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実践を通じて、行動変容を促して成果につなげる
「実践×個別フィードバックプログラム」の成功体験から学べることとは

  • 山田 博之氏(株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース 執行役員)
  • 武田 克彦氏(カルビー株式会社 人事総務本部 人財・組織開発課)
  • 松葉 隆幸氏(日本ライフライン株式会社 人事部)
東京特別講演 [C-5]2019.06.25 掲載
株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース講演写真

人材育成の重要性を痛感し、研修に予算も工数もかけているのになかなか成果が表れない……。そんな悩みを抱える人事担当者は少なくないだろう。「1on1ミーティング」をはじめ個別フィードバックへの関心が高まっているが、日常的に実践できている企業は少ない。そこで本セッションでは、コンサルティングファームの人材育成手法をベースにして、実践と個別のフィードバックプログラムを手がける株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソースの支援内容を紹介。実際にプログラムを導入したクライアント企業の実例とともに、従来の研修では得にくかった「考え方と行動を変える方法」が取り上げられた。

プロフィール
山田 博之氏( 株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース 執行役員)
山田 博之 プロフィール写真

(やまだ ひろゆき)国内の戦略系コンサルティングファームにて、HR領域を主とした経営支援コンサルティングに従事。主担当として、25社の経営・人事改革や次世代幹部育成などの大型プロジェクトを実行。その後、事業会社の人事企画担当などを経て現職。戦略策定などをテーマにした次世代幹部の育成に強みを持つ。


武田 克彦氏( カルビー株式会社 人事総務本部 人財・組織開発課)
武田 克彦 プロフィール写真

(たけだ かつひこ)82年に伊藤忠商事に入社、機械の北米向け輸出営業に携わったのち、伊藤忠労働組合の専従役員2年を経て、外資系ヘルスケアメーカーで人事責任者、事業責任者をつとめる。一旦人事サービス企業を立ち上げ15年従事したのち、2017年からカルビー株式会社に入社、採用、人材育成などに取り組んでいる。


松葉 隆幸氏( 日本ライフライン株式会社 人事部)
松葉 隆幸 プロフィール写真

(まつば たかゆき)1988年に大手住宅メーカーに入社。営業を経験後、人事部に異動。その後国内大手IT企業(SIer)等を経て現職に至るまで、一貫して人事に従事し、制度設計、労務、教育、採用等、人事全般を幅広く経験。


研修で人を変えるのはなぜ難しいのか

講演写真

セッションの冒頭、山田氏は三つのテーマを掲げた。「なぜ研修で人が変わらないのかという問題提起」「フィールドマネージメント・ヒューマンリソースが実施しているプログラムについて」、そして「実際にフィールドマネージメント・ヒューマンリソースが支援するクライアントの実例について」だ。

一つ目のテーマである「なぜ研修で人は変わらないのか」に課題を感じている人事担当者は少なくないだろう。山田氏は「企業向け研修市場の動向は2011年以降、右肩上がりで伸びています。人材育成の重要性はどの企業も感じていて、予算と時間をかけているのに研修の成果を実感できていない現状があります」と語る。

それでは、研修の成果とは何なのか。山田氏はこれを「人が育つことで会社の業績が上がることがゴール」と定義する。会社の業績を上げるためにはまず個人業績を上げるというステップがあり、そのためには個人の行動変容が必要となる。また、行動を変えるためには考え方を変えることも必要となる。しかし、研修を実施した後に「個人の考え方が変わったかどうか」を検証するのは容易ではない。

「会社の業績や個人業績、行動は目に見えますが、考え方は見えません。研修をしてもすぐに業績が上がることは現実的に難しく、せめて行動変容を期待したい、というのが研修担当者の思いです。しかし、それもなかなか起こりません」

研修で人を変えるのは、なぜ難しいのか。山田氏は「ありがちな悪い例」を三つ挙げた。

(1)マインドセットのみの研修プログラム
座学や著名人の講演など、聞いた瞬間は意識が変わるが、現場に戻ればいつも通りになってしまう。

(2)ケーススタディによる架空の実践のみの研修プログラム
講演を聞くだけの研修よりは有益だが、「分かった」気にはなるが、真に「できる」までには至らない。

(3)研修後のOJTやフォロープログラム
現場任せになってしまうことが多く、実際の行動変容につながっているかを測りきれない。

こうした課題を踏まえて、フィールドマネージメント・ヒューマンリソースでは、まずサーベイなどを取ってクライアントの現状を分析。インプット研修を行った上で、「実業務における現場実践」に注力しているという。その上でサーベイなどによる事後調査を行い、行動や考え方の変化を測る。

「実践経験が豊富なコンサルタントが、架空のケーススタディではなく“実際の業務に関連したテーマ”に伴走していくのが当社の特長です」と山田氏は紹介した。

では、クライアント側は実際にどのような変化を感じているのだろうか。ここからは同社が支援するカルビー株式会社の武田氏と日本ライフライン株式会社の松葉氏が加わり、事前に用意した七つの質問に沿って、現場での取り組みを語った。

「受講者との個別面談によるフォロー」に期待が持てた

■Q1. プログラム導入の背景は?

講演写真

武田:カルビーは2010年初頭に経営体制が変わり、2011年には上場したこともあって、それまでのファミリー企業からパブリックカンパニーへと変革のときを迎えていました。そのタイミングで次世代経営人材を育成するプロジェクトが立ち上がり、選抜した27人を対象に研修を行っていたのですが、体系的なものではなく、27人が一堂に介して切磋琢磨する場もありませんでした。そのため、12名を改めて選び直し、マネジメントの力を身につけてもらうための取り組みを相談しました。

松葉:日本ライフラインは、循環器領域を中心とした医療機器を製造・販売しています。この業界は結構伸びていて、当社もこの10年で売上と従業員が倍になりました。私が入社した10年前には教育体制がほとんど整っておらず、管理職手前層への教育も追いついていない状況。「管理職をどう選ぶか」という基準も確立していませんでした。そこで実践的な育成方法を検討していました。

■Q2.なぜ、フィールドマネジメント・ヒューマンリソース社にしたのか?

松葉:私は人事歴が長く、研修の難しさを痛感していました。フィールドマネジメント・ヒューマンリソースは当初から「行動変容」を提案してくれたので、「この会社は面白いな」と第一印象で感じました。プレゼン資料がよくまとまっていて、コンサルタントのコミュニケーション能力や相性も良かったことが決め手でした。

武田:正直なところ、どのくらいお金をかけて、どのくらいのリターンがあるのか、自信は持てませんでした。それゆえに12人に絞ったわけですが、プログラムの中には「受講者との個別面談によるフォロー」があると聞いて、これまでにないメニューに期待を持ちました。

■Q3.導入したプロジェクトの内容は?

武田:せっかく内部で研修をするのだから、最終的なアウトプットをメンバーみんなで作りあげたいと考えていました。そこで「自分たちで、自分たちのカルビー中期経営計画を作ってみよう」というテーマを置き、他社の分析を含めたプログラムを進めました。さらに個別面談や上司なども含めた360度フィードバックがあるなど、非常に贅沢な内容でした。

松葉:私たちのもともとの目的は、社員を課長相当に登用する際のアセスメントでした。また、営業系はより戦略的に仕事をしてほしいという思いもありました。そこで、まずは個人の課題設定を確認してもらいました。このステップがあって本当によかったと思っています。20名ほどの対象者に、3日間、コンサルタントについてもらいました。1ヵ月半後に2回目の個別フォローを実施したところ、かなり詳しいアセスメント結果が得られました。

営業部のメンバーに見た「実践でフレームワークを使う」という行動変容

■Q4.実施してみて、実際のところどうだったのか?

講演写真

松葉:期待以上の内容でした。よくある適性検査よりも的確な表現でアセスメント内容が記述されていて、人事の私としては「ぜひ直属の上司に詳しく伝えたい」と感じるものでした。個別面談と個別フィードバックは効果的だと実感しました。

武田:これまでに次世代経営者候補が一堂に介したことはほとんどなく、その意味で初回のセッションではぎこちない雰囲気もありましたが、非常に精密かつ緻密に進めてくれたので、グループワークを重ねるごとに議論が活性化していきました。参加者も「これはレベルが高い」と気づいたのだと思います。結果的に、中期経営計画という重厚なアウトプットを最終成果物として作りあげて経営陣に提案できました。

■Q5.効果はあったのか?

武田:360度フィードバックに関しては、12人それぞれにかなり明確なフィードバックがあり、今後の行動計画を策定して上司にも共有しました。上司が部下である彼らにどのような関わり方をしていくのかを見ながら、先日は第2回の360度フィードバックも行っています。部下から見ても上司から見ても、かなりの改善が見られました。12人のメンバー全員が将来社長になるわけではないでしょうが、それぞれが「カルビーは自分の会社」だととらえることができたと思います。カルビーはスナック菓子の業界ではトップランナーであり、これまでは競合を見る目があまり養われていませんでしたが、食品業界全体に視野を広げて考えられるようになったと感じています。

松葉:従来の印象では「フレームワークなんて使わないだろう」と思っていた営業部の人間が、ロジックツリーを使って部下に説明していたという話を聞きました。アセスメントという目的に対しては、人事が自信を持って「この人が適任である」と思えるようになりました。人事がなんとなく思っていたことに対して、コンサルタントの鋭い視点で意見をもらうこともありました。

■Q6.今後の課題は?

松葉:個別フィードバックを通じて感じているのは、「これは職場の管理職がやるべきだ」ということです。1on1ミーティングなど、いろいろな取り組みの中心になってくるのは管理職。この層の成長を促すことが今の課題です。また、当社は8割が中途採用ですが、最近は優秀な新卒を迎え入れることにも力を入れています。同時に、10年後、15年後に向けて育て上げられるだろうかという責任も感じているところです。

武田:12人のメンバーそれぞれのスキルアップ、特にマネジメントスキルの向上について、確実に手応えを感じています。そうした意味では当初の目的は達成できました。もっと言うなら、新しいキャリアに挑戦させて「キャリアの幅」を広げさせたいと思っていたのですが、今回のプロジェクトでは実現できませんでした。せっかく経営分析の手法を学び、新しいキャリアに挑戦する土壌ができたので、今後は「新たなチャレンジ」へ向かうきっかけ作りも考えていきたいです。

■Q7.改めて、教育において大事なこととは?

武田:会社が従業員を雇うのは、全員が活躍してくれることを願ってのものです。研修などを行うのもそのためです。しかし最終的には、戦略投資です。会社の将来を担うトップクラスの人材を選び、特に分厚く投資しなければいけない。そういう意味では、大切な経営資源をまんべんなく全員にばらまくような教育のあり方は効率が悪いと思います。

松葉:戦略も重要ですが、単純に言うと「誰が言い出しっぺで、誰が推進しているのか」も大切なのではないでしょうか。人事も特別な思いを持ち、喜びを感じながらプログラムを準備している姿を見せなくてはいけないと感じています。教える側も教えられる側も、教育を通して成長することに大きな喜びを感じられるようにしたいですね。

「実務」と「現場」での泥臭いフィードバックが重要

ここで会場の参加者から「実際の行動変容につながるポイントやメソッドを知りたい」という質問が寄せられた。これに対して山田氏は「何よりもまず、実務を通してフィードバックしていくことが重要」と回答した。

「研修を企画する側が用意したケーススタディに基づいてフィードバックをすると、言葉は悪いのですが、レベルが低くなります。実務では答えがないので、難易度が上がるとともに質の高いフィードバックが生まれます。最初は小さな成功体験でもいいので、まずは実務を通じたフィードバックを経験してもらうことが大切です。

インプット研修でフレームワークなどのスキルを教えます。それを現場で使えば成果が出るはずなのですが、研修だけでは現場に戻ってから使いこなせません。そこで我々は、日ごろからフレームワークや論理的思考を活用するプロフェッショナルとして、現場での実務を見ながら方法論を伝えています。泥臭いと思われるかもしれませんが、こうしたプロセスが欠かせないと考えています」

講演写真
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