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その成果主義人事制度、間違ってます!
~成果主義の現状・制度構築のポイント・事例~

  • 佐久間 陽一郎氏(株式会社スキルアカデミー 代表取締役会長)
  • 倉嶋 睦氏(大成温調株式会社 執行役員 人財開発室長)
東京特別講演 [C-7]2019.06.25 掲載
株式会社スキルアカデミー講演写真

社員の年齢やキャリアよりも、仕事の成果に応じて給与や昇格を決定する成果主義を基本とした人事制度が主流となっている。ところが、導入コストや運用の手間が足かせになって満足いく成果が得られていない企業や、機能させられていない企業は少なくない。原因と解決策について、人事制度のさまざまな課題を踏まえ、真の働き方改革の実現をサポートする株式会社スキルアカデミーの代表取締役会長・佐久間氏がポイントを語り、導入企業の声を紹介した。

プロフィール
佐久間 陽一郎氏( 株式会社スキルアカデミー 代表取締役会長)
佐久間 陽一郎 プロフィール写真

(さくま よういちろう)東京大学卒業、米WV州立大学大学院修了。アーサー・D・リトル、ヘイ・グループで通算20年以上の経験を積み、東北大学等社会人向け大学院で戦略・組織・人事の体系を構築し、スキルアカデミー設立。著書に『取締役革命~役員の業績評価が日本を変える~』(ダイヤモンド社)『ビジネススキル』(中央経済社)など多数。


倉嶋 睦氏( 大成温調株式会社 執行役員 人財開発室長)
倉嶋 睦 プロフィール写真

(くらしま むつみ)社内検討委員会である人事制度刷新委員会委員長から、新制度導入プロジェクトリーダーを務め、社長やスキルアカデミーと共に育成型人事制度の導入に貢献。
金融業出身という人事責任者としては異色の経歴を持ち、前職時代に培った機動力、交渉力を武器に全社を牽引する。


明治から平成まで 日本の人事制度に見られる問題

株式会社スキルアカデミーは、経営教育のための電子コンテンツ「eブック」を起点に、個人向けキャリア開発サービス、企業向け人材育成サービスを提供している。2018年4月からは、働き方改革を効果的に実施するための新サービス「AI人事4.0」も加え、SaaSを基本にコンサルタントが企業をサポート。「AI人事4.0」開発のきっかけは、成果主義人事制度が抱えるいくつかの問題点にあった、と佐久間氏は明かす。

「私はもともと戦略関係のコンサルタントとして働いていましたが、同時に人事にも取り組む必要を感じ、24年前から戦略と組織と人事を合わせたコンサルティングを提供しています。その経験から成果主義人事制度に問題意識を持つようになり、新たなサービスをスタートさせました。新しいサービスは、過去の人事制度の欠点を修復し、世界基準の人事制度を取り込むことだと私は考えています」

日本の人事制度を振り返ると、1911(明治44)年公布の工場法が「人事0.0」にあたると佐久間氏は話す。同法はブルーカラーの労務管理を想定しており、労働者の半分以上がホワイトカラーになった現在の組織運営にはそぐわなくなった。現在の人事制度の基盤となる「人事1.0」は1947(昭和22)年に施行された労働基準法。この頃に労働組合が生まれ、終身雇用と年功序列が“暗黙の契約”として根付いた。1975(昭和50)年ごろには「人事2.0」にあたる職能資格制度がつくられる。職に付随する能力を測定しようとしたがうまくいかず、職務が定義されない“無限定社員”が定着した。

「能力測定がままならず、年功序列の温床になって不満が渦巻いていったわけです。ただ、当時の日本は右肩上がりの経済成長期。組織はどんどん大きくなりポジションも増えたため、不満はうまい具合に吸収されていました。ところが1990年代にバブルがはじけると、そうはいかなくなり、1993(平成5)年ごろに『人事3.0』にあたる成果主義人事制度を取り入れる試みが進みます。米国に遅れること約40年。ようやく日本も舵を切ったわけですが、日本には終身雇用と年功序列という“暗黙の契約”が生き続けており、会社と社員間の契約の言語化は容易ではありませんでした」

2019(平成31)年4月には「人事4.0」と言える労働基準法の改正があったが、対応に苦戦する企業は少なくない。ブルーカラーをベースとした過去の制度に加え、“暗黙の契約”や“無限定社員”の影響、契約の言語化の遅れが改革を阻んでいるためだ。これらを改善すべく、これまでの「人事0.0」から「人事3.0」の積弊を抜本的・飛躍的にイノベートしたのが「AI人事4.0」だ。

組織の主演はプロフェッショナル

「組織にはホワイトカラーが非常に多くなりましたが、今の時代に全員がマネジャーを目指すのは無理があります。ここで重要になるのが“無限定社員”という雇用形態をやめること。社員全員をプロフェッショナル化し、職務が定義されていない社員をなくすのです。プロフェッショナルとは、ある特定の領域の市場汎用能力(知識、スキル、コンピテンシー)によって社内外のクライアントに知的労働サービスを提供し、報酬を得る者を意味します」

プロフェッショナル化を進めるには、これまでの組織形態を変えるとよい、と佐久間氏はいう。全員がマネジャーを目指す組織では「マネジメント職が主演、スペシャリスト職は助演」だったが、これからの組織は「スペシャリスト職であるプロフェッショナルが主演、マネジメント職は助演」と位置付けを逆にする。マネジメント職は、主演が育つ場の提供とサポートを行う。人材はプロフェッショナルとして採用して育て、マネジメントに向いた人がマネジメント職に転換する。こういった組織を実現するためには、職務の定義から始めるべきだ。その上で成果目標と能力目標を設定し、コーチングによって成果と能力を伸ばすようにサイクルを回せば、組織能力と人的能力の好循環が生み出される。

講演写真

「職務の定義では、まず仕事の内容を明確にし、その成果責任の大きさを定量化します。成果責任とは、職務を7〜9の大きな分野で捉えたものです。例えば事業部長であれば、『事業部の事業戦略を策定する』『事業部の売上を拡大する』『新規プロジェクトを提案・獲得する』『事業部のコンピテンシーの定義に基づき人材を育成する』などが成果責任でしょう。次に、それを達成するために必要なさまざまな能力レベルを設定します。しっかりした職務の定義があれば具体的な能力目標も立てやすくなります」

職務を定義し運用する際、最も重要になるのは、2枚の成果責任マトリックス表だと佐久間氏はいう。1枚目には、社長の成果責任を第一レイヤーである取締役複数人の成果責任にブレークダウンして記載。2枚目には、各取締役の成果責任を第二レイヤーである部長複数人の成果責任にブレークダウンして書き込む。役割分担が明確化され、ひと目で把握できる。

「能力評価では、能力を知識、スキル、コンピテンシー、価値観、動機という要素に分解して、科学的に定量化できる体系を整えます。例えば、スキルは16項目、コンピテンシーは21項目に分類して、具体的に定義。能力の全体像や関係性も図式化し、これらをベースにきめ細かな評価が可能です」

成果主義人事制度の三つの課題

佐久間氏によれば、成果主義人事制度を取り入れている企業に見られる課題は三つ。一つ目は、導入・定着。組織文化まで含めた人事体系を考慮しなければ、新しい人事制度を加えても導入前の状態に戻ってしまう。二つ目は、従業員の言語化スキル不足。職務定義や成果・能力評価に欠かせないスキルだが、習得する負荷は大きい。三つ目は、制度の運営に時間と手間が莫大にかかること。従業員数が多いほど運用負荷は大きくなり、コストもかさむ。

「これらの課題を『AI人事4.0』は三つの機能で克服しました。一つは、成果主義人事制度に必須な全機能の実装。戦略を組織・人事とつなげ、成果評価、能力評価も組み込んで、制度設計から定着まで制度が形骸化しないような仕組みを網羅しています。二つ目は、簡易・短期間での導入を助けるクラウド、AIです。各所にAIを実装して、言語化を的確にサポートしています。クラウドにより運用の手間も劇的に改善させました。三つ目は、経験豊富なコンサルタントによるサポート体制。技術面も含めて迅速なサービスを心掛けています」

佐久間氏は、実際のデモ画面を掲示。業務活動を分析して成果責任を明確にするAI機能、成果目標を添削するAI機能、ブレのないコンピテンシー評価が可能な能力ディクショナリ搭載機能、各メンバーの評価タスクの進捗管理が一目瞭然で確認可能なデザインなどについて詳細が説明された。ここで、1年前に「AI人事4.0」を導入し、プロジェクトリーダーを務める大成温調株式会社 執行役員 人財開発室長の倉嶋睦氏が登壇。導入の経緯や効果を語った。

「当社は、今年で創業78年目を迎えた空気と水周りの建築設備の工事会社です。前社長の時代から人づくりの会社を標榜し、施策に取り組んできましたが、結果に満足できていませんでした。現社長が4年前に就任した際には、全国拠点を回って従業員の生の声を聞き、従業員満足度調査を実施しました」

調査を受け、人事制度の抜本的な再構築の必要性を感じて人事制度刷新委員会を立ち上げた。「透明性、自立性、客観性を重視した育成型人事制度」というコンセプトをまとめ、制度再構築のパートナーにスキルアカデミーを選んだ。

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「当社は工事会社ですので、研修は技術中心になりがちでした。そこでスキルアカデミー社から、ビジネスに必要なスキルを身に着ける研修も組み込み、当社の特殊な業務形態に適した人事制度にカスタマイズする提案をいただきました。制度設計がある程度できあがってからも、運用や方向性について、何度も協議してくれました。また、新しい制度の導入に欠かせない幹部社員の意識醸成や改革のリード役も務めてもらいました。社風や会社の根幹に関わる難しい重要な部分も安心してお任せできました」

「成果責任マトリックス表には初めて見る言葉もあり、幹部社員も当初は驚いていた」と倉嶋氏は振り返る。幹部社員が成果責任の目標を立てる際には、社長自らが一人ひとりと面談し、双方が納得して設定するというプロセスを経た。経営トップの本気度が幹部社員にしっかり伝わったという。最後に佐久間氏が、働き方改革を成功させる必須条件を掲げた。

「ぶれない経営トップと、ぶれないプロジェクトリーダーの存在です。制度の定着まで一貫した姿勢を持てる人が欠かせません。また、『AI人事4.0』のような斬新なシステムを急に導入するのは難しいため、“小さく始めて大きく育てる”考え方も大事になります。大成温調さんの場合も、まずは部長・課長クラスの改革意識を醸成する研修からスタートしました。例えば、ビジョンだけをつくる、成果責任と目標だけ考える、希望する社員に能力評価を取り入れてみるなど、簡単に取りかかれるところから始めるとよいと思います」

まずはニーズが明瞭で効果がわかりやすく表れる、規模が小さく短期のプロジェクトを成功させること。その成果をアピールすることで、より深く、広く、人事制度の改革に踏み込んでいけるようになる。「企業によってやり方は異なりますが、サポートは惜しみません」と佐久間氏はエールを送った。

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