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ウィズコロナ時代「働く環境」はどう変化するのか

  • 稲水 伸行氏(東京大学大学院 経済学研究科 准教授)
  • 鬼頭 久美子氏(サイボウズ株式会社 人事部 兼 チームワーク総研アドバイザー)
特別講演 [B-7]2020.12.15 掲載
コーディルテクノロジー株式会社講演写真

新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークが一気に浸透し働き方が大きく変化。今後は、オフィスの役割も変化していくことが予想される。これからの「働く環境」はどうあるべきかについて、職場環境の研究で知られる東京大学大学院 准教授の稲水伸行氏と、「100人いれば100通りの働き方」を実践しているサイボウズ株式会社 人事部兼チームワーク総研アドバイザーの鬼頭久美子氏が、ウィズコロナ時代の「働く環境」について議論した。

プロフィール
稲水 伸行氏( 東京大学大学院 経済学研究科 准教授)
稲水 伸行 プロフィール写真

(いなみず のぶゆき)東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員、同特任助教、筑波大学ビジネスサイエンス系准教授を経て、2016年より現職。著書に『流動化する組織の意思決定』など。


鬼頭 久美子氏( サイボウズ株式会社 人事部 兼 チームワーク総研アドバイザー)
鬼頭 久美子 プロフィール写真

(きとう くみこ)京都大学法学部卒業後、銀行に新卒入行、約14年、人事企画・融資審査等に従事。組織づくりと個人のキャリア形成に興味を持ち、国家資格キャリアコンサルタント資格取得後、サイボウズ株式会社へキャリア入社。人事研修企画等を行う一方で、総研アドバイザーとして社外へサイボウズの組織づくりの取組を伝えている。


働いている内容に合わせて適切な場所を選ぶABWが大きな潮流に

働き方改革の重要性が叫ばれている昨今。場所にとらわれない働き方の導入で生ずるさまざまな問題を解決するサービスを提供しているのが、コーディルテクノロジーだ。同社が提供しているアプリケーション「Codyl Find」は、位置情報と連動することで、社員がどこで何をしているかを把握することがきる。フリーアドレスやテレワークなどの新しい働き方が広がる中、遠隔地にいるチームメンバーへのコミュニケーションの円滑化は課題だが、Codyl Findでは、在籍状況や忙しくしているメンバーの状況が同じ場所にいるかのように確認できる。

新型コロナウイルス感染症の流行と、それに伴う緊急事態宣言の発出により、この春、多くの会社がテレワークを余儀なくされた。その後、徐々に出社する会社が増えてはいるものの、今までのように全社員がオフィスに集まるという従来の働き方に戻すつもりはないというところも多い。今後オフィスの役割はどのように変化していくのか。まず、オフィス学を研究する東京大学大学院 経済学研究科 准教授の稲水伸行氏が「COIVD-19が加速する働き方と働く環境の変化」というテーマで語った。

稲水氏は、働く環境(オフィス)とクリエイティビティとの関係について、まず「固定席」「単純フリーアドレス」「固定席型ABW」「ABW」という四つのワークプレイスの考え方を説明。従来の日本企業によく見られる部署・課ごとに島をつくり、固定席で座席数が決まっている島型対向式から、2000年代ごろからは席が自由なフリーアドレスを導入する企業が増加。2010年代からは、働いている内容に合わせて社内の適切な場所を選んで仕事をするABW(Activity Based Working)という考え方が強まっているという。

「集中したいときにはこもれるような部屋、カジュアルな打ち合わせをしたいときにはカフェテリアスペースなどと、多様な仕事環境が整備されてきています」

講演写真

ここで稲水氏は、ABW的な働き方が新しいビジネスのアイデアを生み出すクリエイティビティとどういう関係があるのかについて、約3000人のビジネスパーソンを対象に調査・共同研究をした結果を発表。単に執務スペースを自由席にしたというだけでは、ストレスの増加やモチベーション低下を引き起こし、クリエイティビティが大きく下がった。一方で、ABW的な働き方は、ストレス・モチベーション・クリエイティビティの全面で評価が高かったという。

「今年5月に実施した、テレワークをしている約2000人のビジネスパーソンへの調査では、コロナ以前から在宅勤務の経験があった人は、オフィスに出社している人と遜色ない高いレベルで偶然のコミュニケーションができているという結果が出ました。一方で、今回初めて在宅勤務をした人は、偶然のコミュニケーションがあまりうまくできていないという傾向が見て取れます」

実際にコミュニケーションに使用しているツールを調べたところ、すでに在宅勤務の経験を積んでいる人は、電話メールはもちろんのこと、チャットやウェブ会議をうまく活用していたという。このことは、経験を積み重ねることで、コミュニケーションの壁をクリアできる可能性も示唆している。

「ABW的な働き方は、クリエイティビティの面からも効果的ということがわかりました。今後は、テレワークもオフィスも広い意味でABWであるという考え方が、今後の働き方の大きな潮流となるのではと考えています」

定期的な業務情報だけでなく感情情報もやりとりする

続いて登壇したのは、「チームワークあふれる社会を創る」というビジョンのもと、チームの情報共有とコミュニケーションを支援するグループウェアの開発・販売などを行うサイボウズ株式会社 人事部兼チームワーク総研アドバイザーの鬼頭 久美子氏。先進的な働き方を実践している会社の代表格でもあるサイボウズの取組事例をもとに、働き方改革やテレワーク下でのコミュニケーション改善について講演した。

まず鬼頭氏は、10年前に導入したテレワークが浸透したことにより、オフィスで起こった変化を紹介。新たに定めたオフィスのコンセプト「Big Hub for Teamwork」のもと、五感をフル機能させられるような環境で、人や情報が集まるハブとしての場所へと、オフィスを生まれ変わらせた。その一例が、フリースペースにオンライン会議につなげられるディスプレイを設置したことだ。

「例えば、テレワークメンバーと接続しながらのランチや、パソコンを持ち寄ってライトなディスカッションができます。これは、稲水先生のABWにもつながっていると思います」

続いて鬼頭氏は、現在のウィズコロナで起きたオフィスやコミュニケーションの変化について説明。出社メンバーの方が多かった時期のオンライン会議は、外部からつないでいるメンバーのみがディスプレイに表示されるような形態だった。しかし、外部メンバーはどうしても会議室に対して発言しにくく、ディスカッションのやり取りも難しいという課題があった。そこで、現在では出社メンバーも一人1台のPCで接続し、参加者全員がディスプレイ上に並列に並ばせることで、誰が発言しているかがクリアにわかる環境にした。

講演写真

また、コミュニケーションの変化について、ポイントを二つ解説。1点目は、バーチャルオフィスとリアルオフィスで情報格差をつくらないようにすることだ。社内のやりとりはメールではなくグループウェア上の公開スペースで行うことで、業務に直接関係ないメンバーも情報を知ることができるようになっている。2点目は、コミュニケーションの場の多様性と内容の多様性を確保することだ。人により、意見が言いやすいシチュエーションは異なるため、社内のやりとりはできる限り多様な場を設けている。

「テレワークメンバーもいる中でのやり取りは、どうしても業務情報に偏りがちです。オフィスの固定席であればわかる『ちょっと困っている』『今日忙しい』といった感情情報も、誰がどこで働いていてもわかるように工夫する必要もあると思います」

会議以外のコミュニケーションの場として取り入れているのは「ざつだん」だ。マネジャーとメンバーの1on1コミュニケーションの場として定期的に30分ほど設けているが、話題は自由。

「ウィズコロナの環境下では、業務では接しない別の部署のメンバー同士で『ざつだん』の慣習を活用している人も増えてきています」

リアルでないデメリットではなく、オンラインだからこそできるメリットに着目

ここからは稲水氏と鬼頭氏によるディスカッションが行われた。

稲水:オンライン上でのコミュニケーションが主となり、オフィスにいたときにはできていた「偶然のコミュニケーション」の減少が課題となっている企業は多いようです。

鬼頭:サイボウズで行っていることの一つは、先ほど紹介した「ざつだん」です。ただ、偶発的なコミュニケーションを求めている人であれば「ざつだん」の場を有意義に使えますが、そこに時間を割く余裕がない人や、割こうとしない人も大勢いることがわかってきました。

私たちが特に工夫をしていることは、業務に関係があるようなテーマで勉強会を開催することです。例えば、「在宅環境下での仕事の工夫点を共有しましょう」「社内の情報収集のやり方を共有しましょう」というテーマの勉強会です。そこに集まってきた人たちに、今困っていることを出し合ってもらうことで、予定されていなかったコミュニケーションが生まれるように工夫しています。

稲水:勉強会の企画は、誰かから提案があるのでしょうか、もしくは担当者がいるのでしょうか。

鬼頭:両方あります。サイボウズは少し変わっているかもしれませんが、業務外でも自主的に勉強会を開催したり、夜に自己紹介トークをする時間を設けたりする機会がもともと多い社風なんです。

それに加え、「全員がオンライン環境だと、さらにそのような場を恣意的につくっていく必要がある」ということで、人事部の中にあるコミュニケーション促進をはかるグループが、業務として勉強会の開催を担っています。新卒だけでなくキャリア入社の社員も多いので、オンライン環境下で入社してきた社員には「勉強会に来てみてはいかがですか」と特にプッシュするようにしています。

稲水:コロナ禍で新しく会社に入った人の中には、社内のネットワークができていない段階にもかかわらず、いきなりオンラインで仕事をしなければいけない状況にある人が多くいます。戸惑ったり適応するのに時間がかかってしまったりすることもあると思いますが、サイボウズさんではどのように工夫されていますか。

講演写真

鬼頭:当社でも、今年度の新入社員は初日のオンライン入社式から始まって、研修もすべてオンライン。配属後も家にいる環境は変わりなし、という状況でした。社内のネットワークを形成するのに不安を感じていたメンバーも、多くいたと思います。そのためのケアには、より力を入れてきました。

具体的な事例は、テキストコミュニケーションに対してのリアクションを積極的に行うようにすることです。例えば、新人が「今日はこんなことをしました」とオンライン上に報告すると、周りのメンバーのみならず違う部署のメンバーもコメントをするようにしています。オンラインで席の垣根が無くなったおかげで、新人にとっては、オフィスに出社していたら交流できなかった人たちも声を掛けてきてくれる、そのような環境をつくることができました。

入社式に関しても、例年は人事のメンバーしか出席していませんでしたが、今年度は「出席できる人は10分間だけ歓迎しましょう」と呼びかけたところ、社員の200人以上がアクセス。部署ごとに歓迎のメッセージを送ることもできました。リアルでないデメリットではなく、オンラインだからこそできるメリットに着目して力を入れることがポイントだと思います。

稲水:大学でも、オンライン授業に切り替わったことで例年より学生の出席率が上がり、他学部から参加する人も増加。学問の垣根を超えた授業ができるようになったメリットを感じています。サイボウズさんの面白いところは、「新人にはなるべく声掛けをする」「入社式になるべくアクセスして盛り上げる」といった、もともとの社風もある上で取り組みを仕掛けることで、相乗効果が出ているようですね。

ウィズコロナやアフターコロナの時代に向けてどういう働き方になっていくのか、将来の展望をお聞きします。サイボウズさんの事例に、オンラインでも感情を含めたコミュニケーションもできるようになってきているというお話がありました。そうなってくると「今後オフィスは無くてもいい」となってしまうのか。それは極端だとしても、どういう形のオフィスが求められるようになるのか、どのようにお考えですか。

講演写真

鬼頭:リモートワークを導入したときに「オフィスを無くすのではなくて、どこに価値を見出すのか変えていこう」という議論になったように、今後も「オフィスは何のために必要なのかを考え続ける」のではないかと思います。当社はITの会社が故に、100%テレワークでも仕事が回ってしまいました。ただ、そうはいっても実際に会わないと共有できない仲間意識や関係性の構築はある、というのが実感です。極端な話ですが、今後は、自席やフリースペースは社員の1割分ぐらいしか必要なくて、その他の場所は違う役割のスペースになっていることもあり得ると思います。

例えば、全世界を相手にオンラインでビジネスをするときに、良い機材をそろえたスタジオをオフィスに設置する。あるいは、オンライン商談では手書きのホワイトボードでのやりとりは難しいけれど、それに対応したテクニカルなホワイトボードをオフィスに設置する。そういった設備面のメリットを取るような議論が出てくるのではないでしょうか。

稲水:オフィスは会社のメンバーとリアルなコミュニケーションを取りやすい場所です。オンラインでやらなければならない部分もありながら、オフィスでコミュニケーションをとったほうが早い、という話はこれからも残っていくのではと思います。

コロナ禍以前の昨年、フィンランドに調査に行きました。フィンランドをはじめとする北欧諸国はテレワークが一般的で、オフィスに来ない人が大勢いる状況です。その一方で、ある会社では莫大な投資をしてリノベーションを行い、組織文化のアイコンになる場としてオフィスをつくっていました。週に1回は強制的に出社させて、同僚たちと会いながら「うちの会社はこういう会社だよね」というのを再認識させ、会社としてのまとまりを醸成させる。そのようなことが狙いだそうです。今後のオフィスの機能として、ソフト面や文化面の役割を担う部分が出てくるのではないでしょうか。

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