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【ヨミ】オン ボーディング オン・ボーディング

「オン・ボーディング(On-Boarding)」とは、中途入社者を含めた新入社員を早期に戦力化するための施策のこと。業務プロセスを理解するのに必要な情報をポータルサイトにまとめたり、同僚や上司などと定期的に面談して相談や悩みごとを話す機会を設けたりするなど、人事と配属先の部署などが一体かつ継続的にサポートする点が特長です。

育成・研修戦力化採用離職率新規採用者

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1. オン・ボーディングとは

オン・ボーディングは、「船や飛行機などに乗る」ことを意味する「on-board」に由来しています。人事領域以外でも使われており、例えば、SaaSサービスを提供する企業がカスタマーサクセスの一環として、自社サービスを新規契約した企業に対して利用するための支援を行うこともオン・ボーディングといいます。

2. オン・ボーディングが注目されるようになった背景

オン・ボーディングが注目されるようになった背景には、転職者の増加や人手不足が深刻化していることがあります。組織になじめなかった新入社員が短期間で退職してしまったとき、新たな人材を採用することは容易ではありません。

総務省統計局によると、2019年の転職者数は351万人に上り、2006年および2007年の346万人を上回って過去最多となりました。

人手不足を感じる企業の割合も高くなっています。帝国データバンクによると、2022年4月時点で「正社員が不足している」と回答した企業の割合は45.9%で、半数近くに上ります。業種別では「情報サービス」(64.6%)をはじめ、上位10業種で正社員の人手不足を感じる割合が5割を超えています。

3. オン・ボーディングとこれまでの入社者研修との違い

オン・ボーディングは、一般的な入社者研修と何が違うのでしょうか。

例えば新入社員研修は、入社直後に1ヵ月から3ヵ月程度の期間で行われます。社会人としての自覚を持たせるべく、職務や業務を遂行する上で必要な知識(業務内容、企業風土・企業理念、就業規則など)、ビジネスマナー、コミュニケーション能力などの基本を習得させることを目的としています。これらの研修は、主に人事部が担います。

研修が完了すると、多くの新入社員は各部署へ配属されます。その後の育成は現場でのOJTなどに委ねられ、研修では学ばなかった実務に必要な知識を学びます。そのため、配属先の文化や上司・先輩社員の性格などによって、育成方針が大きく異なることもあります。

オン・ボーディングの特長は「継続的」と「全社的」にあり

オン・ボーディングのための施策は企業によって異なりますが、定期的な面談やモニタリングなどが継続的に行われることが大半です。新卒者はもちろん、中途転職者も、長期間にわたって誰かにサポートしてもらえる安心感を持つことができます。

人事部や受け入れ先以外の部署が関わる点も、オン・ボーディングの特長といえます。バックオフィス部門が社内のルールをポータルサイトやファイルにまとめたり、マーケティング部門や情報システム部門が組織において自部門がどういった位置づけにあるのかをレクチャーしたりするなど、新入社員を組織全体でサポートする傾向が見られます。

4. オン・ボーディングの施策・プロセスのポイント

企業規模や業種などによって効果的なオン・ボーディングの施策は異なりますが、ある程度共通するポイントを三つに整理して説明します。

新入社員のオン・ボーディングのプランとゴールを設定

例えば、営業部門に所属する中途入社者のゴールを「入社3ヵ月後には一人で提案できるようになる」と設定したとします。このゴールを実現するための研修プランは、1ヵ月目に自社や製品・サービスに関する理解を深め、2ヵ月目に先輩社員の商談に同席するとともに提案パターンについて学習し、3ヵ月目に実際の客先で商談を経験する、といったものになるでしょう。

ゴールの設定は、入社者ごとあるいは配属先のチームごとに行う必要があります。配属先の先輩社員を新入社員のチューターに任命し、ゴール設定を任せるケースも考えられます。

キャッチアップに必要な情報の集約・一元管理

コロナ禍でテレワークが広まっていますが、職場にメンバーが集まって仕事をするときとは異なり、オンラインでは気軽に上司や先輩社員に相談することが難しい、という声もあります。

そのため、会社の情報(サービス内容・歴史など)や仕事に必要な情報を集約し、「ここを見れば基本的なことは理解できる」というファイル管理場所やポータルサイトを用意する企業が増えています。

入社が決定した時点でアカウントを作成し、必要な情報へのアクセスをいち早く可能にすることで、新入社員は理解すべき基本的な知識やルールを早期に身に付けるができます。迅速なオン・ボーディングを実現する手段としても効果的でしょう。

上司・同僚との多様なコミュニケーション

同僚・上司・役員など、さまざまなポジションの社員と面談やランチ、ミーティングなどを通じてコミュニケーションをとることも、オン・ボーディングにおいて重要です。別の部署の先輩社員など、実務で話す機会が少ないメンバーと実施するケースもあります。

コミュニケーションの場を設けることは、新入社員の心理的な不安を和らげることにつながります。また、新入社員の意見を聞き出すことは、オン・ボーディングの改善余地を見いだすきっかけにもなります。

5. オン・ボーディングの企業事例

オン・ボーディングは、継続的かつ組織横断的に行われる施策です。実際にオン・ボーディングに取り組んでいる企業の事例を紹介します。

株式会社メルカリ:リモートメンターランチで心理的なつながりを構築

メルカリでは、必要な情報をポータルに集約したり、オンライン会議ツールを活用した「リモートメンターランチ」を実施したりするなど、テレワークにおけるオン・ボーディングの充実に努めています。

オン・ボーディングのゴール設定に関わる点として、進捗確認の「オン・ボーディングサーベイ」を実施していることが挙げられます。例えば、エンジニアを新入社員として迎えるに当たって、技術領域ごとに独自のKPIを設け、サーベイを実施することでオン・ボーディングの状況を定量的に可視化しています。

サイボウズ株式会社:営業本部が営業担当者のオン・ボーディングを全て実施

サイボウズの営業本部には、IT業界で就業経験がある人、営業職の経験がない人など、多種多様な人材が入社しています。入社時のスキルセットが人によって異なる中、オン・ボーディング研修をはじめ学びの機会を豊富に設けることで、スキルのキャッチアップを促しています。

営業配属者向けのオン・ボーディング研修は、企画から運営まで全て営業本部が実施していることが特長です。入社後3ヵ月を研修期間とし、「提案独り立ちに向けて必要な基礎スキルを補う」ことをゴールにオン・ボーディングを進めています。組織や製品の理解から始まり、提案パターン習得や商談実習、提案デモンストレーションやプレゼンテーションまで、体系的な内容が組まれています。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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