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富士通のジョブ型人材マネジメント-DX企業への変革に向けた人材哲学

<協賛:コーン・フェリー・ジャパン株式会社>
  • 平松 浩樹氏(富士通株式会社 執行役員常務 総務・人事本部長)
  • 岡部 雅仁氏(コーン・フェリー・ジャパン株式会社 Client Director)
パネルセッション [K]2020.12.15 掲載
コーン・フェリー・ジャパン株式会社講演写真

日本企業の人事関係者の中で、いま最も注目を集めているキーワードの一つは「ジョブ型」の雇用・人材マネジメントだろう。従来の「メンバーシップ型」が新卒一括採用・終身雇用・年功賃金などを前提にしてきたのに対して、「ジョブ型」はその真逆。職務内容を厳密に定義し、年齢に関係なく高い職責を果たした人材に、高い報酬を支払う。その「ジョブ型」雇用導入に舵を切り、すでに新報酬制度を運用しているのが、富士通株式会社だ。同社の執行役員常務 総務・人事本部長の平松浩樹氏がその舞台裏を明かした。また、富士通の人事改革に協力する立場から、コーン・フェリー・ジャパン株式会社 Client Directorの岡部雅仁氏が「ジョブ型」雇用のあらましを解説した。

プロフィール
平松 浩樹氏( 富士通株式会社 執行役員常務 総務・人事本部長)
平松 浩樹 プロフィール写真

(ひらまつ ひろき)1989年富士通株式会社に入社し、主に営業部門の人事を担当。2009年より、役員人事の担当部長として指名報酬委員会の立上げに参画。2015年より、営業部門の人事部長として働き方改革を推進。2018年より、人事本部人事部長として今年4月に導入したジョブ型人事制度の企画・導入を主導。2020年より現職。


岡部 雅仁氏( コーン・フェリー・ジャパン株式会社 Client Director)
岡部 雅仁 プロフィール写真

(おかべ まさひと)PwCにてITコンサルティング業務を経験後、リクルートで海外人材事業を立ち上げ、アジア各国の現地法人社長として現地駐在。コーン・フェリーではグローバルでの組織エンゲージメント向上、報酬・等級制度設計、アセスメントなどを提供。日本企業のグローバル化や組織力向上に対する豊富なプロジェクト実績を持つ。


なぜ日本企業で「ジョブ型」が求められるのか?

コーン・フェリー・ジャパン株式会社は、組織・人事に特化した人材コンサルティングファームだ。同社の強みは、国際的なグループ網を通じて組織・人材関連のあらゆるデータを約50年にわたって蓄積し続けている点にある。グローバルに展開していることで、日本だけでなく世界の潮流から物事を考え、語れることができる。報酬の変遷、組織のベンチマークデータなどを元に、科学的・統計的な観点での経営支援にあたっている。特に現在は、ジョブ型人事制度のコンサルティング、サポートに注力。今回のセッションでは、支援している企業の中から、富士通株式会社の事例を取り上げた。

セッションではまず、コーン・フェリー・ジャパン株式会社 Client Directorの岡部雅仁氏が、ジョブ型人材マネジメントに対する日本企業の課題について解説した。

コーン・フェリーが今年4~5月に実施したアンケート調査によれば、従業員数1000人~1万人規模の企業のうち24%がジョブ型雇用をすでに導入していることがわかった。導入決定済み、あるいは導入を検討中の企業を含めると、実に72%の企業がジョブ型に対してポジティブな反応を示している。

同調査では、ジョブ型導入の目的についても聞いており、こちらでは「貢献度に応じた適正処遇」が31%と最多だった(複数回答)。年功型処遇に偏っていたこれまでの方式を見直し、職務内容をあらためて定義した上で、社内外から人材を集めようという動きが活発化していると岡部氏は分析する。

「日本は平均年齢が上がってきており、国内市場もそれほど伸びていません。報酬を上げるには昇進させるしかありませんが、当然、職務ポスト数が限られてくるので、年功性のひずみがどうしても目立ってきます」

講演写真

ジョブ型制度導入における課題については、「経営陣・現場責任者の理解不足」などと回答する企業が多かった。従来のメンバーシップ型雇用と比べ、ジョブ型は対極的な存在で、実際に社内導入するとなれば大きな変革となる。人事部の単独裁量で導入できる訳もなく、経営層・現場などあらゆる部門と協調し、時にはデメリットにも向き合わなければならないため、一筋縄でいかないのもまた事実だろう。

岡部氏はジョブ型人事の本分の一つに「事業・組織戦略との接合性の高さ」を挙げる。発想の起点に人ではなく戦略をまず置き、そこから必要な業務(ジョブ)を導きだし、そこへ人材を割り当てる。ジョブに対する報酬は、社内事情ではなく、広く労働市場の価値に基づいて決定される。

よってジョブの内容が質・量ともに同じままであれば、会社を移っても報酬は維持される。近年は市場変化のスピードが速く、企業側も大胆な戦略変更を余儀なくされる場面は多い。ジョブ型はこうした事情にも適しているのだ。

「ただ、メンバーシップ型に慣れ親しんできた日本企業は、ジョブの内容をわざわざ定義しなくても、これまではビジネスを回せていました。そのため、いざジョブを定義しようとなったときに、ノウハウや専任人材の不足が露呈してしまう。加えて、ジョブ型ならではの人材流動性を維持するには、社外の労働市場全体を見越した報酬設定・キャリアパス設計・キャリア育成策を講じなければなりません」

またアフターコロナの時代には、リモートワークが「やむを得ず」ではなく「率先して」行われることも想定される。上司・部下の関係性に基づかない業務も増えるとみられ、結果として職務内容を明文化する必要性も高まると、岡部氏は語った。

新社長就任のタイミングで、ジョブ型雇用導入へ

ここからは富士通株式会社 執行役員常務 総務・人事本部長の平松浩樹氏が、同社で今まさに進められているジョブ型人事導入プロジェクトについて解説した。平松氏は1989年の入社以来、ほぼ一貫して人事関連部門に在籍。2020年4月から現職を務める。

現在、富士通単体での従業員数は約3万2600名で、このうち約半数がSE職で1万7300名。以下、開発職5400名、営業職/マーケティング職5900名、スタッフ職他4000名と続く。グローバルでは約13万名の人員がいる。

富士通が人事改革に乗り出した直接のきっかけは、2019年6月の新社長就任だ。時田隆仁氏が新たに代表取締役社長となり、それと同時に「IT企業からDX企業へ」というメッセージを社内外で繰り返し発信するようになった。

時田氏の社長就任にあたって、平松氏とは1対1のミーティングが行われたという。

「その場で社長から言われました。DX企業への転換は、これまでの延長線上にはないと。会社のカルチャーを変えるぐらいの気持ちが必要で、人事は重要な存在となります。なによりスピード感も求められます。そこで社長から、ジョブ型導入の提案がありました」

幸い、人事部門では以前からジョブ型についての研究を進めていた。こうして、社長の強いコミットメントも得て、ジョブ型導入プロジェクトがスタートした。

人事をめぐる富士通の過去の取り組みを振り返ったとき、象徴的なのが1993年の成果主義の導入だ。同業他社と比較しても先行的な取り組みだったが、数年後の評価は芳しいものではなかった。 

「『成果主義の導入に失敗した会社』として、講演に呼ばれることもありました。今も成果主義そのものは失敗だったとは思っていませんが、進め方についてはもう少し余地があったかもしれません」

講演写真

年功・時間換算での日本型評価制度はいずれ限界を迎えると、平松氏は当時から考えていた。特にグローバルにビジネスを展開・強化していくフェーズでは、海外で日本型雇用がそのまま通用する可能性は低く、各種制度をグローバル基準に合わせる必要もあった。しかし、そうした取り組みに対して、従業員一人ひとりがいわゆる“腹落ち”のレベルにまで達するまでの手が尽くしきれなかったことが反省点だという。

しかし今般に至って、人事云々以前にまず全社的な目標としてDX企業への転換を表明し、そこから新たに経営指標や人事などの重点戦略を描き出していくこととなった。変革のために必要な人材は、社内はもちろん社外からも登用しなければならないが、そこでは当然、仕事の魅力が問われることになる。

報酬制度を大幅改正、社員のチャレンジ意欲を喚起

目標とする人事基盤の構築に向けて、平松氏らが特に重視したのが「スピード感」、そして「全体の整合性」だった。人事は人事だけで完結せず、経営戦略などその他の要素と密接に連携する。既存の仕組みをパッチワーク的に改修するだけでは限界があるため、完全にフルモデルチェンジする方向性が志向された。

報酬体系は職責ベースに一新。これまで幹部社員は、職能資格試験の合否に応じてクラス分類され、かつクラス内で月俸にレンジがあった。そのため、10年近く同一クラスにいる社員と、有能だが昇進したての社員では前者のほうが報酬が高くなってしまっていた。

しかし4月に導入された職責ベースの新制度では、国内1万5000人の管理職社員すべてを、報酬レンジのない新クラス基準へ当てはめなおした。旧基準は基本的に考慮せず、判定時点での職責だけで新基準を適用。つまり、今より高い報酬がほしい場合、より高い職責を担えるだけのスキルを体得しなければならない。こうすることで、個々のチャレンジ意欲を喚起させようとしたのだ。

「新制度への移行によって、ザックリといえば半分の人は給料が上がり、もう半分は下がります。相当大胆ですが、社長にも言われた“スピード感”のために実施しました。ただ経過措置として、下がる人には1年間だけ現行報酬を維持し、次の年に5%だけ下げ、その次も5%としていき、4年目に完全実施されるという設計にしました」

報酬体系全面刷新の一方で、ジョブ型人事の核となる「ジョブディスクリプション(職務記述書)」については、いまだ作成中という。これもまたスピード感を重視したためだ。記述内容の詳細を完全にイメージできないまま、1万5000人分のジョブディスクリプションをゼロから作るのは不可能に近く、平松氏も「2、3年はかかる」という。

「もちろん、策定に向けた動きはスタートしています。手順としては、最初に大枠の基盤となるロールプロファイルを作成。職種と職責レベルをもとに、おおまかな職責・人材要件を定義し、そこへ各ポジションの担当市場や製品などの具体的な責任範囲、期待する成果などを加味し、最終的なジョブディスクリプションを仕上げます」

ここでは、コーン・フェリーの職責別報酬ベンチマーク情報などが活用されている。

ポスティングの重要性

これまでの富士通の人員計画は、全社の採用人数を最初に決め、各部門へと配分していく方式だった。注力事業に対する重点配分などは多少考慮されるものの、公平配分が原則。各部門も「割り当てられた人材だけでやりきる」のが当たり前という前提だった。

しかしジョブ型の考えは、これと全く異なる。従来のメンバーシップ型では、社内にすでにいる人間をベースに組織設計を行う「適材適所」が原点にある。対するジョブ型は「適所適材」。経営戦略やビジョンを軸に組織設計するため、社内人員だけでは人手が足りないことも想定されるのだ。

「新制度では、採用の権限を各部門へ大幅に委譲しました。それぞれが3年先を前提としたビジネスプランを立て、必要人員数などを申告。経営層はこれを中期経営計画策定の範囲で決め、各部門が独自にキャリア採用を実施したり、ポスティング(社内公募)を行ったりすることになります」

講演写真

ポスティングは、ジョブ型人事を導入する上で非常に重要な要素だという。富士通の新制度では、ジョブ(職責)と報酬が完全に連動しているため、高い報酬を望む以上はさまざまなジョブにチャレンジしなければならない。よって、従業員が能動的に新しいジョブに臨めるだけの土台が欠かせない。平松氏も、新報酬体系とポスティング拡充は必ずセットで導入したいとの考えだったという。

2021年4月の人事異動で、富士通社内で約600枠の新任課長登用が予定されているが、これはすべてポスティングで実施する。この約600枠には、簡易ながらそれぞれジョブディスクリプションが規定されていて、希望者は自ら立候補する。これまでは上司による推薦で新任課長がほぼ決まっていたため、象徴的な取り組みになると平松氏は期待を示す。

「若手の間では、マネージャー職を避けるといった意識の変化もあると聞いていて、募集をかけるまでは本当に手を挙げてくれるのか不安でしたが、実際には枠に対して1.5倍くらいの応募がありました。このプロセスをしっかりと回していき、課長以下の担当者はもちろん、より上位の職位も広げていきたいと考えています」

教育手段も拡充させた。従来は「入社○○年目の人材には、この研修」という、平均的成長カーブを想定しての学習機会提供となっていたが、これもある意味で年功序列的な考え方となっていた。そこで自己学習ツール環境を無料で提供し、学習しやすい環境を整えた。

今後、ジョブ型導入が段階的に進む中で懸念されるのは、人事から各部門への権限委譲が進むことにより、各部門の部門長が主体的に決断すべき人事案件が増え、結果的に負荷となってしまう可能性だ。将来的には、人事部門がHRBPとして、各部門長とより強力な関係を構築することが求められるだろう。

目指せ、日本流ジョブ型雇用

富士通による一連の取り組みで驚かされるのは、そのスピード感だ。従業員の報酬額の調整という人事上でも特に難題となる部分について、新社長就任から制度スタートまでの約9ヵ月で実現している。加えて、企業の変革ビジョンと人事施策が強く連携している部分も注目に値する。

「経営的に明確な目標があっても、人事施策を後回しにする企業は多い。富士通の場合、そこを経営と人事がそれぞれリーダーシップを発揮して、力強く改革を進めているのが印象的です」と、岡部氏はいう。

ところでジョブ型雇用を巡っては、職責と人材の適合性だけが冷徹に判断される、極めてドライな制度との評もある。

しかし、「先進的グローバル企業の実態を観察してみると、そこまでの無味乾燥な運用は否定される傾向にある」と岡部氏はいう。ドライな運用をしていては、結局のところ人員が集まらず、従業員のエンゲージメントが高まらない実態がわかってきているのだ。

そこで重視されるのが「リ・スキル」、つまり再教育だ。経営的に重視されなくなったジョブに就く人材をどう再教育するかに取り組むほうが、変化の激しいこの時代に、ゼロから採用をするより効率的という考え方である。

「日本企業はもともとメンバーシップ型雇用の時代が長く、そこでは社内再教育も当たり前に行われてきました。雇用に対する安心感を確保しつつ、それでいてチャレンジしやすい環境、学習ツールまでをセットで用意することが、日本らしく、それでいて海外にも通用する新しいジョブ型雇用のスタイルではないでしょうか」と岡部氏がまとめ、セッションは終了した。

講演写真
本講演企業

コーン・フェリーは、グローバルな組織コンサルティングファームです。クライアントの組織構造やポジションとその責任を設計し、適切な人材を採用できるよう支援し、社員の処遇・育成・動機付けといった課題についてもコンサルテーションを提供します。さらに、専門性を高めることによる人材のキャリアアップを支援します。

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