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富士フイルムの事例から考える
“事業を成長させるリーダー”をいかに育成するのか

<協賛:株式会社グロービス>
  • 太田 雅弘氏(富士フイルム 執行役員/富士フイルムアジア・パシフィック 社長/富士フイルム(中国) 董事長)
  • 西 恵一郎氏(株式会社グロービス コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター)
パネルセッション [M]2020.12.15 掲載
株式会社グロービス講演写真

日本企業の成長の鍵となるのが、事業成長を実現させるリーダーである。国内であれば、事業部門の成長、事業投資先の経営を担いビジネスを成長させる。海外であれば、経済成長が特に見込まれるアジア市場における、現地法人リーダーの存在が非常に重要である。海外企業との競争も熾烈となる中、グローバル市場で事業を成長させるうえで、リーダーに求められる資質や経験は何なのか。富士フイルムの太田氏による中国・アジア・アメリカにおける海外経験を踏まえた講演と、グロービスの西氏を交えた議論から、グローバルビジネスに限らず、事業を成長させるリーダーに共通するポイント、組織風土改革や人事育成のポイントを、ひもといていった。

プロフィール
太田 雅弘氏( 富士フイルム 執行役員/富士フイルムアジア・パシフィック 社長/富士フイルム(中国) 董事長)
太田 雅弘 プロフィール写真

(おおた まさひろ)1957年東京生まれ。1980年富士フイルム入社、中国合弁販社社長、米国販社社長、中国地域本社長、本社グラフィックシステム事業部長を歴任し、現在アジア・パシフィック地域本社長・シンガポール駐在。伸びしろの大きいアジア市場にて、各事業の成長を目指し変革と幹部人材の育成に取組み中。


西 恵一郎氏( 株式会社グロービス コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター)
西 恵一郎 プロフィール写真

(にし けいいちろう)大学卒業後、三菱商事にて不動産証券化、商業施設開発等のプロジェクトマネジメントに従事。グロービス入社後はグロービス初の海外法人を立上げ、現地にて経営を行う。現在はコーポレート・エデュケーション部門マネジング・ディレクター兼中国法人の董事を務める。戦略、リーダーシップ、自社課題等の講師を担当。


グローバル市場において存在感を増すアジア

本セッションの冒頭では、西氏が株式会社グロービスの事業概況を説明した。経営大学院とコーポレートエディケーションを主軸としてビジネスを展開し、2,120社の顧客基盤を有するグロービスは、研究開発部門により培った経営知を還流させている。

グロービスの法人部門でサポートしているのは、企業における「人づくり」と「事業づくり」。人づくりについては、「明日を創る人を創る」をテーマに、役員研修や選抜育成、タレントマネジメントを5年以上の長期にわたって支援している。事業づくりについては、1〜3年の期間で理念策定から浸透、戦略の立案実行などのフォローをしているという。

講演写真

続いて、富士フイルムの太田氏が講演を行った。現在、同社のアジア・パシフィック地域本社長としてシンガポールに身を置く太田氏は、今後の世界経済の展望について次のように語った。

「これからの世界経済の成長は、欧米からアジアにシフトしていくと見ています。日本企業にとって、グローバル市場、特にアジアの事業強化は外せない課題ですが、昨今は中国企業との競争環境が大変熾烈になっています。このような環境で勝ち抜くために、海外市場の事業成長をけん引するリーダーの育成が強く求められています」

太田氏は、アセアン・インド市場の市場概況について語った。現在の日本の対外投資収益に占める割合はアセアンが18%、中国が16%。これらを合わせると、欧州(20%)、米国(20%)を凌駕する。2022〜2024年の市場成長率予測を見ても、アセアンが5〜7%、インドが7〜8%と高い水準だ。

「インドの人口は13.5億人に上り、毎年の出生数が2,500万人に達しています。毎年、オーストラリアの人口に匹敵する人口が増えているのです。2050年には、インドを含めたアジアの世界GDPにおける構成比は50%を超えると予測され、インドの台頭は今後のグローバル市場において外せない要素と考えています」

こうした世界経済に対する視点のもと、富士フイルムでは、「コロナ下の各現地法人の経営健全化」「コロナ後を見据えた各事業の中期販売戦略立案」「成長をけん引する変革リーダー育成」「現地パートナーとの協業強化」「インド法人の成長基盤づくり」「各現地法人のガバナンス強化」に取り組んでいる。

グローバル市場で戦えるリーダーの四つの資質

太田氏は、2003年に中国の現地法人の社長として事業の立ち上げや経営安定化に取り組み、2008年からは米国法人の社長を務めた。その後、2012年に地域本社長として再び中国に戻ったときに、組織づくりの面で課題を感じたという。

「2012年の中国は経済成長率が鈍化し、現地で働く人材にかつての高成長時代に見られたハングリー精神が感じられなくなっていたのです。若手優秀人材の離職率も高く、現地の従業員からは、『頑張っても給料が変わらない』『中国人はトップになれない』といった声が聞こえてきました。実際、現地マネージャーの多くが生え抜き人材で人材が固定化している状況が見られ、中国経済の成長鈍化という外部要因だけでなく、会社組織風土の問題をはじめ内部要因も認識しました」

講演写真

その後、中国法人の組織文化改革に着手した太田氏は、他社から新たな人事部長を招き、人事改革に着手。社員等級や目標管理、昇格制度などを実力主義に刷新し、公平・透明性の確立を図った。

「現地法人の半分くらいの幹部ポジションを現地人材に入れ替えたところ、登用された人は目の色を変えて実績を上げてくれました。現在に続く業績の成長も、彼らの力が大きいと考えています」

太田氏は、人材のパフォーマンス向上に加え、”組織力”の向上も目指した。幹部層の組織マネジメントアップ研修をはじめ、横断チームで高いレベルの変革課題プロジェクトなどを実施。現在はアジア・パシフィック地域の現地法人トップのリーダーシップ強化・育成や将来のリーダー層の現地化を見据え、人材アセスメントや育成に取り組んでいる。

「さまざまな変革の場面で私が現地のリーダーに話をしているのは、現地法人長は”上がり”のポジションではない、ということ。難しい課題に取り組み、その経験を次のステップアップにつなげてほしい、という思いがあります。そのために現状から視座を一段高く上げたストレッチ目標を設定しているため、簡単にクリアできないのですが、諦めずに対策を考え抜いて行動してもらうことが彼らの成長につながります」

次に太田氏が話したのは、事業成長をけん引するリーダーが直面する課題について。中国、シンガポール、日系企業の幹部と話をするなかで、太田氏は各社が共通した課題を抱えていることを知ったという。

「M&Aを実施後、期待したリターンが得られず、シナジー・ガバナンスの問題から計画した収益が上がらない企業は少なくありません。また、中国企業との価格競争が激化し、低価格に加え品質も上がっているためシェアを奪われている。新規事業の垂直立ち上げや組織再編によるスリム化、コスト削減、事業撤退といった課題に取り組む必要があります」

こうした課題に対処するためには戦略を確実に実行し成果を生み出す組織づくりが重要であり、事業成長を牽引できるリーダーが求められる。太田氏は、未経験分野や難易度の高い課題に取り組む機会が増える今、リーダーに求められる資質・マインドとして次の4点を挙げた。

(1)現場を重視する
(2)ストレス耐性が強い(楽観主義)
(3)状況(悪い報告)を受け入れ、スピーディーにアクションする
(4)人に対する関心が高く、人材を見極める力がある

成功体験だけでなく失敗体験も重要

続いて、リーダーに求められる資質・マインドを中心に、太田氏と西氏によるディスカッションが行われた。

西:事業責任者に登用するかを見極める際に、特に見ていることは何でしょうか。

太田:人にはそれぞれ、得意と不得意がありますよね。共通した要素としては、現場に出向くフットワークの軽さや、お客さまと交渉できるコミュニケーション能力が挙げられます。部下に報告して指示するだけでなく、自ら現場に入り込んで状況を把握することのできる人は成功できると思いますね。部下の報告が正しいとも限りませんし、戦略を考えても、部下が執行しきれないこともありますから。現場を実際に見て、判断しアクションする姿勢が重要です。

西:自分でアクションができて、ハンズオンでチームを引っ張れることができるけれど、人を育てることは難しい、という人材もいるかと思います。どういった人材が、部下の育成においてもパフォーマンスをあげられるのでしょうか。

太田:人に対する関心も重要だと思います。現場に出て全部自ら執行するのではなく、いかに部下の行動や考え方に関心を持てるか、また指導できるか。多様な複雑な問題は組織で解決する、部下を的確に動かして成果につなげていくことが、リーダーの資質といえるでしょう。

西:事業を立て直す局面などのシビアな状況において、日本では対応できていても、現地ではできないというケースもあると思います。

講演写真

太田:これも常日頃から思っていますが、成功体験だけを積み上げてきた人よりも、どこかで壁にぶつかって、失敗した経験のある人の方が伸びるように感じています。海外ではどうしても文化や風土が違いますから、つい環境を言い訳にしがちです。でも日本の本社の仕事でも厳しい状況はありますから、そうしたなかで苦労してきた人は、自分のあり方にベクトルを向け考え方や行動を変えていくことができるため、現地で力を発揮します。

西:太田さんは人事制度改革にあたり、他社から改革の実績ある人事部長を招いたとのことですが、やはり事業会社や現地法人において、経営の右腕でありパートナーとして活動できる、人事責任者を採用することは重要なのでしょうか。

太田:これはアメリカでの経験なのですが、大規模な人員削減を実施したときのことです。   リーマンショックによる経営悪化で大きなリストラをせざるを得ない事態に直面し、現地の法律を遵守しながら、優秀な人材を残すのは、日本人だけでは難しい。そこで、アメリカの制度や会社内部の人材アセスメントに精通した現地の人事部長とさまざまな視点から協議をして、計画をうまく進めることができ、経営健全化を達成できました。

また、中国では、私が採用面接でいいと思った人材に対して、中国人の人事部長からクエスチョンがついたことがありました。そこで経歴を調べたら、問題が発覚しました。やはり、日本人と現地の人の見方が違うこともあります。海外で強い組織を作っていくには、現地の状況・人の理解・評価に精通した、有能な人事部長を右腕として置いておかないと難しいでしょう。

西:先ほどの講演で、「現地法人長は上がりではない」というお話がありましたが、海外で経験を積んだ人材は、その経験を日本に戻ってからも生かせるのでしょうか。

太田:これは日本企業にとって、深刻な問題だと思っています。先日、あるIT企業の方と話す機会があったのですが、多くの優秀な海外人材や若手人材が、いわゆるGAFAなどに転職している、と。当社の場合、新規事業の領域が広がっていることもあり、チャレンジングな仕事を与えられる機会が多く、辞めていく人材は少ないのですが。海外の経験を生かせるチャレンジングな仕事を与え、さらにステップアップしてもらう仕組みが必要なのではないでしょうか。

西:能力や経験をきちんと把握して、次のチャレンジをどうやって作っていけるか。これができないとタレントが外に出ていく可能性があるというわけですね。

危機に直面して得られる成長

西:事前に質問が寄せられているので、いくつかお聞きしたいと思います。まずは「画期的な事業展開を行う上で何が一番大切なのか」「成長段階で諦めるべきでないものとは何か」という質問がきています。

太田:事業戦略が正しいとしたら、それを確実に執行し、達成することに尽きます。でも、これが意外と難しい。日本で考えた戦略を現地に合わせて落とし込んでいかないといけませんから。現地のマーケットや競争環境、顧客のトレンドなどに精通したリーダーがいなければ、素晴らしい絵を描いても実現は難しいでしょう。

西:「部門ごとに求められるリーダー像が異なる中、どのように共通項を見出しているか」「リーダー候補には各部門のローテーションを行っているのか」という質問についてはいかがでしょうか。

太田:それぞれの部門の役割は異なりますが、求められているリーダー像は共通のように思います。この時代に事業を成長させるリーダーにとってはやはり「変革」が求められているのではないでしょうか。当社では、部門長や幹部クラスを育成する場を作っており、ローテーションも国内海外問わず状況に応じて進めています。

西:次に、本日の視聴者の方からの質問です。「人材を見極める力は育成可能なのか」という点についてお聞かせください。

講演写真

太田:なかなか難しい質問ですね。やはりまず重要なのは人に関心を持つことですかね。私が現地の人間を見るときは、打ち合わせだけでなく、顧客訪問にも同行して、どのように商談を進めるかを見ています。また、移動や食事の場面などでのちょっとした会話からも、ヒントになること多いです。自分の見方について部下の各現法トップとすり合わせて、人材評価の重要性を理解してもらっています。

西:最後の質問になりますが、太田さん自身は、今までストレスがかかったとき、どのように乗り越えてこられたのでしょうか。

太田:一番苦しかったのは成長していた中国から、リーマンショックに直面したアメリカに異動したときです。売上の低下はもとより、取引先の経営破綻による売掛金の未回収やキャッシュフローの心配など、さまざまな問題がおきました。このような状況に直面しきわめて苦しいものでしたが、ここを乗り越えるとこれから先怖いものはないと考えました。振り返るとこの経験がキャリアの中で最も成長を実感できました。

西:それでは最後に、視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

太田:私は中国で外資系のグローバル企業のリーダークラスと接する機会が多かったのですが、彼らは中国で高い売上実績をあげています。彼らと比べて日本人が劣っているとは決して思わないのですが、一つ大きな違いは、「課題に取り組むスピード」です。例えば普通は1年近くかかるようなプロジェクトも半年で彼らは進めている。こうした現実を見て、また昨今の変化の激しい時代においては、よりギアを上げてスピーディーに課題解決を図っていけるリーダーを育てること、日本企業にとって重要と感じています。各社さんのリーダー育成に参考にしていただきたいと思います。

西:本日はありがとうございました。

本講演企業

企業の経営課題に対し人材育成・組織開発の側面から解決をお手伝いします。累計受講者数約130万人、取引累計企業数約4300社の成長をサポートした経験から、「企業内集合研修(リアル/オンライン)」「通学型研修(リアル/オンライン)」「動画学習サービス」「GMAP(アセスメント・テスト)」など最適なプログラムをご提案します。研修は日本語・英語・中国語のマルチ言語に対応し、国内外の希望地で実施が可能です。

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