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テクノロジー活用で人事が変わる
~AI・データ分析・ソーシャルメディア活用の基本を知る~

  • 石山 洸氏(株式会社リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology 推進室室長)
  • 佐藤 優介氏(アクセンチュア株式会社 人事部 新卒採用チームリード)
  • 南 和気氏(SAPジャパン株式会社 人事・人財ソリューション部 部長)
2016.07.15 掲載
講演写真

グローバル化が進展し、経営環境が激しく変化する中で、人事部門には課題が山積している。複雑に絡み合うさまざまな課題を効率的・効果的に解決するには、これまでの日本企業の人事部門が頼ってきた「KKD(勘・経験・度胸)」だけではもはや通用しない時代となった。

そこで、昨今注目されているのが「人工知能(AI)」「データ分析」「ソーシャルメディア活用」などの「テクノロジー」だ。これらのテクノロジーを活用することで、人材の情報が可視化され、問題発生が予測しやすくなり、科学的・客観的な人事業務が可能になると言われている。本セッションは、テクノロジー活用の専門家によるパネルセッションと参加者同士のディスカッションにより、AIやデータ分析、ソーシャルメディア活用の基本を知るとともに、テクノロジーを人事業務にどのように生かせばよいのかを考える場となった。

プロフィール
石山 洸氏( 株式会社リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology 推進室室長)
石山 洸 プロフィール写真

(いしやま こう)リクルートのAI研究所 Recruit Institute of Technology 推進室室長。大学院在学中に修士2年間で18本の論文を書き、アラン・ケイの前でプレゼン。博士課程を飛び越して大学から助教のポジションをオファーされるも、リクルートに入社。雑誌・フリーペーパーから、デジタルメディアへのパラダイムシフトを牽引。リクルートとエンジェル投資家から支援を受け、資本金500万円で会社設立。同社を成長させ、3年間でバイアウト。その後、メディアテクノロジーラボの責任者を経て現職。


佐藤 優介氏( アクセンチュア株式会社 人事部 新卒採用チームリード)
佐藤 優介 プロフィール写真

(さとう ゆうすけ)早稲田大学政治経済学部卒業。大学時代にベンチャー企業での新規事業立ち上げ、起業を経て、アクセンチュアに戦略コンサルタントとして入社。主に金融機関向けのコンサルティングプロジェクトに従事する。その後コンサルタントの仕事の傍ら、高校生・大学生向けのキャリア教育支援団体である「NPO法人JUKE」を創業し、ジョブシャドウイングの普及に努める。2012年の娘の誕生にともなってNPOの代表を後進に譲り、その後1年間の育児休暇を取得。子育てをしている中で「人材育成に関わりたい」という思いが強くなり、職場復帰の際に人事部に異動。人事部では中途採用・第二新卒採用の担当を経て、現在は新卒採用チームリード(新卒採用責任者)として、仕事に邁進している。


南 和気氏( SAPジャパン株式会社 人事・人財ソリューション部 部長)
南 和気 プロフィール写真

(みなみ かずき)大阪大学法学部卒業後、米国企業を経て2004年、SAPジャパンに入社。人事・人材戦略コンサルティングのスペシャリスト。欧米企業で広く導入されているグローバル人事の手法を、日本に適応させた「日本型タレントマネジメント」を2006年より「人材教育」誌に連載発表。2015年、先進企業の人事責任者や、オピニオンリーダーと共に、日本企業によるグローバル人事推進のノウハウを記した日本初の書籍「世界最強人事」(幻冬舎)を出版。大きな反響を呼んだ。現在SAP アジアパシフィックに所属し、日本を含めた北アジアを担当している。


【プレゼンテーション】変革とビジネスに貢献する人事 ~これからの課題~(南和気氏)

冒頭にセッションの司会役を務める南氏が、この日のテーマと流れについて説明した。

「今日は人事の世界では少しとがった話題、AI、データ分析、ソーシャルメディアなどに興味をお持ちの方々にお集まりいただいています。最初に、私からグローバル人事の課題などについてお話しし、続いて石山さんと佐藤さんからAIと人事のお話、データ分析やソーシャルメディアを使った採用の具体例などを語っていただきます。いずれも『データ』が大きな意味を持つ話です。ただ、人事は比較的データが集めにくい、またデータの出入りが少ない分野。そこでどういうデータを集めたらいいのか、どう使えばいいのかをイメージしていただけるようなセッションにしたいと思っています」

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まず、南氏が話したのは「今、人事に求められていること」についてだった。

「今の経営者が人事に求めるのは、ビジネスへの貢献。特にグローバル化するビジネス環境にどこまで対応できるのかということです」

SAPといえば世界的なERPベンダーとして知られている。その中で主要な製品として人事システムがあり、人事システムの導入コンサルティングを通じて、今、企業の人事部に求められているものが見えてくるのだという。

「特にこの5年ほど急速に増えているのが、グローバル人事やタレントマネジメントについて、どのように行えばいいのか、どこから手をつければいいのかといったご相談です」

では、実際にはどのような現象が起きているのか。南氏が挙げたのは、「ビジネスがグローバル化するとポートフォリオの変化が速い」ということだ。

「製造業ではモノのビジネスからサービスのビジネスへと移行しています。現地企業とのジョイントベンチャーが主だった販社も、自分たちが直接売るモデルに変わってきています。そうなると現地の人を雇うことも必要だし、日本人もグローバル化しないといけない。武田薬品工業のようにトップが外国人というケースが出てきます。世界ではもうそれが普通ですね。SAPはドイツの企業ですが社長はアメリカ人。国籍や会社の成り立ちにこだわらず、最もふさわしい人材を幹部に育てていく必要がある。当然人事の果たす役割も変わってくるということです」

南氏は、こうした変化の時代に対応し、ビジネスに貢献できる人事になるためのポイントを三つ挙げた。いずれも日本特有の人事システムから脱却し、データの活用を提案するものだ。

(1)「主観人事」からの脱却
従来の人事は異動、評価など多くの部分を主観で行っていた。しかし、ビジネスがグローバル化すると遠隔地の社員や外国人の社員を対象にしなくてはならない。自分が直接知らない人を評価し、最適配置するには「客観的なデータ」の活用が不可欠になる。

(2)「結果人事」からの脱却
人材を判断する時に経験を重視してきたのがこれまでの人事。変化の激しい時代には能力やポテンシャルに注目して、経験がなくても抜擢するような人事が重要になる。それを単なる勘によって行うのではなく精度を上げるためには、やはり「データ」が大事になる。

(3)「奥の間人事」からの脱却
これからは人事だけで物事を決めるのではなく、現場と情報をシェアすることが欠かせない。一人ひとりのキャリアや志向、モチベーションといったデータをどう共有していくのかを考えるべき。

すでに日本でもこうした工夫と努力で大きな成果を上げている企業は数多くある。

「世界にはGE、P&G、ネスレなどといった人事面で最先端の企業があります。しかし、必ずしもそのマネをすることが正解とは限りません。そこに追いつこうとするよりも、日本企業なりの強みを生かしたグローバル人事をやっていくことが結果につながります」

グローバル時代の人事にとって「データ活用」が非常に大きい意味を持つことを印象づけた、南氏の基調報告だった。

【プレゼンテーション】なぜリクルートがAIに取り組むのか ~人事への活用~(石山洸氏)

「そもそもリクルートがなぜAIの研究所をつくったのか、また人事の仕事でAIをどのように活用できるのか。今日はこの二点についてお話ししたいと思います」

まだまだ未来的なイメージのある「AI」と、この日の参加者が日々取り組んでいる人事業務がどう関わりあうことになるのか。プレゼンテーションはまず石山氏が所属する組織についての説明から始まった。

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リクルートはもともと雑誌で求人情報を提供していた企業だ。しかし、かつての雑誌はフリーペーパーへ、さらにインターネットへと媒体は変化してきている。ネット時代になってからもパソコン、携帯電話、スマートフォン、と情報伝達の手段は移り変わってきた。リクルートでは、次に主役になるのはAI、IoT(インターネット・オブ・シングス)と考え、その研究にいち早く取り組んでいる。

そのために立ち上げられたのが「Recruit Institute of Technology(RIT)」だ。本拠地は米国シリコンバレー。日米あわせて約20名のスタッフがいるが、そのトップは世界的なAI研究の権威、アロン・ハレヴィ氏である。

「論文数と被引用数に基づいて、研究者を評価する指標があります。ノーベル物理学賞の平均が45、アインシュタインが109と言われているこの指標で、アロンは95をマークしています。大学教授としても著名ですが、起業の経験もあり、バイアウト先のグーグルで約10年にわたってデータサイエンスの一部門で責任者を務めたこともある。AI研究の世界トップレベルの研究者ですが、現在は100%フルタイムでこのリクルートの仕事に専念してもらっています」

ここで、石山氏は「RIT」の一日を追った短い動画を見せてくれた。非常に気さくなハレヴィ氏が「データサイエンスとはデータを価値に変えること」と語るのが印象的な動画だ。

「RIT」には、ハレヴィ氏のほかにもカーネギーメロン大学のトム・ミッチェル氏をはじめ、AIと人材ビジネスの研究で世界的に評価されている人材が数多くアドバイザーとして参加しているという。

「なぜこれほど、世界トップクラスの才能を集めたのか。それはリクルートが2020年をめどに、人材ビジネスで世界ナンバーワンになることを目標に掲げているからです。世界一のビジネスを作り上げる世界一の技術によって、世界一のビジネスをつくりあげようと考えているのです」

ここから石山氏の話は「人事の仕事にAIをどう活用するのか」という後半のテーマに移っていく。具体例としていちばんわかりやすいのは「採用」の分野だという。

「現在、レジュメやジョブディスクリプションに記載されているような、人間が普段使う言葉をAIに理解させる『自然言語解析』という技術の研究が進んでいます。また、過去にこういう人材がこういう職種に就いて成功した、あるいは成功しなかったという数多くのデータをAIが自分で学習し、マッチングのパターンを発見していく『機械学習』という技術でも相当な実績が生まれつつあります」

石山氏によると、少し前に話題になった「AIが囲碁のチャンピオンに勝った」というニュースの中で最も重要なのは、「新しい定石(囲碁の戦法)が発見された」ことだという。囲碁には数千年の歴史がある。その間、数多くの天才と言われた棋士たちでも考えつかなかった定石をAIは自力で発見したのだ。

「このようにAIを活用すると、今までマッチングしないと思われていた人材と仕事の間にも新たなマッチングのパターンが発見されるかもしれません。そこにAIの果てしない可能性があります」

このほかにも石山氏はいくつもの事例を紹介しながら、AIの活用によって人事業務が効率化されたり、イノベーションにつながったりする可能性を提示した。とりわけ米国での最先端の事例に多くの参加者が興味を示していたが、ではそうしたAIを実際に使ってみたいと思ったらどうすればいいのか。専門的な人材を社内に入れる必要があるのか。

石山氏は、「今後はパッケージ化されたソリューションによって、誰でも簡単にAIを利用できる時代がくる」とする。

「すでにボストンのベンチャーが開発した技術に、リクルートが投資して製品化した『データロボット』があります」

「データロボット」は日本でもすでに活用が始まっている。解析したいエクセルファイルをドラッグ&ドロップし、予測したい項目を指定するだけで、あらかじめ用意されている4000万ものアルゴリズムの中から、最適のものを自動的に選び出して解析作業を行ってくれるというものだ。

「非常に簡単なので、私たちはこれを『レンジでチンする人工知能』と呼んでいます」

すでに、人材の入社前のデータ(SPIテストの結果、レジュメ、面接データ)からその人材が「5年後にどれくらい活躍するか」を80%の確率で予測した事例もあるという。

「このケースでは、活躍人材の目安を同期入社の中で給与が上位20%に入っている人と定義しました。AIを活用すれば、最終的に人が行うことは、この活躍人材の定義だけになります。あとはAIが欲しい人材を正確に選び出してくれる。技術はもうそこまで進んでいます」

まさに「未来」がすぐそこまで来ていることを強く印象づけるような石山氏のプレゼンテーションだった。

【プレゼンテーション】人事(採用)領域でのテクノロジー、アナリティクス活用事例 (佐藤優介氏)

アクセンチュアでは戦略コンサルタントとしてキャリアをスタートさせた佐藤氏。まだ、ビッグデータやデータサイエンティストといった言葉が一般的でなかった2000年代から、統計解析(アナリティクス)を活用したプロジェクトに取り組んでいた。大手金融機関の大量の顧客データを解析して作成した、一人ひとりのリスクとポテンシャルを瞬時に判断できる統計モデルは、顧客に多くの利益をもたらし、佐藤氏の仕事はアクセンチュアのグローバルでの年間優秀プロジェクトのベスト10に選出された。

こうした自身のバックグラウンドを紹介した後、佐藤氏はこの日のテーマである「採用領域でのアナリティクス、ソーシャルメディアの活用」へと話を進めていった。

「人事に異動した当初は中途採用業務に従事していたのですが、その後第二新卒採用の改革に着手しました。ここでは採用コストの削減が非常に大きな課題となっていました。そこで、まずは統計解析の手法を使うことによって、一人あたりの採用コストを半分以下にすることに成功しました」

具体的な数字をあげて、どのような取り組みを行ったかを説明していく佐藤氏。この日の参加者にとっても身近なテーマだけに、多くの人が熱心に耳を傾けていた。佐藤氏の手法は、利用していた採用媒体とそのすべてのオプションについて、費用と効果の関係を分析し、効率の良いものへと「選択と集中」を進めていくというものだ。それだけ聞くと「ごく当たり前のこと」とも思えるが、注目すべきは佐藤氏が採用媒体のベンダーを説得するのに解析によって得られた客観的なデータを使ったことだろう。

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「人事に異動したばかりで経験のない私が自分の考えを通すのには、当初かなりの困難もありました。しかし、最終的には解析結果を示すことで、新しい方針でのチャレンジが可能になりました。もちろん、ワンサイクル終わった後には必ずPDCAを回して検証を行い、さらに効率的な予算配分を徹底していきました」

次に佐藤氏が紹介したのがソーシャルメディアの活用だ。データ解析の結果、Facebook広告が最も効果的だとわかり、これをさらに強力なツールとして活用するために、さまざまな工夫を行った。

「エージェントから紹介されてくる人材と違い、Facebook経由で訪れる層はモチベーションが最初から高いわけではありません。当初は応募画面に直接リンクしていたのを改め、企業理解とモチベーションを高めるページを経由させることで、理解度や意欲を大幅に上げることに成功しました」

さらに、単なる募集情報ではなく、ほかの有名企業も巻き込んだイベントを告知するというスタイルにすることで、これまでは採用できなかったタイプの人材も採れるようになったという。

こうした第二新卒の採用改革に成功した佐藤氏が、その後取り組んだのが中途採用におけるダイレクトでの採用数を増加させるプロジェクトだ。

「ハードルの高い課題でした。自分のノウハウだけでなく、その当時はオーストラリアとアメリカに所属する、ダイレクトリクルーティングやソーシャルメディアの活用に詳しいスタッフとも情報交換しながら進めていました」

Facebook以外のソーシャルメディアや採用媒体の採用データを、第二新卒と同様に統計解析し、選択と集中を進めていく。また、Facebook広告と同じくプロセスやフロー、クリエイティブのブラッシュアップなどもきめ細かく行っているという。

今後さらに重要になってくるという採用手法が「社員紹介」だ。もともとアクセンチュアには社員紹介を受け付けるグローバルのシステムがあった。その積極活用に加え、日本全体でどのようなポジションを募集しているのか、全従業員が参照できるジョブディスクリプションを掲載したサイトも用意。紹介したい人のメールアドレスを入力するだけでよい手軽なシステムの運用により、採用実績も順調に伸びていることが事例として紹介された。

テクノロジーをフル活用して採用の実績をあげている佐藤氏だが、最後のまとめでは「オフラインの情報の重要性」を強調した。

「3年間人事をやってきて思ったのは、職業選択という重要な意思決定の場面では個人の『感情』がとても大切だということ。結果的にオンラインの情報よりもオフラインのほうが重視されるのです。昨年は、アクセンチュアでは技術活用と同時にリアルなマーケティングにも力を入れていました。著名人を招いて、現場に行きたいと思わせるような仕掛けをしていく。あるメディアと組んで展開したセミナーには430組以上の応募があり、リアルなイベントによりアクセンチュアのイメージづくりやさまざまなつながりを演出しています」

次に取り組みたいのは「マーケティング・オートメーション」だと語る佐藤氏。そのテクノロジーを活用した採用改革によって、アクセンチュアは2017年卒新卒就職人気企業ランキング(みんなの就職活動日記)で前年の79位から35位へと大幅に順位を上げている。佐藤氏のプレゼンテーションは非常に具体的で、各企業がすぐにでも応用できそうな貴重なノウハウが共有される時間となった。

【パネルセッション】

セッション後半は南氏が司会役となり、3名のパネリストによるパネルセッションが行われた。

最初に南氏が「自然言語解析」「ディープラーニング」といったAIに関わる専門用語のよりわかりやすい説明を石山氏に求めた。また、佐藤氏からは「マーケティング・オートメーション」についての補足説明が行われた。

次に、AI活用のためのデータとして、オフラインのコミュニケーションの情報を集めるための具体的な方法についての討論が行われた。石山氏からは、「オフィスや会議室にセンサーやカメラを設置し、すべてのコミュニケーションを記録し、音声解析するなどの手法もあるが、そこまで大がかりでなくとも、個人の予定表やカレンダーのデータを使えば『誰と誰がいつミーティングしたか』がわかる。最初はそのレベルから始めても問題ないのではないか」という見方が示された。

次に佐藤氏のプレゼン内容について掘り下げた検討がなされた。補足情報によると、佐藤氏が着任して採用改革を行った結果、最初の3ヵ月で数千万円ものコスト削減を実現したことが明らかになった。

また、エージェント利用から直接採用に比重を移す上で、即効性がある採用チャネルとして佐藤氏があげたのは「社員紹介」だった。また、Facebook広告が効果的だったという事例から、会場の参加者に対してFacebook利用者に挙手を求める場面もあった。およそ7割の人がFacebookを利用していた。南氏は「やはり最初はみんなが利用している媒体を使った方が早いということでしょうね」とまとめた。

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佐藤氏からは、社員紹介を実効性のあるものにするために行った社内キャンペーンの実例も紹介された。事前の書類選考なしで参加できる人事主催の「説明会」を行うなど、最初のハードルを下げる工夫。あるいはバレンタインデーに紹介キャンペーンの告知を印刷したチョコレートを全社員に配布するといった、遊び心のある取り組みも非常に反響が大きかったという(前年同期比で2倍の紹介があった)。

パネルセッションの後半は、参加者からの質問にパネリストが回答した。

「人事業務の中でAIに置き換えられてしまう仕事は何か」という質問には石山氏がこう答えた。

「ノーベル経済学賞をとったダニエル・カーネマンの理論に『人間のリスクの認識は非対称になる』というものがあります。100万円もらえるという情報と、100万円取られるという情報では、後者のほうに強く反応してしまう。それが人間が本来持っているバイアスなのです。人間はAIに対しても、それによって仕事を奪われるというほうに、より強く反応してしまう。しかし、AI活用で就業機会が増える可能性も同じくらいあるのです」

ずっと以前には、ソロバンができないと経理の仕事には就けなかった。しかし、技術の進歩で表計算ソフト、会計ソフトなどが普及し、現在経理の仕事は数字を計算することではなくなっている。経理という「ジョブ」は、ソロバンという「タスク」がなくなっても消えてしまうわけではない。石山氏は、AIがとってかわるのはこのタスクの部分にすぎないという。

「人事だけでなくほかの職種においても、このタスクの入れ替えは今後頻繁に起こってくる。それに対応するための職業訓練やその手前の教育なども含めて、どうデザインしていくか。人事の仕事はそこがもっと大事になっていくのではないでしょうか」

【参加者によるディスカッション/まとめ】

終盤はグループごとに参加者同士のディスカッションが行われ、最後にこの日のセッションの印象や各社の課題がそれぞれ発表された。3名のパネリストも各グループを巡回し、さまざまな質問への回答、アドバイスなどを通じて討論に協力した。

発表の中では、あるグループから「AIによって従来なかった新しい解が発見されたとして、それを人間である経営者にどう理解させればいいのか」という疑問が提示された。これに対する石山氏の回答は「まずはスモールサクセスを積み重ねていくことが重要」ということだった。

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最後にパネリスト3名からまとめの言葉があった。

石山:AI活用の最初の一歩を何から始めるか。これはとても難しい。もっとも簡単なケースは1次面接のためのレジュメ・スクリーニング(書類選考)でしょうか。そういった取り組み始めやすいところから入って、範囲を広げていくのがいいのではないかと考えています。

佐藤:アナリティクス活用でいちばん重要なのは、「何をしたいか」が明確になっていること。自分の場合はコスト削減、採用数増加といった明確な目標があったので、そのための手法を考えてアナリティクスを活用しました。今後は従業員のパフォーマンス向上に統計解析やAIを使ってみたいですね。結果が出たらまたご報告します。

南:今日は夢のある、未来を感じるトピックにお集まりいただきました。皆さんにぜひお願いしたことが二つあります。第一は、今日ここに集まった皆さん同士Facebookでつながって、今後も情報交換していきたいということ。ぜひ友達申請してください。第二は、普段の業務でいいので、簡単なデータ解析を実際にやってみてほしい。スモールサクセスから始まるものがあると思います。本日はありがとうございました。

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