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HRカンファレンストップ >  日本の人事部「HRカンファレンス2019-春-」講演レポート・動画 >  特別講演 [G-3] これからのグループ経営に資するシェアードサービスの在り方とは

これからのグループ経営に資するシェアードサービスの在り方とは

  • 小川 嘉一氏(株式会社レイヤーズ・コンサルティング ディレクター)
東京特別講演 [G-3]2019.06.25 掲載
株式会社レイヤーズ・コンサルティング講演写真

当初は業務効率化やコスト低減を目的に導入されていたシェアードサービスであるが、近年はプロフィット化や事業の選択と集中が求められ、外部化やBPOへの置き換えが増加しており、他人任せの状態にあるといわれている。これからのグループ経営に生かせるシェアードサービスの在り方とは何か、どうすれば自分たちで強い本社をつくれるのか。レイヤーズ・コンサルティングの小川嘉一氏が論じた。

プロフィール
小川 嘉一氏( 株式会社レイヤーズ・コンサルティング ディレクター)
小川 嘉一 プロフィール写真

(おがわ よしかず)官公庁にて政策企画(産業組織政策等)を経て、現職に到る。全社コスト構造改革などの事業構造改革・MA/組織再編、及びHRを中心としたPMI支援。グループシェアードサービス事業再構築などの戦略・事業計画立案から実行にかかる業務設計も含めた、事業構造改革/組織再編に関するプロジェクト経験多数。


「他人任せの現状」といわれるシェアードサービス

株式会社レイヤーズ・コンサルティングは、独立系コンサルティング会社として1983年に創業。一部上場企業を中心に300社以上の顧客を持ち、戦略構想から計画立案、実行までのコンサルティングを行っている。近年では、グループ経営の視点を生かすシェアードサービスのプロジェクトも推進している。

小川氏はまず、シェアードサービスについて解説した。

「シェアードサービスは、グループ経営の視点から人事や総務などの間接業務を集約化。その上でスケールメリットやシステム統一を通じ、工数やコスト削減による効率化を行ってきました。バブルが崩壊した1990年代の後半は、コスト削減に主眼が置かれていました」

小川氏は次に、グループ・シェアードサービス・センター(グループSSC)の形態に言及。その形態は主に四つあるという。

「一つ目は、グループ内の視点で本社に集約する『本社集約化パターン』です。本社にある部門が、子会社の業務を巻き取っていく考え方です。この場合は、本社が業務を担うため、どうしてもコストが高止まりしやすくなります。一方で統制を効かせやすいメリットがあります。

二つ目は、別会社をつくって管理する『子会社設立パターン』です。この場合は別会社になるため、管理がしやすく、効率化やコスト低減が進みやすい。一方で、グループ各社への統制が効きにくくなるデメリットがあります。

三つ目は、グループ横断で業務委託する『グループ横断集約化パターン』です。グループを超えた規模の経済が追求しやすい一方、集約化できる範囲が限定的になりがちです。

四つ目は、外部に委託する『BPO移管パターン』です。グループSSCをBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)へ移管するため、費用を完全に変動費化できます。しかし、委託部分がブラックボックス化しやすくなるので、自社にノウハウが蓄積されなくなります」

日本では1999年にシェアードサービスが始まったとされるバブル崩壊によりグループとして一般管理費の削減が求められ、SSCが設立された。2000年から2010年には会計ビッグバンやITバブル崩壊により、内部統制への対応など、専門性が求められるようになる。目的は業務コスト削減だが、一方で専門性の保持が課題となっていった。

小川氏は、それぞれの目的に対しても実態が伴っていないケースが多いと言及する。

「2010年までは業務コスト削減や業務品質向上といった目的に対して、十分に集約化ができていませんでした。しかし、2010年以降はグローバル化、BPOの台頭が進み、プロフィット化や事業の集中と選択が求められる時代になります。すると、SSCが解散し、外部委託化やBPOへの置き換えが増加。結論から言えば、現状のグループSSCは他人任せになっている状況にあります」

では、今後のグループSSCはどうあるべきなのか。小川氏はグループ経営の強化、不祥事の防止、デジタルトランスフォーメーションおよび働き方改革によって、グループ・ガバナンスの強化が求められていると説明する。

「今後求められる機能は、横串機能によるグループ・ガバナンス強化であり、BPOとの組み合せ、 RPAなどの活用によるリソースの確保により実現することが求められています。象徴的にいえば、脱SSCを通じて強い本社への変革が求められています。会社がどのようにビジネスを設計し、どのような組織体系をつくっていきたいのかを真剣に考えるべきタイミングが来ています」

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