脳波を測定し、“感じていること”を可視化する
感性把握技術から探る今後のHRの可能性とは(前編)
森下 さおりさん(株式会社電通サイエンスジャム プロデューサー)
2016/09/30実践、電通サイエンスジャム、感性アナライザ、森下さおり、脳波
応用の進む「感性把握技術」の事例と、今後の期待
すでにいくつかの企業や団体で、感性把握技術を使用した調査が行われているそうですね。
利用者の感性を測定することで、商品開発やマーケティングに役立てる事例が増えています。例えば大手外食企業では、店舗改装後の空間に感じる変化やメニュー提供時に感じる印象などの測定をしながら、サービス開発に活用しています。
また、日本に訪れた外国の方が、実際に観光しているときの「好き」や「興味」などの傾向を分析するという試みにも取り入れていただきました。日本人では気が付かない、観光地の隠れた魅力を探ることを目的に行われています。
料理好きな主婦を対象に、調理過程で「興味」を感じやすいのかを調べたケースもあります。実際にご自宅へうかがい、いつものように調理を行っていただきながら測定するのですが、この調査では、主に「調理の時のたのしみ」をどこに感じるかを探ることが目的でした。「切る」工程など、その方が特に興味を持っている要素は何なのかを検討しています。
被験者が意図的に「感じ方」を操作することは可能なのでしょうか。
「集中力を高める」など、限られた部分は訓練によって多少変動があるかもしれませんが、意図した結果を出すことは、正直、非常に困難です。人間の意識は複雑であるがため、完全にコントロールすることはできないからです。
たまに、感性把握の技術を、「うそ発見器のようですね」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、「自分が気づいていない受け止め方を知る事ができる」と捉えていただければと考えています。
計測の結果によっては、本人ですら自覚していなかった感じ方が明らかになるケースもあります。例えば「肌触り」は、人によって感じ方の度合いが異なります。触った瞬間にとてもいいと思う人もいれば、触った瞬間にそれほど強くいいと感じてはいなくても、感性値の動きを見るといいと感じていることが発見できる人もいます。つまり、感性値を見ることによって、本人でも自覚していない反応を計り知ることもできるというわけです。
本人でも気づいていなかった「集中」「興味」「好き」などの感じ方を目に見える形で示すことは、その人自身の可能性を後押しすることにも繋がるのではないでしょうか。
私自身、現在HR 関連の勉強会や交流会へ伺う事も多くあります。人を察する技術として、計測結果をHR領域に応用することを考えるのも、感性把握技術の面白い活用法かもしれませんね。
※後編では日々企業との合同研究プロジェクトを進める森下さんのお話をもとに、HR領域への展開の可能性を探ります。