106社11,500名以上の管理職の傾向に見るテレワーク環境下のパワハラ予防と予兆管理
- 平井 俊宏氏(管理職用Web適性検査「パワハラ振り返りシート」共同開発者/有限会社グローイング 代表取締役)
コロナ禍によるテレワーク環境でも新たなパワーハラスメントは起きている。管理職教育用Web適性検査「パワハラ振り返りシート」を開発した平井氏によれば、行動として発現する前の内的な行動に焦点を当てることで、事前に予防や予兆管理ができるという。どんな人がパワハラを起こしやすいのか、どうすれば予防できるのか。平井氏がその方法を解説した。
(ひらい としひろ)「一体感のある組織づくりで組織と個人の成長に貢献する」がミッション。パワハラ予防、最適配置支援等に携わる。パワハラ振り返りシートは2017年9月リリース。ワールドビジネスサテライト等が取材。メディアにも注目を浴びている。
誰でもいつの間にか、ハラスメントをしている可能性がある
グローイングは「一体感のある組織づくりで組織と個人の成長に貢献する」をミッションとして、適性検査、研修、コンサルティング事業を展開している。提供する管理職教育用Web適性検査「パワハラ振り返りシート」は、パワハラ行為者になる芽が自分自身のどんな特性にあるのか、管理職自身に自覚させて予防する検査だ。3年の開発期間を経て、2017年9月にリリースし、翌年4月から企業への本格導入が始まった。現在までに106社、1万1,500名の管理職が利用している。導入企業の規模は、社員数20名以下の企業から数万人規模までさまざま。グローイングでは検査結果を活用したパワハラ予防研修も実施している。
他にも、グローイングでは、求める人物像にマッチした候補者を見極める採用検査「行動価値検査グローイング」や、上司-部下の相性を定量的にマッチングし、最適配置を実現する「グローマッチ」を提供。行動価値検査は36問、実質10分のウェブ適性検査。企業規模、業種、職種、階層を問わず、採用・配置・教育のシーンで活用され、これまでに約10万人以上が受検している。
代表の平井氏は、これまで約1万1,500名の管理職にパワハラ振り返りシートを活用してもらう中で、パワハラの本質として分かったことが二つあると語った。一つ目は、『関係性の質』だ。例えば、バカという言葉も、愛を感じるバカと侮辱にしか感じないバカがある。これは言葉を発した相手と自分の関係性の質の違いから生まれるものだ。
「相手の感情は、相手がこれまで培ってきた経験や信念、価値観から生まれます。ただ相手を変えることは難しい。しかし、変えられるものもあります。それは相手の反応です。自分のあり方や働きかけ方を変えることで、相手の反応を変えていくことができるのです。。そうした相手の反応の変化の蓄積が、いわゆる『行動変容』や『意識変容』と呼ばれるものになり、関係性の質の向上につながります。パワハラ振り返りシートは相手・周囲との関係性の質を高めていくために、自分自身のどんな部分を軌道修正していくべきかのヒントを提供するものです」
平井氏がパワハラの本質として挙げた二つ目は、『無自覚』だ。2018年の厚生労働省の調査資料をひもとくと、パワハラ行為者の54%が無自覚であったことが見えてくる。
「やっている人ほど、やっていると思っていません。管理職は往々にして独りよがりになりやすいもの。なぜなら、アスリートだったら、自分の動きを鏡に映したり、動画を撮ったりして軌道修正ができます。しかし、ビジネスパーソンは自分の立ち振る舞いを客観的に見られません。また、人はポジションが上がるにつれて、一目置かれるようになってしまい、他者から指摘される機会もなくなります。例えば、360度調査を行っても、そこに部下の忖度(そんたく)が働き、調査結果が真の姿なのかわからない、という意見も聞かれます。また、長く生きてきて、自分のことは十分にわかっている感や、管理職としての自負・自己肯定感もあるでしょう。また忙しいと、自分を振り返る余裕もなくなります」
だからこそ、「管理職は鏡をのぞいてみることに意義がある」と平井氏はいう。
実際にパワハラ行為者と認定された人にありがちな言葉が紹介された。例えば、「多少は厳しかったかもしれないが、成果をあげるためには彼を強く指導する必要があった。」「彼の仕事は本当にひどかったので、私は間違った指導をしたとは思っていない。」といった言葉だ。
「管理職としての役割を全うしているつもりで、いつの間にかハラスメント行為をしている可能性があります。自分の中にある、パワハラ行為者となりうる可能性について、管理職の皆さんに気づきをパワハラ振り返りシートで客観的に得て欲しいと考えています」
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