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今から備える大介護時代の経営リスク――ライオンの「仕事と介護の両立」施策から考える

  • 山極 清子氏(株式会社wiwiw(ウィウィ) 社長執行役員 / 昭和女子大学客員教授 経営管理学博士)
  • 服部 雅茂氏(ライオン株式会社 人事部 副主席部員)
2016.12.28 掲載
株式会社wiwiw講演写真

wiwiw(ウィウィ)の調査によれば、40歳以上の人の8割が、5年以内に介護に携わる可能性があると回答している。全介護時代は目前であり、そのような中で企業が社員の仕事と介護の両立支援を行うことは、もはや福利厚生ではなく、経営リスク対策となりつつある。企業はどのように仕事と介護の両立を図るべきなのか。100社の取り組みから見えた両立支援の方策と、この課題に率先して取り組むライオン株式会社の事例を紹介した。

プロフィール
山極 清子氏( 株式会社wiwiw(ウィウィ) 社長執行役員 / 昭和女子大学客員教授 経営管理学博士)
山極 清子 プロフィール写真

(やまぎわ きよこ)株式会社資生堂に在籍中、本社において女性活躍・男女共同参画の推進、両立 支援及び働き方改革を行う。また現在まで約1,000社に対し、働き方、ダイバー シティ・マネジメント等を提案し、女性活躍を推進している。
著書に、『女性活躍の推進  ~資生堂が実践するダイバーシティ経営と働き方改革~』がある。


服部 雅茂氏( ライオン株式会社 人事部 副主席部員)
服部 雅茂 プロフィール写真

(はっとり まさしげ)東京理科大学卒業。ライオン株式会社に入社後、研究職にて製品開発に従事。その後、労働組合役員専従、関係会社出向により人事労務を経験。2007年より人事部にて、人事制度改定や福利厚生制度設計など労使一体の諸政策に取組む。2014年よりダイバーシティ関連を担当し、現在、女性活躍推進や介護者支援を推進中。


山極氏によるプレゼンテーション:
「100社の取り組みから見えた仕事と介護の両立支援」

株式会社wiwiw(ウィウィ)は、「女性活躍をはじめとするダイバーシティへの取り組みが経営パフォーマンスを向上させる」という確信のもと、「女性活躍推進」「仕事と介護の両立推進」「組織のダイバーシティ化」を中心に、各種研修やサービスを提供する。会社創立のきっかけは株式会社資生堂の社内プロジェクトであり、日本初のwiwiwキャリアと育児の両立支援プログラムのバージョンアップも毎年行っている。まず、同社社長執行役員である山極氏が登壇した。

「まず両立支援を企業方針として決定することが重要です。そして、社内の実態把握・分析を行い、課題を整理。社内外への周知を行いながら、企業ごとに支援のベストプラクティスを見つけ、働き方改革を進めていきます」

同社は平成26年度に、厚生労働省の委託で仕事と介護の両立支援に関する100社アンケートを行っている。その結果を見ると、仕事と介護の両立にはまだ距離があることがわかる。

「現状で介護経験がある従業員は約2割ですが、現在介護を行っていない40歳以上の人に『今後5年間で家族・親族の介護を行う可能性はあるか』と聞いたところ、『可能性がある』と答えた人は8割にもなりました。中には育児も重なり、ダブルケアの状況にある家庭も生まれており、企業には早期の対応が求められます」

介護従事者の相談先を聞いたところ、「勤務先で話したり相談したりしている人はいない」が29.1%と、一人で介護問題を抱え込んでいる人が3割ほどいることがわかる。

「相談先としては『同じ職場の上司』が37.9%であるのに対し、『勤務先の人事総務担当者』は1.5%と少ない。人事部に話をうかがうと『うちには介護者はいない』と言われることがありますが、実態把握調査をしてみるとそうでないことに気づかれます」

「介護に直面した時に希望する働き方」について聞くと、「休業や短時間勤務などの支援制度を利用しながら、仕事と介護とを両立したい」との回答が64.0%。しかし仕事継続の可能性を聞くと、介護をしながら現在の勤務先で仕事を「続けられないと思う」が35.2%、「わからない」が42.2 %で、「続けられると思う」は22.1%と大変少ない。介護不安の程度を聞くと、「非常に不安を感じる」が32.7%で、「不安を感じる」「少し不安を感じる」まで加えると94.3%になり、ほとんどの人が不安に思っていることがわかる。

また、勤務先の両立支援制度についてたずねたところ、「制度があるかどうか知らない」が54.8%、「制度があることは知っているが、内容はわからない」が32.4%と、約9割が制度と内容を知らなかったことがわかった。制度の周知徹底が急がれる。

このような状況において、企業はどのように制度設計を進めればよいのか。山極氏はポイントを三つ挙げる。一つ目は、法定通りの制度になっているか、就業規則に明文化されているか。二つ目は、従業員に周知されているか、手続きの方法がわかりやすいか、利用しやすい内容になっているか。三つ目は、自社の制度が仕事と介護の両立ができる内容になっているか。また、介護に直面した従業員への支援のポイントも三点挙げた。

「介護に直面した従業員には、『会社としては働き続けてほしい』とアピールしながら、『介護は自分自身が行うものではなく、どんな介護サービスを利用するかのマネジメントを行うもの』というイメージを持たせることが重要です。そのうえで『支援制度の利用サポート』『相談窓口の明確化』『地域の介護サービスなどの利用支援』を行うのです」

講演写真

服部氏によるプレゼンテーション:
「ライオンにおける仕事と介護の両立支援施策」

続いて服部氏が登壇し、社員の介護支援における人事部の役割について述べた。
「仕事と介護の両立支援における人事の役割は、介護事由で休む支援をすることではなく、安心して働き続けられる就労環境・制度の整備だと考えています。その三つの柱として、制度整備、情報提供、風土醸成を行ってきました」

「三つの柱について述べると、制度整備では、2016年1月に介護休暇やフレキシブル勤務などを含めた制度改定と2017年法対応と制度再整備を行ったこと。情報提供では、社員から介護について『どこに聞けばいいかわからない』という声があったことから、情報提供・教育から介護意識の醸成、そして心構えの強化を図ったこと。そして、風土醸成では、育児と同様に職場の支援が大事と考え、『お互い様風土』の醸成を行ったことです。部下に介護が起こったときに上長が支援し、メンバー同志の助け合いが起こる風土を作り、また、職場の部下が介護に直面したときに上司が支援し、メンバー同士の助け合いが起こる風土を作り、さらに、専門業者との提携による相談体制も構築しました」

ライオンでは次の3ステップで、取り組みを進めている。第1ステップは2016年1月から開始した『制度整備』。第2ステップは2016年上期からの『情報提供・風土醸成』。そして第3ステップは、下期から行う『来年1月の法改正対応・制度再整備』だ。

「第1ステップでは、介護休暇の取得方法を半日単位に変更し、介護休業期間を93日から1日単位での分割可能な通算365日としました。そして多様な働き方への対応として、短時間勤務とフレックス勤務を組み合わせたショートタイムフレックス制度(SF制度)を導入しています。第2ステップでは、介護教育として仕事と介護の両立支援セミナーの開催(介護サービスの使い方、認知症の基礎知識、遠距離介護の方法などの情報提供)、社内WEB実態調査、社内イントラ内への『仕事と介護の両立支援ハンドブック』の掲載、そして介護に直面したときの対処法や上司向けの両立マネジメント、事前相談シートや社内制度などを紹介しています。これらは、wiwiwのサービスを利用しました。第3ステップでは2017年1月施行の法改正に伴い、休業・短時間勤務の分割取得などを整備。また、ショートタイムフレックス制度の取得期間の拡充(必要期間への拡充)や、グループ全体での支援体制の構築を行いました」

このうち2016年2月に実施した介護実態把握調査では、現在の介護者は10%程度、だが将来的な介護不安を持つ人は約97%もいること、介護支援制度への認知度がまだ低く、介護不安は潜在的な意識に留まっていることがわかった。

「今後訪れると予測される大介護時代に対する大きな課題が浮き彫りになると同時に、相談窓口の必要性を感じていることがわかりました」

2017年1月の法改正への対応では、これまでの法を上回る制度内容を、さらに上回る内容へと改定した。介護休業とショートタイムフレックス制度の分割取得に加え、ショートタイムフレックス制度の取得期間の拡充(必要期間まで取得可能)を行った。

「介護制度を活用した場合の人事評価の運用にも手を入れました。以前は育児や介護事由で短時間勤務を取得する場合、その設定時間に応じた人事評価をしていましたが、今回からは、設定した単位時間当たりの目標に対する成果で評価する仕組みに改定しています(人事考課・賞与査定)。同時に、評価者に対する教育も定期的に実施し、管理職の意識を高める活動を進めています」

また、ライオンは、これまでのライオン株式会社単体の取り組みからグループ全体で仕事と介護の両立支援をする体制構築が必要だとも考えている。

「『従業員とその家族の介護状態を支援するサービス』をグループ全体に展開し、「啓発、相談、教育、外部サービスの紹介など」の充実を図っていきたいと考えています。各企業人事は、それぞれ制度設計や働き方改革に努めますが、仕事と介護の両立支援はシェアードサービス会社に委託します。『啓発』として介護初期に必要な情報の提供を、『相談』では心身的負担軽減に向けた個別相談窓口、『教育』では事前準備の内容・方法、介護予防・介護関連情報などの教育を、『紹介』では用品・施設・保険などの紹介を行っています。本格稼働は2017年からですが、グループ全体で検討を継続していきます。また、福利厚生制度の運用や、介護に直面した人を職場で支援をする人の評価加点などの検討にも着手し、より良い制度構築に努めていきたいと考えています」

服部氏は最後に今後の課題を挙げて、プレゼンを締めくくった。「現状で課題と認識していることは四点。職場での雰囲気の醸成、介護支援施策の認知度向上、介護ニーズの増加懸念への対応、そして、さらなる働き方の改革・人事評価の整備です。これからも、従業員が辞めることなく、この会社で働いていてよかったと思える環境をつくっていきたいと思います」

講演写真

質疑応答:「現場で発生する課題にいかに対応するか」

会場:新たにショートタイムフレックス制度を導入されていますが、以前からフルタイムの方にもフレックス制度があったのでしょうか。

服部:はい、ありました。10時から15時をコアタイムとしたフレックスタイム制度で、営業と生産を除き導入されています。今回のショートタイムフレックス制度は、これまでの介護短時間勤務制度とフレックスタイム制度を組み合わせた制度です。

従来、短時間勤務制度は、育児の場合も同様ですが、30分を単位として2時間までの短縮が可能で、勤務時間は固定でした。残業も休日出勤も禁止でした。しかし、育児者の要望で残業や休日出勤を可能とし、フレキシブルにして使いやすく、取りやすくしました。

会場:介護を抱える従業員の転勤についての配慮はありますか。

服部:人事上は本人から事情の申請があれば、異動時に加味しています。当社の場合は自己申告シートに本人および家族の健康状態について具体的な状況を申告できるように整備しています。

会場:職場に介護者がいると、メンバーにも負荷がかかると思います。そのような場合、職場の仕事量はどう調整しているのでしょうか。

服部:仕事の量、効率化を含め、職場の働き方改革は必要かと思います。同時に、介護に直面した人を職場で支援する人を加点評価で配慮しながら、職場を支援していきたいと考えています。助け合いの中で、業務の効率化を図るようにしたいと思います。

会場:介護を行う本人や周囲の評価について、配慮されて加点されるようになると、賞与などで会社の負担が増えると思いますが、そこはどう調整されるのでしょうか。

服部:加点評価はこれからなので、調整は必要になると思います。ただ、全体は相対評価になりますので、中の割合を考えながら点数を付けざるを得ないと思います。

会場:一般には時短勤務の場合、評価が低くなりがちだと思います。御社ではそうならないように、どのように定量化、見える化をされているのでしょうか。

服部:この運用は今年からスタートしていますが、当社でも大いに課題があると思っています。やはりまだ評価者の経験と認識が不足しており、全体を意識変化を起こすことは難しい。人事部では評価者に対する研修も行っていますが、浸透には時間がかかります。実績を積み上げ、社内風土を変えていきたいですね。短時間勤務でも、本人と上司の間で目標を確認しあい、お互いがそれを認め、評価する風土を創り上げたいと思います。

山極:本日はありがとうございました。

講演写真
本講演企業

「女性活躍をはじめとするダイバーシティへの取り組みが、経営パフォーマンスを向上させる」という確信のもと、企業のダイバーシティや女性活躍推進、ならびに仕事と介護の両立支援や働き方改革によるワーク・ライフ・バランス推進をご支援するコンサルティングや各種研修等のサービスをご提供する企業です。

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