私たちデジタルコーストは1996年の設立で、ここ2~3年でソフト開発の受託企業からクラウドサービス専業企業に生まれ変わりました。2011年10月に米国セールスフォース・ドットコムという、クラウドのプラットホームを提供する企業と資本提携。提供サービスにはSNSが組み込まれ、製品を通じて企業の組織活性化やチームビルディングのお手伝いをしています。
最近はfacebookが上場、初値42ドルで時価総額9.1兆円(5月18日時点)というニュースがありました。代表であるザッカーバーグ氏の株持ち分の価格を示すサイトもあり、その額は1.3兆円。28歳の若者が、8年でこれほどすごい会社を創り上げたわけです。アメリカのfacebookの利用者は、9億人を突破。日本のログインユーザーも1000万人です。facebookにはそれだけの利用者がいるから、これほどの評価額がついたわけです。いわば、「ソーシャル」の価値です。
2011年「アラブの春」では、facebookが独裁政権の崩壊を招きました。自然発生的なリーダーシップが発揮され、口コミで広がり、コントロールできない事態へと発展していったわけです。人と人がつながる素晴らしい一面もあれば、コントロールが難しいという怖さも併せ持っているのが、ソーシャルメディアなのです。
では、具体的にソーシャルメディアとはどんなものなのでしょうか。大きな特徴の一つは、実名、顔出し、ICT(情報通信技術)でつながる「第2の社会」であるということです。知り合いの紹介で「信用」が担保される世界であり、知り合いにより「情報」もフィルタリングされます。なお、一昨年の米国のニュースによれば、ニュースサイトやEコマースサイトを訪れた人は、検索サイト経由よりもSNS経由が多かったそうです。また、このメディアは会社よりも個人が優先される世界でもあります。
特徴の二つ目は、民主主義が増幅される世界だということです。誰もが主役になれるのです。しかし、ここでは社会的な合意が形成され、強烈に二極化する可能性もあります。他には、オープン(階級が関係ない)ネットワークであり、コントロールが難しい側面もあります。しかし、ソーシャルメディアが企業に大きなインパクトを与える重要なテーマであることは、間違いありません。
このソーシャルメディアを、企業で使おうという動きも出てきています。それがソーシャルエンタープライズです。米国セールスフォース・ドットコムのCEOマーク・ベニオフ氏が打ち出しました。活用までのステップは三つ。ステップ1は「顧客のソーシャルな情報をデータベース化すること」。ステップ2は「自分の会社の中でフェイスブックのような機能を使い、コラボレーションやコミュニケーションを起こすこと」。ステップ3は「社内でネットワークができ、顧客のソーシャルな情報も取り込んでいき、実際に仲間としてビジネスも進めること」です。
では、いま企業を取り巻く環境はどうなっているでしょうか。現在は低成長の時代です。その原因は人口減少(少子高齢化)と円高によるグローバル化、製造業の空洞化。そしてコモディティ化(商品差別化ができない状態)による垂直統合から水平分散とサービス化。そして情報化が進み、「本物」でなければ生き残れない時代となっています。変化のスピードアップもあり、情報化で世界が身近に(同じ時間に動く角度の差)なっています。組織を活性化するには、変化に対応することが重要です。
変化への対応で一番大切なのは、従業員の創造性です。従来の効率化や改善レベルでは解決が難しい問題に対し、最終的には一人ひとりの創造性で結果を出さなければなりません。創造するのは機械ではなく人。競争優位が人物本位になってきています。ですから従業員の価値を高めるマネジメントが必要です。他社に行っても通用するレベルに価値を高める。戦略的な再配置と従業員の基礎能力の向上が不可欠となりますが、企業が変わることは簡単ではありません。
では、なぜ企業は変われないのでしょうか。大きな要因はイノベーションのジレンマにあります。わかりやすく言えば、企業に能力があり頑張りすぎたために、かえって変化に置いていかれてしまったということです。また企業に加え、人もなかなか変われません。その理由としては現実を直視したくないという気持ちがあり、それに面倒くささや根拠のない恐れも加わって、つい現状維持を考えてしまう点にあります。
それでは、どうすれば変わることができるのでしょうか。組織活性化の観点でみると、以下のようなアクションが上げられます。
これらのことを、企業内のソーシャルメディアの活用で増幅しスピードアップする、つまりソーシャル革命を組織の活性化に利用する、それがこれからの企業に求められることです。
本当に企業内のソーシャルメディアの活用で、従業員の行動を変えられるのでしょうか?ここからは、行動を変化させた事例として、私たちがどのように受託開発業からサービス提供企業に変わったかをお話しします。私たちが変った理由は二つあります。一つ目は市場の変化です。2009年をピークに受託ソフトウェアの市場が縮小。この2年ほどで3割は減ったといわれています。二つ目はクラウド(黒船)への対応です。市場を変える新たな仕組みとして2006年ごろに登場。ハードウェア、ミドルウェアが不要で、月額利用料で運営できるというビジネスモデルが画期的でした。
つまり、我々も変化しなければ生き残れない状況に直面したのです、そこで組織としてのビジョン、行動方針を以下のように再定義しました。
次に受託型の業態からサービス提供型へと業態をチェンジすることにしました。それはこれから世の中から求められるビジネス形態であるとともに、エンジニアの自己実現である、技術で世の中に貢献することに直結する形だからです、つまり従業員の「やりたい」に火をつけたかったのです。
しかし、変化には恐怖も伴います、そこで毎日の行動のレベルで一歩ずつ変化を促すために、以下の「やるべきことと」「やってはいけない(と決めた)こと」を決めました。行動分析学の応用です。
そしてそれを企業内SNSを利用して毎日のコミュニケーションの中で行いました、これは対話で行うよりも論理的で記録として残るので、そこに居合わせなかった社員にも伝達することができ大変効果的でした。行動分析学の仕組み化です。
そして、私たちは「チームスピリット」を開発します。この商品はクラウドとモバイルのハイブリットで、社員が毎日使うシステムを一体化したものです。アクティビティストリーム(行動履歴)で企業内の活動のすべて(ワークログ)を記録。勤務票(割増計算)や休暇簿(休暇申請)の機能があり、これを使うと簡単に給与計算ができます。また、工数実績登録や経費精算(プロジェクト別)の機能があり、プロジェクト原価管理・管理会計なども手軽に行うことができます。さらに、我々の経験を生かして組織活性化のために企業内SNSを組み込みました、この活動報告によって全てのメンバーの行動が把握できるとともに、「やりたい」に火をつけるマネジメントが実現できます。
我々はもうチームスピリットが手放せません、それは勤怠や経費精算などが省力化できる要素もありますが、アクティビティストリームを活用したWFM(ワークフォース・マネジメント)で、サッカーで言えば監督の視点に立って、誰がいつ何をしているかフィールド全体を見渡すことができます、そこからもちろん成果を上げている人が見えるので勝てる選手のパターンを見つけ出しコーチングに応用できます。さらに、他人への貢献(普段なら見えない動き)が見えるので、まさにチームスピリットを創造することが出来るのです。
さて、我々の経験も含めお話しましたが、ソーシャルメディアはただのICTの一技術ではありません、それは革命さえ起こせるコミュニケーションの増幅器です。皆さまの会社でも、ソーシャルエンタープライズの活用と出来れば弊社のチームスピリットの活用を、ぜひご検討いただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。