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HRカンファレンストップ > イベントレポート一覧 > 日本の人事部「HRカンファレンス2015-秋-」  > 特別講演 [A-5] 360度フィードバックによるマネジメント変革 ~成功と失敗を分け…

360度フィードバックによるマネジメント変革
~成功と失敗を分ける鍵とは~

  • 藤原 誠司氏(株式会社SDIコンサルティング 代表取締役)
  • 米田 靖之氏(日本たばこ産業株式会社 執行役員 たばこ事業本部R&D責任者)
  • 荻野 敏成氏(労務行政研究所 『労政時報』編集長)
2015.12.24 掲載
株式会社SDIコンサルティング講演写真

上司、同僚、部下などさまざまな角度から対象者をとらえる「360度フィードバック」は、マネジメント改革を支援し、組織強化を実現する手法として注目されている。では、具体的にどのように活用すれば、成功へとつなげられるのか。この手法を活用している日本たばこ産業株式会社の執行役員・たばこ事業本部R&D責任者である米田靖之氏、人事領域全般に詳しい労務行政研究所の『労政時報』編集長・荻野敏成氏を迎え、「360度フィードバック」に専門特化している株式会社SDIコンサルティング代表取締役・藤原誠司氏が、成果を上げるために注意すべきポイントを解説した。

プロフィール
藤原 誠司氏( 株式会社SDIコンサルティング 代表取締役)
藤原 誠司 プロフィール写真

(ふじわら せいじ)1989年リクルート入社。その後、HRR(現:リクルートマネジメントソリューションズ)にて360度フィードバックの拡販リーダー、コンサルタントとして様々な人事課題解決を推進。07年に360度フィードバックに特化したSDIコンサルティングを設立。現在年間約12,000名の対象者に提供。累積250社以上に導入支援。


米田 靖之氏( 日本たばこ産業株式会社 執行役員 たばこ事業本部R&D責任者)
米田 靖之 プロフィール写真

(よねだ やすゆき)1982年JT入社。たばこ工場、人事部採用担当等を経て、1992年の英国たばこ会社買収プロジェクトに従事。1999年よりRJRI買収後の統合作業、改革推進本部、Gallaher買収検討プロジェクト等に従事。2005年より人事部長、製品開発部長、たばこ中央研究所長を経て、2012年より現職。


荻野 敏成氏( 労務行政研究所 『労政時報』編集長)
荻野 敏成 プロフィール写真

(おぎの としなり)1990年労務行政研究所入社。各種編集業務を担当するほか、メールマガジン、労政時報クラブの立ち上げに従事。2006年副編集長、2010年jinjour編集長を経て、2011年7月より現職。『労政時報』の企画進行をはじめ、WEB労政時報、書籍等の編集業務全般を統括する。


6回(3年)継続して実施を続けている理由

SDIコンサルティングは、「360度フィードバック」の人材育成や組織活性化への活用支援に専門特化した会社である。各社の目的や課題に応じてオーダーメイドすることに特徴があり、主に管理職クラスを対象として年間1万2000名以上、大手企業を中心に250社以上という豊富な実績を持っている。その中の1社として、これまで6回(3年)継続して「360度フィードバック」を実施してきたという日本たばこ産業の米田靖之氏が、これまでの経過について紹介した。

「R&Dグループでは目指すべき姿として〈日本一仕事が面白い会社〉を掲げ、その実現に向けて四つのStepを設定しました。360度フィードバックを導入したのは、この四つのStepを推進するための支援ツールとして使えるのではないかと思ったからです。Step1として『上司は、チームの方針について、自分の思いを自分の言葉で、部下が共感するまで語る』ことに取り組むようマネジメント(管理職)に伝えました。この取り組みの実践度合いを確認するため『360度フィードバック』の設問とリンクさせました。当初は定期的な実施までは考えていなかったのですが、四つのStepの進捗度を確認しているうちに、結果的に半年ごと計6回の実施を重ねました」

なお、Step1に続くStep2は「上司は部下に仕事を任せ、部下は自ら考え自ら行動するようになる」、Step3は「チーム内で面白いことを共有する雑談が行われ、チーム内のCollaborationが進む」、Step4は「R&Dグループ内は他部署であっても2割以上の人と気楽に話せる関係となり、部署を超えたCollaborationが進む」と、段階的に到達レベルを設定している。これらのStepの進捗に合わせて「360度フィードバック」の設問を実施のたびに修正変更(カスタマイズ)しているという。

「SDIコンサルティングさんと相談し、設問を設計しています。設問内容は、対象者の状態、チームの状態、そして回答者である部下自身の状態という異なる視点で構成しており、どの部分に課題があるかがとらえられる仕掛けです。回答値のギャップが大きいところに着目することで、見えてくるものがあります」

例えば、Step2の「任せる」を確認するための設問は、(1)「〈上司〉は私が担当する業務について、何をするかを自分で考え行動することを奨励している」、(2)「私の〈チーム〉は、何をするかを自分で考えてよいという雰囲気になっている」、(3)「〈私(部下)〉は私の担当業務において何をするか、自分で考えて行動している」とした。この場合、最初の質問(1)だけ回答値が高いと、上司の言葉が伝わっていないという課題が見えてくるそうだ。

「結果分析では、同一組織内のチームの相対比較などを行います。組織が違うと仕事内容も違うので比較は困難ですが、同一組織内で比較すると特徴が把握しやすくなります。また、結果をソートして眺めてみたり、平均値プラスマイナス標準偏差で確認したりすることで、仮説がひらめくこともあります。効果としては、“マネジメント状況の可視化によって課題を明確にできること”“具体的な発見が改善策のヒントになること”が挙げられます。これまで6回実施していますが、いまだに新たな発見があります。設問の焦点を個人からチームに変えただけでも、人事異動に活かせる大きな収穫がありました」

講演写真

管理職に気づきを与え、成長を促す効果

次に、労務行政研究所の荻野敏成氏が、『労政時報』で紹介してきた事例を基に、「360度フィードバック」を総合的に解説した。

「『360度フィードバック』は、複数の視点から自分の行動を測ってもらうことで自分と周囲の見方のギャップを把握できる仕組みです。それを基に、人材育成やマネジメント改革のための行動改善につなげていくところに本質があります。多面観察、多面評価、行動観察、360度評価など、さまざまな呼称がありますが、『360度フィードバック』の歴史は1970年に始まります。普及し始めたのは、成果主義が増えてきた90年代後半で、評価の客観性や公平性を担保しようとの意味合いからです」

「360度フィードバック」導入状況は、日本経済新聞社が発表した「人を活かす会社」調査によると、上場企業かつ連結従業員1000人以上の企業とそれらに準ずる企業では、2015年の導入率は4割を超えており、大手企業の導入率の高さが分かる。活用目的としては、人材育成、本人へのフィードバック、人材配置が多く、人事考課に反映させるケースは少ない。

「360度フィードバックのメリットとして、『複数の回答情報により客観性・納得性が高い』『自分と他者の認識ギャップによる気づきを促せる』『会社が期待する行動を効果的に伝達できる』『従業員から経営・人事部へ現場の情報を伝達できる』『現場のマネジメントを支援する』『人材と組織のモニタリングツールとなる』などがあります。また、『管理職に上下左右から見られているという緊張感を持たせられる』点も見逃せません。管理職に就くと、人から指摘される機会が少なくなりがちですので、周囲にどう見られているかという緊張感は組織の中で健全に作用すると思います」

課題の一つとして挙げられるのは、「対象者の心理的抵抗感が生じる」こと。対象者が部下に評価されるという意識を持つ点は否定できない。また、結果に対して「こんなはずではない」「みんな分かってない」という自己正当化は、成長の種を摘んでしまうおそれがある。そういった状況も考えた上で、対象者に対するケア(理解のさせ方)が重要になる。

「ケアを含めた結果返却に関しては、研修とセットにして結果を自己分析させたり、上司と面談して行動計画に落とし込んだりするなど、導入効果を高める工夫をしている企業が増えています。例えば、〈ジョハリの窓〉で言うところの〈あなたと私がお互いに知っている部分〉をどんどん広げ、活用していくことなどもあるでしょう。一番大事なことは、本人の気づきを自己成長へとつなげていくことです」

講演写真

成功のための工夫、失敗しない工夫

22年前から「360度フィードバック」に提供に携わり、過去200社以上の導入に関わってきたSDIコンサルティングの藤原誠司氏は、長年の経験から導き出された成功のポイントを語った。

「活用のポイントを解説する前に、そもそも『360度フィードバック』実施における成功とは何であるのかを定義したいと思います。それは、対象者の行動改善、それによる組織の活性化、さらには組織成果の向上を指しています。それらを実現されている企業の特徴は、『導入目的を〈具体的に〉明確にしていること』です。単に『管理職の強化』といった抽象的な目的ではなく、“具体的”に設定していることが成功のための大前提と言えるのではないでしょうか。具体的でなく曖昧なまま実施されている企業も意外と多く、もったいないと思っています。曖昧な目的のままであると、対象者の気づきも薄くなり課題解決につながりにくくなるためです」

講演写真

成功している企業は、「三つの場面において工夫を講じていること」だと藤原氏は言う。一つ目は「目的に応じた設問設計の工夫」。設問の内容次第で対象者に与える気づきは大きく異なる。各社の人や組織の課題を踏まえた設問で実施することで、効果は間違いなく高くなるとのこと。5段階で回答させる設問の設計だけでなく、フリーコメントに関する設問を工夫するなどさまざまな仕掛けが組めるという。

「多くの企業には、現場で生じている人や組織の問題はあるはずです。例えば、管理職の部下育成力低下、自覚なきパワハラ、今年の12月からスタートしたストレスチェックにも関わるメンタル不全の問題などです。最近では、挑戦意識の醸成、風通しの良い組織をつくりたいといった組織活性化についてのテーマを取り上げることも増えてきています。これらの問題を解決するためにも、工夫した設問設計が重要となっています」

二つ目は、「個人結果返却における工夫」。単に返却するだけでは実施効果が出ないばかりか、失敗につながるおそれもある。そのため、説明会、研修、面談などを組み合わせて返却する。研修における大事なポイントは「対象者のモチベーションが下がらないようにすること」「行動改善の現場実践を支援するようなプログラムを組み入れること」。具体的な方法や考え方は、各企業が抱えている課題の状況に応じ、ケースバイケースでアドバイスしていると藤原氏は付け加える。

「三つ目は『結果返却後のフォローの工夫』。結果返却直後は、対象者の意識は高まるものの、時間の経過と共に残念ながら意識は低下し、実際の行動変革につながらないケースも多いように聞いています。そのために、実施3ヵ月後、半年後などに効果的なフォローを行うことで実施効果を高めることができます。弊社は、人事部の負荷なくそれを支援するシステムの提供なども行っています」

失敗しないためには、実施プロセスにおける些細な気配りも重要だと、藤原氏は強調する。人事評価に使うという不安をあおらないように「広報内容・表現・広報の仕方」や「実施タイミング」。成否に関わる大事なポイントを事前に押さえ、対処することで失敗を防ぐことができる。

パネルディスカッション:導入の際に知っておきたいポイント

パネルディスカッションでは、進行役として藤原氏が米田氏、荻野氏に問いかけ、有益な情報を引き出していた。以下に、その一部を紹介する。

「360度フィードバックの導入懸念として、『部下には評価能力がないため、結果の妥当性が保証できない』と言われていること」について。

藤原氏が強調していたのが、「360度フィードバックは、能力評価ではなく、行動観察である」ということであった。部下が上司の能力を評価するなど所詮無理がある。そうではなく、部下に伝わっている(見えている)上司の行動状態を上司に伝えることで、気づきと行動改善につなげる仕組みであるため、部下の評価能力の有無などは関係しない。非常に大事な考え方であるが、「360度評価=部下による上司の能力評価」といった固定観念を持たれている人事部の方もまだまだ多いようである。

荻野氏は、未導入の会社は人事考課につなげたいという考えを持っていることが多いように感じるという。しかし、人事考課につなげないのであれば、上記不安は不要ではないかと語った。

その他にも「人事部門として、360度フィードバックの効果をどう高めるか?」「360度フィードバックの成功のポイントは何か?」といったテーマについて意見交換が行われた。

最後に来場者に対するメッセージとして、米田氏は、「360度フィードバックの一番よいと感じるのは、現場の実態が分かること」「実際の目で見たことと一緒に活用することで、現場でのマネジメントをより効果的に回していくことができる」と語った。

荻野氏は、「手間もコストもかかる仕組みではあるが、うまく活用することで、組織の活性化やマネジメントの変革に寄与できる。世の中に人事・教育ツールは数々あるが、360度フィードバックはポテンシャルを持ったツールといえる」と語った。

講演写真
本講演企業

SDIコンサルティングは、360度フィードバックに専門特化した会社であり、実施効果を高め課題解決を図るために、お客様の事情やご要望に応じたオーダーメイドのサービスを大事に考えています。 これまで大手企業中心に250社以上の実績を通じて得た実践的な活用ノウハウにより、2014年度は約12,000名の管理職を対象にサービス提供しています。オーダーメイド型の360度フィードバックでは、日本で最も実績が多い会社の一つであると言えます。

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