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事例から読み解く克つ企業・人材の条件
~組織を育て成果を上げる教育研修の在り方~

  • 朝倉 千恵子氏(株式会社新規開拓 代表取締役社長)
  • 松島 雄一氏(積水ハウス株式会社 執行役員 東京支社次長)
2016.06.21 掲載
株式会社新規開拓講演写真

第一印象を制する人がビジネスを制する。人は会った瞬間、6~7秒で「快」「不快」を決めてしまう。その印象を覆すのは至難の業。積水ハウス執行役員の松島氏は支店長時代に、新規開拓の朝倉氏に研修を依頼。挨拶の徹底を起点に「印象力アップ」の指導をし、拠点を業績全国一位に導いた経験を持つ。研修指導で社員にどんな変化が起きたのか。それが組織や業績にどう影響したのか。二人のディスカッションから教育研修を成功させる秘訣を読み解く。

プロフィール
朝倉 千恵子氏( 株式会社新規開拓 代表取締役社長)
朝倉 千恵子 プロフィール写真

(あさくら ちえこ)全国各地にて業界問わず、大手企業を筆頭に研修・講演活動を展開。また働く女性の応援団長として自社で主宰する「トップセールスレディ育成塾」は2,000名超の卒業生。35冊超の著作の他に、メディアには、SBCラジオ、ニッポン放送で「朝倉千恵子の向き不向きより前向き」を放送中。


松島 雄一氏( 積水ハウス株式会社 執行役員 東京支社次長)
松島 雄一 プロフィール写真

(まつしま ゆういち)1955年1月4日生、東京都荒川区出身。1978年積水ハウス(株)に営業職として入社。入社一年目に新人賞及び関東営業本部内営業成績第一位を獲得。累計316棟引渡し。2000年久喜営業所長、2002年埼玉東支店長、2007年神奈川営業本部長、2010年執行役員就任、2012年執行役員東京総務部長に就任。2016年5月執行役員東京支社次長に就任。


やる気のない1割の社員が、組織を壊している

株式会社新規開拓は、社員の意識改革、モチベーション向上、企業のイメージアップなどを目的に、企業向けに社員研修、講演、ビジネスセミナーを行う。代表の朝倉氏だけでも年間300社以上、約7,000人の研修実績を誇っている。

最初に新規開拓の代表である朝倉氏が登壇。第一印象の大切さについて話した。人の印象はどれくらいの時間で決まるのか。心理学では、言葉を発する瞬間までが第一印象に含まれるという。
「人の第一印象が決まるのは6~7秒程度です。その内訳は、目から入ってくる一瞬の印象が80%、話し方13%、人柄はたったの7%です」

だからこそ、人と接するときの姿勢、挨拶、声の出し方が重要になる。人に挨拶するときは、きちんと相手に体ごと向けて姿勢を正し、背筋を伸ばしてお尻を引くようにお辞儀をする。

「たったこれだけでお客様の印象は大きく変わります。接客接遇研修から業績を大きく伸ばした会社をご紹介します」

ここで、積水ハウス執行役員の松島雄一氏が登壇。朝倉氏とディスカッションを行った。

朝倉:気が付けば仕事のご縁をいただいてから、17年以上の歳月が流れました。当時、松島様は支店長をなさっていたのですが、なぜ私たちにご依頼くださったのでしょうか。

松島:朝倉さんにはこちらの要望をたくさん申し上げましたが、それを聞く姿や真摯に受け止める姿を見て、これならお任せできると判断しました。

講演写真

朝倉:研修を行うことを決断されたきっかけは、何だったのでしょうか。

松島:私が支店長に就任したとき、その支店は全国140支店の中で成績が最下位でした。当時、支店には150人の社員がいましたが、どの社員もあまり覇気がありませんでした。一人ひとりは力を持っているのに、同じ方向を向いていないんです。150人のうち30人でも斜めを向いた社員がいれば、マイナスに引っ張られます。だから、私は皆のベクトルを合わせたいと考えました。

やる気のない社員は、どんな組織にも1割程度はいると思います。その人たちが強くなると、ほかの3割、4割の社員も引っ張られてしまう。すると、組織として全く力を発揮できません。そこでベクトルを一方向にまとめたいと考え、最初の半年は自分たちで研修を行っていました。しかし短期間で急激な改革を実行するには、外部の研修の導入が必要と判断しました。

朝倉:私もよく覚えていますが、その当時、決起大会で全員を対象に講演し、そのあとは30人限定の研修を何クールも行いました。また全員に、4時間のマナー研修を受けていただきました。本当に驚くほどに、業績がどんどん上がっていったことを覚えていますね。

支社で決めた「全員での挨拶」が、状況を一変させた

朝倉:松島様の支店は驚くほど業績を上げられ、またお客さまが評価する指標でも全国でトップを取られました。そうなるまでの過程をお教えいただけますか。

松島:朝倉さんに研修をお願いすることになり、最初はとにかく、全員が同じ研修を受けることにしました。150名の社員を5回に分けて30名ずつの研修をスタートさせ、同じモチベーションが持てるように指導していただきました。

講演写真

そこで指導していただいたのは、先ほど皆さんが練習された挨拶です。お客さまは主にショールームにいらっしゃいますが、支店には取引業者さまなどがいらっしゃいます。そこで支店に来客があったとき、一人が「いらっしゃいませ」というと、全員が先ほどのように体ごと相手に向けて立ち上がってから「いらっしゃいませ」と、笑顔で、大きな声で言うようにしたのです。中には「なんでこんなことをするのか」と思っていた社員もいたと思いますが、挨拶に要する時間はほんの数秒。仕事に差し支える時間ではないから、ぜひやろうと決めたのです。

挨拶をするうちに、支店に来た方々がいろいろなところで評判を話してくれて、「あの支店に行くと気持ちいいよ」「行ってごらん、本当に感じのいい支店だよ」「あの支店に、また行きたいね」といった話がどんどん伝わっていきました。支店の社員も「そういうふうに思ってくれていたんだ」と、自分たちも楽しくなってきて、進んでやるようになったのです。楽しくなってやるということが、とても良かったように思います。そしてそれがごく当たり前のことになっていきました。

そのうち業績はみるみる上がり、1年後には全国の支店で一番になりました。お客様の満足度でも、ダントツで全国トップになりました。やはり、すべての姿はつながっていると実感しました。

「単純に見える正しいこと」ほど、皆がバカにしてやっていない

朝倉:営業研修も受講されていますが、こちらはいかがでしたか。

松島:営業は60名いましたが、そのうち業績がよくなかった14名に研修を受けてもらいました。期間は5ヵ月間で、月2回の指導。すると3ヵ月目くらいからみるみる成績が上がっていきました。今もデータは取ってあるのですが、14名の成績が次の半年には1.6倍にもなったのです。
この研修がよかったのは、1回で終わらなかったことです。継続して半月ごとにやっていくことで、5ヵ月間ずっとモチベーションを保て、営業に関する考え方を浸透させることができたと思います。成績の悪かった社員が伸びてくると、その上にいる社員たちも頑張るようになる。研修を行ってからの3年間は、とてもよい状態にあったと思います。

いま考えれば、研修を通じて社員たちが感じたのは、近江商人でよく言うところの「売り手良し、買い手良し、世間良しの三方良し」ではなかったかと思います。自分から挨拶することで、お客さまがその評判を話してくれ、それがまた周ってきて自分に返ってくる。自ら身をもって行動することの意義を、社員がわかってくれたことがよかったのだと思います。

朝倉:私も教育業界に身を置いて19年が経ちますが、今日皆さまに体験していただいた起立、挨拶、着席を軽んじる人もいます。「なぜこんなことをやらなくてはいけないの?」「これに何の意味があるの?」と。しかし、誰でもできる当たり前のことを、しっかりとやることに意味があるのです。自分から挨拶することは、最終的には自分本位ではなく、相手本位で何ができるかと考える礎になっていきます。

講演写真

「私は真剣に会社のことを考えている、あなたも考えてほしい」

朝倉:今日は企業の教育担当の皆さまにたくさんお集まりいただきましたが、松島様は研修会社を選ぶときに、何を決め手にすればよいと思われますか。

松島:私が自分を顧みて思うことは、会社で立場が上がり、部下を持っても、その部下は自分の所有物ではないという意識が大事だということです。一時的に会社から社員を預かって、そのメンバーで業績を上げるように求められているのです。それを勘違いしていると、部下に横柄な言葉遣いをしたり、パワハラをするような人が出てきます。

例えば、部下が話をしにきたら、ダメな上司は横柄な態度を取ってしまいます。しかし、部下との間柄は人対人ですから、きちんと相手を尊重する。自分も立ち上がって「どうしたんだ」と声をかけ、目を見て話を聞く。こういう姿勢があれば、部下は一生懸命働いてくれるようになると思います。

朝倉さんに研修を依頼するときにお願いしたのは、「私は真剣に会社のことを考えていますから、朝倉さんも真剣にうちの会社のことを考えてもらえますか」ということでした。それから社員たちをどんなポジションに持っていきたいか、その目標をお伝えしました。そして期限を切って、いつまでにどんなポジションまで持っていきたいかを伝える。そこで、できること、できないことを真剣に話し合いました。やはりしっかり話をすることが大事だと思います。

そして、できるだけ具体的に研修後の姿を想像して依頼することも大事です。積水ハウスであれば展示場がありますので、ここにお客さまが来られたときにどのような接客をしてほしいとか、そういう具体的なお願いをすることが大事です。

また、朝倉さんの対応でありがたいと思ったのは、会社のことをよく調べて、業界にあったやり方で研修してくださったことです。展示場の中で、接客指導をしてくださった講師もいらっしゃいました。このような教え方の配慮が、業績アップに直結したのではないかと思います。

朝倉:研修を依頼するときに、企業側が注意すべきことは何かありますか。

松島:研修を受ける側の注意点としては、例えば私が責任者で研修をお願いしたとしたら、私自身も研修に参加するということが大事だと思います。そして一緒に受けた後に、社員たちに「今の研修はどうだったか」と声をかけて話をするのです。

もう一つ大事なことは、研修後も研修で使われた言語を使って話をすることです。研修の講師が使われた言葉を、上司も同じように指導で使うことで、社員も研修のことをいつまでも忘れないようになります。それだけ教えの浸透度合いも違ってきます。

朝倉:今日、松島様の話をうかがって、誰にでもできる当たり前のことを徹底して行うことの大切さを理解していただけたのではないかと思います。今多くの仕事がIT化されていますが、これから人に求められるのは究極のアナログ力ではないでしょうか。ぜひそこで、私どもの研修をご活用いただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

講演写真
本講演企業

2004年6月創業、本社を丸の内ビルディングに構える。女性活躍推進支援策として「トップセールスレディ育成塾」を主宰。『縁あるすべての人に愛と勇気を与え、共に成長・成功することを使命とする。』『人材教育を通して、組織と個人の夢の実現と経済・社会の発展に寄与する。』を経営理念とし、新入社員研修から管理職研修まで各階層ごとの研修、更には営業研修を筆頭に職種に沿った研修を業界問わず全国各地で実施。

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2004年6月創業、本社を丸の内ビルディングに構える。女性活躍推進支援策として「トップセールスレディ育成塾」を主宰。『縁あるすべての人に愛と勇気を与え、共に成長・成功することを使命とする。』『人材教育を通して、組織と個人の夢の実現と経済・社会の発展に寄与する。』を経営理念とし、新入社員研修から管理職研修まで各階層ごとの研修、更には営業研修を筆頭に職種に沿った研修を業界問わず全国各地で実施。

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