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HRテクノロジーにどのように取り組めばいいのか~採用・健康経営・タレントマネジメントにおける活用事例~

  • 竹内 利英氏(サッポロビール株式会社 人事部 兼 サッポロホールディングス株式会社 人事部)
  • 浅野 健一郎氏(株式会社フジクラ CHO補佐)
  • 山崎 涼子氏(パーソルホールディングス株式会社 グループ人事本部 人事企画部 タレントマネジメント室 室長)
  • 北崎 茂氏(PwCコンサルティング合同会社 ディレクター)
TECH DAYパネルセッション [TF]2019.07.18 掲載
講演写真

人事領域へのHRテクノロジーの導入が本格化しつつある。しかし、多くの企業で、慣れないデータ活用にさまざまな障壁が出現している。どうすればスムーズに導入し、成果が出せるのか。新卒採用にAIを導入したサッポロビール、健康経営でデータ活用を行ったフジクラ、タレントマネジメントに人事データを活用したパーソルホールディングスの人事が登壇。HRテクノロジーの領域で多くのコンサルティング実績を誇るPwCの北崎氏とともに、データ活用への取り組み方について意見を交わした。

プロフィール
竹内 利英氏( サッポロビール株式会社 人事部 兼 サッポロホールディングス株式会社 人事部)
竹内 利英 プロフィール写真

(たけうち としひで)2007年サッポロビール(株)入社。東北本部、首都圏本部にて営業活動に従事。2014年から3年間は営業活動の傍ら、労働組合東京支部の支部長を担い、約300名の営業現場社員の代表として組織変革に従事。2017年10月より現職にて、採用―育成・異動配置を中心に人事領域全般に従事。2018年より育児サポーター制度を立ち上げ、育児期社員や受入部署の理解浸透にも取り組む。


浅野 健一郎氏( 株式会社フジクラ CHO補佐)
浅野 健一郎 プロフィール写真

(あさの けんいちろう)1989年藤倉電線株式会社(現株式会社フジクラ)に入社。光エレクトロニクス研究所に配属され光通信システムの研究に従事。2011年よりコーポレート企画室で健康経営の企画立案に携わり、2014年より人事・総務部健康経営推進室。2017年12月よりCHO(Chief Health Officer)補佐。現在、経済産業省 次世代ヘルスケア産業協議会 健康投資WG専門委員、厚生労働省 日本健康会議 健康スコアリングWG委員、厚生労働省 肝炎対策プロジェクト実行委員他、経済産業省、厚生労働省等の委員を多数兼任。


山崎 涼子氏( パーソルホールディングス株式会社 グループ人事本部 人事企画部 タレントマネジメント室 室長)
山崎 涼子 プロフィール写真

(やまさき りょうこ)2008年にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒で入社。入社から現在まで、採用・教育・人事運用設計など、一貫して人事領域を担当。2015年4月に人事情報室を立ち上げ、人事におけるIT・データ活用に従事。より人事データを活用した人事戦略を推進するため2018年4月にタレントマネジメント企画室を新設し、パーソルグループ全体の人事戦略に従事、現在に至る。


北崎 茂氏( PwCコンサルティング合同会社 ディレクター)
北崎 茂 プロフィール写真

(きたざき しげる)慶応義塾大学理工学部卒業。外資系IT会社を経て現職。人事コンサルティング領域に関して約20年の経験を持つ。組織設計、中期人事戦略策定、M&A、人事制度設計から人事システム構築まで、組織/人事領域に関して広範なプロジェクト経験を有する。ピープルアナリティクスの領域においては、国内の第一人者として日系から外資系にいたるまで様々なプロジェクト導入・セミナー講演・寄稿を含め、国内でも有数の実績を誇る。現在は、人事部門構造改革(HR Transformation)、人事情報分析サービス(People Analytics)におけるPwCアジア地域の日本責任者に従事している。


北崎氏によるイントロダクション:HRテクノロジーがもたらす効果と課題

これから人事はどんな問題に優先して取り組みたいと考えているのか。北崎氏が調査結果を示した。

「これは当社が、世界の278社を対象としてHR領域で今後取り組むべき優先事項を聞いたものです。1位はHRアナリティクス、人事のデータ分析で44%でした。昔は評価制度やリクルーティングがメインでしたが、これからは先が見えない時代だからこそ、データが重視されていると感じます」

では、データを扱うHRテクノロジーで何ができるのか。北崎氏は三つに集約されると言う。一つ目は業務の効率化、二つ目は意思決定の精度の向上、三つ目は従業員への価値提供の向上だ。

「ここで難しいのは、人事部として今後HRテクノロジーを活用するリテラシー、能力やスキルを上げる必要性があるかどうかという点です。今日はこの点をパネリストの皆さんにおうかがいしたいと思います」

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竹内氏によるプレゼンテーション:新卒採用 エントリーシート(ES)選考へのAI導入

最初にサッポロビールの竹内氏が登壇。採用活動へのAI導入の経緯について語った。当時、採用においての課題は実務の効率化。目的は「時間をかけない」ではなく、学生との有効な接点を増やすことにあった。

「採用の時期は人事部が忙しく、学生とのコミュニケーション量に課題がありました。また、ESの読み込みに時間がかかり、学生に選考結果を連絡するまでの期間が長かった。また、その判断にも不安がありました。そこで2018年卒からエントリーシートの優先度を診断できる三菱総研の『HaRi』を導入したのです」

初年度はAIの診断結果と人事部の目線の整合性を確認。AIの診断結果が信頼できるレベルであると確認できた。そして本格導入となった2年目、成果が出た。

「本格導入を行い、AIで診断した結果、優先度の高いESはそのまま合格、それ以外のESについては例年通り人事部員の人の目で判定を行いました。これによりES選考にかかる時間が4割程度削減できました。それによってねん出できた時間で、説明会の実施回数を増やし、その中でも学生にAIの導入や活用方法について説明しました。他企業とのコラボセミナーやインターンの開催も増加。ESの締め切りを延ばすこともできました」

19年卒では採用広報に力を入れ、今まで会えなかった多様な学生との接点を増やし、間口を広げることに注力できた。20年卒はどうなるのか。

「19年卒の広報活動をより精査し、広報活動だけでなく、選考フローの見直しや各選考における見極め精度を高めるための取り組みを行いたいと考えています」

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浅野氏によるプレゼンテーション:健康経営×HRテクノロジー

次に浅野氏が登壇。健康経営におけるHRテクノロジー導入の経緯を語った。

「社員が活き活きと働ける会社をつくろうと考えたことがきっかけです。仕事に誇りややりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て活き活きしている状態。これらを測れるようにして、データから労働環境の現状を把握できないかと考えました」

その手法は徹底してモニタリングし、仮説を立ててモデリングし、介入の方策を考え、その後正しかったかどうかを検証していくものだ。モニタリングでは、活き活き度を落としている状態を分析した。

「調べると長時間座位行動が継続していること、座っている姿勢が悪いこと、また、自席から立つとサボっていると思われるのではないかという心理があることがわかりました」

解決策として、皆が足を運んで休憩し、コラボレーションができる場を設けてはどうかと考えた。これまであった打ち合わせコーナーを改装。自席からいつでも自由に移動できる場を設けた。

「人が気軽に入れる休憩場所としてリニューアルしました。そこには人がぶら下がれる雲梯(うんてい)を設置し、背筋を伸ばす運動ができるようにしました。これにより仕事にメリハリが付き、人が集まることで新たなコミュニケーションも生まれました」

活き活き度の測定には、厚生労働省科学研究班が作成した新職業性ストレス簡易調査票を使い、職場と個人の活き活き度を測定しながら課題の発見と解決を繰り返し続けるサイクルを確立した。

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山崎氏によるプレゼンテーション:人事を進化させるデジタルHR

最後に山崎氏が登壇。過去4年間における人事の活動について語った。

「タレントマネジメントは、人事プロセスが有機的・統合的に行われることだと考えています。。個別になりがちな人事施策をデータでつなぎ、データから社員・経営の意思決定に寄与する情報をレコメンド(推薦)していくことを目指しています」

では、どのようにデータを収集、管理、分析したのか。「収集」では、システムへの登録ルールをシンプルかつ強制力を高く設定し、『誤りを生まない仕組み』と『間違えたらすぐに直せる仕組み』を設けた。そのうえで社員の声、組織の状態を適切にデータとして取得している。

「『管理』では、定期的なデータモニタリングとクリーニングを実施し、タレントマネジメントシステムに、常に記録される仕組みをつくることで情報の鮮度を維持しました。複数のシステム間を連携させ、統合的にデータを管理。データ分析では、データの『可視化』と『予測』に大別し、分析を行っています。可視化の目的は仮説や課題を導き出すことでしたが、結果として人事の業務工数の削減につながるケースも多くありました。可視化では統計分析やBI(ビジネスインテリジェンス)ツール、予測では機械学習技術を活用し、社員の表出していない可能性を見出すことに注力しています」

また、HRの情報と予測値などをまとめて表示するタレントダッシュボードを作成。検索性を備え、情報を素早く検索できるようにした。適性ポジションレコメンド分析では、過去の公募制度の応募履歴やその他の人事情報を参考に、予測モデルを構築中。山崎氏は、今後社員が自身のキャリアや応募に迷うときに参考情報を提示できるようにしたいと語った。

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パネルセッション:HRテクノロジーにおける障壁とは何か

北崎:HRテクノロジーの導入は初動時に障壁があるケースが多いと思います。立ち上げのきっかけと当時の障壁についてお聞きできますか。

竹内:きっかけは業務効率化を図るためでした。立ち上げにおける障壁は特にありませんでした。ただ今後、検証し精度を高める過程で苦心すると思っています。AIの優先度を考えるうえでは、入社している若手が優秀であることが前提になっているので、これからは期待通りに活躍しているかどうかをデータで見ることで、内容をブラッシュアップしたいと考えています。

浅野:当時は「健康経営」という言葉もない時代で、何からやればいいかわからなかった。そこでまずはデータ分析から始めようということになりました。障壁はデータの有効性です。健康診断のデータでも基準が異なっていることがあります。そのためきれいなデータを集めることに苦心しました。

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山崎:きっかけはHRのデータが溜まっていると気付き、これを分析して人事を良くできないかと考えたことです。障壁の一つ目は統計知識。私に知識がなかったので1年をかけてできる人を契約社員で1名採用しました。二つ目は成果を示すこと。PoC(概念実証)として、特定のグループ会社を定めて退職可能性を予測できるモデルをつくり、関係者に展開しました。今まではできなかった分析内容に関心が得られ、トライアルは継続することになりました。

北崎:皆さんのお話をお聞きして、試みの継続とデータの整備が重要と感じました。データの整備はどのように行うとよいのでしょうか。

竹内:昨年度はあらゆる人事情報がさまざまな場所にあったので、一つにまとめていきました。SPIは社員全員が受けていたわけではなかったため、再度、全社員に受けてもらいました。特にSPIでは個々の価値観や仕事を進めるうえでの特徴など、本質的な部分のデータが重要だと考えています。仕事に対する考え方などは、私もそうですが入社後もあまり変わっていません。「何が良い、何が悪い」という指標ではなく、メンバーそれぞれが持つ個性をマネジャーが把握し、マネジメントに生かせないかと考えています。

浅野:最初は今あるデータからいじってみる、というところから始めるとよいのではないかと思います。何が大切かを学ぶためにも、最初にデータに接してみるべきです。そのうち「これでは足りない」「これではわからない」と考えるようになるので、そのときに新たなデータをつくるようにしたらよいと思います。

山崎:私も新たに必要なデータを把握するためにも、今あるデータを見直す必要があると思います。人事データは動きが少ないものが多く、一つのデータだけを使うよりも何かと組み合せることが多い。基礎となるデータがいかに正しいかが重要で、そのためにもデータのクリーニングには注力しています。

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北崎:最後に人事部門はこの先どうなっていくと思われますか。

竹内:テクノロジーを駆使しても論理だけで人は動かないので、社員たちと向き合いながら、会社として進むべき道を示していくことが人事には求められていると感じます。

浅野:データ分析は誰が行ってもいいものです。問題は出てきたアウトプットに対してどう解釈するのか。そうなると、人事がこれまで培ってきたアナログ的な感覚が逆に必要になってくるのではないかと思います。データをいかに使いこなすかが人事に期待されていると感じます。

山崎:個人をより理解することを目的に、データを活用すべきです。また、データ活用は業務改善につながることが多いので、人事一人ひとりがデータを使いこなす力をつけていくことが重要になると思います。

北崎:データ活用の基本は仮説を立て必要なデータを集めて分析し、解釈することです。仮説を立てたり、解釈することはやはり人事の勘と経験がないとできません。最近は現場ごとに事情が異なることも多いため、人事は現場と一緒になってそれらの作業を行う必要があります。お三方の話を聞いて、これから人事は、現場とコラボレーションしたり、現場の多様性を受け入れていく姿勢をもたなければいけないのではないかと感じました。本日はありがとうございました。

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