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人工知能によって「売れる営業トーク」「伝わる会社説明会」の論理構造を可視化する(後編)

大野 順也さん(株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO)

2016/12/09実践人工知能(AI)コグニティ河野理愛

株式会社アクティブ アンド カンパニー 大野 順也さん

人材採用や育成、評価など、さまざまな場面で「伝える」ことが重要な人事の仕事。しかし、「伝え方」はデータの構造化や客観的な分析が難しく、明確な改善点が見えづらいものでもあります。ところが現在、講演や会話、レポートなどといった、自然言語(人が普通に使う話し言葉・書き言葉)であっても解析し、論理構造や改善点などを可視化する、新たな技術が注目を集めています。

前編では、この技術開発を行うコグニティ株式会社 河野理愛さんに、人工知能を活用した解析技術の仕組みと可能性をうかがいました。後編では、その技術の人事領域への応用をサポートする株式会社アクティブ アンド カンパニー 大野順也さんに、今後のさらなる展開の可能性をお聞きします。

株式会社アクティブ アンド カンパニー 大野 順也さん
大野 順也さん(オオノ ジュンヤ)
株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役

1974年生まれ。大学卒業後、株式会社パソナ(現パソナグループ)に入社。営業を経て、営業推進、営業企画部門を歴任し、同社の関連会社の立ち上げなども手掛ける。後に、トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)にて、組織・人事戦略コンサルティングに従事し、2006年1月に株式会社アクティブ アンド カンパニーを設立し、代表取締役に就任。現在に至る。著書『タレントマネジメント概論』(ダイヤモンド社)

会社説明会を人工知能が評価・分析

株式会社アクティブ アンド カンパニー 大野 順也さん

人事領域における取り組みについて、お聞かせください。

今回、人事領域における論理構造解析のファーストステップとして、「人工知能を活用した、会社説明会の評価・分析サービス」を開始しました。売り手市場といわれる現在、学生が会社説明会に参加してから選考参加までの離脱率が高まっています。いわゆる「本命」企業として選考に参加してもらえるかどうかは、説明会でいかに自社の魅力をPRできるかにかかってきます。そのため「会社説明会の質の向上」というのは多くの企業にとっては重要なテーマとなります。

しかし説明会の質の向上といっても、それを客観的に測定する技術や、定量的な分析を可能とさせるモデルがこれまで存在しておらず、なかなか実現できていませんでした。そこで、私たちはバイアスに左右されないという人工知能の特性を活かし、会社説明会の客観的評価を実現させました。

具体的な方法としては、説明会の論理構造を解析し、論理性や話題ごとの情報量、納得させやすさはどうであったかをレポートで可視化します。これにより、「事実情報が不足していた」、「根拠理由が不足していた」、「詳細検討・事例が不足していた」、「リスクの洗い出しが不足していた」といったことが明らかになり、スコアリングもされますので、改善の箇所が明確になります。また、それ以降の会社説明会の内容を改善した際にも、数値として改善効果が分かるようになります。

説明会当日は、参加者にアンケートをとり、「学生が自社説明会で聞きたいこと(ニーズ)」が何であったかも併せて収集しています。説明会の解析レポートとアンケートを合わせて見れば、学生のニーズに合った話題を伝わりやすいかたちで話せていたのかがわかるのです。

現在、「会社説明会の論理構造データ」だけに特化したデータベースを構築しており、多くの会社説明会データを蓄積していくことで、今後は他社まで含めた数多くある会社説明会と比較した、自社の説明会の特徴について分析を行うことも可能になるでしょう。

今後、会社説明会の分析・評価以外には、どのような応用が考えられるでしょうか。

この解析技術をもとに、人事領域で最も挑戦してみたいテーマがあります。それは、「評価」における活用です。評価面談は、時にメンバーの今後のキャリアを左右しかねないほど重要なものであり、本来は評価者のバイアスがかかってはならないものです。それにも関わらず、多くの評価面談は密室状態で行われるため、面談の質の測定や分析はなかなかできていません。評価結果について、十分な理由の説明がないまま評価面談が終了し、被評価者にとっては不満として残り続けてしまうというケースも少なくありません。

こういった場面にこそ、バイアスのかからない人工知能による分析が活かせるのではないかと考えています。評価スキルの育成は企業にとっても大きな課題であり、評価者トレーニングは多くの企業が行っているものの、実際の面談におけるやりとりについてはブラックボックスのままです。人数の少ない遠隔地の拠点であれば、その拠点の数少ないマネージャーの属人性やバイアスは、より大きなものとなってしまうでしょう。しかし、フィードバック面談における論理構造や会話の進め方を可視化すれば、多くの部門を横断したマネジメントの質の向上や均一化を実現できると考えています。

このような施策は、部下にとっては上司のバイアスや偏見が混ざった不当な評価を防ぐことにつながり、上司にとっても「評価が不当だと感じる」などといった部下からの不満を防ぐことにつながるはずですので、双方を守ることにつながるでしょう。


2016/12/09実践人工知能(AI)コグニティ河野理愛

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