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経営課題として取り組むワークスタイル変革
~変化への対応力を高め、新しいビジネスを創造するために~

  • 野田 稔氏(明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授/一般社団法人社会人材学舎 代表理事)
  • 越川 慎司氏(日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員)
2016.06.21 掲載
日本マイクロソフト株式会社講演写真

日本の労働生産性は、先進7ヵ国中19年連続最下位。将来の労働人口の減少が叫ばれる中、日本企業にとって、ワークスタイル変革と変化に対応する事業イノベーションは、最重要課題のひとつだ。率先してワークスタイル変革に取り組む日本マイクロソフト業務執行役員の越川慎司氏と、経営戦略論の第一人者である明治大学専門職大学院教授の野田稔氏が、これから求められるワークススタイル変革についてディスカッションを行った。

プロフィール
野田 稔氏( 明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授/一般社団法人社会人材学舎 代表理事)
野田 稔 プロフィール写真

(のだ みのる)一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。野村総合研究所、リクルート新規事業担当フェロー、多摩大学教授を経て現職に至る。大学院教授として学生の指導に当る一方、大手企業の経営コンサルティング実務にも注力。2013年に社会人材学舎を設立、ミドルの能力発揮支援に取り組む。専門は組織論、経営戦略論、ミーティングマネジメント。


越川 慎司氏( 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員)
越川 慎司 プロフィール写真

(こしかわ しんじ)国内通信会社、米系通信会社を経て、ITベンチャーを起業、CEOとして活躍した後、米・マイクロソフトに入社。年間に地球を5,6周回るほどの海外渡航をこなしながら、時間と場所に制約されない働き方を実践し、ビジネスの成果を挙げながら仕事とプライベートとの両立を実現。


野田氏によるプレゼンテーション:
日本におけるイノベーションの必要性

講演写真

最初に野田氏が、日本企業におけるイノベーションの必要性について語った。「今は一億総活躍社会と言われ、日本では生産性の向上が求められています。日本における生産性はモノづくりでは高いが、ホワイトカラーはかなり低いと言わざるを得ません。生産性向上には、インプットを増やす方法とアウトプットを増やす方法がありますが、量的な対応はなかなか難しい。いま求められるのは、イノベーションを伴う質の高いアウトプットです」

野田氏はここで、一枚の写真を見せた。ラクダがソーラーパネル付きの機材を背負った写真だ。「これはラクダ冷蔵庫です。ラクダが背負った冷蔵庫の中に、伝染病予防のワクチンが入っています。アフリカの村々を周り、子どもたちにワクチンを配るユニセフの活動に使われます。昔はジープやランドクルーザーを使用していましたが、もっと安価に運ぶためにラクダが使われることになりました。私は、この形がまさにイノベーションだと考えています。ここには、新しい技術は何もありません。ある問題解決のために既存の技術を組み合わせただけです。しかし、この行為そのものがイノベーションではないかと思います。経済学者シュンペーターは、今までになかったものを結合することがイノベーションだと言いました。イノベーションは技術だけでも、理系の人だけのものでもありません」

ラクダ冷蔵庫は、社会課題を解決しようとして生まれた。野田氏は、企業が行うべきは、まさにこの領域ではないかと語る。社員が顧客と対峙し、現場でなんとかしなくてはいけないと思うことから生まれるもの。それがイノベーションだ。

「これからのイノベーションは、現場でボトムアップによって起こるべきだと思います。イノベーターは一人でモノごとを抱えがちですが、それではうまくいきません。社内外で、いかに横とつながるか。そして、できる人が瞬時に集まるスピード感も求められます」

これからイノベーションを起こす組織構造は、プロダクトアウト型でもマーケットイン型でもない。野田氏は、顧客との対話の中で不満を聞き出し、その解決策を形にしていくコンセプトアウト型だと語る。

また、野田氏はイノベーションを起こす上で、組織において大事なことは、問題意識のある人材を育て、その人を支えることだと言う。そこにはチェンジエージェント、そしてイノベーションを支えるエコシステムがなければならない。

「残念ながら、今の日本企業はイノベーションを起こしにくい病いに陥っています。阻害要因の一つは課題認識の薄さです。現場の人がルーチンワークで忙殺されていて、問題を見つけて考える余裕がない。これが一番の問題ではないでしょうか」

野田氏は、いま人事で話題になっている言葉として、「プレゼンティーイズム」を挙げる。これは、社員が出社していながら、何らかの不調で本来発揮されるべきパフォーマンスを行えていない状態を指す。

「心身が疲れていれば、満足な働き方ができません。もっと健康経営について考えるべきだと思います。それともう一つは、企業の自信のなさも気になります。いつもリスクにばかり目を向けている。そんなに自主規制せず、もっと楽観的でいいのではないでしょうか。いかにチャレンジの方向に自らをもっていくかが大切です」

過去に固執せず、素直に良さを取り入れて、可能性を信じて努力する。企業はそんな自信をもつべきと語り、野田氏のプレゼンテーションは終了した。

越川氏によるプレゼンテーション:
イノベーションを生み出す新しい働き方

次に越川氏が登壇。日本マイクロソフトにおけるワークスタイル変革への取り組みについて、プレゼンテーションを行った。「日本の生産年齢人口は、2030年時点で今より1300万人減少すると予測されています。また日本の労働生産性は、先進7ヵ国中19年連続最下位と低レベルが続いています。日本はイノベーションを起こさなければ、変わることができません」

越川氏は、イノベーションにおけるITのポジションに言及。「残念ながら、ITが働き方を変えることはない」と断言する。「現場で起きているイノベーションを支えることが、ITの役目です」

ではどうすれば、イノベーションが起きるのか。越川氏は、その疑問を大手企業の経営者にぶつけてきたという。ヤフー・宮坂社長の回答は「ビジネスを生み出すのは会議より会話」。資生堂・魚谷社長の回答は「組織をフラットにして、現場の気づきを形にすることをサポートしたい」。日立製作所・岩田代表の回答は「グローバル化に対応するために、時間と空間を超えてコラボレーションできる環境が必要」というものだった。

「現場で組織を超えたコラボレーションを起こすことが、イノベーションにつながるというのが共通したご意見です。だから何よりも大事なことは、イノベーションを起こす仕組みを、経営戦略として現場にどう位置づけるかということです。このような仕組みを、人事施策で終わらせてはいけません。いかに経営サイドの課題とするのか。経営ビジョンの一つにしないと継続されません」

日本マイクロソフトはIT企業ながら、ワークスタイル変革には多くの課題を抱えていたという。品川オフィス統合以前は、組織間の壁が非常に高く、ワークライフバランスに関する満足度も低かった。そこで当時の樋口社長を改革の旗印に、社内外に変革を宣言。「いつでもどこでも働ける仕組み」をつくっていった。

「東日本大震災の1ヵ月前に、関東5拠点を品川に集め、全社員が在宅勤務のできる企業文化をスタートさせました。そのため、震災時もそのままの働き方でお客さまのサポートに徹することができました」

ここで越川氏は、変革に関わる興味深いデータを示した。過去1年間に社内でつくられた個々のプロジェクトについて、縦軸にプロジェクト構成人数、横軸にそのうちの他部門からの参加比率でプロットしたグラフだ。社内にイノベーションをもたらし、表彰を受けたプロジェクトが赤丸で示されている。

講演写真

「時間と空間を超えていろんな部門の人を巻き込んだプロジェクトに赤丸が多く、高い成果をもたらしたことがわかります。ここでの我々の結論は、イノベーションを起こすのは『巻き込み力のある社員』であるということです」

越川氏は、「この動きをサポートすることが、ワークスタイル変革」だと語る。事実、自由なコラボレーションを生むために、コアタイムをなくして全社員が在宅勤務をできるようにするなど、人事制度は大きく変更された。結果として多くの成果が得られた。社員のワークライフバランス満足度は4割アップ、事業生産性は26%アップ、ペーパーレス化が5割進み、女性の離職率は4割ダウンした。

講演写真

越川氏はイノベーションを起こす働き方をサポートするITツールとして、三つのツールをが必要だと語った。「我々は、『いつでもコラボレーションできるコミュニケーションツール』『クラウドを使ったインテリジェントツール』『それら情報を守る万全のセキュリティ』、この三つを整えました。いつでもイノベーションを起こせる働き方を支援しています」

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続いて越川氏は、普段自分自身が利用している環境を紹介した。越川氏が使うプレゼンーション資料は、クラウド上に置かれ、チームの部下のほか、米国本社の営業や開発部門も作成に関与している。ちょっと会話をしたい時には、Skype for Business で直接顔を見ながら、部門や国境を越えて、気軽にコンタクトを図ることができる。
さらに、大量のメールなどの情報に埋もれずに業務を進めるため、役立ちそうな情報をクラウド側が見つけてくれるDelve も紹介した。「様々なコミュニケーションがクラウド上で行われているためDelve はそれを分析し、最適な人と人のつながりを提案できる。まさにAIによる働き方分析です。」と付け加えた。

図)Delve は人と人、組織と組織のつながりを分析し、役立ちそうな提案資料やデータをお勧めしてくれる。

講演写真

最後に越川氏は、「当社は品川オフィスをお客さまに開放しています。ぜひ私たちの働き方を見に来てください」と語り、プレゼンテーションを終了した。

ディスカッション:
イノベーション行動が評価される時代へ

野田:いつでもどこでも働けることは大変効率的ですが、下手をすると仕事がブラック化する危険もあると思います。コミュケーションツールをオフラインにしているだけで、叱られるかもしれない。使い方の教育などは行われていますか。

越川:私たちは、部下が席に座っている、またはオンライン状態にあるだけで評価はしません。上司と部下は必ず2週間に1回、1対1のやり取りを行います。そして4半期に1回、コミットメントという制度を行っており、「この4半期であなたはどんなアウトプットを残しますか」ということをできる限り数値化します。上司と部下でアライアンスをつくり、それを共に運営する仕組みをつくるということです。こういう約束事が互いの信頼関係を生むと思います。しかし、こういった文化の醸成には、当社でも2~3年の期間がかかりました。このような仕組みについて、経営側や人事が勇気をもって重要度を高く位置付けないと、現場はついてこないと思います。

野田:イノベーションは突然起こるものであり、その成果もさまざまですが、評価は柔軟に行われているのでしょうか。

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越川:私たちには、ワールドワイドでの三つの評価制度があります。一つ目は個人のアウトプット。二つ目がチームワーク。そして、三つ目は「ヘルパーアザーズ」です。これは自分の組織以外でどう人を助けて、新たなビジネスを生んだかという指標です。貢献した内容は33%までの評価対象になっています。また、イノベーションに関する評価もあります。最近新しいCEOになって、「グロースハックアイデア」という新たな仕組みがつくられました。これは今ある仕事を進めるのではなく、ドラスティックな新しいアイデアを生み出す時間を自らつくり、それが成果をあげれば、その点を大きく評価するというものです。失敗しても評価されるので、チャレンジする人のほうが評価は高まります。この制度があることで、職場に新しいものを見つけようというマインドも生まれています。

野田:米国発の企業が、あらためて失敗を評価する制度をつくったというのは意外な気もします。

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越川:マイクロソフトとしても正直、今は危機感をもっています。当社も変わらなければ、生き残れません。これまでのようなソフト事業ではなく、これからは電気・水道・ガスといった存在の事業を目指さなければ、クラウドを進める中で新しい事業文化はつくれません。ですから、今は非常に自由な事業発想ができる環境にあります。例えば最近では、エクセルを使った絵画コンテストを実施しました。これによって、国内のエクセル利用率が15%上昇しました。自由に発想できる環境がなければ、生まれてこなかったアイデアだと思います。

野田:今回のセッションをお聴きになって、参加者の皆さまの会社がよりクリエイティブに、よりイノベーティブになり、ひいては日本が元気になっていけば大変うれしく思います。今日はどうもありがとうございました。

本講演企業

~社員一人ひとりがもっと活躍できる場の提供へ~ 日本マイクロソフトは、ワークスタイル変革を全社を挙げて推進しています。カルチャー、制度、ICT等の統合的な取り組みを通じて、社員が一層活躍できる環境を提供。組織を超えた社員同士のコミュニケーションやコラボレーションの活性化、社員の創造性や業務効率性の向上を実現しています。

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特集サイトにて、日本マイクロソフトが目指す新たな働き方「モダンワークスタイル」の実例と効果を詳しく解説しています。

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