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コラム2022/10/07

タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ【第36回】
自立 or 自律? その先の自律型パーパスとは何か?

法政大学 キャリアデザイン学部 教授

田中 研之輔さん

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タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ

令和という新時代。かつてないほどに変化が求められる時代に、私たちはどこに向かって、いかに歩んでいけばいいのでしょうか。これからの<私>のキャリア形成と、人事という仕事で関わる<同僚たち>へのキャリア開発支援。このゼミでは、プロティアン・キャリア論をベースに、人生100年時代の「生き方と働き方」をインタラクティブなダイアローグを通じて、戦略的にデザインしていきます。

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企業で講演するときにまず、私が社員の皆さんにお伝えするのが「自立」と「自律」の違いについてです。「自立」とは文字通り、他人の力を借りずに、一人でやっていくことです。「経済的自立」という言葉に代表されるように、自らの生活基盤を維持し、毎日を送っている状態です。

それに対して「自律」とは、自ら決めた規範に従い、組織に依存することなく、主体的に行動することを意味します。組織におけるキャリア形成で用いられるのは、こちらの「自律」です。

自律的なキャリアとは?

前提として「キャリア自立」とは組織行動より個人行動を優先していくことを意味し、「キャリア自律」とは個人と組織のより良い関係性を創り出す行動であると、理解してもらいます。このように整理すると、「自立」と「自律」の違いは、特段難しいことではありません。

次に、キャリアについてのよくある誤解についても伝えていきます。キャリアとは「仕事を通じて取り組んできたこと(=過去の実績)」と捉えている人がかなりの割合でいます。「やってきたことを改めて考えるの?」「業務を確認するの?」といったようにキャリア誤解が浸透している企業では、希望者参加型の社内キャリアセッションへの参加が芳しくありません。

まず、キャリアの理解から伝えていくようにしましょう。キャリアとは「これまで取り組んできたこと(=過去の実績)と、これから生涯を通じて取り組んでいくこと(=未来の行動)」を意味します。

キャリアの捉え方

これまで取り組んできたことを見つめ、棚卸しするだけでなく、これから何をしていきたいのか、ワークとライフのバランスを含めて自ら主体的にデザインしていくことがキャリア開発なのです。

このように伝えると、自立と自律の違い、キャリアの捉え方の理解が進み、さらにその先へと進んでいきます。それが「自律」の「律」が何を指すのかを考えることです。キャリア自律において自分を律するのは、行動規範や自ら決めたことが軸になります。

私は「キャリア自律」における「律」とは、「個人パーパス」であると考えています。「個人パーパス」とは、仕事や人生を通じて自らが大切にする、揺らぐことのない社会的存在意義です。「個人パーパス」を言語化することで、自らを律することができ、キャリア自律を持続的な行動にしていくことができるのです。

「パーパス? 揺らぐことのない社会的存在意義? そんなのないですよ。わからないですよ」という声も多く耳にします。難しく感じられるのは、これまで取り組んだ経験がないからです。

パーパス・ワークアウト

まず、出発点として意識すべきは、業務管理の過去思考からキャリア創造の未来思考への転換です。やってきたことにとらわれるのではなく、どんなキャリアを創造していきたいのかをイメージしていくのです。

さらに、仕事や人生を通じてどうありたいのかを、まずは一文でいいので、文章化してみましょう。一度で思い浮かばなくても、構いません。2週間に一度、10分間でいいので、半年後、どうありたいのかを未来思考で考えるようにしていきましょう。

さらに具体的にワークを進めていくことにしましょう。

自律的なキャリア形成として個人パーパスの策定

残り数ヵ月となりましたが、2022年をどのような1年にしたいのか、個人パーパスを決めましょう。ちなみに、私の2022の個人パーパスは、【企業横断プロデューサーとして「人的資本の最大化」の実現】です。

個人パーパスは、キャリア形成の過程でその都度、アジャイルで変えていっていいのです。真逆では困りますが、個人パーパスver.1、個人パーパスver.2というように、ヴァージョンアップを重ねていくのです。

だからこそ、継続的に個人パーパスに向き合う時間が大切なのです。また、3年後ぐらいまでの期間を想定して、個人パーパスをデザインしていくこともポイントになります。

性別や年齢は、関係ありません。誰でもいつからでも個人パーパスは策定可能です。目指すべき方向性も見えていますよね。

「組織に言われるまま、目の前の業務をただこなしていく」
「仕事は我慢。つまらなくていい。心を閉ざして、仕事をする機械と化す」

まさか、このような個人パーパスを掲げる人はいないでしょう。上記のような考え方が、これまでの伝統的な働き方や組織内キャリアを支えてきたとも言えます。

しかし、今は、歴史的転換期。主体的なキャリア形成の時代の幕開けです。自分らしい自律型キャリアを形成していくための個人パーパスをぜひ策定していきましょう。

個人パーパスがあると、目の前の仕事に主体的に向き合うことができます。
個人パーパスがあると、仕事でのミスや失敗を自ら受け止め、改善行動に取り組むことができます。
個人パーパスがあると、何より心豊かに働くことができます。

自分のペースで長い距離を走るために、趣味で取り組んでいることをレベルアップさせるようと継続的に取り組んでいますよね?

キャリア開発もまったく同じです。会社が掲げる組織パーパスに従属すると考えるのではなく、個人パーパスの持続的行動を通じて、組織パーパスを実現していく。こうした自律型キャリア形成の視点を構築していくと、目の前の仕事を通じて、「あなたらしい社会的存在意義」を確認することができます。

残り数ヵ月の2022年、あなたの個人パーパスは何ですか?
それではまた次回に!


田中 研之輔さん(法政大学 教授)
田中 研之輔
法政大学キャリアデザイン学部教授/一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事/明光キャリアアカデミー学長

たなか・けんのすけ/博士:社会学。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門はキャリア論、組織論。UC. Berkeley元客員研究員、University of Melbourne元客員研究員、日本学術振興会特別研究員SPD 東京大学。社外取締役・社外顧問を31社歴任。個人投資家。著書27冊。『辞める研修辞めない研修–新人育成の組織エスノグラフィー』『先生は教えてくれない就活のトリセツ』『ルポ不法移民』『丼家の経営』『都市に刻む軌跡』『走らないトヨタ』、訳書に『ボディ&ソウル』『ストリートのコード』など。ソフトバンクアカデミア外部一期生。専門社会調査士。『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』、『ビジトレ−今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』、『プロティアン教育』『新しいキャリアの見つけ方』、最新刊『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』など。日経ビジネス、日経STYLEほかメディア多数連載。プログラム開発・新規事業開発を得意とする。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。


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