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次代の経営を担うリーダーを育成する

  • 島田 由香氏(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長)
  • 源田 泰之氏(ソフトバンク株式会社 採用・人材開発統括部長)
  • 守島 基博氏(一橋大学大学院 商学研究科 教授)
2017.01.10 掲載
講演写真

近年は次代を担う経営リーダーを育成することの重要性が叫ばれているが、どの企業も一定の成果は出しつつ、まだ達成感がないというのが本音ではないだろうか。では、リーダー育成に優れた企業は具体的にどのような取り組みを行っているのか――。ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの島田氏、ソフトバンクの源田氏を迎え、人事・人材開発研究の第一人者である一橋大学大学院教授 守島氏の司会でディスカッションを行った。

プロフィール
島田 由香氏( ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長)
島田 由香 プロフィール写真

(しまだ ゆか)1996年慶応義塾大学卒業後、日系人材ベンチャーに入社。2000年コロンビア大学大学院留学。2002年組織心理学修士取得、米系大手複合企業入社。 2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。中学一年生の息子を持つ一児の母親。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLPⓇトレーナー。


源田 泰之氏( ソフトバンク株式会社 採用・人材開発統括部長)
源田 泰之 プロフィール写真

(げんだ やすゆき)1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。新卒及び中途採用全体の責任者。グループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティおよび後継者育成機関のソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(SBイノベンチャー)の事務局責任者。ソフトバンクユニバーシティでは社内認定講師制度や知恵マルシェなどユニークな人材育成制度を運用。ソフトバンクグループ株式会社・人事部アカデミア推進グループ、SBイノベンチャー管理部長を務める。大学でのキャリア講義や人材育成の講演実績など多数。


守島 基博氏( 一橋大学大学院 商学研究科 教授)
守島 基博 プロフィール写真

(もりしま もとひろ)人材論・人材マネジメント論専攻。1980年慶応義塾大学文学部卒業、同大学院社会研究科社会学専攻修士課程修了。86年米国イリノイ大学産業 労使関係研究所博士課程修了。組織行動論・人的資源論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部助教授。90年慶應義塾大学総合政策学部助教授、98年同大大学院経営管理研究科助教授・教授を経て、2001年より現職。主な著書に『人材マネジメント入門』『人材の複雑方程式』『21世紀の“戦略型”人事部』『人事と法の対話』などがある。


守島氏によるプレゼンテーション:次世代リーダー育成のヒントを探る

最初に守島氏が登壇。今リーダー育成で重視されている、三つの目的を挙げた。

「一つ目は、リーダーシップによる差別化です。企業の差別化はいろいろありますが、優れたリーダーによる差別化を図りたい。二つ目は、リーダーの人間性による巻き込み。今企業は多様性が高まっています。多様な価値観の人をまとめるには、人を巻き込んでいくタイプのリーダーシップが有効です。三つ目は、長期的なリーダー開発です。若いときからの積み上げとしてのリーダーシップが議論されつつあります」

それでは今、どのような形のリーダーシップ育成の動きがあるのか。海外を中心に、現在見られている六つの動きを守島氏は解説した。

「一つ目は、自社独自のリーダーシップモデル構築です。何かの文献から持ってきたようなリーダーシップではなく、自社独自のモデルを構築する。“自社らしさ”があり、強さにつながるリーダーシップ像を探しています。二つ目は、多様なリーダーの確保。あるときは強いカリスマ、あるときはダイバーシティな人材を包み込み組織を前に進めるタイプなど、いろいろなリーダーシップのタイプが必要と言われています」

三つ目は、多様性を活力にするリーダーシップ。多様な人材を受容し、かつそれを活力に変えるリーダー像だ。四つ目は、組織全体のリーダーシップ(collective leadership)の強調。リーダーシップは一人の力ではなく、みんながリーダーとなって力を合わせることが求められている。五つ目は、リーダーシップの段階的長期開発。若いときからリーダーシップは始まっており、キャリアステージごとに求められるものが異なる。その中でリーダーシップを段階的につくっていく。六つ目は、グローバルコンテクストでのリーダー開発。日本の中だけではなく、「多文化×多様性×多事業」でのリーダーシップをどう開発するのかが問われている。

「リーダーシップについての考え方は変化しており、それと同時に育成の考え方も変わります。今日は先進的に取り組む2社から、次世代リーダー育成のヒントを学びたいと思います」

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源田氏によるプレゼンテーション:事業拡大に連動させたリーダー育成

続いて、源田氏が登壇。ソフトバンクにおけるリーダー育成施策を語った。

「ソフトバンクは、企業買収で大きくなってきた会社です。これまでは事業の中で成果を出しながら、リーダーを育成してきました。当社で今実践している施策は四つあります。
一つ目は、ソフトバンクアカデミアです。社内外の多様な人材に集まってもらい、グループを担う後継者発掘・育成を行っています。二つ目は、ソフトバンクイノベンチャー、社員による新規事業提案制度。2016年11月にも二つの新会社を立ち上げており、提案者が社長になっています。三つ目は全社FA制度、社員自ら手を上げてキャリアアップを図ります。2015年は約170名が異動しました。四つ目は、管理職代行です。早期段階で管理職の経験を積むことができる仕組みで、新任の課長や部長の8割は代行職です。思い切って抜てきし仕事を経験させ、よければ正式職となり、ダメでも何度でもトライできます」

そして、経営理念の実現に貢献する人材の育成を目的に、ソフトバンクユニバーシティという研修プログラムも用意されている。個人がコースを選んで、スキルアップを図ることができる。

「集合研修 は74コースで年間約1万人の集合研修を行っています。eラーニングは94コースで180万回受けてもらえる体制を持っています」

また、分野を超えて次世代リーダー候補人材が集い、修羅場を乗り越える力と人脈を作る「次世代リーダー育成プログラム」を稼働させている。

「一つ目は異業種合同プログラムで、数社から人が集まり、新規事業プランニングを行います。二つ目は、地方創生協働リーダーシッププログラムです。長野県塩尻市を舞台に、空き家対策、女性活躍推進など自治体が抱える課題解決を行います。リアルに課題に取り組み、最後は市長にプレゼンをします。ただのアイデアに終わらせずに実践につなげる事をテーマにしています。自分は何のために働いているのかを考え、個人の視野を広げる効果があります」

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島田氏によるプレゼンテーション:ダイバーシティの価値を重視したリーダー育成

次に島田氏が登壇。ユニリーバにおけるリーダーの特性について語った。

「消費財メーカーであるユニリーバは、世界190ヵ国でビジネスを行っています。リーダーは世界の人が何を求めているのかを知ることが必須です。そのためダイバーシティの価値を理解していることが求められます」

ここでリーダーとして重視する特性を六点示した。「目的(Purpose)」「ダイバーシティへの理解(Diversity)」「レジリエンス(Resilience)」「判断力・決断力(Judgment)」「必要なリスクを取る力(Risk Taking)」「素の自分(Authenticity)」だ。

続いて、グローバル人材育成に機能している仕組みを紹介。ユニリーバにおけるグローバル人材とは、どこの国でも、どんな環境下でも成果を出せる人材だ。

「仕組みの一つは70/20/10です。いわゆる70%が経験、20%が周囲との関係性、10%が学習・研修という育成法です。アサインメントで成長させること、現場で体験させることを重視しています。そのため、社員は若いうちから海外に出すなど、自分の当たり前が通用しない経験を提供するようにしています」

この他には、Ambitious Goal(わくわくする目標を立てる)、IDP(自分の希望する未来に責任を持たせ、それをサポートする)、IA/STA(海外経験:予測しないことが起こる異文化の経験)、Leadership(オーセンティックリーダーシップ)、Wellbeing(心身の健康第一)、 People Forum(年に2度の組織と人の棚卸)といった仕組みを持つ。

また、日本独自の教育プログラムも実施している。その一つがユニリーバ・ジャパン・Uリーダーシッププログラム(UJUL)だ。ここでは注目のU理論を取り入れている。

「U理論はリーダーへのインタビューから生み出された理論で、リーダーのあり方(Being)に着目しています。このプログラムでは、人は深い内省によって自身の源に戻ることが大事であるという考え方を取り入れた教育を行います」

もう一つのプログラムは、シナジーと呼ぶワークショップだ。これは、チームで効果を上げるためのプロセスを学ぶことができる内容となっている。

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ディスカッション:次世代リーダーに求められるものとは何か

守島:先ほど内省という言葉がありました。リーダーシップ研修で自分の内側を見るように言うと、これは日本人の特性かもしれませんが、参加者はどんどん内にこもるようになる。リーダーシップにはアウトとインと双方向のフォースが必要ですが、なかなかアウトのフォースが出てこない。このような傾向はありませんか。

島田:日本人にはそのような傾向はあるかもしれません。遠慮と謙遜が入り混じっていたり、すごく自己卑下したり。内省というと反省になってしまう。内省と反省は違います。内省とは起こったことに対して、自分の中に何が起きたのかをただただ見ようとするものです。内省のトレーニングでは時間を取って、それを何度も繰り返しています。

守島:いろいろなタイプのリーダーが必要というときに、内省という作業が入ると、自分はどんなタイプのリーダーかと考えるきっかけになると思いますね。次の質問になりますが、各々で重視するリーダーシップの核、コアは何でしょうか。

源田:当社には目指す姿としてソフトバンクバリューがあります。その価値観は「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」です。逆算はNo.1という高い目標に対し、実現に向け逆算で考えるということ。執念はあきらめずに粘り強くやり続けるということです。これにプラスして個人的に大事にしている特性が二つ。一つは多様性への許容度です。どれだけ多様性を受け入れられるか。ある意味では人間力といえるかもしれません。もう一つは、孫正義の言葉を借りると「志」です。何を成し遂げたいのか。何のために働いているのか。人の評価はこれらのバリューで見ています。

島田:現CEOは「私たちに必要なのはOutstanding Leader」だと言っています。ではどんな人がOutstanding Leaderなのか。彼は要件として「グローバルな課題に前向きに貢献をする」「明確な価値観と深い目的意識に基づき行動する」「透明性の力を理解している」「他者に投資し、他者を成功に導こうとする意志をもつ」の四点を挙げています。先ほど説明したリーダー特性にもあった「目的」と「素の自分(ありのまま、そのまま)」を重視したものになっています。そして、これからの人材育成では4Pつまり目的(Purpose)、ポテンシャル、パフォーマンス、プランを重視して行うことが今後のカギだと思っています。

守島:博士課程に女性のリーダーシップを研究している学生がいるのですが、研究で「相手の弱いところを認める」「弱い部分から他人とつながる」といった側面が重要ということを発見しています。島田さんの話はそこにつながる感じがしました。ソフトバンクは孫さんのリーダーシップに目が行きがちですが、社内ではそれ以外のリーダーシップの形をどう捉えているのでしょうか。

源田:これまでのソフトバンクは孫正義が会社を引っ張り、それを実現する強いリーダーがその役割を担ってきたというのが実状です。社員はこれから自分たちが、どんな会社にしていきたいのかといった部分を、社員同士がもっと話さないといけないと認識しています。今社内に「300年成長し続ける会社になろう」という言葉があり、そのためにはどんなDNAが必要か、そのDNAを守るためにリーダーはどんな動きをすべきかといったことを話しています。そして、事業も多角化しているので、多様なリーダーがもっと活躍できる環境にしたいと思います。

守島:ユニリーバも多角的な事業を展開されていますが、そのこととリーダー育成で何か関連するところはありますか。

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島田:社内では一つの事業分野をカテゴリーと呼びますが、カテゴリーが違っても求められるリーダー像は同じと考えています。でも、力を発揮する方法は個々で大きく違っていて、あまりに自由で多様でありのままなので、ユニリーバに来た時には少し驚きました。でもそれも含めてスタイルなので、社内では「自分のリーダーシップスタイルを見つけていこうよ」という話がよく出ます。それでも、素の自分という部分はどんな相手でも伝わる組織なので、その点は素直さがあるというか、変わらない部分だと思っています。

また、リーダーシップを強化することと、リーダーを育むこととは少し違うかなと思います。リーダーシップは誰もが持っており、どんなリーダーシップを持っているかは人によって違うので、それを知ることは大切です。会社として個人が持つリーダーシップを発揮できる場や機会をつくることは重要です。でもリーダーを育むとは、現在のリーダーの次をつくること。その点は当社もまだまだ弱いと感じます。

源田:私も同じように考えています。リーダーを育む部分は実践ベースで行い、リーダーシップの強化については、自分自身に向き合う研修メニューを入れて、off-JTで鍛えています。リーダーシップ開発は、自分が何者なのかについて考え、自分とどこまで深く向き合えるかがすごく重要になりますが、やはり普段の仕事では向き合う機会が少ないので、あえてoff-JTの場で行っています。

守島:では最後に、会場の皆さんへアドバイスをいただけますか。

源田:もっと人事がチャレンジしてもいいのではないかと思っています。こんなに変化が激しい世の中では、人事にも正解の形なんてありません。トライアル的にPDCAをまわしながら行うような施策を、人事でも行っていいのではないでしょうか。経営に合わせるばかりでなく、人事が変革の起点になりたいと思います。

島田:私も同意見です。私は人事から世界が変えられると思っているので、人事の仲間と一緒に頑張りたい。今日のリーダー育成といった問題は答えがないからこそ、自分ならどうするか、自分はどう思うかをきちんと持ちたいと思います。そして、人事として社員に腹落ちさせることを最初に考えるようにしたい。自分が自分らしいリーダーになるということが大事ではないかと思います。

守島:今日のリーダーシップという議論で言えば、柔軟に考えるというのが人事にとっては重要になってきていると私は感じました。「リーダーシップ自身が多様なんです。いろんなリーダーがいていいんです」と言いたい。そして、これまでは強いリーダーシップをつくることが一つの目的でしたが、「そうではないリーダーが企業の中にはいていいんだ」ということを、これからは考えていかれるとよいのではないでしょうか。本日はどうもありがとうございました。

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