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失敗例・成功例から学ぶ 人材データ・システム活用に成功するポイント 

  • 大島 由起子氏(インフォテクノスコンサルティング株式会社 セールス・マーケティング事業部長)
特別講演 [L-7]2020.12.15 掲載
インフォテクノスコンサルティング株式会社講演写真

日本でタレントマネジメントシステムが導入されるようになって10年が経過するが、ここへきて企業からは「うまく活用できていない」「思ったような成果が出ていない」という声が聞かれるようになった。それと並行して、「HR テクノロジー」や「HR DX」など、新しいキーワードが登場し、その導入を勧める声が大きくなってきている。タレントマネジメントシステムの導入で起きた本質的な失敗の構造を理解しないまま、新しいキーワードに飛びついても、同じような失敗を繰り返すだけである。長年人材マネジメントシステムの開発と導入支援を行ってきたインフォテクノスコンサルティング(以下「ITC」)の大島氏が、この10年の失敗例を紐解くと同時に、成功事例も整理しながら、人事のシステム導入・活用の成功のポイントについて語った。

プロフィール
大島 由起子氏( インフォテクノスコンサルティング株式会社 セールス・マーケティング事業部長)
大島 由起子 プロフィール写真

(おおしま ゆきこ)株式会社リクルート、Hewlett-Packard Australia LtdのAsia Pacific Contract Centreを経て、2004年より現職。企業の人材マネジメントにおけるIT活用推進の支援を行う。著書:『破壊と創造の人事』(楠田祐・共著)ディスカヴァー・トゥエンティワン


なぜ、導入したタレントマネジメントシステムで成果を出せないのか

ITCは、「Rosic人材マネジメントシステム」を開発し、日本で一般的な「タレントマネジメントシステム」が販売される以前の2003年から、その導入、活用支援を続けている。その経験や知見をベースに成長・拡張してきた「Rosic人材マネジメントシステム」は、現在、人事が課題を発見・解決し、経営やビジネスに貢献していく基盤として、約180社の企業に日々活用されている。大島氏は、このシステムの立ち上げのためにITCに参加し、約17年間、「人事とシステム」「人事とデータ活用」について考え、活動をしてきたという。本講演は、そうした長年の経験に基づく、地に足のついた骨太の内容となった。

「タレントマネジメントシステムを導入したけれど、簡単な閲覧にしか使えていない」「IDを配布したが、ほとんどアクセスされていない」「システム導入したが、タレントマネジメントが根付いている実感がない」。大島氏は、このような「成果を上げられていない」人事の、具体的なコメントを紹介することから講演を始めた。

「日本でタレントマネジメントシステムが導入され始めたのは、2010年前後です。そんななか、ここ2、3年、成果が出せていないという声を多数聞くようになりました。ここでいう『成果』とは、経営やビジネスに貢献できている、もしくは従業員や組織に良い影響が出ている、人事の業務の質が上がっていることを指します」

大島氏は、こうした失敗の原因のひとつは、世の中にあふれている「魅力的な解決策」「正解を出してくれるように見える方法論」ばかりに意識が向けられているからではないか、と指摘する。

講演写真

「最近は『後継者選抜・育成計画支援』『目標管理・パフォーマンス管理』『適正配置支援』『モチベーションアップ』『1on1ミーティング』『OKR支援』などといった言葉をよく耳にします。いずれも、課題を解決していくための解決策や方法論です。これらは非常に魅力的に見えます。また、こうした施策で成果を上げている他社事例なども耳にして、頭から否定することも難しい。そのため、そうした解決策や方法論が解決しようとしている『課題』が、あたかも自社でも優先順位の高いものであるかのように錯覚してしまう、ということが起きているように見受けられます。

自社の課題を解決して前に進もうとするなら、まずは一般論ではない自社の状況をしっかりと把握することが何より重要なはずです。その土台の上で自社の課題を整理する。同時に自社が目指すべき「ありたい姿」を明確にし、現状とのギャップを洗い出す。そしてそのギャップを埋めるために必要な方法論や解決策を選んでいく、というのがあるべき思考・活動の流れです」

そこで選択した施策を実行してPDCAを回していく。そのためには何が必要なのか、どんなシステムやデータ活用が必要なのかという発想をベースにシステムを選ぶ必要がある。しかし、こうした流れを経ずに、魅力的で否定しづらい解決策に飛びついてしまうので、自社の重要な課題の解決にはつながらす、結果「成果」が上げられていないのではないか、と大島氏は語る。

「システムで成果を出そうと思うなら、大前提として、人事や経営層が人材マネジメントの全体について考え、グランドデザインを描くためのシステム・インフラが必要です。そしてそこでは、目指す姿に向かっているのか否かを検証できることも重要です。タレントマネジメントシステムというと、無批判に『まずは従業員にIDを配るもの』と考える方が少なくないようですが、ふたを開けてみると従業員がアクセスしてくれないという状況に陥ってしまう。これは、しっかりとした土台を持たないために、正しいas is /to beを描けていないことが原因のひとつでしょう。」

成果につなぐには「自社にとって何が必要か」という適切な問いかけが不可欠

では、システム導入で成果を上げるために押さえるべきポイントとは何か。大島氏は前提が三つあると語る。一つ目は、戦略分野をサポートするシステムであれば、各社にとって必要で成果を出せるシステムは異なる、と考えて取り組むことだ。ベンダーが「何百社、何千社に導入されたシステムです!」と言ったとしても、それはシステムの信頼性や安定性を担保しているだけであって、自社の成功を100%保証するものではない。

二つ目は、タレントマネジメントシステム、HRテクノロジー、HRDXなど、言葉のイメージに捉われすぎないこと。理解することは重要だが、「それらを取り入れなければ乗り遅れる」などと、短絡的に飛びつかないことが肝要である。

三つ目は、ベンダーが提示してくる、さまざまな機能と冷静に向き合うことだ。ベンダーは華やかで魅力的な機能をどんどん提示してくる。しかし、自社で本当に活用できるのかどうかを冷静に判断する必要がある。

その上で、システムでサポートすべきことは何かを明確にしていくことが重要になる。ここで大島氏は、成功のヒントを三つ挙げた。一つ目は、「今ある人材マネジメント業務の高度化を目指すための効率化」をサポートする視点だ。

「タレントマネジメントというと、何か新しいこと、これまでにない挑戦をすることと考える傾向があります。しかし、多くの会社では、綿々と続く『人材マネジメント業務』があるはずです。具体的には、要員計画や組織編成、異動配置、評価、目標管理などです。人事の方とお話をしていると、こうした業務はプロセス管理のレベルに留まっていることが多い印象です。本来これらに求められている価値創造への貢献には至っていない。それを阻んでいるのが、俗人的な手作業の多さではないでしょうか。本来期待されている価値を生み出す、それ以上の価値を創造していくために、システムで業務効率化を徹底的に支援することが必要だと思います。ただし、ここでいう効率化は、単に今の手作業をそのままシステム化するのではなく、価値を生み出すために行うものです。システム化に伴って、思い切って業務を見直す勇気も必要です」

二つ目は、経営やビジネスの意思決定のための情報提供の支援を行う、という視点。経営層・ビジネスのトップが意思決定をするために、求める人材・組織にかかわる情報を、タイムリーかつ適切に提供する。高度な判断をするために必要とされるレベルのデータ提供をしていく、ということである。

「いわゆる人材データだけでは高度な経営判断はできません。また、経営層・ビジネスのトップは、固定帳票を見ただけでは満足しない。彼らの思考プロセスに合わせた情報提供を、タイムリーかつ柔軟に行うには何が必要かを、真剣に考える必要があります」

三つ目は、人事がビジネスパートナーとなれるだけの力をつけるために、システムを活用するという発想だ。人事が経営・ビジネスの成功に向けて、人材マネジメントのグランドデザインを描くためのインフラを武器として手に入れる。自社の現状を把握し、課題を発見して解決の優先順位をつけ、仮説を立てて検証し、課題解決策を立案・実行し、PDCAを回していく。そのための土台構築をシステムでサポートしていく、ということだ。

「定型テンプレートだけを見ていても、自社の生々しい現状は見えてきません。人事のプロとして覚える違和感や、思考の『ああでもない、こうでもない』に寄り添ったデータ活用ができることが重要です」

講演写真

大島氏はここで、「データ活用」に焦点を当てていく。今、「人材データ活用」に注目が集まっているが、成果が出せていない企業が多いのには、構造的な問題があるからと考えているからだ。

「データ活用で成果を上げていくために、『人材データをマネジメントする』という発想を持つことが重要です。まず、確実に必要なデータを集め続けられる仕組みを持つこと。複数のシステムにデータが散在しているケースでは、ここでつまずきます。そして次に、活用できるように格納することです。人事はさまざまな種類の履歴情報を扱うことが求められます。基準日といった考え方も入ってくる。これを自分たちが使えるように格納するのは、決して簡単なことではありません。そして、合理的に格納したものを、活用する人の目的やレベルに合わせて柔軟に取り出せる仕組みがあることも求められます。こうした『下支え』が合って初めて、柔軟なデータ活用のスタートラインに立つことができます。

そのあとは、与えられたテンプレートを淡々と眺めているだけでは何も生まれません。自社の課題を発見する、解決策を立案実行していく、その中で得た経験・知見からデータ活用の質を上げていく、というサイクルを回していって初めて、データ活用で成果を上げていくことができます」

そのうえで大島氏は、「人材マネジメント、タレントマネジメントは、予測の難しい未来を考えること」であると指摘した。

「活用しようとしているデータは、あくまで過去の積み重ねです。過去の積み重ねを、予測の難しいありたい未来につなげていくには、自社にとって何が必要なのかという、適切な問いかけが必要です。そこからのフィードバックを得ながら、問いかけの質を上げていく、という地道な努力が重要です。」

そして、「データ活用で成果を上げていくためには、堅固な土台があってこそ、自社にとって適切な問いがあってこそです」とまとめた。

事例に見る成功要因は「価値ある一元化」「現状とありたい姿の把握」「既成概念からの脱却」

ここから大島氏は3社の事例を紹介した。1社目はメーカーの技術部門だ。部門だけで5000人もの大組織。テーマは「技術力強化のために何から手をつけるべきか」。ビジネス環境が大きく変化し、コア技術の変化もどんどん起きている。技術力の強化という課題は常に認識されているが、何からどう手をつけるべきなのかが明確になっていない、という問題意識があったという。

人材に関する情報は、複数のシステムと担当者のエクセルに分散して蓄積されていた。そのため、技術者がどこでどれだけのスキル・経験を積んできたのかなどを俯瞰することが難しかった。そこで、既存システムを生かしながら、活用意図に沿った一元化と見える化を実現することに優先的に取り組んだという。

「一元化のプロセスでは、技術分類を最新の事業環境に合わせて見直し、整理し、割り当てました。単に今ある情報をそのまま入れない、ということです。スキルとそのレベルだけでなく、対象技術に関わるプロジェクトへの関与とそこでの役割歴など、判断で必要になるデータも整理して一元化しました。いわゆる人事情報だけでなく、必要な情報を使える形ですべて取り込んだということです」

結果、把握できた課題は、将来コアになっていく特定の技術分野の技術者が早晩足りなくなることだった。技術者の早期育成、もしくはこれから需要が減っていく技術を持つ技術者の再教育、中途採用に早く手を打っていくことが必要であることが明確になった。

「経営層とスピーディーに情報共有ができたことで、早急に予算化し、優先的に教育プランと採用計画を立案し実行できました。ここでの学びのポイントは、本当の課題を見つけ、優先順位をつけるために、価値のある一元化の実現に地道に取り組むことの大切さです」

2社目の事例は、5000人ほどのメーカーだ。テーマは課題の本質に向き合うこと。問題意識は、事業部で現場の人材マネジメントの質にばらつきが起きている、ということだった。事業部のマネジメント層に意識を高めてもらい、ばらつきを抑え、全体の質を上げることに取り組んだ。

「人材マネジメントにしっかりと取り組んでいる事業部もあれば、そうでない事業部もあるという状況でした。そこに、ただ漠然とIDを配って『部下の情報を活用してください』と言うだけでは、差が縮まるのではなく、むしろ広がっていく懸念がありました。そこで、マネジメントにおいて意識してほしい情報を、自社の状況や文化に合ったかたちで整理し、事業部のマネジメント層と人事が共有できるインフラを構築しました」

具体的には、自社独自の「組織マネジメントシート」を作った。現場で意識してほしい組織の指標を、それぞれの階層レベルで瞬時に確認でき、人事と事業部長・課長など、関係者がすべて同じ情報を共有して議論できる環境が整った。ここでの学びのポイントは、一般的な解決策に飛びつく前に、自社の状況とありたい姿のギャップを埋めるための方策を考え抜くことの大切さだ。

3社目の事例は、3000人規模のサービス業だ。テーマは、経営ビジネスへの貢献を考えること。まず人材データの一元化、見える化を実現した。しかしそれでも、経営層が要員計画・配置検討などを含めた経営判断の際に活用する資料の作成に、膨大な工数がかかっていた。人事は資料作成に手いっぱいで、資料の内容にまで踏みこめない。別の形の資料が必要と気づいてはいたが、余力は残っていなかった。

「担当者の方は、提出したレポートを作成しながら、『人事だから人事データや人材に関するデータを扱っていればいい』と無意識に線引きをしていたことに気づいたそうです。しかし、経営層やトップは人事データだけではなく、人事や組織に関わることを判断するときに必要となるデータが欲しいのです。経営に資する人事になるためには、そうした発想でデータをマネジメントすることが必要なのだ、と認識されました」

そこで、構築した人材データベースに、経営層やビジネストップが求めるデータを追加して、包括的な人材・組織マネジメントシステムを作り上げた。それに加え、経営層の細かい要望に応えられるように、レポートの表現力を上げる機能も追加。これまで資料作成にかかっていた工数を10分の1以下に削減したうえに、提供できるレポートの幅と質を大幅に向上させた。その結果、資料の内容に踏み込んだり、以前なら出せなかったような複数の仮説分析を行えたりするようになったという。この事例は、一元化の範囲を経営層が人材・組織に関して、経営で判断するためのデータと発想を転換したことによる成功例だ。

講演写真

大島氏は講演の最後に、印象的だったユーザーからの言葉を紹介して、講演を締めくくった。

「少し前にお客さまから、『Rosic人材マネジメントシステム(=しっかりとした一元化ができるインフラとレポート機能を持つ仕組み)があるからこそ、人材マネジメントの質が担保できています』と言われました。つまり、こうしたシステムがあることで、エビデンスをきちんと確認しながら業務を行い、その質を上げることができるということです。システムやデータが空気や水のように、人事の業務の中にごく普通に存在し、いつでも縦横に活用できる状態になっている。実はこれが究極の成功の形ではないかと思います」

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