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心理的安全性の高い職場をつくる共感型リーダーの3つのチカラ

  • 清水 美ゆき氏(WisH株式会社 代表取締役/心理的安全性 認定ファシリテーター)
  • 白河 桃子氏(少子化ジャーナリスト/相模女子大、昭和女子大客員教授)
東京特別講演 [A-5]2019.06.25 掲載
WisH株式会社講演写真

働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョン、イノベーションなどのテーマに取り組む際、不可欠な土壌となるのが心理的安全性だ。政府の「働き方改革実現会議」の有識者議員を務めた経験を持つ、少子化ジャーナリストの白河桃子氏、女性活躍推進・ダイバーシティなどのトータルソリューションを研修やコンサルティングで提供しているWisH株式会社の代表取締役・清水美ゆき氏が、働き方改革や心理学的観点から、心理的安全性の高い職場に必要なリーダーの力とは何かについて語り合った。

プロフィール
清水 美ゆき氏( WisH株式会社 代表取締役/心理的安全性 認定ファシリテーター)
清水 美ゆき プロフィール写真

(しみず みゆき)税理士法人、採用コンサルティング会社を経て2011年、リ・カレント(株)入社。人材開発プロデュース部にて営業職に携わる。女性活躍推進の課題に取り組むWisH株式会社を2013年に設立。多数の大手企業にて女性のキャリア研修を企画・プロデュース、登壇。企業での導入事例や人事担当者が抱える悩みや課題を熟知している。


白河 桃子氏( 少子化ジャーナリスト/相模女子大、昭和女子大客員教授)
白河 桃子 プロフィール写真

(しらかわ とうこ)東京生まれ。慶応義塾大学文学卒業後、住友商事などを経て執筆活動に入る。少子化、働き方改革、女性活躍、ワークライフバランス、ダイバーシティなどをテーマとする。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、内閣府男女局「男女共同参画会議専門調査会」専門委員などを務める。


働き方改革にはマインドセットが必要

WisHでは、女性活躍推進の視点を軸に、変化していく社会環境や状況に応じたキャリアデザイン、働き方をバランスよく歩んでいけるプログラムの設計や提供などを幅広い企業に向けて行っている。

まずは、昨年度に100社以上の企業を訪問し、働き方改革に関して講演を続けてきた少子化ジャーナリストの白河氏が、働き方改革の現場の実情を紹介した。

「働き方改革では、報道において高度プロフェッショナルが注目されましたが、たくさんの経営者にお会いして感じたのは、多くの会社に関係する課題は『残業上限、年休義務化、実労働時間把握義務』だということです。今、現場では三つのシフトが起きています。一つ目は、人権問題。過労死、過重労働は見過ごせない課題です。二つ目は、人材不足。柔軟な働き方、雇用形態を取り入れて多様な人材を採用しなければ人材確保は困難だといえます。三つ目は、デジタルイノベーションの黒船です」

日本の物流に大きな影響を与えたアマゾンを、黒船に例えてみる。アマゾンが日本で成功したことは人々の意識を変えた。店に行くよりもワンクリックで物を買うことが主流になったのだ。ヤマト運輸は扱う荷物が多くなり、過重労働が発生して、人件費が売り上げを圧迫することになった。これは、従来のビジネスモデルが黒船の前では機能しなくなったことを表している。一方、荷物の最後のワンマイルをロボットが運ぶ、駅に宅配ロッカーを設置する、といったイノベーションも起こりつつある。これはほんの一例で、多くの業界がビジネスモデルの見直しに迫られている。残業上限、年休の義務化、実労働時間把握義務と同時に、三つのシフトへの対応も迫られていると白河氏はいう。

講演写真

「そのような状況下で、働き方改革がうまく進まない原因はどこにあるのでしょうか。一つ目は、中間管理職の過重労働です。自分で仕事を引き受けて部下に残業をさせないようにするのではなく、チームで結果を出すために、時間の有限性に着目してチームとしての働き方を設計すべきです。二つ目は チームがテレワークをうまく活用できていないことです。それが理由で、制度が使われないケースが多い。使うコツは管理職がとにかく体験してみることですが、コミュニケーションの再設計には注意が必要です。対面で会話ができる関係でなくなるため、双方向性の強い意識が必要になるからです」

また、中間管理職が持つ“長時間労働で勝ち抜いてきた”という成功体験も、働き方改革の妨げになりかねない。そのような長時間労働DNAをアンインストールすることから始めるべきだ。働き方改革に欠かせないのは、リーダーシップ、インフラ整備、マインドセットだが、中でも一番重要になるのはマインドセットだと白河氏は語る。

中間管理職の動きが大きなポイントになる

「働き方改革は、トップが宣言してアクションの形を決め、新しい制度投資への決断をします。現場ではPDCAを回していきますが、一番要となるのは中間管理職です。しっかりと業務を設計し、風土を変えていくためのキーマンだからです。働き方改革の先に目指すのは生産性向上ですが、労働時間を短縮しても、中間管理職の力でチームの生産性を高めることは可能です」

ここで白河氏は、Google社の例を取り上げた。200チームを精査した結果、生産性の最も高いチームは、心理的安全性が最も高かったことが判明したという。心理的安全性が高いとは、「会議でチームメンバーが同じ分量だけ発言している」「誰かが失敗をしたときにみんなに開示して次の糧にできている」「上司が自分の弱みを部下に見せられている」といった状態のことを指す。

「イノベーションは生産性向上を牽引しますが、イノベーションを創出する条件は三つあります。一つ目は多様性、二つ目は女性がいること。そして、三つ目がGoogle社の結果にも表れた心理的安全性です。イノベーションは賛否両論がなければ起こりません。10人のうち8人が反対しても、2人が『面白いからやってみましょう』と言うところにイノベーションの種があるのです。そのためには2人が臆せず語れるような環境が大切で、それこそが心理的安全性を意味します。心理的安全性の高いチームには、“関係の質が高い→思考の質が高い→行動の質が高い→結果の質が高い”という成功の好循環モデルが見られます。『心理的安全性が高い』とは、言い換えると幸福度が高い状態です。幸福度によりあるコールセンターの売上が34%伸びた、という実験結果もあります。米国には幸福への投資という考え方があり、幸福に投資すると病欠が減り、離職率が下がり、生産性が上がり、創造性が3倍になると言われています」

労働時間を有限なものとしてチームとして成果を上げていく取り組みでぜひ心理的安全性の向上を図ってほしい。働き方改革で切磋琢磨することでチーム内に心理的安全性が生まれ、成功の循環モデルに入ることが、これまでの取材でも散見されたと白河氏は語った。

心理的安全性を高めることがリーダーの役目

次に、WisHの清水氏が、白河氏が重要だと言及した“心理的安全性”、中間管理職である“リーダー”について解説した。

「心理的安全性という言葉は心理学用語で、ハーバードビジネススクールのエドモンドソン教授のスピーチやGoogle社の話から注目が集まりました。教授によると、心理的安全性が不足しているときに生じる不安は、『無知だと思われるのではないか』『無能だと思われるのではないか』『邪魔をしているのではないか』『ネガティブだと思われるのではないか』という四つの要素です。私たちはこのような不安を感じると、主体的に関わっていけなくなり、不安要素はチームにも次々と波及してしまいます。それほどに心理的安全性というものはとても大事なのです」

チームに心理的安全性が感じられる状態では、自分の考えや感情をそのまま表現でき、ありのままの自分でいられる。「間違っていても発言していい」「分からないことを聞いてもいい」「意見を言っても大丈夫」という心理状態がチームの中でつくられているかどうかは、一つの判定基準になる。では、心理的安全性の高い状態をつくるにはどうしたらいいのか。白河氏の話と同様に、ポイントになるのはチームのリーダーだと清水氏は語る。

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「まずは、リーダーが自分自身のリーダーシップやマネジメントのスタイルをきちんと認識することが大事です。己を知らずして、他人は理解できません。また、リーダーの心理的柔軟性は大きなポイントです。1on1やコーチングといった対話の場をうまく使いこなせないため、メンバーが心理的安全性を感じられないといったケースをよく耳にします。この場合、話を聞いてくれてはいても“リーダーがこうしたい”という方向に誘導されていると感じれば、部下は対話に価値を抱きません。部下が感じていることや考えていることを率直に聞き入れ、質問を返すといったリーダーの心理的柔軟性が重要なのです」

また、アンコンシャスバイアスの存在を意識することも欠かせない、と清水氏は説明する。アンコンシャスバイアスとは、個々人の過去の経験や価値観といったものがバイアスとなった無意識の思い込みを意味する。リーダーがメンバーたちそれぞれにあるアンコンシャスバイアスを意識するだけでも、対話は変わってくる。

「ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みの中では、アンコンシャスバイアスは重要なキーワードとなっていますし、マインドフルネスを取り入れている会社も増えています。これらはともに、心理的柔軟性の向上にも通じるものなので、いろいろなテーマに対して心理的安全性は好影響を与えるポイントになると言えます」

リーダーに必要となる「認知する力、影響力、対話する力」

多様な働き方や多様な人が活躍できる、心理的安全性の高い職場をつくるために、リーダーに必要な力とは何か。清水氏が三つを挙げた。

「一つ目は、認知する力です。己のことを知らなければ相手の理解は困難です。まずは自分をきちんと観察することが大事です。メタ認知という、自分がどういう行動をし、どういう感情を持っているのか、ちょっと上の視点から客観的に自分を観察するトレーニングを行うといいと思います。行動や発言は聞こえるし目に見えますが、感情はそうではないため、本質を見失いがちです。自分の感情や気持ちを認知することから始めると、相手の感情や気持ちも汲み取れるようになります。業務の進捗やタスクの確認も大事ですが、その向こうに相手の感情や気持ちがあることを忘れてはいけません。2017年のダボス会議で“2020年に必要なビジネススキルトップ10”の6位に入ったEQは、自分や他者の感情を認知して自分の感情をコントロールする知能を意味しますが、これは認知する力とほぼ同じスキルです。EQI診断を使えば、数値化された指数によってスキルアップは把握できます」

二つ目は、影響力だ。ポイントはオープンマインドだと清水氏は強調する。例えば、一対一で対話する際、相手から話を引き出すために、まずは「いま自分がどう思って、どう感じているか」を自己開示する。それによって相手も自分の気持ちや感情を開示しやすくなるため、お互いをより知り合えるようになる。自分をよく知っている人の発する言葉ほど、自分の意思決定に与える影響は大きくなる。

「三つ目は、対話する力です。相手を説得して納得させるような対話ではなく、相手が自分自身の言葉で納得して行動するような対話を行う力です。相手が望んでいない結果が出ていた場合でも、それを変えるために本人が意思決定できるような質問や導きとなる言葉を語りかけるのです。相手がどういう感情や気持ちで、どういう状態の時に動くのかを理解した上で、本人の気持ちや行動を促していく行為でもあるため、コーチングのスキルにもリンクしています」

心理的安全性の高い職場づくりのためにチームのリーダーの存在は重要であり、リーダーには三つの力が求められるが、これらの力は資質ではなく磨けば伸ばせるスキルだと強調し、清水氏はセッションを締めくくった。

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