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特別講演[C-3]

若手社員向けの”研修効果”と”成果”を結びつける
「職育マネジメント」

丸茂 喜泰氏
株式会社トレーニング・カンパニー 代表取締役社長
丸茂 喜泰氏(まるも・よしひろ)
プロフィール:管理者養成学校(通称地獄の特訓)入社後、最年少講師を務める。大手人材派遣会社へ転職し、入社2ヵ月目で全国2位の営業成績を収める。支店長昇格後、全国最下位だった支店を1年で全国2位へ。東証一部コンサルティング会社にて営業職・マネージャー職を経て、トレーニング・カンパニー代表取締役社長に就任。

成果を上げるには、ゴールを明確にすることが重要

本日は、「若手社員向けの“研修効果”と“成果”を結びつける『職育マネジメント』」というテーマでお話しいたします。はじめに、皆さんにお願いがあります。お配りした資料に、「本日のゴール」を記入してみてください。この講演を受けることでどういう結果を得たいのかを明確にするためです。「将来に夢を持ちましょう」などとよく言いますが、夢を持っているだけでは、決して実現しませんよね。夢の実現のためにどうするのか、今日一日をどう過ごすのかを明確にすることは大事です。

弊社の社員は、毎朝9時までにその日の「ゴール」は何なのか、私宛にメールで送ることになっています。これは、「なぜ成果を出せないのか」「何ができていて何ができていないのか」を理解し、日々の活動を変えていくことを目的とするものです。毎日ゴールを設定した上で、できたことは本人にやらせ、できなかったことは教えていくことにしています。このような当たり前のことを徹底していけば、必ず成果が上がります。ですから、ゴールを明確にすることはとても重要なのです。ゴールを書く際に、「とりあえず」と「しっかりとした目的がある」のとでは、終わったときの達成感や成果が大きく変わってきます。

当たり前だと思われるかもしれませんが、PDCAを回す仕組みは大変重要です。皆さんの会社では、社員がPDCAをうまく回すための仕組みを提供されていますか?言葉だけではなくて、きちんと現場で回していく仕組みが重要です。例えば、新人にはPDCAを回していく習慣がない。そこで、徹底的に習慣づけていくことが重要になります。

人が無意識のレベルで知識を使っていることを、「習慣」と言います。人の行動の97%は無意識に行っているもので、残りの3%は意識的に行っているものです。このうち無意識で行っているもののレベルを上げていかなくては、人は変わることができません。何をするのかを明確にし、それを繰り返しトレーニングしていくことで、「習慣化」できるのです。弊社では、定額制で「1講座4名まで受け放題」の研修プランをご用意していますが、これも、習慣化には時間がかかるという考えからです。

PDCAは何のために回すのかというと、目標の実現に向けて「そもそも計画が正しかったのかどうか」を見直すことが理由です。行動を振り返って、それが正しかったかどうかを見直していかなければ、目標は達成できません。新入社員は、目の前のやっていることに集中しがちです。行動したこと自体に、満足してしまうからです。そうではなく、きちんと計画を振り返らせることが重要です。

「職育」とは何か?

皆さんは「職育」と聞いて、どんなものをイメージされますか?まず一つは、「職を通じて個人が育つ。その結果、企業が成長を遂げる」こと。しかし、私どもはこれだけでは足りないと考えています。「職場を育てる」ことも大切だからです。職場が変わらなければ、何も変わりません。

丸茂氏/講演 photo そのための手法について、お話ししましょう。ある会社の社長から聞いた話ですが、大変意欲的な新卒社員を採用したそうです。しかし、入社から数ヵ月後にはまるで「死んだ魚の目」のようになったというのです。現場に配属後、先輩から前向きになれないような話ばかり聞いたことが原因です。人は、職場の環境に流されてしまうのです。例えば、同じ種を撒いたとしても、環境が悪ければ育ちません。それは人も同じです。つまり、職育とは「職場を育てること」なのですね。

では、なぜ職場を育てる必要があるのでしょうか。日本はモノが豊かにあるものの、失われた10年やリーマンショックを経て、今や「夢を持ちなさい」と言っても、持ちづらい時代になりました。残念ながら、自分のためだけにがんばることができない状況にあるのです。そこで、現在では「みんなのために自分もがんばろう」という観点を持ってもらうことが重要になります。東日本大震災以降、「何とか日本を救おう」「人のためにがんばろう」という若者が増えたといいます。この若者の志向をしっかりと理解し、促進していかなければなりません。また、「上から与えられるのではなく、現場で自ら作る環境にすること」も重要です。上司が全て教えるマネジメントは、今の時代には不向きです。実際、そういうマネジメントを行っている企業には、自立できていない社員が多いものです。

「職育マネジメント」をどのように進めていけばいいのか

職場を育てるためには、身近なところから「自分たちでやらせる」ことが重要です。具体的にいうと、「職育マネジメント」には、三つの鉄則があります。一つ目は「風土を作る四つの手法と五つのルール」、二つ目は「人の特性を知る」、三つ目は「逆三角形の組織創り」。これらを、順に説明していきましょう。

まず一つ目の「風土を作る四つの手法と五つのルール」。四つの手法とは、「全員参加」「お互いに検討」「全員で協力」「やってみる(体感)」。この四つのキーワードを、現場の活動に入れていくことが重要です。

次に五つのルールとは、「うなずきながら、聴く」「すぐに返事をする」「自ら手をあげる」「良ければ、拍手」「面白ければ、笑う」。例えば、拍手一つで組織の空気は大きく変わります。何か分からないけれど、盛り上がっている雰囲気になる。すると、環境によって人も変わるんですね。こういったベースを作ることは、とても重要です。

丸茂氏/講演 photoその際に大切なのが、学校職場の再建三原則「時を守り、場を浄め、例を正す」(社団法人実践人の家「森信三の正解」HPより)。なぜ大切かというと、「こんなことをやっていても仕方がない」という気持があるとすれば、それはこの三つが足りないからです。奉仕活動は、心の荒みを除去してくれるのです。他人のために懸命になること、つまり、当たり前のことを徹底することが素地を作るのです。

続いて二つ目は、「人の特性を知る」ということ。そもそも人は「忘れる」「飽きる」「楽をしたがる」生き物です。忘れることは当たり前で、同じことをやっていると飽きる。しかし、できることなら楽がしたい――。やはり、繰り返し、変化をもたせながら、自らを律する環境を作ること、つまり職育が大切なのです。

“空気が立った”組織になるには

私どもでは、社内活動における「永遠のテーマ」は、「徹底・継続ができないこと」と、「部門間・個人間のバラツキが是正できないこと」だと考えています。このような問題を解決するためには、「必要性」の連鎖が重要です。人は「もっと●●してくれ」と口うるさく言われても、何も変りません。むしろ、言えば言うほど逆効果になります。大切なのは、自分たちの努力を自慢できる、面白いことに集中して取り組んでいたら、いつの間にか「コミュニケーション」「行動力」が増し、業績目標を達成していた、全社のチームワークが増していた、というような状態。そういったメカニズムを、創りだしていくべきではないでしょうか。

そのためには、今の組織を逆三角形に作り直す必要があります。皆さんの会社では、社員が「トップ側から言われたことしかやらない」「トップ側から自分で考えろと言われても、考えず、行動もしない」という状況にありませんか。また、現場からは「管理されていると感じるが、常に責任は現場が問われる」「工夫しろと言われるが、したくても権限がない」という声がありませんか。この状況を逆転していこうという発想です。つまり、逆三角形の組織を創っていくのです。自分のためだけでなく、人のためにがんばること。「自分のため」だけでは、なかなか「自分のレベル」を超えられませんが、「みんなのため」であれば、周りの好影響によって、自分のレベルを超えることができるのです。これこそ、職場環境作りです。

職場環境を作っていくために、今からすぐ変えられることがあります。「意識」から変えることは難しいので、「行動」「意識」「習慣」「成果」の順に変えていくのです。誰にでもできる簡単な行動から変えてみるといいでしょう。例えば、職場できちんと挨拶したり、良いことがあればハイタッチをしたりするなど。みんなが楽しむことができれば、その行動は継続していきます。すると“空気が立った”組織になる。「自分たちなら何でもできる」という組織になるのです。

本日お話した内容は、決して難しいことではありません。むしろ、既に知っていることが多かったのではないでしょうか。しかし、その中で実際に出来ていることとなると、いかがでしょうか。本日の講演をきっかけに、何か一つでも、実際の行動に移していただきたいと思っています。もし、それでも行動に変えていくのは難しいという方は、ぜひ、弊社の研修にご参加ください(笑)。本日は、どうもありがとうございました。

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