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トレンドキーパーソンに聞く2019/12/23

テクノロジーは、人間の仕事を奪う脅威ではなく
タスクを高度化し、生産性を高めてくれる武器である

慶應義塾大学 商学部 教授

山本 勲さん

山本勲HRテクノロジーAI基礎実践

目的意識と正しいリテラシーがテクノロジー活用を加速させる

テクノロジーやAIを積極的に活用していく上で、人事部門が留意すべき点について教えてください。

山本勲さん(慶應義塾大学 商学部 教授)

いざテクノロジーの導入を決めても、スムーズに進む企業もあれば、途中で頓挫してしまう企業もあります。活用が進まない理由のほとんどは、テクノロジーに対する理解不足です。AIを例にすると、「AI はなんでもできる」という幻想を抱く人もいます。

しかし、完成品として納品されるIT関連サービスとは異なり、AIは学習を通じて精度を高めていくもの。導入直後は、期待を下回ってしまうことも、実は多いのです。使えば使うほどデータが蓄積され、学習を重ねることで徐々に精度があがっていくわけですが、AIへの期待値が高すぎた場合、「意外と役に立たなかった」と早急に結論づけて、使用をやめてしまうことも多い。また、経営陣や人事部門がAIのメリットを理解していても、従業員が「AIなんて信用できない」と毛嫌いし、実際に活用されない場合もあります。

いずれにしても、AIやテクノロジーに対して正しいリテラシーを持つことが大切です。経営者や人事担当者はもちろんのこと、従業員に対しても「こういうものである」という理解を深めるための教育を行う必要があります。

AIやテクノロジーの正しいリテラシーを持つことが重要なわけですね。そのほか、テクノロジーを有効活用するうえで大事なスキルはありますか。

経営者や人事は技術者ではありませんから、高度な技術知識やプログラミングスキルを身につける必要はありません。ただ、テクノロジーを有効活用するにあたって、その仕組みは理解していたほうがいい。「このテクノロジーを使うとどんなことができるのか」「どれだけのデータ量が必要なのか」といったことを、知識がある人に聞いたり、本を読んだりして、勉強しておくといいと思います。

とにかくデータだけ集めて、あとは専門家にやってもらおうという意識では、あまりうまくいかないかもしれません。重要なのは、何のためにテクノロジーを使うのかという目的意識です。働き方改革にしても、ダイバーシティにしても、実現するための課題は何なのか。まず、課題を整理し、仮説を立てることが大切だと思います。その仮説が正しいのか、間違っているのかを検証するために専門家の知恵を借りるのであれば、テクノロジーやデータにふりまわされることもないでしょう。

HRテクノロジーやAI活用などがいわばトレンドワードとなり、導入すること自体が目的になってしまうケースも見受けられます。やって満足していたのでは意味がありません。実際にテクノロジーを活用したことで、施策が成功したのかどうか、結果に目を向け、仮説検証を繰り返す必要があります。結果が見えやすく検証もしやすいのが、データ活用の利点でもあります。

まずは簡単なものでいいので、自分たちで手を動かしてみましょう。仮説を持ってデータを確かめてみたり、複数のデータを組み合わせてグラフを作ってみたり。自社でやってみることで、足りない部分が見えてくるはずです。会社について深く知っている人が、テクノロジーのリテラシーを身につけ、ビジネスと結びつけていくことが、テクノロジー活用を成功させる近道ではないでしょうか。

山本勲さん(慶應義塾大学 商学部 教授)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。


山本勲HRテクノロジーAI基礎実践

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