人工知能によって「売れる営業トーク」「伝わる会社説明会」の
論理構造を可視化する(後編)
大野 順也さん(株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO)
人事に求められる「データを経営戦略実現に活かす力」
新しい技術が生まれる中で、人事に求められることは、今後どう変わっていくのでしょうか。
技術は「それさえ使えば正解を導き出せる」というものではありません。あくまでも重要となるのは、人事担当者の方が「何のために、何を明らかにしたいのか」という課題の設定や設計を行うことであると考えています。テクノロジーの進化によって、従来では取得することができなかったようなデータをリアルタイムで大量に集め、分析を行うことが可能になりました。しかし、それらの結果をどう受け止め、どう活かしていくのか考えていくことは、人事の方々に今後より一層求められるはずです。
また、「人工知能と人事」という切り口でいうならば、人事担当者に求められることは大きく2点に集約されます。
まず一つ目は、「人工知能に対する正しい期待値を持つ」ことです。倫理問題、プライバシー保護、安全性の確保など、恒常的に利用していく上では、まだ課題もありますが、今までに述べたように、従来の方法では解決が難しいと思われてきた人事関連の問題に対し、解決のためのツールとして大きな可能性を、人工知能は秘めていると思います。
ただし、あくまでも人工知能は「ツール」であり、そのほとんどは「どのような問題にも適応できる万能なもの」ではなく、「特定領域の問題について、データからの学習によってその問題解決に向けてパフォーマンスを向上させるもの」です。つまり、ある意味では「とても優秀な計算機」という見方もできるでしょう。そのため「人工知能を使えば、すべてがどうにかなる」と、何のプランニングもなしに臨むのでは成果が期待できないことは明らかです。
二つ目は、そうとはいえ「気軽に、積極的に試してみる・触ってみる」という姿勢です。人工知能の開発者のほとんどは人事領域における経験がありませんので、彼らと人事担当者がチームを組み、人事領域における人工知能の活用方法をともに創りあげていく「共創」の姿勢こそが必要となるのではないでしょうか。
「わが社ではこのような問題を抱えており、既存のソリューションでは限界を感じている。このような問題を人工知能によって解決できないだろうか」と人事担当者が気軽にたずね、それをきっかけとして開発者が人工知能の新たな活用方法やニーズに気づく。このようなシーンが増えていくことこそが、人事領域における人工知能活用のポテンシャルを開花させ、個々人のキャリアと企業経営に大きな果実をもたらすのではないかと考えています。