4月1日施行の女性活躍推進法!
対象企業15000社が取り組むべきこととは?
- 石光 純子氏(株式会社ビジネスブレイン太田昭和 マネジメントコンサルティング部 シニアコンサルタント)
- 千島 健太郎氏(株式会社クレオマーケティング ZeeM事業部 ZeeMサービス統括部営業部)
2016年4月に施行された「女性活躍推進法」。これから企業は女性の活躍推進に関する取り組みを行わなければならない。では、実際にどんなことから人事担当者は着手すればいいのだろうか。会計・システムの専門家集団である、株式会社ビジネスブレイン太田昭和 マネジメントコンサルティング部シニアコンサルタント・石光純子氏が、女性活躍推進法の解説と企業の対応策を語った。また、ビジネスパートナーであり、人事情報の業務パッケージを開発・販売している株式会社クレオマーケティングZeeM事業部ZeeMサービス統括部営業部の千島健太郎氏が、活用ツールを紹介した。
(いしみつ じゅんこ)ソフトウェア開発会社で人事・労務マネジメントを経験。コンサルタントとクライアントの両視点から問題解決の提案ができるコンサルタントとして活躍中。人事制度設計プロジェクトに従事する傍ら、女性活躍推進法についても自身の強みを活かし、現状把握、課題分析、目標設定といった行動計画策定支援に携わる。
なぜ〈女性活躍推進〉が必要なのか
公認会計士、業務コンサルタント、システムコンサルタントが三位一体となった体制で、コンサルテーションからシステムインテグレーション定着化まで一貫した支援を行っている、ビジネスブレイン太田昭和。その中で石光純子氏は、女性活躍推進法に対応した行動計画策定支援に携わっている。
「近年『2030(にいまるさんまる)』という言葉をよく耳にするようになりました。これは、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とするという目標を指します。この言葉は既に2003年の男女共同参画基本計画の策定に登場していますが、2013年の安倍首相の成長戦略スピーチで一気に認知が加速しました」
そんな中で施行された女性活躍推進法。法律制定の背景にあるデータを石光氏は紹介した。「女性の就業率は上昇していますが、就業できていない方が約300万人いるというデータがあります。また、第一子出産を機に約6割の女性が離職し、再就職しても非正規雇用となる割合が6割に近い。女性管理職の割合が他国に比べて非常に低い実態もあります。一方、人口減少により労働力不足が懸念される中、女性の力が重要だと考えられています。この法律はこのような背景のもとで制定されました」
女性の活躍推進に関する行動計画を策定し、都道府県労働局に申請すると、優良な企業は厚生労働大臣の認定を受けることができる。「認定されると、ホームページや広告媒体、名刺などに『えるぼし』マークが掲載できます。認定は3段階に分かれ、マークの色彩で識別。マークによって、優秀な人材確保や企業イメージの向上が期待できることは明らかです」
どのような順序で何に取り組めばいいのか
常時雇用する労働者が301人以上の事業主に対しては、「女性活躍に関する状況把握・課題分析」「状況把握・課題分析をふまえた行動計画の策定・社内周知・公表」「行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出」「女性の活躍に関する状況の情報の公表」という4点が義務付けられている。
「義務になっていますが、罰則はありません。企業の自主性が重視されているのです。ただし、この法律への取り組み状況が、就職活動中の学生、取引先企業、投資家の方などにも広く開示される意味を忘れてはなりません。なお、常時雇用300名以下の事業主に対しては努力義務とされています」
女性活躍推進を始めるにあたって、届け出る際は、厚生労働省による女性活躍推進の特集ページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html)を利用することを石光氏は勧める。「このサイト内に、一般事業主行動計画の策定マニュアル・入力支援ツールが公開されています。このツールでは『状況把握→課題分析→目標設定→行動計画の策定→行動計画の社内周知・公表』というステップをふみます。まずは自社の状況把握ですが、把握すべき基本項目は『1.採用した労働者に占める女性労働者の割合』『2.男女の平均継続勤務年数の差異』『3.労働者の各月ごとの平均残業時間等の労働時間の状況』『4.管理職に占める女性労働者の割合』の四つです」
さらに掘り下げて状況を把握するためにも、自社の実情に応じた選択項目を追加して調べておくと効果的だという。「四つの基本項目それぞれの中に、三〜五つの選択項目があります。例えば、『2』の勤続年数の中には職種や雇用形態の転換実績はどうか、『3』の労働時間の中には有給休暇の取得率やフレックスタイムなど制度の利用実績はどうか、『4』の管理職の中には役員に占める女性の割合や人事評価の結果の男女差はどうか、という項目があります。把握できる数字はすべて把握し、男性の数値も確認しておくことが大事です」
また、基礎項目の数値を入力すると、自社が6タイプのどれに該当するか分類されるツールがあり、課題分析にも役立つ。「次に、課題分析をもとに目標設定します。この例もツールの中に用意されています。一つ以上の目標を選び、数値を設定。例えば『採用に占める女性比率を○○%以上とする』『男女の勤続年数の差を○○年以下とする』という○○に数値を入れるのです。この設定に際して、前段階で基本項目や選択項目を数値で捉えた大切さがおわかりになると思います。数値は自社の状況に即したレベルで結構です。厚生労働省のホームページに掲載されている産業別の平均値も、参考にしてください」
また、目標の計画期間は2年から5年ぐらいにして、その間にも定期的に進捗を確認しつつ必要に応じて改定するスタンスが望ましい、と石光氏は加えた。「行動計画の策定に関しても、厚生労働省のホームページに例が紹介されています。期間、どう取り組むかなどが掲載されているのでご覧ください。策定した行動計画は社内周知して公表しましょう。厚生労働省の『女性の活躍・両立支援総合サイト』でも公表できます」
取り組み前後の各ポイントとツールの活用
女性活躍推進に取り組む目的は女性のための施策としてだけなく、広義に捉えることが継続のための重要なポイントになると石光氏は語る。
「企業の目的は個々にあるものですが、最終的には『企業の競争力・企業価値の向上と、日本経済の持続的成長のため』という大きな目的に通じていると言えます。広義な意義を持つ取り組みであるというイメージが非常に大事です。小さな数々の数値を見ながらも、同時に大きなイメージを抱きながら取り組むよう心掛けてください」
次に、取り組みを始める前に認識しておくべき三つのポイントが挙げられた。「一つ目は『徹底的に現状分析、精査すること』。適切な目標設定、取り組み策定のためにはたくさんの管理データを取り寄せた数値の算出が不可欠になります。二つ目は『長期的な視野を持ち、取り組みを継続すること』。新卒で採用された人材が管理職候補になるまでには5、6年を要しますから、長いスパンで進捗管理を行い、定期的に目標を見直し、実態に合わせた再検討が必要になります。三つ目は『経営トップから女性活躍推進に取り組む姿勢を全社的に発信すること』。たくさんの部署や組織が協力して同じ方向を向かなかればなりませんので、新しい風を吹き込むために必要です。人事担当者としては、理解を得るために数値データを用意したトップへの働きかけが大切になります。また、厚生労働省の『Positive Action』というページには、企業の女性活躍推進の取り組みが紹介されており参考になるので、閲覧してみてください」
さらに、石光氏は、取り組みを始めた後、早いうちに直面する可能性の高い課題を四つ挙げた。「一つ目は、『男女の役割分業の意識』。例えば、受付担当は女性といった従来の意識、男女の役割分業の意識をまずは認めることが大事です。そういった意識の無理な否定が女性活躍推進につながるわけでないことを頭に入れておいて欲しいと思います。その上で、二つ目『両立支援制度の推進』として、育休制度や復帰時の時短制度などの利用を、男女ともに積極的に促すのです。三つ目は『ロールモデルの不在と見えないキャリアパス』。前例がない場合であっても目指したいと思えるキャリアパスを描いて見せることが大事です。四つ目は『管理職(上司)の意識改革』。ワークライフバランスにおける理解をまず管理職に持ってもらえれば、制度の利用や進捗も円滑になります」
このような女性活躍推進の行動策定はもちろん、さまざまなスペックに対するマネジメント視点からの目標達成シナリオ作成、進捗ミーティング管理サポートなど、ビジネスブレイン太田昭和では幅広いサポートを提供している。第三者や専門家からの意見は解決の推進力となるため、ぜひ社外の力も活用していただきたいと石光氏はアドバイスした。
最後に、クレオマーケティングの千島健太郎氏が、簡単な会社概要と女性活躍推進にも役立つ製品を紹介した。
「弊社は主に会計、人事給与という業務パッケージソフトに特化した製品を開発から導入まで行っています。世の中の環境にマッチした製品やサービスとお客様満足度へのこだわりを特徴としており、顧客ロイヤリティー調査でも最高評価をいただきました」
クレオマーケティングが開発したZeeM(ジーム)は、女性活躍推進の取り組みにも活用できる人事給与システム。データ活用のしやすさが最大の特徴だ。
「中でも、人事情報分析オプションは、数値化された人事情報に基づいた人事施策、仮説・検証・実行が簡単に行えるツールです。人事情報では管理する項目が非常に多くなり、必要な情報の抽出は大変な作業になりますが、それが一つの分析のテーブルに集約された形で簡単に情報を抽出できる仕組みです。テンプレートは約100種類あり、3ステップの簡単な操作でグラフが作成できます。従って、資料を作る時間を極力削減して、考えることに時間をシフトさせられる製品だと言えます。客観的な根拠となる数々のデータは、人事担当者の経験と勘の補強にも貢献するものですし、PDCAサイクルのスピードアップにもつながると思います」
このような製品を活用すれば、さまざまな取り組みの効率が高められ、女性活躍推進の加速化が期待できるだろう。
大手・中堅企業向けに会計・人事給与パッケージ「ZeeM(ジーム)」の開発、販売を手掛け、これまでに累計2000社以上の企業に導入。経営者、管理職から社員まで、企業の新たな価値創造を支援しています。実務担当者の利便性とデータ活用による業務付加価値向上を追求し、「ZeeM(ジーム)」を展開しています。
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大手・中堅企業向けに会計・人事給与パッケージ「ZeeM(ジーム)」の開発、販売を手掛け、これまでに累計2000社以上の企業に導入。経営者、管理職から社員まで、企業の新たな価値創造を支援しています。実務担当者の利便性とデータ活用による業務付加価値向上を追求し、「ZeeM(ジーム)」を展開しています。
[A-6]4月1日施行の女性活躍推進法! 対象企業15000社が取り組むべきこととは?
[A]経営視点の人事
[LM-1]人の成長を促し、チーム力を高める「言葉」と「期待」のかけ方
[B-5]伊藤忠商事の挑戦 ~ベテラン事務職女性をカギとした組織風土改革5つのステップ~
[B]いま改めて考える、従業員のモチベーションを向上させる人事戦略
[SS-1]真の「女性活躍推進」を実現するため、企業が克服すべき課題とは
[C]社員の仕事の質と働きがいを高め、企業の業績を向上させる 「働き方改革」の要諦とは
[D-5]「自ら考え、自ら動く社員」を生み出す「7つの習慣(R)」
[D]経営の原点としての人事――野村證券の事例から“社員が力を発揮できる仕組み”を考える
[LM-2]これから日本の「働き方」「雇用」はどのように変化し、 人事はどう対応すればいいのか
[E-5]【戦略人事が語る】加熱する人材獲得競争下で人事が考えるべき採用戦略
[E]企業の「採用力」から読み解く、これからの新卒採用戦線
[SS-2]プレイフルシンキング・ワークショップ ~楽しく、チャレンジしたいと思える職場をつくる~
[F]「ダイバーシティ&インクルージョン」はなぜ必要か?
[G]次世代に残すべき素晴らしい会社とは~「ホワイト企業」という概念で日本に活力を生み出す
[H-5]事例から読み解く克つ企業・人材の条件 ~組織を育て成果を上げる教育研修の在り方~
[H]経営課題として取り組むワークスタイル変革 ~変化への対応力を高め、新しいビジネスを創造するために~
[I-5]ヒトを腐らせない企業を作るために組織のなにを「可視化」しなければならないのか?
[SS-3]テクノロジー活用で人事が変わる ~AI・データ分析・ソーシャルメディア活用の基本を知る~
[I]いま求められる、グローバル人材マネジメントとは――日本ヒューレット・パッカードと楽天の事例から考える
[J-1]人材育成は、スキルから「根本知」へ。 全人格で発想するイノベーション人材をつくる。
[J]企業を成長させるキャリア支援のあり方 ――「キャリア自律」と「組織活性化」を実現する
[SS-4]【日本の人事リーダー会】<ご招待者限定> “経営に資する”人事リーダーのあり方とは
[K]変革を起こすリーダーに求められるもの――三越伊勢丹の事例から考える
[L-4]新たな顧客価値を生み出し続ける組織文化の創り方 ~三越伊勢丹グループの取り組み~
[SS-5]グローバル人材に求められるパーソナリティとは
[L]「戦略のパートナー」「変革のエージェント」としての人事部 ~ビジネスにいかに貢献するのか~