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コネクティングリーダーへの転換~未来をリードする新たなマネジャーの創造~

  • 高橋 克徳氏(株式会社ジェイフィール 代表取締役)
2015.12.24 掲載
株式会社ジェイフィール講演写真

複雑で変化の激しい現代において、今リーダー像は転機を迎えている。ジェイフィール社長であり、東京理科大学大学院教授でもある高橋克徳氏は、これからのマネジメントの機軸は個ではなく関係性(リレーションシップ)にあり、「自分、周囲の思いを引き出し、異なる視点や世界観を持ち込み、本質を探究して、未来に向けて動き出せる人、コネクティングリーダーが必要」という。本講演では、その詳細について、高橋氏が語った。

プロフィール
高橋 克徳氏( 株式会社ジェイフィール 代表取締役)
高橋 克徳 プロフィール写真

(たかはし かつのり)ジェイフィール 代表取締役。東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授。野村総合研究所、ワトソンワイアットを経て、2007年、ジェイフィールの設立に参画。著書に、「不機嫌な職場(講談社、共著)」「人がつながるマネジメント(中経出版)」「ワクワクする職場をつくる。(実業之日本社、共著)」など多数。


真逆の要求を受ける中堅人材に、人事は何を伝えるのか

ジェイフィールはエンターテインメント企業、アミューズの一員であり、組織・人材マネジメントの専門家集団だ。「仕事が面白い、職場が楽しい、会社が好きだ、と心から語れる大人を増やそう!」という思いで集まった専門家が、組織変革・人材育成の新手法を開発している。「職場にも感情がある」という概念を打ち出し、組織感情をベースにした組織改革手法もその一つだ。

講演は、高橋氏の「そろそろリーダー教育やリーダーそのもののあり方を根幹から変えなければならない」という提言から始まった。「若手が求めるリーダー像が変わってきました。彼らは今のマネジャーを見て、同じようになりたいとは思いません。その若手が求めるリーダー像を、今のうちからつくらないと、彼らから見放されてしまうのではないか」と。

高橋氏は、今の中堅人材、マネジャーが持つ不安について解説した。「マネジャーは育成というが、私は育成されたことがない」「活力ある職場づくりといっても、自分はそんな職場で働いたことがない」という現場の声を取り上げ、彼らの実体験、実感のなさが前向きな行動を阻んでいると指摘した。ただ、根幹にはもっと大きな問題があるという。

「私は、ここ20年の間に、日本の企業で働く人は大事な三つの原動力を失ったのではないかと考えています。一つは働く喜び。二つ目は仲間の大切さ。三つ目は思い・志です。個々が閉じこもる働き方が増え、お互いが見えなくなり、そこで対話や議論が生まれなくなったことが原因です」

さらに高橋氏は、就職氷河期入社世代がマネジャー層になり、真逆の要求を突きつけられ苦しんでいるという。「彼らは、自力で育て、論理的に考えろ、目の前の成果を拡大せよと言われ続けて育ってきました。ところがマネジャーになると、部下を育てろ、彼らの気持ちを考えろ、イノベーションを起こせと言われるようになります。しかし、自分たちにはそんな経験がない。だからイメージができない、やり方もわからない。自力で成果を出せない若手や、やる気の見えないベテラン社員にいら立つ。こんな状態に陥っている人たちが多くいるのです」

「今を問い直す人材」が社内に増えれば、会社は変わる

こうした状況の中で、世の中は大きく動き出している。高橋氏はある一つの発明品を紹介しながら、小さなイノベーションの重要性を指摘した。

「アフリカの子どもたちに、水を転がして運べる車輪型タンクを作った人たちがいます。技術的には大したものではないかもしれませんが、これで一気に大量の水を運べるようになり、子どもたちの生活が一変します。これが本来のイノベーションというものです」

ところが、米国の経営学者クレイトン・クリステンセン氏が警鐘を鳴らしているように、大企業ではこうした発想でイノベーションを起こせなくなっているという。大きなニーズ、顧客に応えなければならないという強い意識が、小さな革新、未来につながる革新への取り組みを阻害しているのだ。

「しかも、昔はベンチャーの後追いもできましたが、今はインターネットを通じて一気に世の中に広がっていく時代です。より本質的なニーズを見つけ、そこにいち早く踏み込んでいく力がなければ、イノベーションを起こし、発展させることはできません」

さらに高橋氏は、そのための大事な発想は、意味の探求と形にするプロセスを繰り返すことだと言う。「ダイソンの羽のない扇風機などはその典型ですが、扇風機というものの本質、原点を問い直し、多くの分野の専門家が知恵を出し、プロトタイプを何度もつくりながら、新たなコンセプトとデザインを具現化していきます」

さらに高橋氏は、こうした意味を問い直し、本質的な機能を明確にしていけば、それを実現していける方法が世の中に広まってきたと指摘する。

「世の中にあったらいいと思えるものを提案し、開発に出資したいという人から一定のお金が集まれば、実際には外部の力を借りて、製品化することが可能になります。こうした、自分の強い思いとそこに共感する人たちが結びつけば、数が少なくとも革新的な商品を世に送り出すことができる時代になったのです」

講演写真

「組織力=個人力×つながり力」が新リーダーを育てる

こうした新たなイノベーションを起こしていく鍵になるのが、リレーションシップという概念だと言う。それは、リーダーが方向づけし、メンバーを導くという縦のつながりではなく、個々人の思いを実現するためにお互いが支援するという横の関係性そのものが組織を動かす原動力になるという考え方だ。

「こうした関係を築き、相互支援、連携が生まれる状況をつくっていく人たちを、私はコネクティングリーダーと呼んでいます。自分、周囲の思いを引き出し、異なる視点や世界観を持ち込み、本質を探究し、未来に向けて動き出せる人たちです。現場で実感し、思いを持つ人材が連携して、情報を集め、判断する。そして組織の壁を越えた大きな動きに変えていく。人に連鎖反応を起こすリーダーです」

彼らには共通する五つの力があると高橋氏は語る。一つ目は「自分とつながる力」。自分が何をやりたいかがよくわかっている。二つ目は「他者とつながる力」。連鎖を生む。三つ目は「世界とつながる力」。多様性を吸収しようとする。四つ目は「幸せとつながる力」。何が幸せなのかを追求。最後は「未来とつながる力」。輪を広げ動き出す力だ。

では、いかにそのようなリーダーを社内で生み出すのか。高橋氏はそのための手法を紹介した。一つ目は自分とつながる力。キーワードは、内省。「自身の経験を振り返り、そこに意味を見出す。その中で自分を客観視し、自分の中にある思いに気付く。私たちもそのようなセッションを、週1回75分で30週続けるプログラムとして行っています。リフレクション・ラウンドテーブルというものですが、この内省を仲間たちと繰り返す中で、自分の行動と周囲の感情を、客観視できるようになります」

二つ目は他者とつながる力。キーワードは共感。今、私たちは相手の本当の気持ちがわからない。そこで他者の感情を知り、相手の立場で考える。他者の中に同じ思いを見る。「私たちは、職場に広がる感情を可視化する『組織感情診断』を多くの企業で実施してきました。そこから今、組織感情がイキイキ、あたたか、ギスギス、冷え冷えの、どのポジションにあるかを確認するのです。アンケート結果がよくないと、発表時には最初沈黙があります。その様子を見て何人かは『なんだ、皆もそう思っていたのか』と口にする。中には『こんなにひどくないんじゃないか』と言う人も出ます。人を不安にさせている一番の原因は、周囲の人の感情が見えてないことなのです。互いの感情が見え、共感が生まれると、他者とも向き合える関係に変わっていきます」

三つ目は世界とつながる力。キーワードは受容だ。異なる価値観を知る。固定概念を打ち破る。互いの根幹を認め合う。「自分たちが触れたことのない世界、人たちと向き合ってみる。彼らと対話し、同じ経験をする中で、互いの違いと根幹にある思いを知る。互いを尊重し、受容し、向き合う。これが、自分たちの周囲を覆っている壁を壊していくのです」

四つ目は幸せとつながる力。キーワードは探求だ。目的や意味を問い直し、究極の幸せを問う。自分たちの存在意義を考える。「自分の仕事も、先につないでいけば、必ず誰かを幸せにしている。自分たちの商品やサービスは誰をどう幸せにしているのか。自分が描き出したい幸せな世界とはなにか。こんな議論を通じて、誰を幸せにしたいのかを探究していきます」

五つ目は未来とつながる力。キーワードは思い。個々人の思いを、みんなの思いに変える。究極の未来を描く。未来に向けて踏み出す。「ジェイフィールが行う研修に、究極の思いを形にするというものがあります。宿泊研修を繰り返しながら、自分たちが本気でつくりたい未来を描いていきます。最初は目の前の業務目線、収益志向が邪魔をして、自らブレーキをかけていた人たちが、最後には具体的なイメージをワクワク語りだす。中にはそのあと事業部や研究所に提案しに行くチームが出てくる。実際に未来に向けて、踏み出していくのです」

今やるべきは、10年先を見据えたリーダー育成

高橋氏は、あらためてリーダー教育が転換点に来ていることを指摘する。一部の優秀な戦略をつくるリーダー、それを現場で管理し、推し進めるマネジャー。長年、こうした人たちをどう育成するかが、リーダー教育、マネジャー教育の中心だった。確かに、組織の上位者に情報が集まり、上位者が適切な意思決定ができれば、あとは組織を効率的に動かせばよい。こうした考え方と仕組みが有効に機能する組織であれば、従来型のリーダーやマネジャーを今後も育てていけばよい。

ところが、情報は多様になり、現場と世界を瞬時に駆け巡る。上位者に情報を集中して、そこで判断してもらおうとしたら間に合わない。現場の判断力が重要になる。でも、それはリスクも高める。だから一人で抱え込んで、一人の知恵だけで行動することも難しい。こういう状況だからこそ、互いの成果のために、知恵を出し合い、連動し、動いていく。そうした行動原理をつくり出せる人が求められているのではないか。自分、他者、世界、幸せ、未来とつなぐリーダー。こういったつながる力を持つ新たなリーダーを、育成していく必要があるのではないか。

最後に、高橋氏はアメリカの心理学者マズローの「自己超越」という言葉を引用し熱弁した。「マズローは晩年、自己実現欲求の次のレベルとして、自己超越欲求があると想定した。自己を超えて純粋に目的の達成のみを求め、自分が属するコミュニティーの発展を望む段階が自己超越段階です。自分の範囲を超え、仲間の幸せが欲求と一致するような段階。仲間の幸せが自分の欲求と一致するような段階が自己超越です」

この言葉に未来のリーダー、コネクティングリーダーの意義を込め、講演は幕を閉じた。

講演写真
本講演企業

ジェイフィールは、アミューズグループという強みを活かし、人の感情に働きかけ、感情が連鎖し、成長や変革のエネルギーになる、そんな人材育成、組織変革を支援しています。リフレクション・ラウンドテーブルは2012年HRアワード最優秀賞を受賞。「仕事が面白い、職場が楽しい、会社が好きだ」と本気で思える人たちが増え、知恵や想いが連鎖し、社会全体に波及する。そんな活動の旗振り役になりたいと思います。

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