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伊藤忠商事の挑戦
~ベテラン事務職女性をカギとした組織風土改革5つのステップ~

  • 清水 美ゆき氏(WisH株式会社 代表取締役/ リ・カレント株式会社 シニアマネジャー)
  • 池照 佳代氏(有限会社アイズプラス 代表取締役)
  • 佐藤 泰美氏(伊藤忠商事株式会社 エネルギー化学品カンパニー 経営企画部人事総務担当)
  • 絈野 衣久子氏(伊藤忠商事株式会社 エネルギー化学品カンパニー 事務職リーダー)
2016.06.21 掲載
リ・カレント株式会社・WisH株式会社講演写真

女性活躍推進を進めるにあたっては、「その企業」と「そこで働く女性たち」に適したアプローチから道筋を立てていくことが重要である。長期にわたって、事務職の女性を対象とした新しいプロジェクト型の取り組みを実施した伊藤忠商事株式会社エネルギー化学品カンパニーの人事担当・佐藤泰美氏と、プロジェクトに参加した絈野衣久子氏を迎え、プロジェクトファシリテーターとして関わったアイズプラス代表取締役の池照佳代氏が、人事担当者・プロジェクト参加者の各立場での思いをヒアリングしながら、プロジェクトについて語り合った。

プロフィール
清水 美ゆき氏( WisH株式会社 代表取締役/ リ・カレント株式会社 シニアマネジャー)
清水 美ゆき プロフィール写真

(しみず みゆき)(企画プロデューサー)税理士法人、採用コンサルティング会社を経てリ・カレント入社。女性のキャリア支援をミッションとしており、多くの経験を活かし女性向け研修専門会社WisHを設立。のべ1500人以上の女性向け研修企画・プロデュースに携わる。


池照 佳代氏( 有限会社アイズプラス 代表取締役)
池照 佳代 プロフィール写真

(いけてる かよ)アディダスジャパン、ファイザー、フォードジャパン等外資系有名企業にて一貫して人事を担当。「女性活用プログラム」等のグローバルプロジェクト企画遂行をはじめ、担当分野は多岐にわたる。2006年にアイズプラスを設立。変革と成長を目指す個人と組織のプロモーターとして、多数のコンサルタント実績を持つ。


佐藤 泰美氏( 伊藤忠商事株式会社 エネルギー化学品カンパニー 経営企画部人事総務担当)
絈野 衣久子氏( 伊藤忠商事株式会社 エネルギー化学品カンパニー 事務職リーダー)

自発性を重んじた事務職対象プロジェクト

最初に、WisH株式会社の代表取締役であり、リ・カレント株式会社のシニアマネージャーである清水美ゆき氏が、プロジェクトの経緯を語った。

清水:昨年、伊藤忠商事様から「ベテラン事務職女性の意識改革と組織風土の改革の取り組みを実施したい」というご相談をいただきました。そこで昨年5月から検討が始まり、11月から本格的にスタートして翌年3月まで実施したのが、今回ご紹介するプロジェクトです。ファシリテートを担ったのは、5社ほどの外資系企業で人事経験を経てアイズプラスを設立したのち人材開発や組織開発のコンサルタントとして活躍されている、池照講師です。

池照:私はEQという感情知性のトレーナーでもあり、今回のプロジェクトでもプロジェクトの軸としてEQを導入しました。それではまず、伊藤忠商事の佐藤様に、プロジェクト実施の背景からお聞きしたいと思います。

佐藤:2015年に事務職の人事制度を改定しました。背景には、事務職に対する期待の不明確さを解消したいのと、事務職自身が多様なキャリア形成の意識を持ち、職域を拡大していってほしいという思いがありました。コピーをとったり会議室を予約したり文房具を買ったりという業務が事務職のイメージにありますが、現在は昔以上に、さらに事務職に対する期待度は上がっております。改定ポイントは、社内資格試験やローテーションのガイドラインなどの昇格要件導入と、リーダーシップを発揮して模範になってもらうための事務職リーダー選抜です。毎年約20名を選抜して、採用活動のPR・事務職の面接官・後輩の指導育成などと同時に、全社プロジェクトとカンパニープロジェクトに参加してもらいます。昨年の全社プロジェクトは社員の健康増進に関わる具体策検討でした。カンパニープロジェクトが、今回の取り組みになります。

池照:伊藤忠商事様には、カンパニーという組織形態があります。このカンパニーでの業務の効率アップ、働き方改革という改善のためのプロジェクトとして、今回、事務職を対象としたワークショップが実施されたわけですね。

講演写真

佐藤:ただし、やらされ感が出てはうまくいきませんから、「ワークショップを通じて課題解決になることをやってください」と伝えて、事務職の自発性にポイントを置きました。また、自己改革と同時に職場改革も行ってもらいたいとEQ診断を取り入れました。事務職の達成感や自信を醸成するための組織的フォローも心がけました。

池照:プロジェクトでは、11月のキックオフから卒業まで5回のセッションを開きました。目標設定をして進捗をお互いに確認しながら進めていく流れです。大きな柱は二つ。一つは、個人の開発として自分の強みを強化し、弱みを周囲の人たちを巻き込みながらの開発です。三人1組のピアグループを作って、そこでお互いのEQ診断の結果を共有したり個人の開発についてフィードバックをしたり、といった緩やかな宿題を出し、セッションでも発信してもらいました。もう一つは、タスクフォースです。最初のセッションでのディスカッションを元に「会社の美化運動」と「どうしたら事務職の生産性が上がるか」というテーマのグループに分けて取り組んでもらいました。二つの柱を軸に相互に支援し合いながら進めていくところが大きな特徴です。 EQについて少し補足しますと、人と関わる力、感情をコントロールする力といった心の知能指数ですが、それを行動面で診断した結果をフィードバック、活用しました。

コミュニケーションの質・観察力が向上

伊藤忠商事にとってこのプロジェクトは、これまでに行ってきた研修とは違うスタイルになったという。実際に参加した絈野氏が感想を語った。

絈野:今までは、一両日でケーススタディ、ロールプレイングを行って職場で活かすという研修が多かったですね。今回は、自ら目標や課題を職場の中できちんと見つけて、職場に貢献することを考えながら実行して成果を出すところまでやる、という点が違いました。EQの診断を受けて周囲からいただいたアドバイスをタスクフォースのほうでも試して活かせた点も、今までにはない実践型だったと思います。

池照:やはり最初は不安があったのではないですか。

絈野:「今度は何をやらされるの?」「どこまで真面目にやるの?」「業務の時間をとられて何やるの?」という面持ちで参加したメンバーが多かったです。ネガティブな発言も耳にしました。

池照:事務職は受け身で仕事をしてきた人が多い傾向にありますから、自分たちから発信して会社を変えていこうという行動をしたことはなかったためだと思います。

絈野:けれども、3回目ぐらいから皆さん前向きに変わっていきました。事務職のいいところは「やらなければいけない」「何かをやる」と一旦決まったら、そこからの実行力や真面目さだと思います。事務職は日頃の業務の中では人脈を広げたり、自主的に何かを進めるチャンスが少なく、事務職同士の交流も業務上ではあまりありません。ですから、このプロジェクトを通して他の部署、他の事務職の能力やポテンシャルの高さに気づいたことが刺激となって、自分自身を見直すきっかけになったと思います。ピアグループで進捗状況をマメに報告して、アドバイスを出し合ったこともよかったと思います。

池照:メンバーに対して、上司はどんなことをされたのでしょうか。

佐藤:事務職自らが「こういった改善を、ぜひ行いたい」ということを上長に訴えかけるわけです。すると「じゃあ、やってみようか」と上長としてもサポートしたい気持ちになるものです。お互いコミットされるのでモニタリングもアドバイスもしやすい。あとは、上長に限らず、部門やカンパニー全体でサポートをしました。例えば、プレゼン前に相談に乗ってあげたり、事前に根回したりといったフォローや、よく話を聞いてあげたりしました。

講演写真

絈野:私は、発言をするうちに上司をはじめ周りの対応がものすごく変わってくることに気づきました。それがいい方向に動いているなと実感できたことも、よかったと思っています。

佐藤:その延長線上でコミュニケーションの質も上がったと感じています。

池照:そうですね。一人ひとりの話量や発信する内容も具体的になったと思います。例えば単に「素晴らしい」「いいですね」という反応ではなく、プレゼンのフィードバックも「皆さんのほうを先に見て挨拶をしたところがいい」「あなたから感想を述べたのが非常に素晴らしい」というふうに、観察力が高まり指摘が的確になりました。

効果は伝播、翌年のアドバイザーに起用

プロジェクトは3月に終了したが、長丁場を乗り越えた参加メンバーはどんな本音を語ったのか。絈野氏はメンバーの終了後アンケートを紹介した。

絈野:「自分たちで企画し業務改善できたことは、大きな自信となり今後困難な業務でも立ち向かっていけると感じた」「事務職でもあきらめないでやり続ければ何かが変わり可能性が広がると思った」「5年後、10年後の自分を思い描き長期的な視点で仕事に向き合っていきたい」など、それぞれが何かをつかめました。途中からは楽しんで取り組めた面もありましたが、やり遂げねばならないプレッシャーも感じ始めました。早朝や昼休みや夕方にチームで議論しながら、一緒に悩み苦労してゴールにたどり着いた達成感や安堵感は非常に大きかったです。チームワークの大切さも改めて知りました。

佐藤:イニシアティブが目に見えるようになったことは大きいと思います。イニシアティブは伝播するでしょうから、周りの事務職のスタンスも変わるってくるはずです。

池照:ディスカッションでは最初のころ、「私たちに権限ない」という声が多かったのですが、「私たちディシジョンメイクに入らなかったとしても影響力はあるわけですよね。発信すれば何かが必ず動くはず」という認識に変わっていきました。今後はどうお考えですか。

佐藤:今年も事務職リーダーをカンパニーから選抜し、ワークショップを継続したいと思っています。今回のメンバーには、アドバイザーとして加わってもらう予定です。プロジェクトを自発的にやろうという方々もいますので、サポートしていきます。

池照:ポイントは三つあります。二つの柱で相互的にコーチングしたこと、個人の開発と組織の開発を同時に走らせたこと、継続を支援するツールと外部の方の関わりを適宜加えたこと、です。全体を通じて私が特に注力したのは、フィードバックを強めていく文化と行動ベースでの目標設定です。そのためにはツールも適宜活用しました。例えば「ほぼ100シート」は人間の行動は約100日で定着化するという禅の話にヒントを得た目標管理シートです。「部内においてハブ的存在を目指す」「今後20年も一緒に働きやすい年上の事務職を目指す」といった目標などが実際に立てられましたが、そのための小さな目標から考えて実行してもらいました。また、ピアメンバーからのジャーナルや私からのニュースレターでの発信も継続しましたし、イントラネットに掲載して周囲を巻き込む試みも実施しました。「任せる、見守る」=「ま」、「自分が(主体的に)関わる、変わる」=「じ」、「よってたかってあの手この手」=「よ」、それぞれの頭文字を並べると「マジよ」です。組織の風土を変えるのは難しいことですが、この姿勢がよりよいヒトとヒトとの化学反応を生み出すと思います。

講演写真
本講演企業

WisHは企業のダイバーシティ戦略に基づく女性活躍推進というテーマに特化した、リ・カレント株式会社のグループ企業です。自身の持っている能力に気付き、その能力を発揮して、自ら成長できる場をつくりあげていけるような、しなやかで輝き続ける女性たちを企業にたくさん生み出したいという想いから設立しました。 100社以上の実績経験をふまえ、各分野のプロフェッショナルパートナーとともに、中長期的なコンサルティングプランや各種セミナー、講演などを提供する「研修・制度構築」、女性の活躍を促進・阻害する要因がどのような点にあるのかを明らかにする、独自の組織診断ツール「女性活躍組織診断」、(プレ)ワーキングマザーが企業の壁を超えた交流を図る場をつくる「ワーキングマム・プロジェクト」。これら三つの取り組みを軸として、多くの企業や官公庁からお声がけいただき、女性向け研修の企画・プロデュースに携わっています。

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