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人事もPDCAを回す時代へ
「日本の人事を科学する」データ活用の視点とは(後編)

大湾 秀雄さん(東京大学社会科学研究所 教授)

実務家にとってデータはツール
「習うより慣れろ」で克服を

冒頭で、私たちが「人事情報活用研究会」を立ち上げた当初、課題への負担感などから、参加企業が次第に活動を抜けていったという話をしましたね。結局、第1期の最終報告会で研究発表を行ったのは6社のみ。しかし、私が活動の意義を確信したのは、この残った6社の最終報告を聞いたときでした。完成度の高い、素晴らしい内容の発表だったからです。

たしかに、文系出身で統計リテラシーの低い人事担当者にとって、忙しい業務の傍ら、データ分析の課題をこなすのは大変だったかもしれませんが、その条件は各社とも変わりません。では、抜けていった会社と残った会社とでは何が違うかというと、それはやはり「危機感の強さ」だったような気がします。離職率が抑えられないとか、あるいは優秀な人材の獲得に苦労していて、人事から会社を変えていかなければ激しい競争を生き抜いていくことができないなど。そうした危機感をもっている会社の人事担当者ほど、データに裏付けられた改革・改善の糸口を見出すことに熱心で、研究発表にも意欲的でした。 

組織の中で何かを変えようという場合、そこに説得力がなければ、事は成就しません。その意味では、人事データから改善策を提案するためのエビデンスを得たいという明確な目的を持つ人が、データ活用に成功する人だと言えるでしょう。

ありがとうございました。現在、人事データの活用に取り組んでいる人事担当者や、これから取り組もうとしている方々に向けて、最後にアドバイスをお願いします。

正直なところ、数字や計算式は苦手だという人も、少なからずいらっしゃると思います。ただ、実務家にとって人事データは、あくまでもツールですから、とにかく「習うより慣れろ」で、まずは自分で手を動かして、実際にデータに触れてみることが第一だと思います。われわれの研究会でも、参加者は最初、統計ソフトの使い方もよくわからないのですが、理屈を説明するより、とにかくこういう手順で使ってみてくださいと、いきなり分析作業を体験してもらうんですね。そうして、分析結果がグラフや散布図などの形で出てくると、参加企業同士で比較して自社はこの辺りのポジションなのかということも視覚的にはっきりと見えてくる。この「視覚的にとらえる」ということが大切で、結果が見えてくると、データ活用が俄然、面白くなってくるんですよ。自分でもっと勉強しようという意欲がわき、統計的センスが自ずと身についていくことを、研究会の参加者たちは証明してくれました。「習うより慣れろ」――私からのアドバイスはこれに尽きますね。

東京大学社会科学研究所 教授 大湾 秀雄さん

取材は2017年7月26日、東京・文京区の東京大学にて

 


2017/09/08基礎実践大湾秀雄データ活用データ分析人事データ人工知能(AI)

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