ウェアラブルデバイスが“働く”を変える
― 集中を可視化するメガネから見える未来 ―(後編)
井上 一鷹さん(株式会社ジェイアイエヌ JINS MEMEグループ 事業開発担当)
2016/10/18実践、ジェイアイエヌ、JINS MEME、井上一鷹、ウェアラブルデバイス
組織への応用可能性
(1)はたらく環境
社員のライフログ測定により、ファシリティ担当者は社員がより集中できるオフィスの設計が可能になります。オフィス家具をデザインや機能性で選ぶのと同じように、今後は「集中度」が新たな選択の基準となるかもしれません。
また、社内でのルールを決める際に、ライフログのデータが味方となることもあります。例えば、「エンジニアが作業中に音楽を聴くことを認めるべきか」という議論が起こったとします。エンジニアは「音楽を聴いた方が集中できる」と言う一方、エンジニア以外の人間は「エンジニアだけ業務中に音楽が聴けるなんて不公平だ」と不満を述べます。
このようなとき、ライフログデータを示しながら、「エンジニアは音楽を聴いているときに集中度が高まる傾向にある。よりよい成果物を生み出す環境づくりのために許可しよう」と言うことができれば、他の社員たちを説得するツールにもなります。
(2)リモートワーク
リモートワーク導入を、ライフログの測定でサポートすることもできます。試験的に社員にリモートワークを実施してもらい、その際の集中度や生産性向上を数値化すれば、実際の導入設計に役立てることができます。
また、チームメンバーによる「集中のSNS」を作成することも可能であると井上さんは言います。メンバーがそれぞれどのくらい集中をしているのかを相互にリアルタイムに確認でき、連絡を取ることもできるSNSです。
メンバー全員の状態を一斉に確認することは、リモートワーク導入時に失われがちなチームの一体感を醸成することにもつながるほか、「さぼり」の抑止力としても機能します。
最新技術を問題解決への「手段」にする
ウェアラブルデバイスやIoTの活用を自社の課題に照らして考えれば、他にもさまざまな用途が浮かんでくることでしょう。技術は可能性を広げるための手段であり、目的に応じて使い方も変わっていきます。
ライフログのような膨大な情報の取得と、AIによる解析が可能になった現在、それらをいかに問題解決のツールとして活用していくかは、人事にとっての大きな課題です。
採用や育成、日常の業務、働き方や社員の心のケア、それぞれは相互に結びついています。これらを個別の問題として捉えるのではなく、横断的にライフログが活用される未来も近いのではないでしょうか。