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ホワイト企業だけが生き残る ~働き方改革のここだけでしか聞けない本音~

<協賛:一般財団法人日本次世代企業普及機構>
  • 玉上 宗人氏(RIZAPグループ株式会社 人事本部長)
  • 青野 誠氏(サイボウズ株式会社 人事部副部長 兼 チームワーク総研 研究員)
  • 小室 淑恵氏(株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)
東京パネルセッション [K]2018.12.25 掲載
一般財団法人日本次世代企業普及機構講演写真

働き方改革関連法の施行により、大企業では2019年4月、中小企業でも2020年4月に、残業時間の上限規制が設けられる。手探りで始まった働き方改革だが、今後、企業には具体的な活動が問われることになる。では、どのような企業が改革に成功できるのか。本セッションでは、RIZAPグループの玉上氏が企業改革をテーマに講演。その後、サイボウズの青野氏、日本次世代企業普及機構の評議員である小室氏を加えた三人によるパネルディスカッションを行い、「ここだけでしか聞けない働き方改革の本音」について語り合った。

プロフィール
玉上 宗人氏( RIZAPグループ株式会社 人事本部長)
玉上 宗人 プロフィール写真

(たまがみ むねと)三井住友銀行、広告会社を経て2007年株式会社ニトリへ入社。店舗運営、採用、商品部、広報、IR・SR、M&Aなど幅広く経験を積み、常務取締役 総合企画室長 兼 広報部長へ就任。4年間で時価総額を3倍に引き上げる組織基盤の構築に貢献した。2018年5月、RIZAPグループ株式会社へ入社。人事本部長として、80社以上あるグループ組織制度の統括をおこなう。


青野 誠氏( サイボウズ株式会社 人事部副部長 兼 チームワーク総研 研究員)
青野 誠 プロフィール写真

(あおの まこと)2006年早稲田大学理工学部情報学科卒業後、サイボウズ株式会社に新卒で入社。営業やマーケティング、新規事業「かんたんSaaS」や「KUNAI」の事業立ち上げなどを経験後に人事部へ。現在は採用、育成、制度づくりなどを担当している。2016年よりNPO法人フローレンスの人事部門にもジョインし、複業中。自ら多様な働き方を実践している。


小室 淑恵氏( 株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)
小室 淑恵 プロフィール写真

(こむろ よしえ)900社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げるコンサルティング手法に定評があり、残業削減した企業では業績と出生率が向上している。「産業競争力会議」民間議員など複数の公務を歴任。2児の母。


RIZAPグループ 玉上氏 :「人は変われる。」を証明する人事

「自己投資産業」を事業ドメインとするRIZAPグループ。美容・健康関連事業を始めとして、アパレル関連事業、住関連ライフスタイル事業、エンターテインメント事業など幅広い事業を展開している。同社人事本部長の玉上氏は、まずRIZAPグループの理念「『人は変われる。』を証明する」を紹介した。

「これが私たちの文化であり社風です。CMでも流れる『結果にコミットする』という考え方は、いわゆる逆算の考え方です。目標を定めてから逆算でアクションを決めていく。そして目標に寄り添っていくことで、人が変われることを証明しようというものです。人事も、人の無限大の可能性を引き出す場を提供するという考えに立って活動しています」

同社の理念の成果を表す事例が、グループ会社のジーンズメイトだ。昨年グループに入ったが、それまでは11期連続で赤字。しかし、ここに来て黒字転換が実現した。

「ジーンズメイトがグループに入ってから、社内では繰り返し議論が行われました。会社としてありたい姿を確認し、その方向に沿って社員一人ひとりがコミットメントできるようにした。やることを明確にし、幹部社員はそれに寄り添ってサポートを行ったのです。結果、社員の意識が変わり、行動が変わって、結果も変わった。この成功体験が、社員たちの自信にもつながりました」

講演写真

人が変われば組織も変わる。自分たちがあるべき姿を明らかにし、そこから逆算してやるべきことを考える。すると、諦めも希望に変わってくる。

「理想の姿を見せてあげることは大事だと思います。これは私たちが行うボディメイクと同じです。目標を高く掲げ、自分の限界を超えさせてあげる。会社には、どれだけ寄り添えるかが求められています。目標をクリアできればそれが自信になり、良いスパイラルに入っていきます」

働き方改革を行う際、人事はコスト削減に走りがちになるが、それでは本末転倒だ、と玉上氏は言う。

「働き方改革は、これまでのやり方を変えて、一人ひとりの稼ぐ力を向上させようという取り組みです。まず、現状を見直し、あるべき姿を決める。それを実現することが、『人は変われる』という証明にもつながります」

玉上氏は、働き方改革の一環として「健康経営」の取り組みについても紹介した。健康経営の根幹は、「企業が個人の健康にしっかり寄り添うこと」だ。RIZAPでは、法人プログラムをつくり、企業社員の生活習慣の改善を行っているという。まさに、高循環型の自己実現サービスを提供しているのだ。

「企業は人の集合体ですから、健康になり行動が変われば、個人の生産性も変わっていきます。私たちが目指すのは、人が豊かになり、企業も豊かになること。そうなれれば『次世代に残すべき素晴らしい企業=ホワイト企業』も増えていくのではないでしょうか」

パネルディスカッション:働き方改革に秘訣はあるか

続いて、サイボウズの青野氏を加え、日本次世代企業普及機構の評議員である小室氏の司会によるパネルディスカッションが行われた。

小室:2019年4月から働き方改革関連法が施行されます。最初にお二人に働き方改革への対応やご意見について、お聞かせいただけますか。

青野:有給休暇の取得義務化は多くの人の幸せにつながるのか、疑問に思います。休みたくない人まで休みなさいと一律で提示するのはどうなのか。「公平な人事制度は最大の幸福を生まない」と私は思っています。ノー残業デーはなぜ多くの企業で水曜に行われるのでしょう。この日に残業したい人もいるはずです。サイボウズでは100人100通りの人事制度を提示し、多様な働き方の実現を目指しています。在宅勤務や副業など、いろいろな働き方が可能です。ただ、会社にいるかどうかがわからないと非効率なので、「kintone」(キントーン)というクラウドサービスを使って、いつ社内にいるのかを宣言してもらっています。

講演写真

玉上:私は裁量労働制がネックだと思います。グループではいろいろな仕事をやっていますから、この部署はこうだ、と決められることは少ない。労働者の保護が押し付けになってしまうと、本末転倒ではないかと思います。

小室:私はこれまで、働き方改革に成功したパターンと、失敗したパターンを数多く見てきました。法令の施行などで追い込まれてから行う改革は、明らかに悪循環を引き起こしますね。従業員に改革の意味を丁寧に話すこともできず、実際に何を変えてほしいかと意見を吸い上げる時間もない。ただ法律に合うように変えていくだけでは、気持ちが離れた従業員は離職してしまいます。対称的に、12年も前から改革を行われているサイボウズさんのような、先行して改革を行なわれる企業は、よい人材を先取りできます。多様な人が集まればイノベーションが生まれ、ブルーオーシャンを取れるという好循環のサイクルが起こるでしょう。次の質問ですが、お二人は、働き方改革の秘訣は何だと思われますか。

青野:「働く」ということを考えるうえで、とても大切だと思うのが、評価や給与の決定です。実は、サイボウズでは最近、給与交渉をする人が増えています。ある社員は、昨年の交渉で14%も給与がアップしました。彼は、給与交渉のために転職活動をしてみたそうです。なぜこのような動きが生まれているかというと、弊社では『市場価値』に基づいて給与のベースを設定しているんです。

小室:市場価値は、どのような基準で定めているのでしょう。

青野:例えばプログラマーの今の平均年収データを国や転職支援会社から持ってきたり、当社に中途で応募する人の給与額を年齢と職種でプロットして相場を共有したり。「この仕事にはこんな市場価値が世の中にある」というデータを、なるべく社員に提示しています。そのうえで上司から「あなたはいくらほしいのか」と確認。希望を聞いて決定することで、納得感を上げています。しかし、社員の満足度調査などを見ても、まだまだ改善の余地があると感じています。

小室:転職者のデータを使っていたんですね。これはすごいノウハウだと思います。多くの会社では、評価を「成果を出しているか」と、「勤務時間の長さ」の2軸で判断しています。順当に考えると、「成果が高くて、時間が短い人」がもっとも生産性が高く、評価されるべきですよね。でも、昇進・昇格することが多いのは、実は「成果が高くて、時間が長い人」なんです。この人たちはさらに残業代ももらえますから、「長時間労働のほうが得」という考え方になり、社員が皆、そちらに寄っていくのです。

講演写真

こうした課題に対して、参考になるのが、リクルートスタッフィングさんの事例です。同社では、ある一定以上の労働時間数を超えた人の評価を、最低ランクにしたんです。さらに危険な時間数になった人は、評価圏外。そして、このような人を一人でも発生させたチームは年間の表彰を受けられないようにしました。結果、深夜労働は86%削減されました。ワーク・ライフバランスが実現できたからか、家庭を設ける人も増え、出産する人の数は1.8倍に。それでも、企業の業績は12%アップで成長しています。やはり、これからは時間当たり生産性を高めていくことがポイントになると思います。RIZAPさんはいかがですか。

玉上:結果にコミットさせるという意味から、今は一人ひとりに「役割を与えること」を徹底させています。当社は中途者が多いのですが、以前は入社時の給与を、前職に合わせて決定することもありました。ところがそれでは、もともといた従業員の給与テーブルとのかい離や、仕事のミスマッチが起きてしまいます。そこでやり方を変え、実際に入社して行った仕事をもとに、給与を決定する仕組みを導入しました。

現在は、タレントマネジメントのシステムに、自分はどんな経歴があり、どんな仕事ができるのかといったデータ登録を進めています。管理職はそのデータを見て、「この人材がほしい」と指名できるようにしたいと考えています。もう一つ行っているのは、余剰人材の活用です。グループには業績がよくない企業もあるため、「キャリザップ」というプラットフォームをつくり、グループ内転職を進めています。人事本部ではそのために、今年、人材派遣業の免許を取りました。

パネルディスカッション「これから評価される企業指標とは」

小室:日本次世代企業普及機構が選定する、ホワイト企業認定では、「法令遵守」「ビジネスモデル/生産性」「ワーク・ライフバランス/健康経営」「柔軟な働き方」「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」の六つの指標を設けています。これらの項目の中で、他社に誇れるような先進的な取り組みがあれば、お聞かせください。

青野:「人材育成/働きがい」についてお話しします。私たちはかねてより、社員に自律を求め、「自分で将来の道筋を選んでほしい」と伝えていました。しかし、伝えるだけではなかなか浸透しなかったんです。そこで作ったのが、社内での求人募集の仕組み。これは、メンバーを募集している部署が、kintoneのシステム上にある「やくわリスト」に求人情報を出し、それに対して希望者が意思表示をできるというもの。手を挙げた結果は、本人にもフィードバックされます。併せて、募集先の仕事を知るために仕事体験ができる「大人の体験入部」という仕組みもつくりました。もし行きたい部署の求人がなければ、異動希望を示せる「マイキャリ」という登録制度もあります。

玉上:私たちが誇れるのは「柔軟な働き方」です。当社の代表は「働いた時間でなく、成果で評価する」と常々言っています。そのため、強制的に残業を求めるようなカルチャーはありません。これはまだ制度化はできていませんが、うまく制度化してグループ内に浸透させたいと思っています。

小室:さまざまなご意見をありがとうございました。私が最近、変わったなと思うのは企業と従業員のパワーバランスが逆転したことです。いい人材が採用できない企業は、生産性が上がらず、経営も立ち行かなくなります。もう一つ変わったと思う点は、日本の投資家です。ここ1、2年で、投資先を検討する際に、ヨーロッパの投資家のように「健康経営」や「働きやすさ」という観点を持つようになりました。2017年7月には、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)という指標もできています。これは男女の平均勤続年数の差異や女性管理職比率、平均残業時間などを業界ごとに一律で見られるもので、指標で業界の上位50%に入らないと投資が受けられないルールがあります。経営者から見れば、こういった項目をクリアしなければ、投資も受けられない時代になりつつあるということです。皆さんもこうした新しい動きに目を向けていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

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一般財団法人日本次世代企業普及機構は21世紀、またそれ以降の世紀にも残すべき素晴らしい中堅中小企業を発掘し、認定し、表彰をする目的で2015年に誕生しました。そのような素晴らしい会社を、その取組を称賛し世界の多くの方の目にとまるよう、活動してまいります。

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