日立製作所の新卒採用における人財アナリティクス (前編)
中村 亮一さん(株式会社日立製作所 ICT事業統括本部 人事総務本部 人財企画部)
デジタルだけでなく、「しっくりくる」かどうか、アナログ部分を納得するまで話し合う
人財像についてはどのような分析結果が得られたのでしょうか
従業員に協力してもらった適性テスト結果を分析して明らかになったのは、ICT事業だけでも「優秀な人財」「とがった人財」というのは複数のパターンが存在するということでした。最終的には2×2の4象限に分けてタイプ分けができたのですが、この「タテ軸」「ヨコ軸」の切り口をどう設定するかがとても重要でした。
現状と今後の事業の方向性を念頭に置き、タテヨコ軸ごとに仮説を立てて、分析結果を当てはめて、自分たちの実感値と照らし合わせて「しっくりくる」かどうか、「腹落ち」するかどうかを大切にし、何度もディスカッションを繰り返しました。結果、とあるタテヨコ軸を元にして、プロットしたところ、納得のいく傾向が見られたので「実用に耐えうる」と判断し、実行することとした。
同時に、定量分析結果だけでなく、定性情報として社内のモデル人財(ハイパフォーマー)にインタビューを行いました。その結果から明らかになった「責任感」「俯瞰性」「勝負志向」などの定性情報を先ほどの定量分析結果と合わせ、タテヨコ軸の設定にも反映させています。
人財像が定量化・再定義できたことで、採用活動上のほかの部分にも活かされそうですね
そうですね。マクロとしての「人財データ分析結果」、ミクロとしての「ハイパフォーマーのデータ分析結果」などを結合することで、(1)人財ポートフォリオ設計、(2)人財要件設定、(3)選考設計に反映させることができました。
まず、(1)人財ポートフォリオです。これは従業員タイプを可視化し、タイプがどのように偏在しているのかポートフォリオとして表すことが可能となりました。結果、4象限に分けた際の従業員・タイプのバランスがわかるようになり、組織上の課題も明確なものとなりました。同時に、採用時において強化が必要な(2)人財要件のゾーンを明らかにすることができました。
そして、それぞれの人財要件ごとに適した(3)選考設計ができるようになり、面接における選考項目や質問項目の見直しにもつながりました。定性的な要素の強かった人財要件が、定量要素もあわせて見える化されたことで、人財ポートフォリオ設計→人財要件設計→選考設計を一貫性のあるものとして再設計することができたのです。