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チェックリストで現状分析!
人事戦略に「企業年金・退職金」を活かすポイントとは?

  • 八丁 宏志氏(株式会社IICパートナーズ 取締役)
2015.12.24 掲載
株式会社IICパートナーズ講演写真

「企業年金・退職金」は人事戦略として有効に活用されていないどころか、給与や賞与が「生きた金」であるのに対して、「死に金」というイメージで捉えられていることが多い。IICパートナーズ取締役の八丁宏志氏は「そのような現状は惜しむべきであり、ここは『未踏の領域』である」と語る。本講演では、アクチュアリー、年金数理人、会計士、システムの専門家などが集まって、多様なシナジーを生み出すプロ集団として活動している同社のノウハウと事例が紹介された。

プロフィール
八丁 宏志氏( 株式会社IICパートナーズ 取締役)
八丁 宏志 プロフィール写真

(はっちょう こうじ)ソフトウェアハウスにて経験を積みIICパートナーズに入社。退職給付債務計算ソフト「PBO MASTER」とその後継である「DBO MASTER」の開発を進めるとともに、退職給付会計コンサルティングにも従事。お客さまの退職給付会計に関する疑問や不安の解消に貢献している。


戦略的に機能させるため、共通認識を持つ

IICパートナーズは、年金コンサルティングファームとして年金や退職金の資産管理、制度設計などを行う専門家集団だ。退職金制度の設計・導入、退職給付債務の計算など、退職金制度に関連して企業が対応を必要とする分野について幅広くサポートしている。今回登壇した八丁氏はソフトの開発責任者であるほか、社内では経営企画部長を務めながら、幅広い顧客と意見交換を行っている。その中で八丁氏は、「企業年金・退職金」活用について考える大きな原動力となった言葉と出会ったという。

「それは『退職金って死に金だよね』という一言でした。今後の活躍への期待を込めて従業員に支払う給与や賞与と異なり、退職金は辞めていく方に対して支払うのでモチベーション向上にはならない、というのです。これは私にとってショッキングでした」

この課題を解決させたい一心で活動してきたという八丁氏。まず着目したのは、「企業年金・退職金」制度に対する立場による考え方の違いだったという。

「経営者は『コストに見合ったメリットがないので縮小したい。とはいえ、昔からの制度だけに止められない』と考えています。人事担当者は『課題はあるが、難解な分野なのでコストや労力を考えると手をつける必要はない。経営に役立っているかどうかは意識していない』というスタンス。従業員には『そもそもどんな制度があるのかも、いくらもらえて、どうすれば増えるのかも知らない』という方が多いはずです。さらに、退職金の位置づけは、経営者にとっては『勤続に対しての功績報奨』、従業員にとっては『労働の対価として賃金の後払い』。双方の考えが食い違っています。これでは退職金は活かされません」

なぜ、こうした事態となっているのか。八丁氏は、そもそも双方が「企業年金・退職金」の目的を持とうとする意識がないと言う。「何のための退職金なのか」「何のために活用されるべきなのか」を一致させるところから始めれば、運用効果やメリットは高められる。

「定年の退職金は大手企業で2000万円前後、中小企業で1000万円位、一人あたりの年間コストは40~50万円と言われています。大きなコストを負担しているのに活用されていないのは、もったいない話です。今後の人事戦略に活かすべきです」

変化する「企業年金・退職金」の目的

退職金の起源は江戸時代の「のれん分け」にあると言われ、長年の奉公に対する報奨の意味合いが強かった。明治中期に入ると、給与の数%が強制貯蓄されるという形で、労働需要拡大を背景に定着率を上げる意図が高まった。

「昭和の戦後復興期に、現在の退職金制度の礎が完成しました。設置率は戦前21%でしたが、戦後の1951年には82%、1975年には91%と、長期勤続による従業員の技能レベル向上や従業員の囲い込みを目的として伸びていきました。成果が退職金に加味されるといったインセンティブ効果もありました」

しかし、2013年には76%にまで減少。多くの企業が採用したために制度の目的が薄れてしまったことと、バブルの崩壊が理由だ。経済が停滞して企業年金の利差損も膨れ、退職金のコスト負担に企業が耐えられなくなってしまったのだ。

「昨今、企業が退職金を設けている目的は何でしょうか。2009年度の調査によると、『従業員の老後の生活保障』との回答がトップでしたが、他に多かったのは『従業員の士気を高める』『優秀な人材を採用する』『転職を防ぐ』でした。ここで注目すべきは、これらの目的と行動(活用)が合っているか、ということです。例えば、優秀な人材を採用するために、採用の場面で退職金の有無は伝えたとしても、制度の詳細までは言及していないはず。これは、優秀な人材の採用に退職金制度が寄与していないことを意味します」

なぜ、退職金が目的に合わせて活用されていないのか。八丁氏は「目的意識がさらに消滅しつつあるからではないか」と語る。つまり、社会環境の変化に退職金制度がついていけず、取り残されているというのだ。

「社会環境の変化とは、終身雇用制の崩壊、雇用の流動化、能力・成果主義などです。退職給付会計の導入による企業のコスト負担増大もそうです。これらも含めて、今後の社会環境の変化を見据えながら、それにマッチした目的を持つ制度へと変化させ、戦略的に行動(活用)していくべきだと考えます」

講演写真

現代に求められる戦略的な退職金制度

現在の高齢化比率は27%だが、2060年になると約40%になるというデータもある。高齢者1人に対する現役世代の人数は、1975年は9人だったが、現在は約2人、2060年には1人になると言われる。将来、公的年金の給付金額が減り、支給開始が先延ばしにされることは明らかだ。

「弊社で実施したアンケートでも、老後の生活資金についておよそ9割の方が不安に思っているという結果が出ています。一方、労働市場では人手不足が続いています。2015年9月の有効求人倍率は1.24倍と、23年ぶりの高水準でした。非正規雇用が話題になっていますが、大手の82.1%は正社員を雇用したいという意向です。こういった社会環境の変化の中、従業員にとっては老後不安から、企業にとっては人事戦略から、『企業年金・退職金』が一層重要な意味を持つようになると言えます」

では、企業は「企業年金・退職金」をどう見直して戦略的に活用すればいいのか。八丁氏はこう語る。

「第一歩として、経営者と従業員の双方が退職金の目的、役割、意味を理解し、共有している状態にすることが重要です。『退職金はこういう意味を持っています』『辞める時にこのように給付します』という情報をきちんと与えるべきです。その際に重要なのは、単に整頓して伝えるのではなく、〈従業員に対して求める姿〉と〈退職金が持つメッセージ〉を重ね合わせて伝えるということです。採用の際に『どういう人材が欲しい』『こんなふうに成長していって欲しい』というメッセージを各企業は持っているものですが、同様に、辞める際を想定したメッセージを考えておく必要があります。例えば、『定年まで働いて欲しい』のか、『40代ぐらいで他社に巣立つことを奨励する』のか、『勤続年数よりもポジションでの貢献度に報いる』のか、といった企業としてのスタンスを示すのです」

適切なメッセージを定めた上で、それと整合性のある「企業年金・退職金」制度を設計すれば、従業員の不安払拭やモチベーション向上にも結びつけられる。そうすることにより、人事戦略において「企業年金・退職金」を活かせるようになるわけだ。

「言い換えれば、給与や賞与は短期・中期的に、『企業年金・退職金』は長期的にモチベーション向上を図る、という役割分担になります。従業員が辞める時に初めて退職金を意識するのではなく、現役時代からそれを意識して働けるような制度として浸透させるのです」

講演写真

制度体系によるメッセージの違い

退職金に込めるメッセージを定めた後に制度を設計する、という流れであるが、基本的な制度体系そのものの特徴から、メッセージの大枠を考えることもできると八丁氏は説明する。

「〈退職金制度、確定給付企業年金〉は、退職するまで会社が責任をもって原資を運用する制度です。約束した退職金は会社が責任を持って支払うというリスクを負うため、長期に貢献してもらいたいというメッセージを示しています。また、例えば、フランチャイズ展開している企業の場合、45歳位までのフランチャイズ出店の実現を奨励するメッセージを込めて、45歳で退職金がピークになる制度設計も可能です。〈終身年金〉は、会社が一生涯年金を払い続ける制度です。今は技術を磨くことに専念して欲しいというメッセージが込められていて、熟練の技を必要とするようなメーカーが主に取り入れています。〈DC(401k)〉は、毎月決まった掛け金を従業員の残高帳に入れて、それを従業員自らが運用するものです。60歳以降でなければ引き出せないために〈終身年金〉と同じようなメッセージを持ちます。ただし、在職の縛り付けがなく、転職先にもこの制度が導入されている場合はそのまま持ち込めるので、転職による減額がない点に特徴があります。そのため、中途採用の多い会社にはメリットが高いと言えます」

ここで八丁氏は、退職金の制度設計の事例を紹介した。新しい人事制度導入に沿った制度化、複雑になっていた制度のシンプル化を、主な課題としていた企業のケースだ。

「まず、新しい人事制度に関連させて『貢献度に報いたい』というメッセージの表れとして、勤続年数に比例したウェイトを下げ、業績評価を高める仕組みにしました。また、資本関係や経営環境の変化による従業員の不安を払拭するため、長期的勤続を望むメッセージを込めて〈DC(401k)〉を廃止しました。この企業のように、退職金制度について検討する際には、長期的な観点で考えることが重要です。即効性はありませんが、確実に数十年後の会社の状態を決めていくことになります。だからこそ、慎重に自社の現状を把握しておく努力を怠ってはなりません」

まずは、退職金規程や企業年金規約に目を通すこと。自分の周囲から徐々に制度の周知度を確認してみること。年間の給付コストと人事戦略への貢献度を把握すること。そこからチェックを始めて欲しいと八丁氏はアドバイスする。

「大切な『企業年金・退職金』を、負の遺産ではなく、せめて眠れる資産へ。できれば価値ある資産へと高めて、企業にとっても従業員にとっても意義のある存在にしていきましょう」

本講演企業

公認会計士と年金数理人が共同で設立した、日本初の中立系年金コンサルティングファーム。年金数理人、アクチュアリー会正会員、公認会計士、証券アナリストの有資格者をはじめとする専門家が、「コミュニケーションを重視した、きめ細やかなサービスの提供」を掲げ、退職給付債務(DBO)計算、退職金・年金制度設計コンサルティング、企業年金資産運用コンサルティング等のサービスを展開している。

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