【ヨミ】リーダーシップ リーダーシップ
リーダーシップには明確な定義がなく、さまざまな捉え方がありますが、大きくは「物事を成し遂げる力」と解釈することができます。また、リーダーシップが必要となるのは集団で共通の目的・目標に向かう場面です。そのため、一人で成し遂げるのではなく、集団活動において発揮される力ということができます。
リーダーシップには明確な定義がなく、さまざまな捉え方がありますが、大きくは「物事を成し遂げる力」と解釈することができます。また、リーダーシップが必要となるのは集団で共通の目的・目標に向かう場面です。そのため、一人で成し遂げるのではなく、集団活動において発揮される力ということができます。
リーダーシップは、ビジネス以外にもスポーツなど、集団活動が行われる場面で使われる言葉です。直訳すると「指導力」や「統率力」という意味になりますが、ビジネスにおいては、それらの意味に留まりません。
企業の成長においてリーダーシップが重要な意味を持つことは、多くの人が認識しているでしょう。しかし、「リーダーシップとは何か」を問われても、明確に答えるのは難しいのではないでしょうか。以下では、リーダーシップ論の変遷を紹介しながら、現在の日本の企業に必要とされるリーダーシップの要素および身につける方法について解説します。
リーダーシップというと、経営者や管理職に必要な力と捉えられがちです。しかし、リーダーという言葉が役割を示すのに対し、リーダーシップは働きかける力を指します。つまり、リーダーシップはリーダーの職責を担う人だけに求められる能力ではなく、共通の目的・目標を達成するために活動している社員一人ひとりに必要な力といえます。
現在、多くの企業では、激変するビジネス環境への対応スピードを上げることを課題に挙げています。こうした環境下では、能動的に行動し、周囲に働きかける力を持つ人材が求められます。社員一人ひとりがリーダーシップを身につけることは、企業の成長に大きく貢献するといえるでしょう。
リーダーシップの考え方は、時代とともに流れを変えてきました。年代ごとに主流となったリーダーシップ論を知ることで、現代に必要とされるリーダーシップへの理解が深まります。
(1)リーダーシップ特性論(1930~1940年頃)
リーダーシップ特性論は古くから認識されてきた考え方で、1930~1940年頃に研究が進みました。この理論では、リーダーシップとは優れた知性や行動力を示し、信頼を醸成する力と捉えられています。さらに、リーダーシップは誰もが持っているものではなく、生まれながらにしてリーダーの資質を備えている人の力と考えられていました。
しかし、これらの判断基準は不明瞭でリーダーの資質に委ねていることから、理論の有効性に乏しいとされ、新たなリーダーシップ論へと進むことになります。
(2)リーダーシップ行動論(1940~1960年頃)
リーダーシップ行動論では、リーダーシップは行動によって身につくものであり、リーダーシップがある人、ない人では行動パターンが異なるとしています。この理論では、これまでのリーダーシップの基本にあったリーダーの資質を否定する考え方を示しています。
リーダーシップ行動論の代表的なものには、人間関係と業績への関心という二つの軸で考える「マネジアルグリッド理論」や、課題達成と集団維持の二つの行動特性から考える「PM理論」があります。
(3)リーダーシップ条件適応理論(1960年頃~)
これまでのリーダーシップ理論が行動特性に着目しているのに対し、状況によってリーダーシップのあり方は変わると考えたのがリーダーシップ条件適応理論です。この理論では、リーダーシップ行動論で有効とされている行動をとっても成果につながらないケースもあることから、状況の影響を少なからず受けていることを指摘しています。
(4)カリスマ的リーダーシップ理論(1970年頃~)
カリスマ的リーダーシップ理論では、リーダーシップにおけるカリスマの有用性を説いています。社会情勢や経営環境の急激な変化を背景に、これまでとは違うタイプのリーダーが求められたことから広がりました。
明確なビジョンを伝えられるリーダーへの期待が高まり、カリスマ性のあるリーダーがメンバーを導くと考えられました。
(5)変革的リーダーシップ理論(1980年頃~)
変革的リーダーシップ理論はカリスマ的リーダーシップ理論と似ていますが、この理論では変革のために掲げるビジョンそのものに重きを置いています。
(6)オーセンティックリーダーシップ理論(2000年頃~)
オーセンティックリーダーシップとは、自分はどういう人間であるか、自身が大事にしている価値観は何かなど、自分自身の考えに根差したリーダーシップのあり方をいいます。指導者として人のまねではなく、自分自身の価値観や信念に正直に、自分らしく、誠実さや倫理観といったものに重きを置いて人を導いていく力のことです。
このほかにも、近年は「サーバント・リーダーシップ」「ホリゾンタル・リーダーシップ」「オープン・リーダーシップ」など、さまざまな概念が登場し、注目を集めています。
日本では、リーダーシップとマネジメントが同一視されることが多く、リーダーシップについて誤解しているケースが見られます。混同されることが多い考え方には、以下のものがあります。
リーダーシップを発揮するといった場合に、部下に指示を出して動かすことと認識されていることがあります。しかし、これはリーダーシップの考え方とは異なります。
人を動かすという観点では、マネジメントと比較すると分かりやすいでしょう。マネジメントは、計画の管理やコントロールを通じて業務を推し進めるものです。これに対しリーダーシップは、方向性を定め、組織の動機付けとなるよう働きかける力ということができます。つまり、リーダーシップとマネジメントでは、果たす役割が異なるということです。
マネジメントが業務の成果を得る役割を担うのに対し、リーダーシップは組織の変革に影響を与える役割を持っています。
リーダーシップを構成する要素は、いわばリーダーに求められる能力です。以下の五つを挙げることができます。
組織が一つの目標に向かって進んでいく上で重要なのが方向性の提示です。企業が成長するには経営者や管理職の力だけでなく、社員一人ひとりの力が必要です。リーダーシップでは、明確なビジョンを示すとともに、これに共感を得る力が問われます。組織の一体感を醸成し、目的・目標に向けて行動を起こす動機付けを行うことが大切です。
コミュニケーション能力は、ビジネスのあらゆるシーンで必要とされるスキルです。リーダーシップにおいては、大きく以下の二つを挙げることができます。
(1)モチベーションに働きかける力
リーダーシップにおいては、社員一人ひとりが能動的に行動するよう、意欲を引き出すコミュニケーションが求められます。具体的には、社員のモチベーションにつながるポジティブな言動をとる、一人ひとりの意見を傾聴して承認する、といったスキルが必要です。
(2)柔軟性ある対応
社員は、一人ひとり異なる個性や価値観を持っています。それぞれの関係性において相乗効果を得られるよう働きかけるコミュニケーションも、大切な要素となります。柔軟な姿勢で個性や価値観を尊重することが求められます。
ビジネスにおいて、決断をくださなければならない場面は多くあります。とくに現在のビジネス環境では、決断のスピードと精度が事業や組織の成長に大きな影響を及ぼします。また、変化の激しい環境下では、一度くだした決断であっても、考え直すべき状況に陥ることも珍しくありません。
こうした環境下においては、リーダーシップのなかでも決断力の有無はとりわけ重要になっています。
決断力とともに重視されるのが行動力です。ビジネスにおいてより良い判断をしたとしても、行動がともなわなければ、成果につなげることはできません。社員の士気を高め信頼を得るうえでも、行動力はリーダーシップの大切な要素となります。
リーダーシップには、ビジョンを示し、自身の決断や行動に責任を持つ姿勢が必要です。そして、これらの要素を支えるのが信念です。リーダーシップを発揮すべき場面で信念が揺らいでしまうと、組織は不安定な状況になります。
つねに自問自答する姿勢を持ちながら、困難な状況のなかでも挑み続ける信念がリーダーシップには求められます。
人事評価の中で示されるリーダーシップとは、企業ごとにどのような人間像が求められているのかを示す重要な項目です。では、どのようにしてリーダーシップを測ればよいのでしょうか。
リーダーシップを人事評価や採用面接で見極める場合、まず自社にどのようなリーダーシップが求められるかを人事担当者が話し合い、定めておく必要があります。一般的に、リーダーシップというと組織を自ら引っ張っていく強い人物をイメージしますが、企業や組織によって求められるリーダー像はさまざまでしょう。
例えば、明確なビジョンを持って人を引っ張る、カリスマ的存在のリーダーを想定した「カリスマ的リーダーシップ」。また、従業員に奉仕することを通じてリーダーシップを発揮する「サーバント・リーダーシップ」、多様な人材を結びつけて目標達成に向かう「ホリゾンタル・リーダーシップ」、オープンな関係性を作ることを目標とする「オープン・リーダーシップ」などが挙げられます。
どのようなリーダーシップが自社の風土に適しているのかを十分に話し合い、明確化することで評価基準がより明確になります。
人事評価でリーダーシップを測定する場合、よく用いられているのが「KPIに対して、部下・後輩に適切な指導をし、自ら行動で示している」「部下・後輩が間違った行動をした場合にも、適切に指導をしている」といった項目です。ただし、評価項目は、リーダーシップの種類によって左右される点に注意が必要です。
例えば、サーバント・リーダーシップの場合、上記に加えて「部下・後輩が困っていた場合には相談に乗り、問題点の解決に積極的である」といった項目も考えられます。ホリゾンタル・リーダーシップの場合は、「横の関係を維持し、人脈を広げるよう努力をしている」などの評価基準が設けられるでしょう。
採用面接の場合も、人事評価と同様の手順で求めるリーダーシップ像を定め、質問項目を設定することからはじめます。しかし、採用面接の場合は社内の人事評価とは異なり、候補者をじっくり評価することができないため、これまで努力したことや困難を乗り越えた経験などから、自分の意見を持っているか、面倒見が良いかなどを評価するしかありません。
採用面接では「深堀り」も重要です。まずは簡単なことから聞いていき、失敗を乗り越えた経験があれば、どのようにその失敗を乗り越えたかなどを具体的に聞いていくことで、候補者の創意工夫や積極性、仲間との関係性などが見えてきます。こうした回答を項目別に点数化することで候補者を評価することができます。
リーダーシップに必要な要素から分かる通り、リーダーシップはもともとの素質に依存するものではなく、一つのスキルと捉えることができます。つまり、普段からの心構えや行動、学習によって身につけることが可能です。リーダーシップを向上させる方法として、以下の三つを挙げることができます。
大事な場面でリーダーシップを発揮する人は日頃から、自分で考えて判断し行動に移す、ということを行っています。他者の判断や指示に依存することに慣れていると、いざリーダーシップが必要となってもすぐには身につきません。
まずは、意識的にリーダーシップに必要な要素を取り入れていくことが大切です。たとえば、身近にいるリーダーシップがある人をモデルに、思考パターンや行動パターンを学ぶ方法があります。また、さまざまな書籍からリーダーシップ論について学ぶことも、意識を高めることにつながります。
リーダーシップを意識化するとともに、普段の行動においてリーダーシップが身につくよう習慣化することが必要です。いわばリーダーシップ行動のPDCAサイクルといえるものです。以下の流れで実行します。
これを繰り返しながら、リーダーシップ行動を習慣化していきます。たとえば、コミュニケーション能力が不足している場合は、意識的にコミュニケーションの時間を取り、有効な方法を取り入れていくといった具合です。
リーダーシップはすぐに身につくものではありません。しかし、日々の行動を意識的に変えることでスキルが備わり、成果へとつながっていきます。
リーダーシップを持つ人材のニーズが高まっていることから、管理職に限らず、一般社員に向けたリーダーシップ研修も数多く行われています。主に、経営層や管理職層に向けたものと、リーダー候補を育成する若手社員向け研修があります。
ただし、リーダーシップは一度の研修で習得することは難しいものです。リーダーシップを持つ社員を育成したい場合は、継続的に取り組む必要があります。
現在のビジネス環境においては、トップダウン型で指示を待つ組織では成長が停滞することが危惧されます。そのため、社員一人ひとりが能動的に行動できる組織環境を整える重要性が増しています。これを実現するには、明確なビジョンと行動を動機付ける強いリーダーシップが必要となります。
リーダーおよびリーダーシップに求められるものは、ビジネス環境の変化とともに変わってきました。言い換えれば、競争に勝てる組織に必要なリーダー像とリーダーシップは変わり続けているといえます。人事担当はこうした変化に柔軟に対応し、自社に必要な人材・スキルを精査していく必要があるといえるでしょう。
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