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次世代に残すべき素晴らしい会社とは~「ホワイト企業」という概念で日本に活力を生み出す

  • 小室 淑恵氏(JWS 評議員/株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)
  • 五味田 匡功氏(JWS 監事/ソビア社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士/中小企業診断士)
  • 江本 亮氏(JWS 理事兼事務局長/株式会社プロシーズ 取締役副社長)
2016.06.21 掲載
一般財団法人日本次世代企業普及機構(JWS)講演写真

ブラック企業への批判が集まっているが、それとは逆に、いま称えるべき企業として「ホワイト企業」が注目されている。今年初めて発表された「ホワイト企業アワード」の受賞企業3社を迎え、JWS(一般財団法人日本次世代企業普及機構)の小室淑恵氏、五味田匡功氏、江本亮氏が、各社の実践内容や、受賞のポイントなどを紹介し、次世代に残すべき企業の条件について議論した。

プロフィール
小室 淑恵氏( JWS 評議員/株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)
小室 淑恵 プロフィール写真

(こむろ よしえ)2006年ワーク・ライフバランスを設立。900社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして売上を上げる「働き方見直しコンサルティング」の手法に定評がある。 内閣府「子ども・子育て会議」委員など複数の公務を兼任。2009年には金沢工業大学客員教授に就任している。


五味田 匡功氏( JWS 監事/ソビア社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士/中小企業診断士)
五味田 匡功 プロフィール写真

(ごみた まさよし)2007年に会計事務所在籍中に社会保険労務士・中小企業診断士に同年度合格。会計事務所内での社内ベンチャーとして社労士事務所を立ち上げ、その後独立。Wライセンスを活かして人事・労務設計を行う際に、多数の企業のサポート経験を活かしてビジネスモデルの改善もサポートも実施している。


江本 亮氏( JWS 理事兼事務局長/株式会社プロシーズ 取締役副社長)
江本 亮 プロフィール写真

(えもと りょう)株式会社学生援護会(現インテリジェンス)出身。2010年より株式会社プロシーズの取締役就任、2014年「ホワイト企業だけの転職支援サービス、ホワイト求人」をスタート。多くの方が「安心して働ける成長企業」を求めるなか「安心して働ける成長企業なのに無名」という企業の人手不足を痛感し、当財団の設立を決意。


ホワイト企業アワード受賞3社が行った施策とは

「第1回ホワイト企業アワード」は、今年スタートした表彰制度。主催するJWS(一般財団法人日本次世代企業普及機構)は、次世代に残すべき素晴らしい会社を支援していくことを目的に立ち上げられた。最初に、JWSの理事兼事務局長の江本亮氏が「第1回ホワイト企業アワード」の概要を語った。

講演写真

江本:企業規模の大小を問わず素晴らしい会社は多数あります。では、素晴らしい会社とは何でしょうか。私たちは「適正な利益・成長(事業計画、収益の黒字)」「お客さまからの信頼(売り上げ規模、継続性)」「従業員満足度(ワークライフバランス、法令順守、人事制度)」の三つによるホワイトバランスを定めました。ホワイト企業アワードには、142社からのエントリーがあり、提出された資料の解析と理事会評議会などでの検討を重ね、最終的に11社を選定。西日本と東日本それぞれ、大賞、特別賞ほか4賞を発表しました。受賞企業の中から、今回は3社に取り組みをお話しいただきたいと思います。

株式会社中部システムセンター 代表取締役社長 田中祐嗣氏

講演写真

私どもは三重県津市でオフィス環境の構築などを主に行っています。私を含め10名という小規模ですが、取り組みが参考になれば幸いです。まずは「全社員活躍推進」。もともと私どもの会社には、性別や社歴・学歴に関係なく全社員が活躍できる環境を整えて皆が活躍すべきという考えがありました。このために行ったのが、貢献度評価型人事制度の導入です。労働時間などに関係なく貢献度を評価するもので、そのために能力評価と行動評価を行っています。行動評価では、行動項目を全社員に公表し、活躍度を見ながらポイントを付け、賞与の原資を貢献度に応じて分配します。全社員との年次面談、就業規則や福利厚生の見直しも進めました。

「ファミリー時間休暇」は、配偶者のサポートや子どもの行事参加で一時的に外出したいという要望に応じた制度です。気軽に使えるように時間単位とし、年間48時間、子どもが2人いれば96時間を小学校3年生まで利用できます。

「ワークプレイズの構築」は、創造力やコミュニケーションの誘発、リフレッシュ効果、知的生産性の向上、自社イメージアップを狙ったものです。会議への偶発的な参加や話題の展開などを想定してオフィスをデザインして、植物やアロマやBGMを取り入れ、社員自身で壁に色を塗ったり、緑を持ち込んだりして楽しくやっています。

次に「業務基準の設定と現場への権限移譲」。お客さまや社員ごとに顧客対応に差があったり、社長が不在だと意識決定が遅れて業務が止まってしまったりする事態をなくすために設定しました。業務基準やCS基準を設け、社員が現場で判断できるようにした結果、お客さまにも評価をいただきました。

「顧客管理システム」は既に導入されているところが多いと思いますが、顧客データを一元管理して全社員が常に現状を確認できるようにしたことで、情報の錯綜を防ぎ、お客さま満足度も向上しました。こういったことを進めて、労働時間を少なくしながら、利益を上げていくことが実現できました。

株式会社イーウェル 戦略企画室室長 林邦彦氏

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私どもは福利厚生や健康支援サービスを提案している会社です。松江市と米子市にあるオペレーションセンターには女性社員も多く、多様な働き方が増えてきました。お客さまにサービスを提供するにあたり、自社の中での実践を基盤としています。「健康いきいき人材・職場の実現」のために行っている、ワーク・ライフバランス施策、健康経営施策、働き方改革施策をご説明します。

「ワーク・ライフバランス」では、制度や施策を導入しても必ずしも利用されない場合があるため、コミュニケーションや風土作りも必要と考えました。具体的には、パワーアップ休暇として、上司が率先して月に一日必ず休みを取りつつ、メンバーとコミュニケーションしながら目標を設定し、メンバーの休暇取得も確認していきます。

「健康経営」の面では、従業員参加型のWelBeingプロジェクトを実践しています。例えば、歩数計を配って毎日入力する歩数のランキング上位者や、健診の結果BMIが改善された人にポイントを付与する仕組みです。就業前のエクササイズや運動イベントも行っており、禁煙プロジェクトでは全員が成功しました。

「働き方改革」としては、移転時や新設オフィスに関して、従業員参加型で自分自身の目線を反映した働きやすい職場作りを行うワーカーズデザインオフィスという施策があります。例えば、自由で活発なコミュニケーションや創造的な発想ができる職場づくりを行っており、米子のオペレーションセンターには会議を円滑に進めるため、内容によって選べるよう壁の色が異なる会議室を作りました。また、マッサージルームを設けたり、キッチンを活用した従業員向けの料理教室も開催しています。松江のオペレーションセンターは宍道湖が見渡せる空間で、花火大会も楽しめます。

こうした活動を通じて、楽しい時間といい仕事はつながっているという考え方に基づきながら、「健康いきいき人材・職場の実現」をこれからも増やしていきたいと思っています。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 取締役 伊藤修武氏

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弊社は、ゴルフ用品販売やゴルフ場予約などゴルフ関連を事業としています。ワーク・ライフバランスの取り組みとして「WORK FAST」をキーワードに掲げています。ゴルフが大好きだった白洲次郎さんが残したという、ゴルファーであれば全員知っている「PLAY FAST」という言葉があります。これは、ゴルフではスロープレイをするとペナルティが課されるルールがありますが、そもそもゴルファーたるものプレイを早くして後続の組、周りの人達に迷惑をかけないという心構えのことです。要は、人が打っている間に自分がちゃんと準備をして番が来たらすっと打ってすぐ次のプレイに移る。これは我々の業務に取り組む姿勢にも共通しているということで生まれたキーワードです。

これを浸透させる制度として、「Charge Day」「ミンナサーズデー」は、水曜日はノー残業デーにして、代わりに翌日午前中は役職者も含め全員席にいることとして、上長に確認や承認を取るなり、どんどん仕事を進めようという制度です。「立ち会議」「30分単位の会議スロット」は会議の効率化を考えたものです。休暇制度はいろいろありまして、産休育休取得率100%、復帰率100%がここ数年続いています。「ゴルフ休暇」はゴルフに行く時は有休にして補助金も出るというものです。ゴルファーの気持ちを我々がもっと理解して、もっといいサービスをしましょうという姿勢による休暇です。他に、頑張った人を称える人事異動制度や、自己啓発を支援する補助金なども整えました。

さらに、新しい制度も画策しています。早朝から仕事をしてパッと帰る「アーリーバード」、お昼休憩を挟まずにそのまま働いてパッと帰る「早朝スルー」、時間が来たらとにかく仕事は終了して翌日に回すという「日没サスペンデッド」などゴルフ用語に沿った制度です。ゴルフの会社ですから、ゴルファーの気持ちになり、ゴルフに照らし合わせた制度を元に設計しているところが、結果的に社員に浸透しやすい形になっていると思っています。

3社の取り組みの注目ポイント

次に、審査にあたってのポイントや考え方がJWSの五味田氏、小室氏から語られた。

五味田:最初に江本が申し上げた三つのバランスが非常に重要だと考えております。今日の3社からお話しいただいた内容は従業員満足が中心でしたが、それ以外の二つについても非常に絶妙なバランスを取っています。ですので、時短はコスト高になる、福利厚生に対費用効果があるのか、ということでなかなかワーク・ライフバランスが進められない企業は多いと思いますが、3社の取り組みがヒントになればと考えています。

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小室:中部システムセンター様の一番のポイントは、女性や介護者などに限定せず、全員が生産性高く働ける体制を作りサポートし合うというコンセプトです。2点目は、今日のお話にはありませんでしたが、生産性が前年比115%と上がったこと。ワークライフバランスと業績はトレードオフではないことが示された数字です。3点目は、仕事の属人化排除。この人にしかできない仕事をなくし権限を移譲する。これにより一人ひとりに経営感覚を持たせたことが生産性に結びついたと思います。

イーウェル様は、復帰率100%、ここ3年間の有休取得率が30%台から50%台まで大きく上がったことが一つ目のポイントです。2点目は、上司がコミットしながら取り組みを行っているところです。部下のワーク・ライフバランスを管理できることが上司の評価指標であると明確に打ち出されています。3点目は、指標に向かって頑張るとポイントが付与されたり、オフィスをワクワクする環境に整えたりするという、楽しく、社員の創造性が上がるような仕掛けです。

ゴルフダイジェスト・オンライン様は、コンセプトが非常に面白いことが1点目です。社員に響く形が重要だと思います。社風に沿った形であれば継続性も高いと考えます。2点目は、月平均残業が20時間ということ。この時間であれば、育児や介護にも対応できます。素晴らしい数字だと思いました。

残業を減らしても業績が上がる仕組みとは

3社を交えたディスカッションでは、「時間あたりの生産性を高めるために意識を変えるには」というテーマに対して、田中氏からは「トップやマネージャーがまずは理解することが重要」、林氏からは「先に休暇を決めればパフォーマンスは高められる」、伊藤氏からは「止めていい仕事を経営側が公言すること」などが語られた。最後に、小室氏が総評を加えた。

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小室:3社の取り組みの中に重要なキーワードが出てきたと思いますし、田中社長も「お客様にも提案していきたい」とおっしゃっていましたが、今後もっと社会全体に広げていくことが重要かと思っています。ここで、残業を減らしても企業の業績が上がる仕組みについてお話します。人間の脳は起床から13時間しか集中力が持たず、その後は酒気帯び運転と同じ集中力になるそうです。そんな集中力の人に1.25〜1.5倍の残業代を払っていた状況は、労働時間が長引くほど成果が落ちるスパイラルにあったと言えます。一方、労働時間の上限を決め、時間あたりの生産性に評価を徹底すれば、時間内で成果を出そうと創意工夫し、育児や介護、自己研鑽の時間も生まれます。すると、高い集中力で働いたり自己研鑽する社員が情報や人脈をもたらすでしょうし、育児や介護をしている社員も意欲を落とさず働けますから、さまざまな状態の社員が混じり合う場からは化学反応も起き、新しい価値が生まれ、業績が上がるのです。

JWSでは第2回ホワイト企業アワードを開催予定であり、Web上では自社のホワイトバランスが診断できる。企業調査の積み重ねにより緻密な内容に進化している診断を、人事、採用、広報など様々に活用してみてはいかがだろうか。

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本講演企業

21世紀、またそれ以降の世紀にも残すべき素晴らしい中堅中小企業を発掘し、認定し、表彰をする目的で2015年に誕生しました。「顧客満足」「従業員満足」「適正な利益」のバランスが良い企業を「次世代に残すべき企業=ホワイト企業」と定義し、そのような素晴らしい会社を、その取組を称賛し、世界の多くの方の目にとまるよう活動しています。

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