AIがもたらすマッチングの進化 ~「外部人事データ」と「内部人事データ」の自然言語解析とは~
石山 洸さん(株式会社リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology 推進室 室長)
2016/09/30基礎、採用、石山洸、リクルートホールディングス、人工知能(AI)
AIと人事との関係
AI活用を進める際に、人事担当者には何が求められますか。
データはあくまでも「過去から現在」のものなので、現時点での前提に基づく結果は言えます。ただし、将来的に企業のビジネスドメインや戦略が変わった際に必要な「今後活躍するであろう人材像」を予期するものではありません。
これはAIより人間の方が得意な部分ですので、今後の環境変化を予測したうえで理想的な組織や人材を見立てていくことが、人事担当者の方に求められてくると思います。
またAIによって効率化できる業務をどんどんAIに任せることにより、人間にしかできない社員や候補者とのコミュニケーションに今より多くの時間を割くことができるようになります。
「人事戦略立案」「目的やビジョンの設定」「コミュニケーション」などをもっとじっくりやりたいとお考えの人事担当の方は多いかと思いますので、その実現のためにAIを積極活躍していただければと思います。
人事担当者としては、自身もAIやデータ解析について学ばなければいけないという意識もあるかと思います。人事はどこまでアナリティクスができればいいのでしょうか。
もちろん、個人的に興味を持って学んでいただくのは、いいことだと思います。ただし専門知識がなくても、より手軽にAIを利用できる日はそう遠くないと感じています。
■1.0「ハカセに相談しに行く」
企業におけるアナリティクスの発達を3段階に分けて考えてみます。まず、「データサイエンティスト1.0」はアナリティクスに詳しい“ハカセ”と呼ばれるような人が社内にいる状態。現場が分からないことがあったら、都度その人に相談しにいくようなイメージです。
まだ社内にアナリティクス人材が少なく、しかも属人的。そのハカセがアナリティクスに詳しいがゆえ「これは解析できること/できないこと」というように見切りをつけてしまうということもあることでしょう。
■2.0「ビッグデータ部」
この状態から進んで、ハカセ個人ではなく“ビッグデータ部”のように組織としてアナリティクスを推進していく状態が「データサイエンティスト2.0」。グローバルだけでなく国内でも、すでにこの段階に達している企業が増えてきています。
■3.0「みんなデータサイエンティスト」
そして、さらにアナリティクスのツールやインフラが発達・普及していくことで、データサイエンティストでない一般の社員も手軽にアナリティクスを利用できるのが「データサイエンティスト3.0」の状態です。今はここへの過渡期だと感じています。
“みんなデータサイエンティスト”というと、低レベル化しているように思われるかもしれませんが、実は組織としてはこちらの方が優れています。素人ならではの新鮮な視点、自由な発想でアナリティクスにトライしていくことで、新たな事実の発見につながっていくことが期待できるのではないでしょうか。
人事担当の方には、今後さらに普及していくAIをもっと気軽にさわっていただき、「人間ならではの強み」をさらに活かしていただければと思います。そして、そういう世の中をAI研究者として私もともに実現させていきたいです。