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サイバーエージェント、メルカリの新卒採用責任者に聞く! 就活ルール廃止後の新卒採用戦略

<協賛:株式会社グローアップ>
  • 石田 裕子氏(株式会社サイバーエージェント 執行役員 採用戦略本部長)
  • 奥田 綾乃氏(株式会社メルカリ 新卒採用責任者)
  • 田中 研之輔氏(法政大学 キャリアデザイン学部 教授)
東京パネルセッション [D]2019.07.05 掲載
株式会社グローアップ講演写真

2021年卒の新卒採用から、就活ルールが廃止されることが決定した。今後は、これまでの一括採用から通年採用へとシフトし、採用活動が変化することが予想される。学生獲得競争が激化する中で、企業はどのような採用戦略を立てればいいのだろうか。法政大学キャリアデザイン学部教授・田中研之輔氏の司会のもと、サイバーエージェントの執行役員・採用戦略本部長である石田裕子氏、メルカリの新卒採用責任者・奥田綾乃氏が、両社の採用ブランディング・マーケティングの手法や展望を語った。

プロフィール
石田 裕子氏( 株式会社サイバーエージェント 執行役員 採用戦略本部長)
石田 裕子 プロフィール写真

(いしだ ゆうこ)2004年、新卒でサイバーエージェントに入社。インターネット広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、スマートフォン向けAmebaのプロデューサーを経て、2013年に株式会社パシャオク代表取締役社長に就任。2014年、株式会社Woman&Crowdを設立し代表取締役社長に就任。2016年より執行役員に就任し、現在は人事管轄の採用戦略本部長を兼任。


奥田 綾乃氏( 株式会社メルカリ 新卒採用責任者)
奥田 綾乃 プロフィール写真

(おくだ あやの)2009年 株式会社サイバーエージェント入社。社長室配属を経てソーシャルゲームのプロデューサーとして企画立案、運用、進行管理を経験した後、複数のゲームを束ねるユニット長として事業戦略、マネジメントを経験。2017年 株式会社メルカリに入社し新卒採用の立ち上げを行う。現在は新卒採用の責任者として採用から育成に携わる。


田中 研之輔氏( 法政大学 キャリアデザイン学部 教授)
田中 研之輔 プロフィール写真

(たなか けんのすけ)博士:社会学。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめる。2008年に帰国し、現在、法政大学キャリアデザイン学部教授。専門はライフキャリア論、社会学。<経営と社会>に関する組織エスノグラフィーに取り組んでいる。著書に『先生は教えてくれない就活のトリセツ』『先生は教えてくれない大学のトリセツ』『ルポ不法移民』『丼家の経営』『都市に刻む軌跡』『走らないトヨタ』『覚醒する身体』、訳書に『ボディ&ソウル』『ストリートのコード』など20冊。ソフトバンクアカデミア外部一期生。専門社会調査士。近著に『辞める研修辞めない研修–新人育成の組織エスノグラフィー』『教授だから知っている大学入試のトリセツ』。社外取締役・社外顧問を13社歴任。


今後の採用の鍵はインターンシップにあり

セッションの冒頭で田中氏は、新卒採用のポイントと現状を簡単にまとめた。まず、新卒採用においては、「採用活動と事業戦略との一貫性」「他の人事制度との一貫性」「各選考過程の一貫性」という三つの「一貫性」が重要だという。これらを前提に行われる採用方法は、大きく6種類に分類される。大手求人ナビサイトによる『マス採用』、採用プラットフォームによる『コミュニティ採用』、インターンによる『インターン採用』、ダイレクトリクルーティングによる『スカウト採用』、OBやOGの紹介による『リファラル採用』、オウンドメディアによる『自社採用』だ。

「大学内で感じる大きなトレンドは、どの大学や学部でもインターンを取り入れており、その場が増えていることです。今後、インターンが一つの新卒採用の鍵になることは間違いありません。実際に学生に仕事を体験してもらう『インターン採用』のメリットは、入社後のミスマッチを予防できること。しかし、現在はたった半日で学生に自社のことを知ってもらい、採用につなげようとする、1Dayのスタイルが多いのが実状です。今日お話をいただく2社では、中長期でインターンを行い、選考過程にも組み込んでいますので、そのあたりについてもうかがえればと思っています」

講演写真

一括採用から通年採用に切り替わると、これまで夏休みや春休みなどの長期休暇期間に集中していた選考をどのように行うかという問題も生じる。大学ではどの授業も出席をチェックされるため、学生が授業に出席すべきか選考に参加すべきかを悩む事態も起こっている。このような状況の変化を踏まえて、学生と企業のミスマッチを減らしつつ、次世代がより活躍していけるような採用の仕組みを構築することが求められているのだ。田中氏は、採用マーケティング、採用ブランディング、インターンシップがポイントになると言う。

2社が新卒採用に成功している理由とは

ここからは、田中氏からの質問に石田氏と奥田氏が答えるかたちでディスカッションが行われた。

田中:両社が採用マーケットで成功している理由とは何でしょうか。

石田:最近は採りたい人材を、以前よりも採用できるようになってきました。理由の一つが、採用広報の強化です。サイバーエージェントという会社の認知度は徐々に高まってきましたが、学生がイメージする会社像や風土・文化と、実態には乖離があります。そのため、正しい理解を促すことで、学生がセルフスクリーニングできる状態をつくろうと考えました。正しく会社を認知・理解してもらったことで、よりリーチしたい層に効率的に接点が持てるようになったと思っています。

田中:具体的には、採用広報で何を強化されたのですか。

石田:力を入れているのが、オウンドメディアです。もともと運営していたホームページの中の「FEATUReS」というコンテンツの中に、採用に特化したページを設けました。そこでは、実際に働く社員の様子や考え方が分かるインタビュー記事や、会社のカルチャーが分かる記事などを発信しています。さまざまなSNSを活用しその記事を拡散したり、それぞれのSNSの特徴を活かしたコンテンツ発信も行っています。

田中:「FEATUReS」では、今までの採用では足りなかった、どんな部分が補われているのでしょうか。

石田:学生のニーズ自体が多様化しているので、従来の広報活動だけでは十分に補いきれない部分が生じていました。あわせて、弊社の事業ドメインも多様化しており、双方の変化にあわせた幅広い広報活動をすべきだと考え、「FEATUReS」をスタートしました。

奥田:メルカリが新卒採用を本格的に始めたのは昨年からですが、狙った層を採用することができました。メルカリというアプリは大学生の認知度が高いため、採用活動の面でプラスに作用しているように思います。ただ、就職先としての認知度はあまり高くない状態でした。そこで実施したのが、BOLD Internshipです。

これは、アメリカに100人の学生を送り、CtoCのマーケットを1週間かけてリサーチしてもらうプログラムで、調べるテーマは本人に任せます。メルカリのバリューの一つ「Go Bold(大胆にやろう)」を意識した内容で、採用ブランディングに寄った施策ですが、学生に対する大きなアピールとなりました。メルカリという会社にあまり興味がなかった層を掘り起こすこともでき、外資系に興味を持つ学生からの応募もありました。

田中:自社の魅力を伝えて学生をひきつけるポイントは、どこに置いていますか。

石田:例えば「若手にも裁量権が与えられる」「成長産業の中で自分自身も成長できる」など、学生が魅力を感じるフレーズをいくら語っても、中身が伴わなければ魅力に感じてもらえませんし、嘘だと思われてしまいます。アピールポイントと実態とを言行一致させることが重要だと考えており、例えば内定者や内定前の学生に新規事業に携わるチャンスを提供したりしています。

また、第一線で活躍している現場の社員が会社の魅力を語ることも、学生をひきつけるポイントになります。特に、人事が作成したマニュアルに沿って語るのではなく、社員本人の口から出るリアルな言葉は、学生に響きます。もともとサイバーエージェントには、他の事業部の社員を巻き込んで人材を採用していく風土があります。それぞれの事業部で活躍しながら、採用にも関わりたいと思っている社員をどんどん巻き込んで、採用戦略の設計から企画・推進まで幅広く一緒に取り組んでいます。

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奥田:私たちが学生をひきつけるポイントは、メルカリの三つのバリュー、Go-Bold、Be Professional、All for Oneです。言葉の解釈はそれぞれに委ねていますが、これらは人事評価の項目にも置いています。バリューが人事制度にどれだけ反映されているかは、とてもシビアに学生から見られている印象がありますね。どれだけ自社の価値観を語れて、それを社員や会社の制度として体現できているのか。ここに一貫性がなければ信頼性も低下してしまいます。

バリューの一つである「Be-Professional」に基づき、年々高まっている「自分を適切に評価して欲しい」という学生の気持ちにも応えようと、個々のスキルやバックグラウンドに応じたオファーや金額を提示しています。また、内定期間中であっても、アウトプットに対しては社員同様に評価を行っています。学生だからと特別扱いせず、一貫したメッセージを伝え続けている姿勢に共感してくれる学生も多いようです。

自社のサイトから応募を増やす方策

田中:自社サイトからの直接採用は、今後の通年採用の中で重要性を増すと考えられます。ところが、自社サイトからの応募が増えない、という悩みを抱えている企業も少なくありません。どうすれば応募を増やすことができるのでしょうか。

石田:先ほどからご紹介している「FEATUReS」では、コンテンツの切り口をいくつか用意して、そのテーマごとにどのくらい学生に引きがあるかをチェックしています。受け皿をたくさん用意するのは、一つの手です。実際に「FEATUReS」を立ち上げてから半年で、自社サイトからのエントリーはかなり増えました。

田中:自社サイト以外に、効果的な策はありますか。

石田:全国各地で行っている説明会やリファラルの活動を通して、そこで接触した学生にQRコードを渡し、アクセスするとオンラインで会社の説明動画が視聴できるという取り組みも行っています。説明会やイベントなどのリファラル活動は、全国各地で月に3〜4回行っていて、1回に集まる学生は30〜100人程度。そのほとんどがアクセスしてくれています。

奥田:メルカリでは3年前から「メルカン」というオウンドメディアを運用して、全社の取り組みや社員の活動を発信しています。例えば4月には、活躍している新卒メンバーのマインドセットを記事にしました。採用面ではなく、さまざまな切り口からアプローチして、興味が進めば募集要項を見てもらえる、という流れです。就活が念頭にない学生に向けても、タッチポイントを増やしておくわけです。

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田中:今後は、ファンを増やすインターンシップである「インターン2.0」が重要になるでしょう。自社サイトにおいても、採用と違う切り口から自社の良さを学生に伝え、ファンとなってもらう視点は欠かせません。ところで、「メルカン」はどのように運営しているのですか。

奥田:さまざまな部署から7、8名が集まった、横断プロジェクト的な編集部が運営しています。社員から「これについて書きたい」という話が編集部に入ると、他社との違いやバリュー体現などの視点から、切り口や内容についてアドバイスをした上で、本人に記事を書いてもらっています。

田中:社員自身がリアルな経験をしっかりと言語化し、外に向けて語ることが強く求められるようになったと感じています。この技術が低ければ堅い表現になり、学生に向けたメッセージとはかけ離れてしまいます。

これからインターンシップが目指す方向性

田中:インターンシップでは、どんなことを行っていますか。

石田:当社のインターンシップは年間で数十種類もあり、インターンシップの期間やテーマもさまざまです。1Dayのものでは最初にインプットを行った上で、それをチームでアウトプットして最後はプレゼンを行う、という他社でも行われているようなものが多いですね。特徴的なのは、それまでの面談結果をもとに「この人はこういうインターンシップに参加してもらって、懸念ポイントを見てみよう」「この人の能力が生きるのは別のインターンシップではないか」などとアレンジして、次の機会を提供していることです。

奥田:選考上は必須化していませんが、1.5ヵ月や2ヵ月という長い期間で実施しています。学生に正社員同様メルカリで働いてもらって、ここで活躍できるのか、何をやりたいのか、と自分自身で考えて欲しいからです。インターンであろうと、その期間はメルカリの一員であることに変わりはないというスタンスですから、社員同様のアウトプットを求めるのなら、これだけの期間がどうしても必要になります。働いた内容をブログに書いたり周囲に話したりすることが結果的に、内定者からのリファラルにつながっていく効果もあります。

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田中:通年採用になると採用が早期化、長期化することが予測されますが、実際に大学2年の前期などに内定を出すケースはあるのでしょうか。

石田:徐々に事例として増えてきていますし、学年を問わず大学生、大学院生全てを対象にした採用イベントやインターンも増えています。インターンは通年用意していますが、例えば大学2年のときに能力が発揮できなかった学生に対して、ビジネスの考え方やアウトプットの仕方を中長期的な視点で育てていくような活動もしています。学生と社員との接点をたくさん用意して、いつでも相談できるメンターのような存在が常にいる状態をつくるよう心がけています。

奥田:メルカリでは、新卒採用開始当初から学年不問の通年採用を行っています。過去には、インターンシップに高校生が参加したこともありました。それが後々に採用ターゲットになっていくこともあるので、間口を狭めないことを重視しています。

田中:最後に一言ずつメッセージをお願いします。

石田:これだけ市場が変化をし続けているので、今までの慣習や座組みに囚われずに新しいことをつくっていこう、という発想が大事だと思います。当社も毎年採用をアップデートし続けることを心がけています。

奥田:経営側の理念と実際の学生の狭間に立つのが新卒採用のチームですが、どちらかに傾倒しすぎることなく、ポリシーを自分たちが強く持つことがすごく必要だと感じています。

田中:社内外への発信やコミュニケーションを丁寧に行っているという強さが、両社の採用マーケティングやブランディングがうまく機能している大きな理由だと感じました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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本講演企業

2008年ヘッドハンティング会社として設立。エグゼクティブクラス・専門職の方のご紹介を通して得た経験を生かし、2014年に新卒スカウトサービス「キミスカ」をスタート。同サービスは今では就活生の5人に1人が使うサービスにまで成長している。

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