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~成功・失敗事例から考える~「タレントマネジメントシステム」は本当に必要なのか?

  • 大島 由起子氏(インフォテクノスコンサルティング株式会社 セールス・マーケティング事業部長)
2015.12.24 掲載
インフォテクノスコンサルティング株式会社講演写真

最近、導入事例が増えているタレントマネジメントシステム。しかし、人材・タレントマネジメントシステムの製造・販売・構築を支援しているインフォテクノスコンサルティングの大島由起子氏は、ここ半年ほど、「導入したが使えない」という声をよく聞くようになったという。そうした失敗例をひもといてみると、「タレントマネジメントシステム」という言葉にとらわれすぎてしまったことによって、本来自社に必要なものを見失っていたケースが少なくないそうだ。本講演では、なぜシステム選択の失敗が起きるのかを整理し、システム導入成功のヒントを語った。

プロフィール
大島 由起子氏( インフォテクノスコンサルティング株式会社 セールス・マーケティング事業部長)
大島 由起子 プロフィール写真

(おおしま ゆきこ)株式会社リクルート、Hewlett-Packard Australia LtdのAsia Pacific Contract Centreを経て、2004年より現職。企業の人材マネジメントにおけるIT活用推進の支援を行う。著書:『破壊と創造の人事』(楠田祐・共著) ディスカヴァー・トゥエンティワン


失敗に共通する「タレントマネジメントシステム」という言葉の呪縛

インフォテクノスコンサルティングは2000年に設立され、独立系の開発会社としてさまざまな業務システムを、ユーザーと共に構築してきた実績を持つ。生産工程や在庫・営業管理といったエリアと同じレベルで、人事の世界でもITを活用できる仕組みを提供したいと、2003年にRosic人材マネジメントシステムを世に送り出した。それから12年、大島氏はこの講演で、あえて「タレントマネジメントシステムは本当に必要なのか」というテーマを掲げた。

「日本では2011年くらいから、タレントマネジメントシステムの導入が進むようになりました。つまり、今、実際にシステムを3~4年使ってみたユーザーが出てきているということ。そうした企業から、『導入したが使われていない』『データを見るだけで、活用というレベルにいっていない』という声よく聞くようになりました」

大島氏は、そうした失敗から、タレントマネジメントという言葉の呪縛にかかっている姿がみえてきたという。

「多くの企業がタレントマネジメントシステム導入を決めた理由は、『後継者選抜・育成計画の立案・実行』『グローバル化に伴った海外法人マネジメントの強化』『目標管理・パフォーマンス管理の質の向上』といった課題解決のためです。こうしたことは、最近では『タレントマネジメント』とまとめられていることが多い。そのため、いわゆる『タレントマネジメントシステム』が、それらを解決するための手段だろう、と疑いなく考えてしまった、というケースが多い印象です。ここで、冷静になって考えていただきたいのは、自社の課題を解決するために、今必要な武器は何なのか、ということです。『タレントマネジメントシステム』という言葉に飛びついてしまう前に、ぜひ、一歩立ち止まっていただきたい」

「タレントマネジメント」という言葉が一般化する以前から一貫して、人事の戦略的な役割は、短期1年・中期3~4年・長期5年~10年のビジネス目標を達成するために人材・組織の側面で支援することに変わりはない。システム導入は、あくまでその実現・成功のための手段なのである。ただ最近は、その実現のために「タレントマネジメント」という考え方が有効であると考えられている、ということである。

「そもそも自社では、ビジネスを成功させていくために人材をどうマネジメントしていったらいいのか。あるべき姿と現状のギャップは、どこにどれくらいあるのか。それを埋めていくとしたら、今、何が足りないのか。何があれば、成功に導けるのか。そういう発想をすることが重要だと思います。その文脈の中で、システムが出てくるということです。人材・タレントマネジメントの世界で、偏った属人性を排し、PDCAを回して、成功事例の再現性を高め、失敗事例にはきちんと解決策を見つけていくためには、必ずエビデンス・データが必要であり、それらを思考に合わせて活用できるシステムが不可欠となります。ただし、その時に必要なのは、必ずしも、私たちの製品を含めて、『タレントマネジメントシステム』と名前の付いているシステムではないかもしれない。『タレントマネジメントシステム』を探すのではなく、『自社の人材・タレントマネジメントを支援できるシステム』を選ぶ、と発想することが重要なのです」

講演写真

「タレントマネジメント」とパッケージソリューションは相性が悪い?

ではそもそも、システムでサポートするという観点からみると「タレントマネジメント」はどういう性質のものなのか。そこには大きく二つ要素があると、大島氏は語る。

「一つは、タレントマネジメントが独自性と変化を伴う戦略分野であるということです。例えば、我々は現在約110社のお客様をサポートしていますが、システムがまったく同じ構成になっている会社はありません。似ている部分はあっても、それぞれに必ず独自性がある。また、ビジネスは市場を相手にしているわけですから、市場が変化したら、それに合わせていかなくてならない。つまり、変化が前提だということです。そして二つ目は、多くの企業にとってタレントマネジメントは『これから』のものであるということ。各社とも仮説・検証・実行を繰り返しながら、答えを探しています。ほとんどの企業が走りながら考えている状態、まだまだ確定した世界ではないということです」

そうした性質をもつ人材・タレントマネジメントを支援するシステムは、どのようなものであるべきなのか。「パッケージ製品の本質は、ベストプラクティスの集合体です。多くの会社やベンダーの経験や知見から、『これが一般的にみて良いものです』というものです。つまり、独自性や変化を含みこんだ戦略の分野とは、本質的には相性がよくないのです。もちろん、ベンダーである我々は、パッケージというフォーマットを使ってどうやって戦略を支援するのか、日々考え、努力をしていますが、ユーザーとしては、この本質を理解したうえで、賢くシステム選びをすることが求められます。ここを誤ると、導入したのはいいけれど、結局うまく使えなかった、という失敗に陥ることになるでしょう」

では、タレントマネジメントを支援するシステムが行うべきこととは何か。大島氏は、現段階では、「頭によい汗をかける状態」をつくりだすことが求められていると語る。

「頭でよい汗をかくためには、二つのことを実現する必要があります。一つは「体に汗をかく」時間を極力減らすこと。多くの人事の方々が、システムがあるにもかかわらず、エクセル資料作成の作業に追われています。つまり、『体に汗をかく』時間が長い。まずここにITを使って、多くの手作業を極力排除することです。これによって、頭を使う時間を作り出します。そのうえで、頭の使い方の質を上げるために必要な情報を提供すること。これまで手作業ではできなかったような、範囲や軸を変えた検索・分析、仮説の検証も、適切なシステムがあれば簡単に行うことができます。こうした両輪が構築できなければ、人材・タレントマネジメントのためのシステム導入の実質の効果は、低いものになってしまうでしょう」

講演写真

各種機能の大前提、人材データの一元化のハードルは低くない

ここで大島氏は、システムの名前と本来解決したいことのギャップについて、具体例を挙げて説明した。「人事のシステム化は全社員に対するメリットが見えやすいMBO(目標管理)のシステム化から始めるのがいいのではないか、というご相談が多くあります。決裁者から人事が楽になるためだけのシステムではダメだ、と言われるからです。しかし、お金をかけてまで目標管理をシステム化する理由は、本来、目標管理の質を上げるためのはずです。では、『質の高い目標管理』とは何か。一つは会社の目標から個人の目標まで連鎖しているかどうか。そして、二つ目は育成の観点が含まれているかどうかでしょう。目標は個々人にとって適切なストレッチがあるものを立てなければ育成の効果はありません。こうした目標を立て、達成を支援するためには、どのようなシステムが必要かを考えてみてください。個人画面があって、ワークフローが流れるというだけの、狭義の「目標管理システム」だけでは不十分なはずなのです」

大島氏は、「タレントマネジメントシステム」活用の大前提である、人材データの一元化の難しさについても語った。「日本企業の人事は、個別・非同期に起きる、さまざまな種類の履歴データを管理することが求められています。最近では、今まで人事が管理してこなかったような分野のデータも求められます。例えば、現場でのプロジェクトや実績や、本人や上司のコメントなどです。さらには、そんな複雑な情報を、『基準日』で切り取って把握しなくてはなりません。人材・タレントマネジメントに求められるデータの一元化は、思っているより簡単なことではありません。しかし、新鮮で正確なデータがきちっと一元化されていなければ、どんなに素晴らしい機能があっても宝の持ち腐れなのです」

最近のシステムのトレンドとして、特定のフィールドにおいては自分たちで自由に項目を設定できるものが多いという。しかし、そこでしっかりとしたデータベースの設計を行うことができる仕組みやサポートがなければ、活用につながる一元化が崩れてしまう、という落とし穴があるから、注意が必要だという。

「一定以上の規模の企業であれば、タレントマネジメントを戦略的に行っていくためには必ずシステムが必要になります。ぜひ、本当の意味で自社の武器となるシステムの導入をしていただきたいと思います」と締め括った。

本講演企業

人事の分野でもシステムを活用して欲しいという思いから、Rosic人材マネジメントシステムシリーズの開発・導入支援を行っています。 日本企業の「人材・タレントマネジメント」をITで支援するためにはどのようなシステムが必要なのか。日々お客様の声を聞きながら、「人材マネジメントに関わる全ての人が経営戦略の実現に貢献すること」を目指し、システムを成長させています。

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