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360度フィードバックの可能性を探る  ~ “これまで” と “これから” ~

  • 藤原 誠司氏(株式会社SDIコンサルティング 代表取締役)
  • 荻野 敏成氏(一般財団法人労務行政研究所『労政時報』編集長)
2016.12.21 掲載
株式会社SDIコンサルティング講演写真

人材育成手法「360度フィードバック」が近年、再注目されている。人材育成にとどまらず、さまざまな人事課題に対して幅広く活用できることがその理由だ。「360度フィードバック」に特化し、年間約1万2000名の管理職などを対象にサービスを提供している株式会社SDIコンサルティングの藤原誠司氏が、『労務時報』編集長の荻野敏成氏を迎え、数多くの成功事例と失敗事例を紹介しながら、「360度フィードバック」の“これまで”と“これから”について語った。

プロフィール
藤原 誠司氏( 株式会社SDIコンサルティング 代表取締役)
藤原 誠司 プロフィール写真

(ふじわら せいじ)1989年リクルート入社。その後、HRR(現:リクルートマネジメントソリューションズ)にて360度フィードバックの拡販リーダー、コンサルタントとして様々な人事課題解決を推進。07年に360度フィードバックに特化したSDIコンサルティングを設立。現在年間約12,000名の対象者に提供。累積300社以上に導入支援。


荻野 敏成氏(一般財団法人労務行政研究所 『労政時報』編集長)
荻野 敏成 プロフィール写真

(おぎの としなり)1990年労務行政研究所入社。各種編集業務を担当するほか、メールマガジン、労政時報クラブの立ち上げに従事。2006年副編集長、2010年jinjour編集長を経て、2011年7月より現職。『労政時報』の企画進行をはじめ、WEB労政時報、書籍等の編集業務全般を統括する。


360度フィードバックの歴史と最近の傾向

SDIコンサルティングでは、企業が360度フィードバックを有効活用することで人と組織が力を発揮し、組織の成果が高まることを目指している。現在、多くの企業への導入が進んでいるが、この手法にはどんな歴史があるのか。まずは『労政時報』の編集長として企業の取材経験が豊富な荻野氏が360度フィードバックの“これまで”について、データや実例を交えながら説明した。

講演写真

「360度フィードバックの導入率は、『労政時報』が行った2013年の調査によると、従業員1000人以上の企業では16.2%。日本経済新聞社が2016年秋に発表した、上場企業かつ連結従業員1000人の企業とそれらに準じる有力企業約1600社に対して行った調査では46.1%。大企業において高い割合で導入されていることがわかります」

360度フィードバックを『労政時報』で初めて紹介したのは、1974年。間断なく特集が組まれるようになったのは、バブルがはじけた1996年以降のことだという。直近では、2016年7月発行号で、テルモ、クレディセゾン、リクルート住まいカンパニー、アイリスオーヤマの事例が取り上げられた。他の取り組みを切り口にした記事の中でも、360度フィードバックはたびたび登場してきたと荻野氏は言う。

「例えば、味の素では風通しの良い組織づくりのため、パナソニックでは管理職がチームワークを発揮させるため、オリンパスでは組織風土改革のため、アサヒビールではより強い管理職と組織づくりのためといった目的で360度フィードバックを活用しています。しかも近年では、人材育成を導入のベースに据えながら、組織の現状把握として活用するリクルート住まいカンパニー、組織風土改革を試みるテルモやクレディセゾン、リーダークラスの人事評価の参考に使用するアイリスオーヤマなど、目的や手法も進化してきています。各社とも導入目的と自社の組織風土に合わせて、巧みに採り入れている印象を受けます」

360度フィードバックのメリット・デメリットは?

360度フィードバックは「360度評価」と呼ばれることが多く、「評価」という言葉によってマイナス面の印象が強くなりがちである。藤原氏は、正しく理解するために押さえておくべき二つのポイントを解説した。

「360度フィードバックは、上司、同僚、部下が対象者の職場の行動を見て、それを整理して対象者に伝える(アドバイスする)手法であると定義できます。一つ目のポイントは、『能力の評価』ではなく、『行動の観察』であるということです。そもそも、上司より能力が低い部下が上司の能力を評価すること自体に無理があります。その結果を上司(対象者)に伝えても納得できないばかりか、組織内に好ましくない雰囲気が生まれてしまうリスクも考えられます。360度フィードバックが測定しているのは『対象者の行動』であり、それが周囲にどのように伝わっているのかを対象者本人に理解させる仕組みです。結果が低い場合は、『あなたは能力が低い』と伝えるのではなく、『あなたの現在の行動は周囲にうまく伝わっていません。行動のやり方を修正しましょう。このままではもったいないですよ』と解釈させることで、前向きに結果を受け止めさせることができます。そのことで、マネジメント行動の自発的な改善を促すことができます。

講演写真

二つ目のポイントは、対象者を委縮させる厳しい仕組みではないということです。それどころか、工夫を講じることで、モチベーションを高める仕組みにすることもできます。例えば日ごろ伝えるタイミングを逃していた感謝の言葉を回答させるなど、さまざまな工夫によって、対象者のモチベーションを高め、前向きな行動を引き出すことができます」

続いて、荻野氏が360度フィードバックの六つのメリットを挙げた。「上司、同僚、部下という複数の視点から見るため、〈1.複数の情報により客観性・納得性が高い〉〈2.自分と他者の認識ギャップによる『気づき』を促せる〉。このため、意識改革、行動改革につながりやすいと言えます。〈3.会社が期待する行動を効果的に伝達できる〉は質問項目に組み込めば、会社が期待しているものを伝えられるということです。〈4.従業員から経営・人事部への現場の情報を伝達できる〉とは、人事部に対して現場の情報は主に現場の管理職を通じて入りますが、これにより情報を直接吸い上げて現状把握ができます。〈5.現場のマネジメントを支援する〉とは、何ができていて何ができていないのかを定量的データとして把握でき、本人にフィードバックすることで現状認識を改めてもらうという意味です。〈6.人材と組織のモニタリングツールとなる〉。定期的な実施によって適性や能力などを配置や処遇の参考にでき、組織のパフォーマンス向上にも活かせます」

次にデメリットが七つ示された。〈1.回答者の評価能力の差により、結果の妥当性が保証できない〉〈2.実施に手間・時間・コストがかかる〉〈3.結果のフィードバックや活用が難しい〉〈4.回答者の選定が難しい〉〈5.互いに良い結果を付け合うなど回答結果が甘くなり、社員間のなれ合いを助長する〉〈6.社内の関係が崩れたり、管理職が萎縮しかねない〉〈7.対象者の心理的抵抗感(認知的不協和)が生じる〉。これらは、どれも実施上の工夫によって十分に解消できるという。

「実際に人事担当者がどう考えているのか。『Web労政時報』が実施した調査によると、半数以上が今後360度フィードバックは広がると考えています。気づきを促す機会として、また、リーダー行動の適性検証ツールとして、有効活用できるだろうという意見がありました。7年前に導入し、改善を加えながら続けることによって定着し管理職の動きが次第に変わってきたという企業もあります。工夫次第で広がっていく可能性を感じます」

事前に寄せられた質問への回答

参加者から事前に寄せられた約50個の質問の中からいくつかをピックアップし、藤原氏が解説した。一つ目は「『人事評価』として活用すべきか?」という質問だ。

「一口に『人事評価で活用』と言ってもさまざまな用途があります。月例給与や賞与の査定もあれば、昇進昇格。次世代リーダーへの抜擢もあれば、異動配置などもあります。ただ言えるのは、360度フィードバックの結果をいきなり給与査定にダイレクトに使うのはリスクが大きいということです。ダイレクトではなく別の何かの指標と組み合わせて使う、または最初は人材育成施策として活用し、現場への定着や効果検証を経た上で給与査定にも反映する、などのプロセスを取ればリスクは少ないでしょう。とはいえ、人事評価として活用を考えるのであれば、まずは異動や昇進昇格の参考資料とされることをお勧めします」

二つ目は「導入に当たって、現場の反発を抑える方策としてどのようなことが考えられるか?」という質問である。

「多くの場合、現場の反発は、『360度評価』という漠然としたキーワードに対するネガティブなイメージによって生じています。このイメージを払拭するために、最初に行うべきことは、360度フィードバックの実施によって生じるであろう会社や組織、そして回答者にとってのメリットをきちんと理解してもらうことです。上司の行動が改善されることで部下がどのように働きやすくなるのか、などもその一例です。また、一部の部署や階層でトライアル的に実施し、好評であったアンケート結果を公開することで安心感を醸成させ、全社の人材育成施策として導入したという会社の実例もあります」

三つ目は「世の中の管理職の平均水準と比べることができるか?」という他社比較に関する質問である。

講演写真

「360度フィードバックは、回答者の属性(立場など)によって回答レベルが異なる傾向があります。一般的に、年次が低い部下による回答値は高く(甘く)、年次が高い部下や上司による回答値は低く(厳しく)なります。つまり、回答者の構成によって回答値に有利不利が生じるのです。また、実施のタイミング、実施目的の社内広報の仕方、そして組織の業績状況によっても、回答値は変動します。そのため、他社と数値比較することは、誤った解釈につながる危険な行為であると言え、安易な比較は避けるべきです。ただし、会社全体の平均結果を、点数ではなく特徴(何が強みで何が弱み)について、一般的な他社の特徴と比べることには意味があると考えます」

その他、「アドバイスやフィードバックが苦手な文化の中で、本音を探る(引き出す)ための工夫は?」「事務局(人事)側の工数削減のための工夫やポイントは?」といった質問に対する解説があった。

360度フィードバックの“これから”

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360度フィードバックの今後について、藤原氏は三つのテーマを提言した。第一は「人と組織の課題の解決手法としての進化」だ。これまでの360度フィードバックは、教育会社が提供する標準テンプレート(設問)を使用して実施し、対象者に一定の気づきを与えることを目的とする活用が多くみられている。しかし最近は、各企業の人や組織の課題に合わせた形に設問を設計したり、結果返却を行ったりするケースが増えている。例えば、「働きがいのある組織をつくる」「ハラスメントの実態把握と改善」「現場で人を育てる(OJT)ことを推進させる」などの目的を設定した上での実施である。最近では、「ストレスチェックの義務づけに伴う職場ストレスの軽減」や「働き方改革の一環として職場の時間効率化のマネジメント推進」を目的とした360度フィードバック活用についての相談も寄せられている。いずれにせよ、各企業が抱えている課題に焦点を当てた設問設計や結果返却の工夫などを行うことで、360度フィードバックの活用効果を高め、活用範囲を広げる事例が増えていることを感じている。

第二は、「人事部のモニタリングツールとしてのさらなる活用」だ。「導入企業のキーパーソンに、『360度フィードバックの一番の魅力』をうかがうと、『見える化』という声が多く聞かれます。この『見える化』には、対象者本人にとっての見える化と、人事部や経営にとっての見える化といった二つの観点があります。前者は、自分の行動の客観的理解であり、後者は経営的視点からの人事管理です。これからは後者がよりクローズアップされると言え、現場の実態や施策をある程度数値化して見える化しながら、次世代リーダーの育成や現場の人材発掘、施策の見直しに生かす事例も増えています」

第三は、「現場での行動変容が実際に行われること」である。今後は、実施後の職場での実効性が重視されてくる。つまり、実施後の効果に対する注目と期待がより高まっているということであろう。これまでの豊富な実績から、実施後の効果を高めるポイントはいくつかあると考えられる。「行動を変えたくなるような具体的な情報提供による行動変容の後押し」「一定期間後のリマインド」「上司の現場での関与」などが挙げられるであろう。

「後者の二つは、弊社も『システムを有効活用した人事部にとって負荷の少ない簡易なサービス』を提供し、対象者の現場での実際の行動変容を支援することを重要視しています」

使い方、生かし方次第で効果が大きく伸びる360度フィードバックは、まだまだ多くのポテンシャルを秘めており、これから本格的な活用が進む、という信念が伝わってきた講演であった。

講演写真
本講演企業

SDIコンサルティングは、360度フィードバックに専門特化した会社であり、実施効果を高め課題解決を図るために、お客様の事情やご要望に応じたオーダーメイドのサービスを大事に考えています。 これまで大手企業中心に300社以上の実績を通じて得た実践的な活用ノウハウにより、2015年度は約12,000名の管理職を対象にサービス提供しています。 オーダーメイド型の360度フィードバックでは、日本で最も実績が多い会社の一つであると言えます。

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本講演企業

SDIコンサルティングは、360度フィードバックに専門特化した会社であり、実施効果を高め課題解決を図るために、お客様の事情やご要望に応じたオーダーメイドのサービスを大事に考えています。 これまで大手企業中心に300社以上の実績を通じて得た実践的な活用ノウハウにより、2015年度は約12,000名の管理職を対象にサービス提供しています。 オーダーメイド型の360度フィードバックでは、日本で最も実績が多い会社の一つであると言えます。

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