に異動。採用・研修・キャリア制度などを中心にトータル約10年関わる。育児休業中にキャリアコンサルタントの資格を取得。復帰後に広報にてブランドリニューアル(タグライン・ブランドロゴ変更、理念浸透)やエイベックスビルのPR等に携わり、女性視点での企業課題解決を担う女性活躍プロジェクト(nadesico a-project)にも参加中。


湯澤 範晃氏( 株式会社LIFULL 人事本部)
湯澤 範晃 プロフィール写真

(ゆざわ のりあき)早稲田大学卒。キヤノン電子を経て、星野リゾートにて人材開発、内部監査、総支配人室等に従事。2013年LIFULLに入社し、組織開発グループ長補佐として、社員エンゲージメントの向上、全社イノベーションの促進、次世代経営リーダーの育成を推進。LIFULLは、2017年にリンクアンドモチベーション社主催の「ベストモチベーションカンパニーアワード」で283社中第1位を獲得。


舘野 泰一氏( 立教大学 経営学部 助教)
舘野 泰一 プロフィール写真

(たての よしかず)1983年生まれ。立教大学経営学部助教。青山学院大学文学部教育学科卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学後、東京大学 大学総合教育研究センター特任研究員を経て、現職。博士(学際情報学)。大学と企業を架橋した人材の育成に関する研究をしている。具体的な研究として、リーダーシップ開発、越境学習、ワークショップなどを行っている。近著に、『リーダーシップ教育のフロンティア【研究編】【実践編】(北大路書房)』などがある。


カヤック・神谷氏による事例紹介:
「ズレ」がクリエイティビティを生む

冒頭、司会の立教大学・舘野氏から「近年、若手社員に求められる役割が変化している」という課題認識の説明があった。

「今、若手社員には、より複雑化する未知の仕事に、即戦力として取り組むことが求められています。また、今後の組織は全員がリーダーシップを発揮するかたちに変わっていくため、若手であっても役職者の指示を待たず、フラットに対応しなければならなくなるでしょう」

こうした中で、多くの企業は若手の成長に課題を抱えている。では、成長企業である三社は、それぞれどのような取り組みを行っているのだろうか。まず登壇したのは、カヤックの神谷氏。カヤックは「面白法人」と名乗るだけあって、かなり特殊な会社組織だ。同社に社外人事として関わる神谷氏は、その風土と人を育てるための「生態系」について解説した。

「カヤックの事業領域は、“面白コンテンツ事業”であり、企業理念は、“つくる人を増やす”です。そのため、組織の運営においても『面白いものをどうやって生み出すか』を意識したアプローチがされてきました。面白法人を理解するうえで重要なのは実施している施策や手段ではなく、それをチョイスしている背景に目を凝らすことであると思っています」

神谷氏は、面白さを生み出すために必要なのは「ズレ」であると語る。漫才におけるボケ(ズレの生成)とツッコミ(ズレの指摘)の構造を引用しながら、常識的な考え方とは少しズレた視点こそ「面白い」と説明した。

講演写真

「普通の企業は合理的・効率的な考えから意思決定をします。しかし、カヤックの場合はそれだけではなく、“面白いか”という観点が強く影響している」

一般的な企業の組織開発では、こうした「ズレ」や「個人差」を減らそうとする傾向があると神谷氏は説明する。研修や現場教育でも、一定のスキルを与え、個人間のレベルの差を減らすことで、皆が同じ考え方や認識を持てるようしていこうという前提がある。それによってオペレーション上の「コスト」が改善され、組織運営がうまくいくと考えるためだ。

「多くの企業では、効果的に価値を導出するための知識・技能・態度を教えることが、教育の目的です。そのため、経験のある社員が、新人に仕事のセオリーを教える必要がある。一方でカヤックは、育成や組織開発においても、あえて『個人差』を維持・強化する仕組みや組織文化がある。結果的に、『ズレ』は縮小されずに、個人間でコラボレーションを生み出すファクターとなっています」

カヤックのように個人の世界観を尊重する環境では、一般的な教育を行うことは難しい、と神谷氏は言う。従来の常識や合理性にとらわれない「面白さ」を求める組織では、「こうすれば良い」という一般的な正解に頼ることができない。自分の世界観は自分で見つけ出す必要がある。それゆえに、先輩が後輩に対して教育的に関与することは限られる。

そのため、カヤックには定まった教育体系や階層別研修などは存在しない。基本的に現場と個人に任せて、各プロジェクトで必要なスキルや知識を自由に学ぶ機会を尊重している。また、同社では、必要以上に管理をしない。管理職の設置は最低限に抑え、上下の関係性を薄めるようにしているとのこと。自立した人材として社員の持つ能力を信頼し、その世界観を尊重し、セルフマネジメントによってパフォーマンスを発揮する環境を実現させるためだ。

「ただ、あまりに個人が好き勝手すると、『なんでもあり』の状態になってしまう。そのため、個人に任せる側面(個人化)と、組織全体のパフォーマンスを意識させる側面(組織化)の双方を重視しています。このバランスが崩れてしまうと、組織が成立することは難しくなる」

そのために、評価制度や合宿など、社員全員が経営者になったつもりで組織を俯瞰させるような仕掛けも設けられているという。

カヤックは「面白い」という価値をつくるために、社員の能力を信頼し、個人を尊重する。しかし、全面的に放任するのではなく、組織内の「生態系」を意識させる仕掛けも施す。そのことが社員にマッチした成長機会を与え続け、かつ会社の成長にもつながっていくのである。

エイベックス・浅岡氏による事例紹介:
1on1で「思い」を引き出し、若手が挑戦できる環境を

次に、エイベックスの浅岡氏による事例紹介。エンタテイメント業界をけん引する同社では、市場が大きく変化する中で、大きな構造改革が求められていた。そこで掲げた三つの柱が「組織改革」「人事制度改革」「風土改革」だ。まず「組織改革」への取り組みについて、浅岡氏は語った。

「弊社では、成長の過程で組織を増やしてきましたが、それによって大きな弊害が生まれてしまいました。個社や事業部が細かくなったことで全社最適の視点がなくなっていたのです。また、組織階層も増え、管理職が必要以上に多くなっていました。これでは、若手は埋もれ、活躍するチャンスがなくなってしまいます」

講演写真

そこで同社では、重複する機能の統合や、組織の階層を減らすフラット化を実施。併せて役員・管理職体制の刷新と権限委譲を行った。これによって若手にも裁量権が与えられるようになり、新卒1年目が考えた新規事業がスタートするなど、具体的な成果も出てきた。

次に、浅岡氏は「人事制度改革」について語った。

「これまでのエイベックスでは、若手の育成スピードが遅いことや優秀な人材が辞めてしまうことなどが、大きな課題になっていました。優秀な人ほど特定の事業部に囲われてしまい、本人が積みたいキャリアを経験できず、その分野でしか活躍ができなくなってしまっていたのです」

そこで同社が進めたのが、「強制的に定期ローテーションを行う」「若手への抜てき人事を増やす」といった取り組みだった。その際、効果を発揮したのが「1 on 1」だ。月に1回、上司と部下が30分の個別面談を定期的に行うことによって、本人が何をしたいかという「想い」を引き出すようにした。上司はその情報を「人材開発会議」へと上げ、経営層に向けて「こんなことを望んでいる社員がいる」と伝える。その結果を受け、今後どう戦略的に若手人材を育てていくかを、会社全体で考えるかたちが整ってきた。

さらに最後の「風土改革」では、チャレンジを賞賛し、失敗を受け入れる風土作りなどを行っていると、浅岡氏は説明する。

「よりイノベーションが生まれる風土をつくるには、『叶えたいこと』と『想いの強さ』を併せ持つ社員を増やす必要があります。そのために、会社としてもチャンスやヒントを提供し、仲間同士で互いに支え合う機会を設けています」

また、これら三つの柱から成る「構造改革」を進めるために、同社が設けているのが「ジュニアボード」だ。

「ジュニアボードには、エイベックスをもっと魅力的な会社にしていきたいと思う社員が集まります。メンバーは30代中心。CEO直下のプロジェクトとして、会社が抱える課題について新たな視点から調査や議論を行い、解決・改善に向けた施策を考え、実行しています。さらに、メンバーには研修や経営合宿などにも参加してもらい、企業の将来を担う次世代リーダーとしての成長を期待しています。現場からの信頼も厚く、経営層も頼りにしている存在です」

その他にも、「社内新規事業制度」や「独立支援制度」、さらに社員参加のイベントを多数実施し、チャンスや成長の機会を作っている。

LIFULL・湯澤氏による事例紹介:
ビジョンを実現するために、社員が安心して挑戦できる文化をつくる

最後は、LIFULL・湯澤氏が登壇。不動産住宅情報サイトを運営する同社では、「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、社員は経営理念を実現するために集まった「同志」として仕事に取り組んでいる。LIFULLの企業文化や人事施策はすべて、経営理念を実現するために、社員の「挑戦」を引き出すように設計されている。湯澤氏は、その取り組みを「ビジョンとカルチャーを追求する」「内発的動機付けに基づき挑戦の機会を提供する」「心理的安全を確保する」という三つの観点から紹介した。

「まず『ビジョンとカルチャーの追求』について。弊社は「常に革進することで、より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る」ことを経営理念として掲げています。この世界を実現するために、採用では『ビジョンフィット』『カルチャーフィット』を大切に、経営理念と企業文化に共感した人材だけを採用しています。また、ガイドラインでは、一人ひとりが『革進の核』となり、自らが中心となって挑戦することを求めています。」

さらに、入社後にも代表や役員がビジョンを伝える「ビジョンシェアリング」や、社是・経営理念・ガイドラインを自分の業務と接続して考える「ビジョンカレッジ」など、ビジョン浸透に向けたさまざまな施策を行っている。また、年2回「役員の心得アンケート」を実施。役員がビジョンを体現しているかを全社員にアンケートで答えてもらい、その結果をフィードバックすることで、トップ自らビジョンやカルチャーを体現する組織をつくっているという。

「二つ目の『内発的動機に基づく挑戦の機会の提供』について。LIFULLでは、社員の内発的欲求に耳を傾け、それを実現する機会を提供することを重視して仕組みや制度を整えています。例えば、職種や部署の異動を希望する『キャリア選択制度』では、希望の約60%が実現しています。また、新規事業提案制度『SWITCH』には、年間で130~150件程度の提案があり、入社年次に関係なく、入社3年目や4年目の若手社員が子会社社長に就任しています。さらに全社を横断した様々なプロジェクトがあり、のべ30%程度の社員が自ら手を挙げて参加してくれています。」

講演写真

また、三つ目の『心理的安全を確保する』ために、同社では新卒社員の入社や組織改編のタイミングで「チームビルディングプログラム」を実施している。これによって、メンバーの感情・ビジョン・論理のギャップを埋めるのだ。また、心理的安全を確保するために、経営トップからの発信も繰り返し行っている。

「代表の井上はよく全社総会などの場で「薩摩の教え」という言葉を引用します。人の価値は次の順番で決まるというものです。『1.何かに挑戦し、成功した人、2.何かに挑戦し、失敗した人、3.自ら挑戦していないが、挑戦した人を手助けした人、4.何もしなかった人、5.何もせず、他人の批判だけする人』。この2番目がポイントで、井上は「何かに挑戦し、失敗した人」を賞賛することで、挑戦することに価値があることを伝え、心理的安全を確保して、挑戦の風土を根付かせています。」

このような三つの取り組みを通して、LIFULLでは社員が安心して挑戦できる文化をつくっている。

立教大学・舘野氏によるまとめ:
成長企業に聞く! 若手社員にチャンスを与え、成長を促す方法とは

三社の事例紹介を受け、学生へのリーダーシップ教育を行う舘野氏から、企業が若手社員の活躍に向けて企業が意識すべきポイントが語られた。

「これまで多くの企業では、入社後に企業内で人材育成を行うことで、大学で行われていた教育と企業で求められるスキルの「差」を埋めてきました。しかし今、企業での仕事は大規模化、複雑化、スピード化が進み、難易度が上がっています。その結果、若手社員にとって、かなりハードルの高い状態となっています。このように拡大した「差」を、どのように埋めるのかが今後の大きな課題です」

講演写真

テストに正解がある学校と違い、会社に入ると正解のない中で判断が求められる。また、自分から一歩を踏み出したり、一人で抱えず他者と協力したりといった行動も求められる。さまざまな人とかかわる機会も増えるだろう。このように、大きな変化に直面しながらも、若手社員は理想と現実のギャップを埋めていかなければならない。企業の変化が激しくなる中で、社会に出る学生たちの戸惑いは大きいと、舘野氏は言う。

「一方で、実は学生が大学時代に得られる経験は、以前よりもリッチになっています。企業や地域と連携したプロジェクトやインターンを経験する人や、学生時代に起業したりする人もいます。そういう人たちが企業に入社して、『あせらずにまずは10年頑張りなさい』と言われると、逆に不安やギャップを感じてしまいます」

こうした学生は、多くの場合、新入社員研修の場でショックを受ける。プログラムの内容は大学時代にすでに経験してきたことであり、「またか」と感じるのだ。また、入社後に何かを提案しようと思っても、「まずは自分の業務をしっかりとやれ」と言われ、新人の意見はなかなか受け入れてもらえない。その結果、だんだんと元気がなくなっていく。

「若手社員の育成にはさまざまな議論のポイントがありますが、『新入社員の役割が変わる中で、関わり方をどのように変化させるべきか』『早く機会が欲しいという若手社員の扱い方をどうしていくか』『育成と活用のバランスをどのように取るのか』といった点が鍵を握っています」

会場との質疑応答

次に、参加者との質疑応答が行われた。

講演写真

Q:ありたい組織風土をつくるために、評価の面で工夫していることはありますか。

神谷:カヤックでは、あえて「ゆるさ」を残した評価をしています。評価項目を具体的に定めるということはしていないんです。あえてゆるく、「あなたが経営者だったら誰に給料をあげたいか」という視点で、メンバーのランク付けをしています。「面白さ」は主観で決まるものです。だから、厳密な評価項目を定めるわけにはいかない。評価項目を厳密に定めた途端に、社員全員が組織の決めた「面白さ」に従うことになってしまうでしょう。それは面白くないので。一人ひとりが、個々の価値観で相互に評価し合う。それぐらいのゆるさがちょうど良いのではないかと考えています。重要なのは、個々が評価プロセスに納得していることや、周囲に対する信頼感を持っていることかなと考えています。

浅岡:エイベックスでは、評価に「抜擢制度」を設けました。これまでは、1年間で昇格できるのは最大1段階と決まっていましたが、がんばりによっては2段階、3段階と昇格できる仕組みに変えたのです。挑戦して成果の出た人に報いるという点では、効果があると思います。ただ、カヤックさんと同様に、弊社でも「非金銭的な報酬」が大きな意味を持っています。好きな事を仕事として働いていることにやりがいを感じる人が多く、エイベックスで働くことによって世の中に何かを送りだすことに携わりたい人や、そこにモチベーションを感じている人が非常に多いのが特徴です。

湯澤:LIFULLでは、中長期にわたり成果を上げることができる能力と人格を備えた人を昇格させると決めています。人格にはビジョンやガイドラインの体現度なども含んで評価します。こうすることで、経営理念や企業文化と一貫性のある戦略立案と実行が可能になり、社員はより会社を信頼してくれるようになります。また、非金銭的な報酬については、新規事業提案制度のSWITCHをはじめ、内発的動機に基づいて自ら挑戦できる環境を整えることで、その機会を提供しています。

Q:クリエイティブな仕事や、イノベーションを生む仕事をするためには、没頭して時間の概念に捉われることなく働きたい、という社員も多いのではないでしょうか。こうした考え方と、「働き方改革」をどう両立していますか。

神谷:カヤックでは、「働き方改革」というキーワードはあまり耳にしませんね。そこまで口うるさく言っていないと思う。そもそも働き方改革は、中間層をいかに企業の労働力として活用するかという課題対応の側面からの展開されている国家施策ですよね。長時間労働の文化の中では、主婦や子育て世代は働きにくく、彼らの労働力を充分に活用できないリスクがある。そのために、長時間労働の文化改変を目的として進められていると理解しています。カヤックの場合は、誰であろうと働きにくさは自主的に改善できる土壌がある。労働時間を調整するなど、個々に裁量が任されていますので、あえて労働時間を厳しく管理することはしていません。子供の具合が悪ければ、周囲の社員にそれを伝えればいい。早く帰りたければ、周囲にそれを伝えればいい。それで済むことなので、特にルール化の必要はないのかなと解釈しています。労務管理は普通にやっていますが、やはり基本はセルフマネジメントであると認識しています。

浅岡:クリエイターにとって、そういった働き方も好ましい場合もありますので一概には言えません。
ただ現状、弊社では管理職以外は勤怠管理をしなければならない状態ではあり、少しでも時間に縛られない働き方のためにも、コアタイムなしのフレックス制度を導入しています。没頭したいときには没頭し、オフの時間を作って、色々なインプットをするなど、自らの勤務管理を規定の中で、自由に行う環境を整えています。現時点では、しっかりとしたオンとオフの切り替えを自らで行えるような環境で、力を発揮してもらい、並行して、裁量労働制などの検討もしていきたいと考えています。

湯澤:LIFULLでも、本人の内発的動機をもとに、やりたいことにどんどん挑戦して欲しいと伝えています。例えば、クリエイティブな仕事に携わる社員が業務時間の10%をイノベーションにあてることができる「クリエイターの日」という制度を設け、研究や開発に没頭できるようにしています。一方、「どの仕事に、どれくらいの時間をかけ、どれだけのパフォーマンスが上がったのか」を日次で把握できる「日次採算性」という仕組みも導入しています。一人ひとりが自分の仕事の付加価値を把握してBPRし、イノベーションのための時間を自ら生み出すことで、自分自身の働き方改革を進めてほしいと思っています。

講演写真

グループディスカッションとまとめ

質疑応答の後、テーブルごとにグループディスカッションが行われた。その内容も踏まえ、最後には舘野氏から「今後の論点」として、以下の五つの「まとめ」が提示された。

一つ目は「共通化と個別化の問題」。

「『一律に何時までに帰る』といったように、ルールで縛ることは難しくなっています。従業員一人ひとりの個別性を考えた上で、どう折り合いを付けていくかがポイントです」

二つ目は「自社のカルチャーの問題」。

「ルール以外で何によって縛るかといったら、それはカルチャーでしょう。しかし『自社のカルチャーは何ですか』と聞かれると、即答するのは難しい。また、言語化することで、それに捉われて決まった人たちだけを採用してしまうなど、新しいルールになってしまいます。どのように運用していくのかは、難しい問題だと思います」

三つ目は、「権限・役職以外で人を動かせるのかという問題」。

「組織がフラットになると、上司の権限で物事が決められなくなってきます。そこで求められるのが、若手でも自由に発言できる風土。しかし、いざそうなったときに、今リーダーの立場にある人たちは受け入れられるでしょうか。このようなリーダーシップの問題が顕在化しています」

四つ目は、「組織にいることの理由」。

「これからは、『仕事に熱中する』『自分の興味・関心のあることに注力する』といった、強い『個』が求められてきます。そうすると、そもそも組織にいる意味があるのか、といった問題も出てきます。今後、組織と個の関係を、改めて考えていく必要があります」

五つ目は、「採用のあり方」。

「これまで多くの企業が、採用基準をクリアし、自社のカルチャーに染まってくれる人を採用してきました。今後、自社にはいない人材、自社のカルチャーに風穴を開けてくれそうな人材が求められる中で、どのような選考プロセスを設けていけばいいのか。採用のあり方が変化してくるように思います」

今回のテーマは「若手社員の活躍」だったが、このテーマには、もっと大きな問題が内包されている、と舘野氏は言う。

「組織では、さまざまな問題が絡み合っています。「若手社員の活躍」を進めていくためには、他の部分を変えていかなければならないこともあるでしょう。しかし、そのきっかけとなる意味では、非常にいいテーマだと思います。登壇された三社もまだ変化の途中であり、絶対的な「正解」はありません。その意味でも、ディスカッションできたのは、非常に有意義なことだと思います」

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